素直に追いかけて ボールを追いかけて   作:スターダイヤモンド

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自分の居場所

 

 

 

 

~部室~

 

 

 

ガチャ

 

 

 

穂乃果「やっほ~!今日も練習頑張ろ…って、どうしたの? みんなでパソコンを覗き込んで…」

 

凛「土曜日の試合の動画を観てるにゃ」

 

穂乃果「おぉ!穂乃果も家で何回も見ちゃったよ。やっぱり最後の本塁突入シーンはさ、結果がわかっててもドキドキしちゃうよね」

 

にこ「動画の視聴者が選ぶベストプレーランキングでは2位ね」

 

凛「かよちんのスライディング、カッコ良かったにゃ~」

 

花陽「あれでセーフなら、もっと良かったんだけどね…」

 

凛「そして、凛のダイビングキャッチが…堂々の1位にゃ!!」

 

真姫「はいはい。もう何度目よ、その自慢」

 

凛「うるさいにゃ~」

 

海未「どうやら、いつものみんなに戻っているようですね」

 

ことり「うん、良かったね!」チュン

 

 

 

ガチャ

 

 

 

絵里「みんな集まってるみたいね?」

 

希「風邪ひいてへん?今日の練習は大丈夫?」

 

凛「昨日一日休んだから、もう、大丈夫にゃ」

 

にこ(若いわね…)ボソッ

 

凛「にゃ?」

 

にこ「べ、別に…」

 

 

 

トントン

 

 

 

絵里「はい?どうぞ…」

 

 

 

ガチャ

 

 

 

絵里「一条さん!二本松さん!」

 

凛(『いっちいっちじょ~』にゃ!)コソコソ

 

花陽(凛ちゃん!)シッ!

 

一条「まず、土曜日はありがとう。最後はあの雨のせいで、ろくに話ができなかったから…」

 

二本松「みんな風邪ひかなかった?」

 

絵里「ご心配なく、とりあえず無事みたい。そちらは?」

 

二本松「お陰さまで…」

 

希「まぁまぁ、立ち話もなんやから、中に入りぃ」

 

一条「あ、あぁ」

 

二本松「じゃあ…失礼する。…あ、そうだ、その試合に付き合ってもらったお礼というか…、差し入れというか…?」

 

 

 

ガサゴソ

 

 

 

一条「良かったら食べてくれ」

 

 

 

一同(そ、それは…穂むらの饅頭!?)

 

 

 

一条「なかなか、ウマイらしいぞ」

 

 

一同(クスッ)

 

 

 

一条「ん?何かおかしいか?」

 

二本松「和菓子は嫌い?」

 

 

 

絵里「えっ!?ううん、そんなことないわ」ムフフ

 

海未「ありがたく頂きます」ニヤ

 

穂乃果「そ、そうだね」アセアセ

 

 

 

一条「?」

 

二本松「?」

 

 

 

花陽「お茶、いれましょうか?」

 

一条「いや、気は使わないでくれ。そういうのは慣れていない」

 

花陽「はぁ…」

 

二本松「あなたは野球経験者?」

 

花陽「わ、私!?え、いや、小さいときにキャッチボールをしてた程度で…」

 

二本松「そうは見えないな…バッティングにせよ、走塁にせよ、実にセンスがいい」

 

花陽「あ、ありがとうございます」

 

二本松「そして…園田さん…だっけ?」

 

海未「は、はい」

 

二本松「あなたも今すぐ、うちに来て欲しいくらい。才能がある」

 

海未「光栄です」

 

一条「試合前にも言ったが…最初は試合といいながら、こっちのバッティング練習に付き合ってもらう程度で考えていた」

 

にこ「失礼な話ね」

 

一条「そう思う。ゲームが始まってすぐにわかった。自分が誤っていたことに。正直、スクールアイドルって存在をなめていたんだ。だから、まずその事について、謝罪したい」

 

穂乃果「謝罪なんて…ねぇ?」

 

海未「何事も、やるからには全力で行うのが、私たちのモットーですから」

 

穂乃果「海未ちゃんは、ちょっと度が過ぎるけどね」

 

海未「穂乃果!」

 

二本松「お陰で素晴らしい試合が出来た。感謝する」

 

絵里「こちらこそ。楽しかったわ」

 

一条「間違いなく、練習試合をする予定だった学校よりも…強い」

 

二本松「断言しよう。あなたたちなら少し練習すれば、地区予選くらいなら、軽く突破できる」

 

穂乃果「穂乃果たち、そんなにスゴいんだ」

 

にこ「お世辞に決まってるじゃない!」

 

 

 

真姫「…で、何を企んでるの?…」

 

 

 

