それではどうぞ!
ティアが転校してきてから3日ほどたった。本来ならばブリュンヒルデ教室には入ることなど無いのだが、ティアは悠にしか心を開いておらず、無理に引き離してまた転校してきた時のように暴走されたらたまらないという事で悠がティアの世話を一任された。
分かったことはティアは自分が本当にドラゴンだと思っていること。さらには悠に懐いている理由として、誰も知らない事だがティアとは昔に出会った事があり命を助けられた。ティアは自分の家に押し入られた強盗に力を使うよう強制されていたのだ。そしてその時彼女の両親も悠達に助けられたのだがティアは自分の両親をドラゴンだと言い張る。そんな性格のせいでなかなかブリュンヒルデ教室には馴染めていなかった。
そしてある日の昼食にて________
「はい、ユウ!あーん。」
「え、ちょ、ティア?何だいきなり。」
何の前触れもなく差し出されたティアの野菜カレーに悠は困惑する。
「何言ってるの!ティアはユウのお嫁さんなの!だからこうするのは当たり前なの!」
「そういうものなのか・・・・・?それにいつ嫁になったんだ。」
「前にも言ったの!ユウとティアは運命の赤い糸で結ばれてるの!」
「はぁ・・・・」
悠は呆れた様子でティアから差し出されたカレーを頬張る。そしてその光景を見て隣にいたイリスが声を上げる。
「ティアちゃんだけ・・・・ずるい。」
イリスの低い声で呟きが悠の耳に届く。
「ず、ずるいって何がだ?」
「あたしはモノノベの友達なのに・・・ティアちゃんより仲良しのはずなのに・・・あーんなんてした事無い。だから、あたしもやる!」
するとイリスはパスタを巻きつけたフォークを悠の前に差し出す。
「あ、あーん・・・」
イリスは頬を染め、震える声で言う。心臓が跳ね、鼓動が速くなるのを自覚しつつ、悠はパスタを食べようとする。
「モノノベ、早く。恥ずかしいよぉ〜・・・」
そして悠がパスタを食べようとした瞬間金属質な音が響く。イリスのフォークをティアがフォークで弾きあげたのだ。
ピキッ
「ノ、ノアくん・・・?」
隣から聞こえてきた何かが軋むような音に隣のフィリルが問いかける。だがその声はノアには届かない。
「ユウはティアの旦那さまだから、そういう事しちゃダメなの。」
「していいもん。モノノベはあたしの友達だもん!」
イリスは視線を鋭くし、まるでフェンシングをするかのようにフォークを構える。
「ちょっ、何する気だ?」
ビキィッ!
先程よりも大きくなった音が鳴るが、誰も気づかない。
「てやっ!」
「させないの!」
どんどん激しくなるフォークの戦い。
ブチィッ!!
ノアの中で決定的なにかが切れた。次の瞬間ノアの左手が伸び、2人のフォークを鷲掴みにしたと思ったら、そのままへし折ってしまった。
「イリス・・・」
「は、はいっ!」
「お、おいノア?」
「お前・・・俺が食事のマナーには特別うるさいって・・・忘れたのか?」
「わ、忘れてないよ!」
「だったら・・・何でフォークで遊んでんだ?そこの、ティアも同じだ・・・・」
イリスは本格的にブチ切れた兄がここまで強いのかと心底恐怖する。ティアもまた同様に恐怖を感じる。
「分かったな・・・?」
「「は、はいいいぃぃぃ!」」
「ま、まあまあノア。その辺に________」
「悠、お前も同罪だこの野郎・・・」
「何故!?」
「兄さん、公共の場ですから静かに。イリスさん、ティアさんもですよ。」
深月も怒りを滲ませた声で注意を促す。
「わ、悪い・・・」
「ご、ごめん深月ちゃん・・・熱くなっちゃった。」
「ティアは悪く無いのに・・・」
「それにノアさん。フォークはどうするのですか?」
「ん?あぁそれなら________こうすりゃいいだろ。」
そう言うとノアの右手にダークマターが生成され、それが食堂の物と同じフォークへと変換された。
「また勝手な生成を・・・まぁいいでしょう、今回だけは特別に許可します。」
こうして昼食は微妙な空気のまま終わって行ったのだった。
〜*〜
あれから1週間ほどたった。なかなか馴染めないティアだったがフィリルが漫画を貸したり、悠が必死に説得した事もあり、ティアはクラスに馴染んでいった。そして悠から離れる事を極端に拒んでいたのだが今はリーザがお世話係となっていた。
そして学園長の計らいもあり、みんなが楽しんでバーベキューをしたその後だった。
ノアは1日でいろいろな事があり、疲れたので眠ろうとしていた。その時ノアの左目が反応した。
「っ!何で左目が________」
ズウウウウウウウン____________!!
