素直に追いかけて ボールを追いかけて 作:スターダイヤモンド
《2回の表、μ'sの攻撃は…星空選手からですが…あっさり三振》
海未「花陽と破廉恥なことをしてるから、集中力が切れるのです」
凛(別に破廉恥なことなんてしてないにぁ…)
《続く矢澤選手は、曲者(くせもの)らしく、ファールで5球粘ったもの、最後は高めのボールに手を出して三振》
にこ「ふん!今日はこれくらいにしておいてあげるわ!」
希(それじゃ新喜劇やん…)ムフッ
《3番の園田選手は、当たりは良かったものの、ライト真っ正面のライナーで…この回三者凡退》
海未「感触は良かったのですが…」
希「一条さんは立ち直ってきた感じやね」
絵里「さっきの凛のプレーで、逆に闘志に火が点いた?」
海未「私たちは、これからが勝負です。攻撃は勢いで誤魔化せても、守備はそうもいきませんからね」
希「そうやね…」
穂乃果「とにかく、アウトひとつひとつを、確実に積み重ねていこう!」
海未「穂乃果にしては、正論ですね」
穂乃果「たはは…」
《さぁ、2回の裏、ソフトボール部の攻撃…バッターは5番、センターの八代選手、左のバッターボックスに入ります》
凛(一巡するまでは、同じ攻めを続けるにゃ)
《先程の一条選手と同じような守備体形。八代選手に対します絢瀬選手、まずは初球…打った!引っ張った!ファーストライナー!》
花陽「ぴゃあ!」
《…あ、ミットを弾いた…が…落ち着いてボールを拾い直し、自らベースを踏みます。ワンアウト!当たりは鋭かったですが、これはファースト小泉選手の正面でした》
花陽(ふぅ…あ、あぶなかった…)アセアセ
穂乃果「落ち着いていこう!!」
花陽「う、うん!」
希(さすが『プロ』やね…えりちの速球に振り遅れてない…これは掴まるのも時間の問題かもしれんね…)
《6番はライトの七瀬選手。このバッターも左です》
希(今のところ、早打ちに助けられてるけど…)
《打った、打ち上げた。七瀬選手、2球目を打ち上げてしまいました。これは平凡なショートフラ…おっと、サードの高坂選手が捕りました。これでツーアウト、ランナーなし》
二本松(ん?サードフライだと?)
五木(…やはり…)
花陽「絵里ちゃん、ナイスピー」
穂乃果「ツーアウト、ツーアウト!」
《早くもツーアウトのソフトボール部、本家の意地を掛けて、反撃なるか?…7番は、ファーストの三井選手…スタメン唯一の2年生です》
五木「三井!」
三井「はい?」
五木「ちょっと…」
ゴニョゴニョ…
《ソフト部ベンチ、三井選手を呼び寄せて、何か指示を出しています。そして『任せた!』と肩を叩いて送り出しました。右の打席に入った、三井選手、バットをピッチャー方向に向け、1回大きな声で、気合いを入れました》
三井(なにがなんでも『あそこ』に転がせ…って)
《外のボールが2球外れたあとの、これが…3球目!打った、引っ掛けた!》
絵里「真姫!!」
《これはショートゴ…あ、いや、ボールは西木野選手のグラブの下をすり抜け、レフトに転がっています…。う~ん、今のはどうしたか?トンネルです…》
三井(…塁に出るには出たけど…スッキリしないな…)
真姫(…真姫!今のは捕れたでしょ…我ながら情けないわ…)
穂乃果「真姫ちゃん、ドンマイ、ドンマイ!」
にこ「真姫でも、悔しい顔なんてするのね?」
真姫「な、なによ、悪い?」
にこ「アンタが下手なことは、織り込み済みじゃない。悔しがってるヒマがあるなら、次のことを考えなさいよ!」
真姫「次?」
にこ「狙い打ちにされるわよ」
真姫「わ…わかってるわよ」
にこ「いい?意地でも前で止めなさいよ…それくらいしかできないんだから」
真姫(わかってるわよ…)
凛(…真姫ちゃん、頑張るにぁ!!)
《先程の回に続き、ソフトボール部はツーアウトから、ランナーが出ました。さぁ、つなぐことが出来るか?バッターは8番、九龍選手》
希(にこっち、穂乃果!)
にこ(わかってるわよ!)
穂乃果(任せて!)
九龍(いつまでも、小細工が通用するほど甘くないよ!)
《内野は…ライトゴロを誘(いざな)うかのように、一二塁間が広く空いている。セカンドの矢澤選手は、ほぼ2塁ベースの隣に位置しています》
九龍(そうそう、ライトゴロなんて決まるものじゃない…それでも敢えてそうするのか…。まさか1塁ランナーを3塁で刺そうって作戦か?…いやいや、いくら強肩でもそこまでは…)
主審「バッター!?…早く、入りなさい」
九龍(!!…ぼんやりと考えてしまった…)
《審判に促されて、九龍選手、ようやく右打席に入ります》
希(さて…どうやって、攻めたらいいんやろ…)
《キャッチャーは、外に構える。ピッチャー、絢瀬選手…投げた!…ボール…高めに浮いた。ワンボール》
凛(絵里ちゃんのボールが抜け始めてる…)
《次の投球…投げた!!引っ掛けた!ショートへの当たり!あぁ、またも捕れない、捕れない…前にこぼした…》
穂乃果「ナイスストップ!」
にこ「やればできるじゃん」
真姫「…こんなことで誉めないでよ…」ムスッ
《反撃開始か、ソフトボール部。ツーアウトながら、ランナー2塁1塁。スコアリングポジションにランナーを進めました。ここで迎えるはラストバッターの二本松選手》
二本松「さぁ、借りは返してもらうよ」
希「だから、なんも貸してへんって」
二本松「ひとりごとだ、気にするな…」
希(ん?デジャヴュ?)