一条「!!」

 

二本松「!!」

 

 

 

ことり「真姫ちゃん!?」

 

真姫「わざわざ、そんなことを言いにきたんじゃないんでしょ?」

 

絵里「何か知ってるの?」

 

真姫「さっき、うちのクラスの子から聞いたんだけどね…ソフト部が凛を探してたって」

 

穂乃果「それってまさか…引き抜き?」

 

一条「引き抜きとは、口が悪い。スカウトと言って欲しい」

 

二本松「単刀直入に言おう。星空凛、ソフトボール部に入らないか?」

 

 

 

凛(…)

 

 

 

二本松「その脚力、守備範囲をもってすれば、今すぐにでもレギュラーだ」

 

一条「どうだ、私たちと一緒に、ソフトボールをやらないか?」

 

二本松「…そこの生徒会コンビも誘いたいとこだが、3年は直ぐに引退だからな」

 

一条「勝手なことをいうが、君はステージよりもグラウンドで大暴れする方が似合っていると思う」

 

にこ「ホント、勝手ね」

 

 

 

花陽(…でもそれは、一条さんの言う通りかも知れない…)

 

絵里(確かに、この3日間はいつもにも増して、元気だった気がする…)

 

 

 

二本松「別に好きなことをやるっていうのは、悪い話じゃないと思うけど」

 

一条「私の好きな詩を教えてあげる…『遅すぎることなんて本当は、ひとつもありやしないのさ。何するにせよ、思ったときが、きっと、相応しいとき』…どう?」

#《泣かないで恋人よ》THE BLUEHEARTS

 

 

 

一同(意外とまともなことをいう…)

 

 

 

凛「うん。それは、共感できるにゃ~」

 

真姫「凛!?まさか」

 

凛「確かに、凛がスクールアイドルやるなんて、これっぽっちも考えたこともなかったにゃ」

 

花陽「凛ちゃん…」

 

凛「凛は歌もダンスも下手だし、可愛い衣装も似合わないし…正直、凛がここにいるのは、場違いだと思ったりもしてる…」

 

絵里「凛…」

 

凛「野球に未練がないって言ったらウソになるし、野球は今でも、大好きにゃ」

 

にこ「凛…」

 

凛「でも、今は、それと同じくらい…ううん、それ以上に、みんなと過ごす時間が、大好きにゃ!!」

 

穂乃果「凛ちゃん!」

 

 

 

凛「今、凛は、穂乃果ちゃんと海未ちゃんの漫才見てたり、にこちゃんと真姫ちゃんをからかったりして過ごす毎日に、とてつもない幸せを感じてるにゃ」

 

 

 

海未「さらっと、おかしなことを言いましたね…」

 

にこ「聞き捨てならないセリフがあったわ」

 

真姫「あったわね」

 

 

 

凛「それに、かよちんと離れるなんて、絶対に無理にゃ~」

 

 

 

花陽「凛ちゃん!」

 

 

 

にこ「…ってか、それが一番の理由でしょ?」

 

凛「だから、折角だけど…お断りするにゃ~」

 

一条「ふはははは…。そりゃ、そうだ。世の中そんなに甘くない」

 

 

 

一同(ん?どこかで聴いたセリフね…)

 

 

 

一条「大丈夫、断られるのは想定内だ。ダメ元で訊いてみただけだ」

 

二本松「ただし、戦力として欲しいのは事実。心変わりがあったら、いつでも来てくれ」

 

凛「多分ないと思うけど」

 

一条「ダメ元ついでにもうひとつ…いや、あとふたつ、頼みがあるのだが」

 

にこ「意外と図々しいわね」

 

一条「再来週から地区大会が始まるのだが…我が部はまったく注目もされていないから、応援席がガラガラなんだ」

 

穂乃果「それは、寂しいね。誰か観ててくれないと、気合いが入らないよね…」

 

一条「そこで、時間があれば…で構わないんだが、応援に来てくれないか?」

 

海未「ええ、そんなことなら…」

 

一条「チアガールとして」

 

 

 

海未(ブホッ!)

 

 

 

ことり「ちょっと、海未ちゃん、大丈夫?」

 

 

 

海未「チアガールはダメです!あんなに短いスカートで、人様の前で脚をあげて踊るなんて…あぁ、ダメです、ダメです」

 

 

 

二本松(アイドルの衣装も、そんなに変わらないだろう?)

