ヘロヘロさん、元気になる   作:ヘットズピカル

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こんなはずでは・・・。
長くなりすぎたので分割です

はやくヘロヘロさんに会いたい・・・!


ラン・ソリュシャン・ラン(前編)

「戻れ、レメゲトンの悪魔たちよ」

 

 モモンガのその言葉に周りを取り囲んでいた巨大な体躯のゴーレム、それも稀少な鉱石を贅沢に使用した特製の警備兵はその見た目とは裏腹に足音軽く元の位置に戻り、再び警備の体勢を取る。

問題ばかり起こすがゴーレムクラフターとして確かな腕を持つかつての仲間が心血を注いだ自信作を思い通りに動かせた事にモモンガは胸をなでおろす。

 

「これで大体は済んだか・・・な」

 

 ただ一人玉座の間に残ったモモンガは、現在行われているナザリック地下大墳墓内のヘロヘロさん捜索の結果が出る間、自らが行使できる権利や魔法、アイテムの確認を急いでいた。

先程のやりとりで自分を取り巻く環境はそれ程悪い状態ではないと感じていたが、元来モモンガは石橋を叩いて叩いて叩き倒し、信頼できる人柱を投げつけてから渡るか考える程の慎重派(チキン)なのだ。

 

 そんな自分が仲間の安否というのっぴきならない事態に後先など考えずに行動し指示を出した

 

その心中はまさに地雷原を目隠しで歩く様なもの。

特大の地雷達が自分から主張してきたのは僥倖と言う他ないがそれでも道を求めて暗闇を走るのは精神がすり減る思いだった

 

 そんな緊張の連続であった作業を終え暫定的にではあるが自らの状態確認をし、大きく息を吐いたモモンガは右手をそっと天にかざす。

そこに存る照明の光に照らされひと際強く輝く薬指の指輪を見つめる

 

その指輪の名は『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』―――ギルドメンバーにしか所持を許されぬ指輪

 

他の指にはめてある指輪と比べると余りにも弱い力しか持たない、しかし最後まで決して外す事は無い指輪―――例え自らの命が朽ちようともだ。

それは作り上げ、築き上げてきた誇りの形であり苦楽を共にしてきた仲間達との絆の証明

 

 その指輪を持つ者が今、この地にきっといる

 

もう二度と会えないとさえ思っていた仲間。彼がこのナザリックに戻り、再び共に歩んで行く為なら俺は何だってする。そう、何だって―――

例えそれが仲間達が心血を注ぎあげた作品であり、自分達にとって子供達同然の存在であった臣下達を犠牲にする事になったとしてもだ。だから―――

 

「無事でいますよね?ヘロヘロさん。貴方とのお別れはしませんからね」

 

 そう一人呟くモモンガの思考に〈伝言(メッセージ)〉の糸が飛んできた。

少しの苛立ちを感じるが気を取り直し、心の準備を済ませてからからその糸を繋ぐ

 

『何だ?』

『失礼致しますモモンガ様。アルベドでございます。ヘロヘロ様の探索の件につきましてのご報告をさせて頂いてもよろしいでしょうか?』

『っうむ!報告せよ』

『ハッ!結論から報告させて頂きます。全階層全領域捜索の結果、ヘロヘロ様はナザリック地下大墳墓内にはおられないと結論付けます』

 

やはりか・・・。

予想してはいた事だが落胆は大きい。ナザリック内にいてくれたら、とそう願わずにはいられなかった。そう思いたかった自分がいた。

沈黙したモモンガの様子を推し量るように遠慮がちにアルベドの言葉が続く

 

『心中お察しいたしますモモンガ様。この様な結果をお伝えする事となり申し訳ございません』

『いや、良い。・・・・それは確実なんだな?』

『はい。全ての領域守護者と伝言(メッセージ)で緊密な連絡を取りながら捜索を行い、手間が掛かる箇所は私が責任を持ちまして姉の二グレドに指示を出して探索致しました』

『分かった。ご苦労であったアルベド。大役を任してしまったな』

『とんでもございませんモモンガ様!守護者統括として当然の責務を果たしたまででございます』

『あぁ・・・。ではこれより捜索範囲をナザリック外へと移す。それに併せて階層守護者達と直接会って伝えねばならん事もある。』

 