左目が反応したのとほぼ同時に地震のようなものが起こった。そして外を慌てて確認する。
「なっ・・・・あれは・・・」
夜空が大きな黒い影によって上塗りされていた。
その影の正体は、青のヘカトンケイル。全身が青い鱗に覆われ、動くたびに幾何科学模様が明滅する。何も付いていない頭部からは大きな角がそびえている。
そして時計塔からサイレンが鳴り響く。
しかしその次の瞬間ヘカトンケイルは右手を振り上げ時計塔を____破壊した。
〜*〜
全員が深月の部屋に行くと、深月は早口で何処かに呼びかけていた。そして悠が慌てた様子で入ってくる。
「深月っ!」
「しーっ!」
名前を叫ぶがイリスの静かにしろというジェスチャーですぐに言葉を止める。
「至急応答してください!司令室!篠宮先生!」
必死な呼びかけもむなしく応答は無い。そこで見切りをつけた深月が通信を切り、話し始める。
「みなさん、見ての通り緊急事態です。司令部は崩壊、後方支援は期待できません。ですから私たちが中心に対処します。いいですね?」
全員が頷いたのを確認し話を再開する。
「アリエラさんは女子寮に向かい現場の指揮をお願いします。その場で竜紋変色者がいないかを確認し、もし発見された場合はシェルターに隔離し私に連絡を。」
「わかった。今すぐ向かうよ。」
架空武装を作り出し、窓から風を纏って飛び出していく。
「フィリルさん、レンさんはヘカトンケイル上空で待機、私の指示で攻撃をお願いします。」
「・・・了解。」
「ん」
フィリル、レンもアリエラと同じように飛び立っていく。
「兄さん、イリスさん、ノアさんは私と一緒に来てください。地上から迎撃をします。」
「了解だ。」
「うん!分かった!」
「あぁ〜、ちょっと待ってくれるか?」
「何ですか!?この非常時に!」
「侵入者だ。俺はそっちを対処させてもらう。」
「侵入者・・・!?分かりました!任せます!」
そうしてイリスと悠は走り出す。すると名前を呼ばれなかったリーザが声を上げる。
「ちょっと深月さん!わたくしのこと、忘れていませんか?」
「リーザさんは、ティアさんの護衛です。ヘカトンケイル迎撃には兄さんの力が必要になりますし、ティアさんを前線には連れてはいけません。ですからティアさんから信頼されているリーザさんが傍に付いていてほしいのです。それに、ノアさんの言っていた侵入者はティアさんが目的かもしれません。」
「・・・分かりましたわ。お引き受けします。」
そして渋るティアを説得したリーザは彼女と一緒に待つことになったのだ。
〜*〜
ノアは敢えて深月の宿舎の中で待っていた。侵入者の目的はティアだと仮定し、すぐ対応できるようにだ。
そして遠くで竜伐隊による攻撃が始まった。ヘカトンケイルの体を消しとばすがすぐに再生されてしまい、効果は無いように思えた。
次の瞬間深月の部屋からなにやら部屋から声が聞こえた。
「来たか!」
ノアが慌てて深月の部屋に向かうとそこには自分の体を抱きしめるティアとグングニルを構えたリーザ。そして転校生の立川穂乃花がいた。
「おいお前・・・何してる。」
「ふふ、怖いわね。そんなにこの2人が大事かしら?」
「まぁな、だから手出しはさせねぇ!」
すると左手にダーククラウンを発動させ、さらには右手にハルパーを作り出した。
そして外へと移動する。穂乃花もノアが邪魔だと判断したのかつられて外へ飛び出す。
「お前は・・・敵か?」
「えぇ、正解よ。」
「狙いはティアか、立川穂乃花。いやキーリ・スルト・ムスプルヘイム!」
「ばれてたのなら改めて自己紹介もする必要も無いわね。」
「それじゃあ、排除させてもらうぜ。リーザ!!ティアを頼んだぞ!!」
「________分かりましたわ!」
そしてキーリとノアの戦闘が始まる。
ダーククラウンを一斉掃射し、さらにキーリの周りに岩石を生成、逃げ場を無くしてこのまま串刺しにするつもりだった。
だがキーリの数メートル前でエネルギー塊は融解し、岩石も溶け落ちる。
「っ!?」
「排除するんじゃなかったの?クラウンさん。」
「くそっ!」
すると今度は檻を生成し、キーリを閉じ込める。そして上空からミスリルの塊を落とす。
しかしまたも檻は自然と溶けて、キーリはそこを何もなかったかのように歩く。そしてミスリルの塊が檻を跡形もなく潰す。
(熱い・・・!キーリは自分の周りで炎を生成してるのか・・・なら!)