 

 

 

希「それで、もうひとつの頼みって、なんやろ?」

 

 

 

一条「あ、あ…その…え~と…」

 

 

 

希「?」

 

 

 

一条「曲を…教えてくれ…」

 

 

 

希「曲?」

 

 

 

一条「今度のライブの時に、一緒に歌えるようになりたいんだ…」

 

穂乃果「それって…」

 

ことり「来てくれるの?ライブ!」

 

一条「応援に来てくれたらな…そのお返しに…だ」

 

二本松(素直じゃないねぇ)

 

真姫「いいわ。あとでスマホに落としてあげる」

 

一条「そうか、うん、ありがとう」

 

二本松「実は私たち、μ'sに嫉妬してたんだ。アイドルなんて、ルックスだけでしょ…って。でも、初めてパフォーマンスしてるとこを見たとき、負けた!…って思ったよ。何だろう、人を引き込むパワーっていうのかな」

 

一条「真っ直ぐな…一途な想いが伝わってきた。それを忘れてたんだ…私たち。そして、試合を通じて、改めてそれを感じた」

 

二本松「だから、競技は違うけど、お互いを、刺激し合える存在になりたいんだ。立候補させてもらってもいいかな?そのライバル的存在に」

 

穂乃果「もちろん!」

 

二本松「ありがとう。では、後輩共々、宜しく頼むよ。…おっと、そろそろ時間だ…じゃあな」

 

一条「たまには一緒に練習しような」

 

 

 

ガチャ

 

 

 

一条「邪魔したな」

 

 

 

バタン

 

 

 

穂乃果「はぁ…なんか、中身の濃い時間だったね…」

 

花陽「とりあえず、お茶にしましょう。穂むらのお饅頭も貰ったし」

 

穂乃果「穂乃果は毎日、食べ出ます…」

 

 

 

一同(プッ!)

 

 

 

真姫「でも凛が向こうに行くって言わなくて、ホント、良かったわ」

 

凛「真姫ちゃん、心配してくれてたんだ」

 

真姫「あ、当たり前でしょ!一応仲間なんだから…」

 

凛「あ~照れてるにゃ~」

 

真姫「ちょっと、からかわないでよね…ん?」

 

にこ「そう言えばさっき、どさくさに紛れて、おかしなことを言ったわね?」

 

 

 

凛「にゃ…?…覚えて…ない…にゃ…」

 

 

 

海未「私も聴きましたよ」

 

 

 

凛「何かの…間違いにゃ…逃げるにゃ!!」

 

花陽「な、凛ちゃん!引っ張っていかないでぇ!誰か助けてぇ」

 

 

 

希「相変わらずやねぇ…」

 

絵里「まったく、騒がしいわ」

 

希「でもウチには、この賑やかさが心地ええんよ」

 

絵里「…うん、私も…」

 

希「えりちもウチも、ホンマ、μ'sに救われた」

 

絵里「うん…」

 

 

 

穂乃果「…あのさ、前々から疑問に思ってたんだけどさ」

 

 

 

絵里(あら、穂乃果、いたの?)

 

 

 

穂乃果「アイドル研究部って、文化部?運動部?」

 

絵里「それは…文化部じゃない?」

 

穂乃果「でも、筋トレとかダンスとか、やってることは運動部並みだよ。いや、それ以上かも」

 

絵里「じゃあ『運化部』はどう?」

 

穂乃果「ちょっと、響きがあまりキレイでないというか…」

 

絵里「そうね…言われてみれば」

 

希「なら『文動部』やない?」

 

穂乃果「それでいいか。なんか文武両道みたいだし」

 

 

 

ズズズズ…

 

 

 

穂乃果「って、ことりちゃん!静かだと思ったら何してるの!?」

 

ことり「さっき、花陽ちゃんがお茶いれっぱなしで出て行っちゃったから…一服してました」チュンチュン

 

希「ウチももらおかな、お茶」

 

ことり「はい、どうぞ」

 

穂乃果「なんだか、眠くなって来ちゃった…寝ちゃおうかな」

 

 

 

マテェ!

ツカマラナイニャ

ドタバタ

ドタバタ

 

 

 

絵里「まだ、やってるの…」

 

希「これもμ'sの魅力やん!」

 

絵里「なんだか今日は練習する気分じゃなくなっちゃわね」

 

希「いいんやない。たまにはの~んびりするのも…。そのあと、全力で頑張れば…」

 

絵里「そうね…」

 

 

 

穂乃果「もう、お饅頭、食べられない…」ムニャムニャ

 

 

 

希「もう寝てるやん!」クスッ

 

 

 

 

 

絵里(ありがとう、穂乃果。ありがとう、希。ありがとう、みんな…)zzz…

 

 

 

希「えりちも寝たん?」ムフフ

 

ことり「希ちゃん!イタズラはダメだよ!」

 

希「そ、そやね…」ポリポリ

 

 

 

 

 

~おしまい~

 







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