素直に追いかけて ボールを追いかけて 作:スターダイヤモンド
ソフトボール部員の描き分けが出来ていないことは、重々承知しております。
大変お手数ですが、彼女たちの容姿等につきましては、皆様のご想像に委ねますので、宜しくお願い申し上げます。
《3回の表、μ'sの攻撃は…4番、ピッチャー、絢瀬選手》
二本松(まずは、先頭バッターを出塁させないこと)
絵里(まずは、先頭の私が出塁しないと…)
《2回の表は、上位打線を三者凡退に抑えた一条選手。迎えるは、先程、左中間を破るツーベースを放っている絢瀬選手。両エース、両4番の対決です》
一条(正直、ここまでやるとは想像もしてなかった。正直、なめていた)
《初球は速い球!内角厳しいところ!決まってストライク!》
一条(それに関しては、素直に謝らなきゃいけない…。柄にもなく、嫉妬してたんだな…》
《次のボールも…内角膝元、決まってストライク、ツー》
一条(初めてアンタたちを見たとき、メチャクチャ悔しかったよ…キラキラしててさ…)
《次のボールは…ファール!絢瀬選手、辛うじてバットに当てました》
一条(こっちは、何年もソフトやってんのに、地区大会すら勝てなくさ…)
《4球目!…これもファール!追い込まれてから粘ります》
一条(それなのに、そっちは結成して数ヶ月で、アッという間にスターだよ。嫉妬しない訳がない!)
《次の投球!…際どい!…ボール。よく見た絢瀬選手》
絵里(…手が出なかった…)
《マウンド上の一条選手は鬼気迫る表情!ボールも気持ちが乗り移ったかのようにキレが増しています》
一条(だけど…対戦してみてわかったよ…。自分たちには、必死さが足りてなかったということに!)
《投球5球目、投げた!ファール!これも厳しいコース…しかし、絢瀬選手も負けていない。お互いに力と力、意地と意地のぶつかり合いとなって来ました》
一条(自分たちとは関係ないソフトの試合に、こうも全力で挑んでくるとは…。これが彼女たちの人気の理由なのかも知れない。そう私が嫉妬したのは、つまり人気じゃなくて…純粋に夢を叶えようとしている、真っ直ぐな想いなんだ!)
《次のボール!打った!…が打球はバックネットに!ファール!》
希(押されてるなぁ…でも、えりちも力みすぎやって…)
穂乃果「絵里ちゃん、リラックス、リラックス!」
絵里「…うん…」
《1回打席を外します、絢瀬選手》
絵里(落ち着きなさい、あなたは出来る子なのよ…)
《行き詰まる展開、観客も固唾を飲んで見守っています。さぁ、仕切り直し。カウントはワンボール、ツーストライク。投球7球目…》
一条(負けちゃダメだ!負けちゃダメだ!負けちゃダメだ!…負けちゃ…ダメだぁ!!!)
《投げた!》
絵里(打てる!!)
二本松(!?)
絵里(え!浮いた!?)
ブン!
《か、空振り~っ!!さ、三振です!絢瀬選手、空振り三振!!今のは真ん中にきたように見えたのですが…》
一条「…勝った!絢瀬に勝った!」
二本松(今のボールは…)
絵里(ハラショー…)
トボトボトボ
絵里「浮いたわ…」
凛「ライズボール…だにゃ」
穂乃果「ライスボールっておにぎりのこと?…えっ?花陽ちゃん?」
花陽「えっ?私は関係ないですぅ…」
凛「ライ『ズ』ボールにゃ…ソフトボール特有の変化球…。バッターの手元で浮き上がるように感じるボールにゃ」
絵里「まさか、あんなボールを持ってるとは…」
凛「偶然だと思うから、気にすることないよ。だって、捕ったキャッチャーがビックリしてるもん」
二本松(極限まで高まった集中力が、とんでもないボールを生み出した。本人に『もう1球!』っ言っても『ムリ!』って返すだろうな)
絵里「ごめんなさい…何としても塁に出なきゃいけなかったのに…」
穂乃果「大丈夫!希ちゃんがなんとかしてくれるよ!」
海未「他力本願ですか?穂乃果はいつも人任せです」
カキン!
《東條選手、初球を叩いて、鮮やかはセンター前ヒット!》
二本松《集中力が切れた直後の初球を、キッチリ狙ってきた。やっぱり東條は侮れない…)
穂乃果「ほらね!?」
海未「はぁ…」
にこ「ほらね!…じゃなくて、次のバッターは穂乃果よ!」
穂乃果「あ、そうだった!」
にこ「バット忘れてるわよ!」
穂乃果「あ、ホントだ…」アハハハ…
ことり「ん?これってデジャヴュ?」
《μ's、ワンアウトからランナーが出ました。迎えるバッターは初回、体勢を崩しながらも、しぶとくセンター前にタイムリーヒットを放った高坂選手》
穂乃果「♪だって、可能性感じたんだ…そうだ、ススメ…ってね!」
二本松(この場面で鼻歌まじりで登場とは…不思議な娘だ…)
《だいぶ風が強くなってきました。今は左から右…。しかし上空、風は舞っているようで、ときおり、逆方向にも吹いています》
一条(集中…集中…)
《ワンアウト、ランナー1塁、打席には6番、高坂選手。マウンド上は一条選手》
一条(打てるものなら、打ってみな!)
《ピッチャー…投げた!打った!いい当たり!…が、ショート真っ正面のゴロ。6ー4-3と渡ってダブルプレー!!高坂選手、ゲッツー!一瞬でチャンスを潰してしまいました》
穂乃果「いやぁ、当たりは悪くなかったと思うんだけどねぇ…ツキがなかった…」
ツキデカタヅケルノハ
リーダートシテ
シッカクダトオモウケド
穂乃果「えっ!?誰?」
ツバサ「こんにちわ、高坂さん」
一同「え?」
にこ「綺羅ツバサ!!」
花陽「ぴゃあ!」
にこ「な、なんでここに…さぁさ、汚いとこですが、どうぞどうぞ」
ツバサ「いえ、結構よ」クスッ
穂乃果「どうして…ここに?」
ツバサ「ちょっとネットを見てたら、面白そうなことをやってるな…と思ってね。散歩がてら、観にきたの」
絵里「ネット?…」
ツバサ「えっ?やってるじゃない、中継…」
穂乃果「ちょ…ちょっと、ヒデコ!これってまさか、ネットで中継してるの?」
ヒデコ「そうだよ!…あれ?言わなかったっけ?」
絵里(この娘たち、いったい何者?)
ヒデコ「もうμ'sへのコメントも凄いことになってるよ!ますますファンになったって!」
ツバサ(実は私も書き込んでたりする…)
真姫「じゃあ、私のエラーも?」
ヒデコ「当然」
真姫「ヴェ~…」
ヒデコ「大丈夫、必死にプレーしてる姿に、みんな勇気をもらったって人ばっかりだから!」
ツバサ「じゃあ、私はこれ以上ジャマをすると悪いから、向こうで観てるわ」
穂乃果「あ、うん」
ツバサ「いい?勝ちなさい!勝って私たちと同じマウンドに立ちなさい!待ってるわよ…」
スタスタスタ…
凛「今、同じマウンドって言ったにゃ~」
希「意外と天然なのかも…やね」
~つづく~