「兄さん_____それは・・・どういう事ですか?」
この事を1番聞かせたく無かった人物______物部深月がティアの叫んだ事実を理解してはいるだろうが信じられずに聞き返す。他のフィリル、アリエラもどういう事だと説明を要求する。そんな状況下に置かれて彼はどうしようかと脳内で必死に彼女達へと返す言葉を模索する。
そんな中でリーザが口を開く。
「モノノベ・ユウ、こうなってしまった以上彼女達に話すしかありませんわ。
あなたがこれまでドラゴンに対抗する手段として使ってきたあの兵器はユグドラシルとの取り引きで得たもの、しかしその代償としてあなたはユグドラシルに体を乗っ取られつつある事を。」
「_______?」
悠はリーザの発言に思わず疑問を抱いてしまう。彼女の言っている事は紛れも無い真実だ。しかし悠がユグドラシルとの取り引きで受け負った代償は彼の記憶であり、体を乗っ取られかけている事は関係無い。
そして思い返せばティアからや事情を知るリーザ、イリス、レンからは彼の記憶については一切口外されていない。つまりは今事情を知った3人には記憶の事はバレてはいない事になる。
その事を踏まえリーザが彼にその事を話すよう促した事に納得がいき、彼女に感謝しつつ悠は彼女達に少しの嘘を織り交ぜた真実を語り始める。
「そうだ、今リーザが言ってくれた通り、俺のマルドゥークやバベルはユグドラシルとの取り引きを介して手に入れた力だ。しかしそのデータにはウイルスの様なものが含まれていたらしく、俺の体はユグドラシルに乗っ取られかけている。これが真実だ。」
「そんな、なら3年前のあの日にはもう________!」
悠の話を聞いて、全てに合点がいったのか深月は声をあげる。
「ああ、3年前のあの日、ヘカトンケイルと戦った時のが始まりだった。」
悠は深月の言葉を肯定する。こうすれば彼女は少なくとも責任を感じてしまうが、記憶の事を話してしまうよりは何倍もマシだと考えた結果だった。
するとフィリルが怒りを露わにした表情で問い詰めてくる。
「物部くん、その話なら私の時にも取り引きをしたんだよね?結局使われる事は無かったけど・・・どうして言ってくれなかったの?」
「それは・・・あの時はこの事に気を割いてしまうかもしれないから言わなかったんだ。目の前の事に集中して欲しかったから。それに乗っ取られかけている事が分かったのは最近でこんな事になるとは思わなかったんだ・・・本当にすまない。」
深々と頭を下げフィリルに謝罪する。
今度はアリエラがその光景を見下ろしつつ責める様な口調で話しかけてくる。
「物部クンの気持ちは分かるよ。だけど、ボク達だけが聞かされてなかった事が不満なんだ。それに見ていた感じだとリーザだけじゃなくて、イリスやレンも知ってたんだろう?」
アリエラが悠から視線を逸らし、イリスとレンを横目で見つめる。すると2人はバツが悪そうに目線をそらす。
ここでまたしてもキーリの頭に声が響く。
《ヤバい、そろそろ限界だ!こっちにみんなを向かわせてくれ!その間にはティアが了承さえすればアレは終わるんだろう!?》
「はぁ・・・分かったわよ。」
憂鬱そうにキーリが呟くと深月達に防壁の外で戦っている彼の援護に回ってくれと頼む。すると深月達も何かを感じていたのか特に渋ることもなく了承し、ティアとキーリ、悠以外が防壁の外へと出て行く。
するとティアが何やらただならぬ覚悟を秘めた目でキーリを見つめる。
「その表情は・・・そう、ティアは生き方を決めたのね。」
これまでにないような優しい口調で呟くキーリ。
そしてティアが話し始める。
「お願いキーリ・・・ティアに、ユグドラシルを倒せる力を頂戴。」
悠にとって衝撃的な一言を発するとキーリはそれを待っていたと言わんばかりにティアの角へと手をかざす。
「それじゃあ、最後の処置を始めるわ。」
「おい!処置って何をする気だ!」
2人の間でトントン拍子に進んでいく会話を見て、悠は鋭い口調でキーリに尋ねる。
すると彼女は短く簡潔に答える。
「ティアの角を完璧にするためよ。」
「角を完全に・・・だと?」
先程から衝撃を受けてばかりの悠はおうむ返しで尋ねる。