 ここからは自分にとっても最も大切な確認を含んだ作業を連続して行わなければならない。気を張り直さなければ・・・

 

『畏まりましたモモンガ様。では今すぐに全ての階層守護者を玉座の間へと集めますか?』

『いや、第六階層の円形劇場(アンフィテアトルム)だ。時間は30分後。動くのが困難な階層守護者は含まなくて良い。アウラとマーレには私から行くので必要ない』

『全て承りましたモモンガ様』

『うむ、頼んだぞ。あぁ、内部を担当したプレアデスもその時集めておいてくれ』

 

 そう言って繋がりを切ったモモンガはしばしの間俯き、苦悶のため息を吐く。

最後に、とふざけてヘロヘロさんとアルベドの設定を変えなければ今の守護者統括として働くアルベドが本来の姿だったのだろう。

彼女にも彼女の創造主のタブラさんにも申し訳ない事をした

 

 だが今は俯いてる時間はない。全ての力は前を切り拓く為に使わなければ・・・!

 

「行くか。見守っていて下さい、皆さん」

 

 

指輪を見つめ呟いたモモンガの姿は次の瞬間掻き消え、玉座に束の間の静寂が訪れる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓外の調査を任されたセバスとソリュシャン。

大霊廟の外に広がる光景を目にした彼らは驚きを隠せなかった。なぜなら一度もナザリック外に出た事がない二人が伝え聞いていた周辺地理は沼地、それも毒属性を帯びたものが散在する大湿地というもの。

 それが目の間に広がるのは草原、それも見渡す限り平坦な草原だったからだ。更に薄い霧が立ち込めるはずの空は晴れ渡り、星のきらめく夜空がどこまでも広がっていた

 

 とてつもない異変が起きている―――

動揺を抑え与えられた周辺地理1kmの調査をつつがなく終えたセバスとソリュシャンは報告する為、互いの所感を纏めていた

 

「驚きましたねこれは。周辺1kmにおいて知性を有する生物はなく地形も平坦な草原、そして人工建築物も無し・・・ですか。」

「ハイ、私のスキルにも引っかかりはありませんでした。セバス様、これは・・・」

「えぇ、モモンガ様の予想通りナザリックが何かしらの異常に巻き込まれたと見るべきでしょう」

 

調査の終点である大森林の方を前にセバスは呟く

 

「ハイ。となりますとヘロヘロ様もやはり外にいる可能性の方が高いと考えられます。あぁ今すぐに御身の元へ―――」

「待ちなさいソリュシャン」

 

すぐにも飛び出していきそうなソリュシャンに対し抑え付ける様にセバスが口を挟む。それも普段の彼には見られない強い口調で

 

「貴方らしくありませんね。プレアデスの中でも最も柔軟な対応力と機微を捉える観察眼を持つ有能な貴方が見る影も無いではありませんか」

 

「・・・申し訳ございません、セバス様」

手を前で組み深々と頭を下げるソリュシャン。そんな彼女を見てセバスはため息とともに言葉を続ける

 

「貴方のヘロヘロ様への深き畏敬の念は理解できます。そしてそれを評価なされたが故にモモンガ様は貴方を選ばれたのです」

一旦言葉を切り、ソリュシャンの方へ向き直りセバスは言葉を続ける

 

「最優先任務、それは勿論ヘロヘロ様の探索と発見である事は疑う余地もありません。しかし現在、我々がまず行うべきはナザリック地下大墳墓外の周辺地理の調査です。まして異変が起きている現状においてはモモンガ様から御連絡があるまではそれに専念する事こそが正着であるといえます」

 

「相違ございません。臣下としての心得を忘れ、私欲にはしり誠に申し訳ございません」

 

「強く諫めてしまいましたがその熱意は決して悪いものではありません。本懐を果たすべく、まずはモモンガ様に今後の方針を仰ぎましょう。急がば回れですよソリュシャン」

「かしこまりました。ご配慮感謝致しますセバス様」

 