《ピンチを迎えた生徒会バッテリー、どう立ち向かっていくか?ピッチャーの絢瀬選手、プレートを外して、大きく深呼吸をしました。緊張感が走ります》
絵里(みんな…いくわよ…)
《絢瀬選手、胸の前で十字を切りました。プレートに足を揃えて、身体を屈め、サインを覗き込む。キャッチャーは中腰、内角高めにミットを構える。小さく頷いた…。ゆっくりモーションに入る…大きく腕をを回して…投げた!》
絵里(!!)
希(逆球!?)
二本松(もらった!!)
キン!
《打った!ファースト頭の上!鋭い当たり!ライン際ボールが転がっていく。ライト回りこんで、逆シングルでボールを抑える。2塁ランナーは…3塁を廻った!》
海未(イチかバチか…です…)
ライトアローシュート!
ビシュッ!
《いいボールが返ってくる!クロスプレー!…判定は?》
セーフ!
《…セーフです!セーフ!ソフトボール部、1点返しました、4対1!絢瀬選手、打たれました。園田選手の見事なバックホームも一歩及ばず、得点を許してしまいました。なお、送球の間に1塁ランナーは3塁に、打ったバッターも2塁に進みました》
希「タイム!」
《キャッチャーの東條選手、ここはタイムを要求。全員かマウンドに集まります》
希「握力落ちてるんやない?」
絵里「だ…大丈夫よ…」
希「ウソはいかんよ。いくらえりちとはいえ、こんなに長く、ピッチャーやったことないんやから、想像以上に疲れてるはず」
絵里「まだ2回よ。まだ大丈夫!さっきは…ちょっと手が滑っただけ…」
希「…」
にこ「…そういうことにしておけば!?四の五の言ったって、他に投げられる人はいないんだし」
絵里「にこ…」
にこ「にこのとこに打たせればいいのよ!ここまでまったく目立ってないんだから」
絵里「わかったわ。お願いね…」
にこ(…な、なによ…妙に素直じゃない…。一瞬ドキッとしちゃった…)
凛「それより、海未ちゃん、バックホームの時、何か叫んでたにゃ」
花陽「私も聞こえた…」
凛「確か…『ライトアローシュート』って言ってたような…」
海未「言ってません!言ってません!そんな恥ずかしいこと、言ってません!私が言うはずありません!」
凛「別に隠さなくてもいいにゃ~」
穂乃果「へ~…海未ちゃん、そんなこと考えながら、守備についてたんだぁ」ニヤッ
海未「穂乃果だけには知られたくありませんでした…」
ワイワイ
ガヤガヤ
一条「アイツら、なんか、楽しそうだな…」
五木(これがスクールアイドルという生き物なのか…)
《さあ、マウンドに集まった守備陣の輪が解けました。仕切り直し、試合再開です》
凛(雲の流れが早くなってきたにゃ…)
希(風が…左から右…ゲームに影響がなきゃいいんやけど…)
穂乃果「ツーアウト!ツーアウト!ガッチリいこう!」
《内野は通常の守備位置に戻りました。外野はバックホームに備えて浅め。2塁ランナーは返さない構え。バッターは、初回、見事な『ライトゴロ』を放った四ノ宮選手》
穂乃果(だからヒデコ…口が悪いって…)クスッ
九龍(一生ネタにされるな…)
※3塁ランナーなので、九龍にも実況がうっすら聞こえてる。
《名誉挽回、汚名返上なるか。ツーアウト、ランナー3塁2塁。一方、ピンチを凌げるか、ピッチャーの絢瀬選手。大きく腕を回して…投げた!おっと、緩いボール…判定は…ボール》
四ノ宮(チェンジアップ…だと?そんな器用なことも出来るのか!?)
希(握力がなくなって、思いっきり抜けてるだけなんやけどね…)
《次の投球…投げた!山なりのボール!》
四ノ宮(!!)
《打った!大根切り打法!?ボールは足下に転がって…ファール!!》
四ノ宮(今度は、超スローボール…待ちきれず打ちにいってしまった…)
希(危ない、危ない…完全なスッポ抜け…)
《カウントはワンボール、ワンストライク。次が投球3球目…ピッチャー投げた!速い球!打った!当たり損ない!セカンド捕って1塁に送る…アウト!スリーアウト、チェンジ!》
希「ナイスピッチ!!」
絵里「結果オーライだけどね…」
《2球遅いボールのあとの、最後3球目。速球に差し込まれたか、セカンドゴロ。ランナー2人残塁。しかしまずはこの回、1点を返しましたソフトボール部。ゲームは3回の表へと進みます…》
~つづく~