リーザが放ったかのようなレーザーを放つ。だがリヴァイアサンの時のように不自然に軌道が逸らされる。
「熱の影響を受けないレーザーならいけると思ったのだろうけど、残念ね。」
するとキーリは怪しげな笑みを浮かべる。その時ノアは右手にかなりの高温を感じる。
「あっつ________!?」
ノアの右手が火傷を負う。だがこれで気づけたことがあった。それは彼女は常に自分の周りに目に見えないダークマターを張り巡らせていて、状況に応じてそれを熱に変換しているということ。
(キーリの周囲のダークマターを消すには何かと触れさせればいい、ならば!)
ノアはハルパーから煙幕を放ち、キーリにダーククラウンを撃ち込む、するとキーリに接近しても融解はしないのを見て自分の考えであっていたのだと感じる。
「あら、もう仕組みに気づいたのね。でも________」
瞬間ノアの視界に赤い軌跡が目に映る。次の瞬間彼の胴体に真一文字に焼き切れる。体の一部が溶けて、激痛がはしる。
「ぐあああああぁぁぁっ!!!」
痛みで悶えるノアに向かってキーリは先程と同じ一撃を放つ。するとノアはそのまま倒れてしまった。
「こんなものなのね。力を出していない具現体なんて。」
「ノアさん________っ!!」
リーザが悲痛な声を上げる。そしてキーリは標的をリーザに変えて攻撃を始める。
〜*〜
ノアはまたもリヴァイアサンに左腕を落とされた時と同じ場所にいた。そしてあの怪物が今度は理解できる言語でノアの頭に語りかけてくる。
《何故、我の力を使わない?お前は我の気まぐれで生まれた具現体。我を欲し、力を求めこちらに堕ちてくれば無限に力を手に入れられる。無論あの女など簡単に殺せるくらいのな。》
「・・・・・・」
《応答が無いのは、肯定だと受け取る。さぁ、堕ちてこい、この人ならざる者たちの世界へ!》
〜*〜
ノアの体に変化が現れる。ただしノアの意識はもうそこには無い。そして外見が変わり始める。背中からはコウモリのような翼が生え、手足からはその大きさに見合わぬほどの鉤爪が伸びており、肩や首まわりからは触手のような物が生えている。その姿はおぞましくみた者は正気ではいられない。そんな姿だった。
「ふふ、ははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
「ノア・・・さん、なのですか、あれは?」
「現れたのね・・・具現体が。さて____どうなのかしらっ!!」
キーリが戦っていたリーザを放置し、ノアに向かって先程の炎の剣を叩き込む。
しかしそれを軽く鉤爪を振るっただけで掻き消され、それどころかキーリの体に切り傷が刻まれる。
「くっ・・・流石にやるわね。」
キーリが傷に手をあてがうと傷がみるみると塞がっていき、元どおりになる。リーザとティアはその光景に呆然としていたがノアの姿をした怪物は気にすることなく攻撃を続ける。
怪物がキーリに接近、と言っても誰もがそれを捉えきれず端からみたら瞬間移動のような速度で迫る。そして鉤爪をキーリに突き刺し、反対の手で地面に叩きつける。
「ごはっ・・・・・」
しかしそれだけでは終わらず、肩からの触手でキーリを吊り上げ拘束したと思ったら両腕でキーリの胴体を容赦なく切りつける。
腕の一振りごとにおびただしい量の血液が飛び出し、下の地面に血だまりを作り出す。彼女の胴体を原型もなく肉塊へと変えようとしたその時、リーザの声が響く。
「もう、やめて下さい!!ノアさんっ!!」
怪物はその言葉に耳を傾けたかと思うと、次の瞬間には体の変形が始まり、元のノア・フレイアに戻った。しかしキーリに切られた傷は未だ残っている。
そしえ満身創痍のキーリは瀕死の状態ながらも必死に去っていった。
リーザとティアがノアに駆け寄り状態を確認する。正面に十字に焼き切られた部分があり、出血が酷い。
「ノアさん!目を覚ましてください!ノアさん!」
「ノア!死んじゃ嫌なの!!」
2人の呼びかけもあってかノアは少しだけ目を覚まして
「すこし・・・休ませてくれ・・・すぐ、起きるから・・・」
そう言うとノアはまた目を閉じたのだった。
〜*〜
海上、キーリが生体変換ができるまでに落ち着くと何やら言い始めた。
「具現体・・・まさかここまでとは思ってなかったわ。さて、どうなるのかしらね?クラウンさん・・・いえ、オーギュストさん。」
そう言うと彼女はまた不敵な笑みを浮かべたのだった。
ありがとうございました!
今回の話、書いていてお腹が凄く痛くなったんですけど、どうでしたか?
ちなみにこれは今私が考えているストーリーではかなり重要になってきますので覚えておいて下さい。
そして後2.3話で2巻の話が終わるので皆さん質問等よろしくお願いします!