そういってもう一度深々と頭を下げるソリュシャンを満足気に見つめ、セバスは今後の方針を仰ぐべくモモンガへと伝言(メッセージ)を繋ぎはじめた

 

 ソリュシャンは頭を下げたまま今後について思考を走らせる

(確かに軽率でしたね・・・ですが私の粘体(おんな)の勘が告げています。絶対にヘロヘロ様は外にいらっしゃる筈です。()()()()をしてまでセバス様に付いてきたのは敬愛するヘロヘロ様を発見する事ただ一つ。モモンガ様は偉大なる至高の御方、恐らくそんな私の心中を洞察された上で選抜なされたのでしょう。あぁ、流石は至高の41人の纏め役にしてあのヘロヘロ様の上に立たれた御方。ならばココからは更なる広範囲探索の御指示が下されるはずです)

 

 全てを見通し鑑みた偉大なる御方の考察(仕返しが怖いし何より目が怖い)、ソリュシャンはそれを出した慈悲深き御方が次に下すであろう指示に心構えをしながらセバスを見つめる。

モモンガとの伝言(メッセージ)を続けていたセバスが深く一礼すると共にソリュシャンに告げる

 

「御指示を賜りました。ココからは二グレドの探索と併せて広範囲を調査するとの事です。危険性も低いと判断されましたので増援が来るまでは我々は連絡を密に取りながら別々に森の調査を始めよ、とのお達しです」

 

 

 

「畏まりましたセバス様。では私はこちら側を担当させて頂きます(やはり。流石でございますモモンガ様)」

溢れる敬意を胸にソリュシャンは森の中へと走り始める―――

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 地下でありながら星々が空に耀き草木が生い茂る深き森で構成されたナザリック地下第6階層。

大いなる自然が主として存在している階層だがその中心には石材で構成された巨大な楕円形の建築物が鎮座している―――名を円形闘技場(コロッセウム)

6階建てに相当する建物は古代ローマ時代を彷彿とさせる作りであり、その中にある円形劇場(アンフィテアトルム)―――かつてこのナザリック地下大墳墓に侵入してきた多くの者達を殺戮してきた闘技場、その入り口付近にメイドが一人、静かに佇んでいた

 

 彼女の名はユリ・アルファ―――プレアデスの副リーダーであり姉妹の長女である。

夜会巻きにまとめられた黒髪をくゆらせ、豊かな肢体をメイド服で包んでいる彼女の腕にはその雰囲気にそぐわない棘付きの凶悪なガントレットが填められている。

そんな彼女は必需品とばかりに掛けられた眼鏡を触りながらその怜悧で知的な顔に笑顔を浮かべていた

 

(まさかソリュシャンがあんなワガママを言ってくるなんてね・・・驚いちゃったわ。でもそれだけヘロヘロ様の御発見に携わりたかったのね。可愛い所あるじゃないの)

 

―――勿論モモンガ様がプレアデスから一人決められたら従うのは当然だが、私たちの話し合いで決めた者を優先するのなら自分を選んで欲しい―――

 

普段は優秀だがサディスティックな気性がたまにキズの妹がした、滅多に見せない本心からの懇願に姉として思わず頬が緩んでしまった

 

(ボ・・・私が選ばれなかったのは少し残念だけど、ソリュシャンは選ばれたのかしら。候補としてはもう一人のサディストも入ってたものね。自分が有利と告げられた時のあの嬉しそうな顔ときたら。ホント問題児なんだから)

 

 

 現在、劇場の中ではモモンガ様と階層守護者の皆様の話し合いが行われており、終わるまでプレアデスは入り口付近で待機が命じられている。

自らの担当部分の探索と報告を終え、この場所に来たがまだ他の妹たちは来ていない。誰がセバスのお供に選ばれたのかはまだ聞かされていないのだ。ユリは可能性の高い可愛い妹二人(サディスティック担当)のやり取りを思い出しため息をつく

 

 そこに音もなく一人の影が近づいてくる

 

「あら、あなたも選ばれなかったのね、シズ」

「・・・残念。だけど納得してる・・・」

 