「ティアはね、対ユグドラシルの切り札として私が育て上げてきた子なの。この角がユグドラシルに対抗するための器官。今は力を発揮できずに飾りになっていたけれど、ティアが望むのならば完全な物にしてもいいと遊園地で提案したのよ。」
日本に来てから1日目のあの日以降、ティアが何やら悩んでいたのを思い出し、悠は察する。
「完全な物になると・・・具体的にどうなるんだ?」
「そうね・・・少なくともこれをすればティアはDという枠組みからは外れる事になるわ。あなた達で言うところの________ドラゴンね。」
「なっ______!そんな事やらせる訳が無いだろ!」
咄嗟に悠はキーリに向かって走り出す。
しかしその走りは数歩で彼の顔面近くに発生した小さな爆発によって止まってしまう。
「___________くっ!」
「ユウ、これはティアが決めた事なの。だから幾らユウともいえど邪魔はさせないわよ?」
「大丈夫なの、ユウ。ティアはどう変わっても、ユウの事が1番大好きな_________ユウのお嫁さんだから。」
キーリを殺す気で無いとティアの元にはいけないと判断したがそれをやろうとはせず、険しい表情を浮かべていた悠にティアは優しく笑いかける。
そしてキーリの手から生成されたダークマターが二本の角へと吸い込まれる。
眩い光が視界を埋め尽くす。しかし、彼はティアの耳をつんざくような悲鳴を聞いていた___________
〜*〜
防壁の外、少年は必死に迫り来るユグドラシルを枝を迎撃していた。しかし疲労もピークに達し、顔からは大粒の汗が伝っている。そして横から迫り来る枝に反応しきれず、処理が遅れる。
しまったと後悔した瞬間、枝は飛んできた炎によって灰になる。
「ようやく・・・来たか。」
そう呟くと彼の周りには6人の少女が飛んでくる。
そしてその内の1人は彼と背中を合わせ話しかける。
「まったく・・・探したんだよ?__________キミをさ。何処行ってたの?」
彼女は呆れてはいるが、確かに彼との再会を喜び暖かな口調で話しかける。
「悪かったな、いろいろ・・・あったんだよ。」
彼もまた同じような口調で返事をする。
そして気力を振り絞って枝を迎撃しようと正面に手を向ける。それに習い彼女も架空武装のアイギスを彼の左腕に合わせるように突き出す。
「よっしゃ!それじゃあアリエラ!後もう少し、草刈り頑張るか!!」
「うん!行くよ、ノアくん!」
愛し合った2人が時を経て再会する。2度と途切れる事の無い絆、愛に引かれて。
いつにも増してたくましく見えた2人の姿を見て、離れる事は無い、そう深月達は直感したのだった。
再び戦闘が再開される。
右には深月とフィリル、そしてイリスが深月に運ばれていた。左にリーザとレンがおり、正面にノアとアリエラがいる。
「三の矢____ルナイーター!」
「フレア・バースト・オクテット!」
深月の矢が枝を塵に変え、フィリルが放つ8発の炎弾はそれらを焼き払う。
「薙げ、閃刃!」
「・・・ミョルニル。」
リーザがお得意のレーザーをなぎ払い枝が消滅する。レンもミョルニルから様々な物質を作り出し枝を迎撃していた。
「アイギス!」
アリエラがミスリルによる壁を三角形の頂点がノア達に向くような形で生成する。そして枝がくる場所が1点に絞られたノアはそこに特大の攻撃を叩き込む。
「グレイブ!!」
左腕の鉤爪から十字の衝撃波を飛ばし枝を切り裂いていく。他にも魔術による爆発や架空武装を創り出し、ハルパーからフィリルと同じような炎弾を放つ。
とにかく7人は無我夢中でユグドラシルとの戦闘を続けていった________
〜*〜
10分程が経つと突然枝は再生を止め、一定の距離からノア達に近づかなくなった。
「何だ・・・急に?気味が悪い。」
突然の出来事に一同は言葉を失う。
するとノアが作ったミスリルの防壁からキーリと悠を連れたティアが飛んできたのだった。
ありがとうございました!
前書きが無いのは特に書く事が無かったからですw
さて、今回はノアが本格的に復帰しました!
なるべくそこの部分だけは力を入れたのですがどうだったでしょうか?
意見等よろしくお願いします!