 現れたのはプレアデスの四女―――正式名称CZ2128・Δ(シーゼットニイチニハチ・デルタ)ことシズ・デルタ

赤金のロングヘア―を揺らしながら歩いてくる彼女はユリと違い、メイド服にミリタリー風味で統一した飾り付けを纏い首元に同じ柄のマフラーを着用している。

片目をアイパッチで覆っているその顔は表情こそ無表情であったが、翠玉の瞳に浮かぶ感情は優しげなものだった。

 

「・・・・・一生懸命、諭された。・・・ナザリック内部の方がシズ姉さんは、活躍できるって・・・・一生懸命、説明された」

「あら、私はお願いされたわ。シズには感情じゃなくて理論で攻めたのねあの子」

 

「・・・可愛かった。・・・いつも私を、いじくってたのに・・優位に立てた感じがして、ちょっと・・・・いい、気分」

「ふふ・・・」

 

 普段見られぬ妹の可愛い姿を思い出し談笑している二人の顔に影が差す。見上げた先には照明を背に上空から魔法で降りてくるプレアデス三女、ナーベラル・ガンマの姿があった。

切れ長で黒曜石のような輝きを持つ瞳に美しい黒髪をポニーテールに纏めてたなびかせながら、フワリと地面に降りてきた彼女は先に着いていた二人に話しかける

 

「遅くなってごめんなさい。担当部分が思ったより広くて」

 

「まだ時間には余裕があるから構わないわよ。ナーベ、お疲れさま」

「・・・・お疲れさま」

 

 労いの言葉に応えながら、身だしなみに乱れが無いかチェックするナーベラル。

非常に高い忠誠心と実直な性格を持つ彼女にとって敬愛する主人に粗相があってはならないという思いは殊更強いものなのだ。

 

「ありがとう二人とも。でもその分、私が一歩リードしていると言っても良いんじゃないかしらね。限界まで頑張ったわ」

「ん?そうね・・・・ところでナーベ?一つ聞いていいかしら」

「何かしらユリ姉さん」

「その・・なんで頭からウサミミを生やしてるのかしら?」

「あぁ、コレは魔法の兎の耳(ラビッツ・イヤー)よ?」

「えぇ、それは分かるんだけど何故今それをしているのかしら?」

「担当部分の探索の時も使ってたんだけど、今からモモンガ様へのアピールタイムなんだから先に出しておこうと思って」

 

「アピール・・・タイム?」

 

「そうよシズ。探索の時もだけれどいついかなる時もヘロヘロ様を発見する為には五感を研ぎ澄ませておいて損はない。そうした方がモモンガ様もきっとお喜びになられる、ってソリュシャンがアドバイスしてくれたの。だから私頑張ったんだから。担当部分より多めにまわったわ、フフフ。それにセバス様の調査に行く時に選ばれたら、この魔法がきっと役に立つはずよ。アピールポイント高いって」

 

「ソリュシャンが?」

「そう、ソリュシャンが」

 

 万全の体勢を整えたと自負している―――そう自信満々の顔でナーベラルは二人にアピールしている。そんなナーベラルを見て二人は顔を見合わせてコソコソと話しはじめる。

 

「騙されてるわね」

「・・・・また、騙されてる」

「そうよね。又、言葉巧みに誘導されたのね、ナーベラル・・・」

 

 コソコソとしゃべる二人をナーベラルはキョトンとした顔で眺めていたが

(そう。二人とも私程は探索範囲を広げなかったのね。今から決めるだろうセバス様のお供選びは、悪いけど私の一歩リードねフフフ)

そう思い当たりウサミミを動かしながら渾身のドヤ顔で二人を眺めるナーベラル。その顔には今から与えられるだろう栄誉ある仕事への期待が満ち満ちている。

また妹に騙されているそんな三女の不憫さに二人はいたたまれない気持ちに―――

 

(またいい様に騙されたのねナーベラル。貴方のその高い忠誠心と能力の割にウッカリが治らない所、ぼ・・・わたし好きよ)

(・・・・何度見ても、姉さんのそういう所・・・・理解不能。・・・でも、好き)

 

 

はならなかった。

 

 

勝ち誇る負け組を生温い視線で眺める二人。ナザリック戦闘メイド、プレアデスの相関関係がにじみ出る一幕、それは耳に飛び込んでくる大量の蟲の羽音で終わりを告げる

 

「あら、エントマも駄目だったのね」

「・・・・やっぱり、蟲が目立つ、のを嫌って・・・・候補から、外れたんじゃ」

「捜索範囲を多めにしたのは控えめにいうべきね・・・。あくまで能力的に出来たからした、みたいな方が慎ましくていいと思うし」

 

 轟音をたてながら飛来してきた蟲達は地面近くまで下降すると纏まりながら球体を描き始める。

膨れ上がりながら大きくなる球体は蟲達が中心へと固まり始めるとともに密になっていく。

そうして出来た蟲達の球体が動きをピタリと止めると弾けた様に散り散りに解け始め、一人の少女が解けた球体から現れる

 

 先の三人とは異なる和服テイストのメイド服を身に纏い、腹部の前に大きく蝶々に結んだ赤い帯締が印象的な少女は二つの団子頭を軽く傾けこちらに小走りにかけてくる。

少女の名はエントマ・ヴァシリッサ・ゼータ―――プレアデス六女の蟲使いである

 

「遅くなってぇ、ごめんなさぁいぃ」

 

そう言って可愛らしく頭を傾けるエントマにユリが歩みながら問いかける

 

「時間内だから問題ないわよエントマ。こっちにいらっしゃい、ほら口元が汚れてるわよ、もう」

そう言いながらハンカチを取り出しエントマの口周りを吹き始める

 

「んんぅ~。ありがとうユリ姉さまぁ」

「これでよし、と。仕事はちゃんと終わったのエントマ?遊んでたんじゃないでしょうね」

「ちゃぁんと終えたよぉ。担当範囲をまわってぇ、報告したんだけどぉちょっと時間が余ってたからぁ、もっかい寄り道しただけぇ」

立ち上がりハンカチを折りたたみながらユリが問いかける

 

「もう一回寄り道?」

「うん。おやつの間ぁ」

 

折りたたんだハンカチを投げ捨て、ワナワナと震えながらエントマの顔を手で挟むユリ。お気に入りの柄だったのだ

 

「ぅう痛いよぉユリ姉さまぁ。そんなに強くぅムニュムニュしたらぁ仮面が外れちゃうぅぅ~」

「うあぁ、ぼぼ僕のお、お気に入りのハンカチだったのに・・・クスン。二回も行ったの?恐怖公の所に」

「うん、一回目はぁ連れて行っただけでぇ私は一口二口しか食べてないからぁ」

「連れて行った?誰を?」

「ソリュシャンだよぉ」

 

 事もなげに話すエントマだが聞き逃せない話題にユリとシズは喰い付く。

「やっぱりポイントは・・・そう・・・それで・・・」

ナーベラルは事前準備に没入していて聞いていない

 

 本来ソリュシャンは人間等を溶かして好んだりするなど知性を持つ生物を対象にしている。確かに恐怖公の眷属はある程度の知性を有しているが対象ではないはずだし何より・・・あの生物なのであるから

 

「・・・エントマ・・それなんで連れて、いったの?」

「えっとぉ、玉座の間から出てすぐぅ、私に秘蔵のぉお肉をくれるって言ってぇ、実際先に半分くれたのぉ。すっごい柔らかくておいしかったのぉ」

 

この子、誑かされているパターン

目と目で通じ合うユリ姉とシズ。ウサミミの角度を調整するナーベラル

 

「んでぇ、ソリュシャンがユリ姉さまとシズと話してぇ、ナーベラルが飛び立つのをぉ一緒に見送ってからぁ、連れて行ったのぉ」

「あら、エントマ。来てたのね。ソリュシャンはどうしたの?そろそろモモンガ様の選考会が―――」

「・・・ナーベラル、本当に準備は、万全?」

「ハッ!確かに・・・まだ不完全かもしれないわ。ありがとうシズ」

 

グッ、と指を立ててナーベラルを追い払うシズ。ユリは更に顔を近づけてエントマに問いかける

 

「恐怖公の所に行って?どうしたの?」

「え、えっとねぇ。私が恐怖公と話してる間にぃ、ソリュシャンがぁ―――」

 

「うー、遅れたっすよー。申し訳ないっすーー」

 

 話を聞いていたユリの肩に突如重さが加わり、後頭部に柔らかいものが押し付けられる。

ユリの背後の何も無かった空間から、赤い三つ編みに浅黒い肌をした修道服風のメイド服を着た女性―――プレアデス次女のルプスレギナ・ベータがユリの頭に胸を載せながら登場した

 

「ちょっとルプー、重いわ!髪が乱れちゃうからどいて頂戴!」

「えー、ひどいっすよユリ姉ぇ。可愛い妹がひどい目にあったのに、慰めてほしいっす」

 

そう言いながらユリの頭から胸を離したルプスレギナは、にゃははと後ろに下がる

 

「もう・・・。と、いう事は貴方とソリュシャンの勝負はソリュシャンが勝ったのね」

 

 ずれた眼鏡を戻し、髪を整えながら立ち上がったユリはソリュシャンが願いを果たせた事に心中で胸をなでおろす

 

「そうっすよー。もーひどい目にあったんすからー!あ、エンちゃんっすね!!協力したのはぁー!!」

「うぷぷ、ごめんねぇルプー。今回はソリュシャンのぉ味方になったのぉ」

 

話が見えず困惑する二人をよそに、互いにじゃれ合うルプスレギナとエントマ。巻き込まれてナーベラルのウサミミが乱れた

 

「・・・・ちゃんと、説明してほしい」

「そうね。経緯がまだ把握できてないわ。よろしくお願いしたいところよ」

 

たしなめる様に言う二人にナーベラルを連れて三人で近づいてきたルプスレギナが言葉を続ける

 

「モモンガ様とセバス様の話し合いの時に私達が外に出たじゃないっすか?それでソーちゃんが私に『もし私達で決めた者でセバス様に着いて行く者を決めれるなら私に譲って欲しい』って言ってきたんすよ」

「それで?」

「勿論いってやったっすよ!『アレアレ?お願いの仕方があるんじゃないっすかねぇー?』って!」

「・・・最低」

 

シズに後ろから抱き着きながら喋るルプスレギナの言葉に無表情にシズが答える

 

「勿論本心じゃないっすよー。なんだったら私が選ばれてもソーちゃんを推してたかもしれない位応援してたっすよ!」

 

(嘘ね)

(・・・ウソ)

(嘘ですぅ)

(何の事かしら?)

 

皆感想は同じであったが話の続きを促す

 

「そんでっすねー、そう言ったらソーちゃんが『後で二人きりで少し話がしたい』って言ってきたんで、『馬に乗る遊びがしたいっすねー』って言ってから一旦別れたんすよ、勿論冗談っすよ」

「そのセリフ言った時の顔、してみて」

「こんな顔っす!」

「全部分かったわ。続きを話してちょうだい」

 

 こめかみを抑えながらユリは続きを「・・ルプー、石鹸の匂い」「へへー、お風呂に行ってきたっすよ」「ハッ!私とした事が!身だしなみを」「それもう意味無いですぅ」

ピシッ!ピシッ!!ピシッ!!!「ルプー?続けて」鞭を叩きながら促した

 

「え、えっとそれでっすね。その後、二人で会ったんすよ。そしたら『ルプー、いえルプスレギナ様。背中にお乗りください』って言いながらソーちゃんが四つん這いになったんすよ。もうテンションあがちゃってっすね『え、聞こえないわ?馬の言語だから』って言いながら鏡の前まで歩かせて言って『その姿を脳裏に刻み付けなさい』って言いながら跨ったんすよ」

 

「わたしぃ、ルプーが悪いと思うぅ」

「なんでっすかー!普段滅多に無いソーちゃんの絶対的に不利な立場っすよ!こんなチャンス逃す方がどうかしてるっすよ!」

「どうかしてるのは貴方よルプスレギナ・・・」

 

他の姉妹がドン引きする中、頭を押さえながらユリはため息を吐く

「それで・・・どうしたの?」

 

「え、そんで跨った瞬間にソーちゃんがニチャッって顔して笑ったと思ったら、爆発したっす」

 

「・・・・え?」

唐突過ぎる展開に耳を疑う。シズも同じリアクションだ

 

「だから、爆発したっすよー。で中から恐怖公の眷属がいっぱい飛び出してきてっすね。もー飛び散った汁とか部分とかが体中にゴヘェッ!!」

 

 唐突に話を途切れさせ闘技場の壁まで吹っ飛ぶルプスレギナ。

原因は皆まで聞かずに肘鉄をぶち込んだシズ、理由は先に結論を言わないからである

 

「・・・・先に・・・・・・いいなさいよ」

「だってだって一人だけGまみれとか嫌じゃないっすかー!大丈夫っすよ、しっかりお風呂で洗ってきたっすから」

何処からか取り出した銃の銃口をルプスレギナの眉間に合わせるシズ。ルプスレギナが動くと銃口を動かすあたり、本気具合が窺える

 

「エントマは知ってたの?」

 

「そこまでは知らなかったぁ。すごい勢いでぇ恐怖公の眷属を取り込んだと思ったらぁ、自分の分身を出してきて私に同じ姿の幻を作って掛けさせてぇ、爆散符を仕込ませたのぉ。泣き叫んで慈悲を求める恐怖公もぉ睨み付けて黙らせてたしぃ、あんなに太ったソリュシャンみたのぉ、久しぶりだったぁ」

「ひどいっすよエンちゃん!もう後片付けも大変だったし中から『後でお詫びするから』って紙出てきたのも逆に腹立つっすー!絶対に仕返ししてやるっすから!」

 

「・・・どんな、顔で?」

「こんな顔っす!」

 

 ズドンズドンズドン!と銃を撃つシズとそれを避けるルプスレギナにユリはため息を付きながらも経緯を把握し、状況を理解したので手をパンパンと叩く

 

「はいはい、そこまでよ。各自が仕事してたのは分かったし報告も済ませてるから姉さん安心したわ。もうそろそろモモンガ様と階層守護者様達の話し合いも終わる頃でしょうから私達も準備するわよ?皆、並んでね。あ、ナーベ?ウサミミ直しておきなさい」

 

「はーいっす。」

「・・・了解」

「え・・・てことは・・・えっ?」

「並ぶ順番そこじゃないですぅナーベラルぅ」

 

 皆を並ばせると仕事モードへと切り替えさせる。今から与えられる仕事は恐らく外で奮闘しているソリュシャンを助けるものになるはずだ。

戦闘メイド・プレアデス(6連星)は偉大なるギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の臣下である。各自が各自を想い、助け合うのがギルドにとって最も良い事であり、プレアデスの存在価値を高めるものになる。

 

そう、皆いろいろ言ってもその事を分かっているのだ。はずだ。

 

(頑張るのよソリュシャン。私達が応援に行くことになったら全力で駆けつけるから)

(ちぇー、今回はまぁ仕方ないっすねー。この借りをどーやって返してもらうかじっくり考えないといけないっすね二ヒヒ)

( )

(・・・・・・ルプー、またロクでもない事考えてる顔してる。・・・・・ソリュシャン、うまくいくといいな))

(お肉っ☆お肉っ☆あのお肉ぅどの箇所のお肉なんだろおぉ、やわらかかったあぁ・・・あ、いけないぃ涎出ちゃいそうぅ)

 

分かっているのだ

 

 準備が完了した頃に伝言(メッセージ)でアルベド様より闘技場に入る御許可を頂く。ここからはプレアデスとして失態は許されない。

一度後ろを見ると皆、顔を引き締めている。宜しい。長女としてまたプレアデス副リーダーとしての顔を整え、ゆっくり皆で一列に並んで闘技場の入り口の門をくぐり、宣言する―――

 

「失礼いたします。戦闘メイドプレアデス(6連星)、参りました」

 

 

 




プレアデスは、みんな仲良しです。





追記
寝ころびながらスマホで自分の前の話チェックしたら読みにくすぎて驚愕しました。
後編を上げた後に少し読みやすくする為の改行や改変を(主に2話)入れる事になると思いますのでご了承願います


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