【完結】1人の男として、兄として。そして___   作:千倉

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諦めない意志

日本は富士山の樹海、そこに悠々と構えているクトゥルフ。一同は目の前の悪夢そのものにただただ怯えている事しか出来なかった。しかし、1人だけ_______悠だけは目の前の悪夢、理不尽に必死に抵抗しようとしていた。

例え、彼のDとしての能力が底辺だとしても。何も底辺する術が無かったとしても。1人では何も出来ないとしても。

それでも抵抗しようとした。

そんな彼の姿に心を動かされ、他の者達も立ち上がる。世界を守るなどという大それた目的では無く、今ある何気無い日常を守る為に、家族を守る為に。そして“9人”で帰る為に。

 

「まだ・・・俺は戦う。幾ら自分が非力でも、このまま死ぬのは嫌だからな、それに_____9人で帰るんだ。」

「えぇ_______そうですね、兄さんの言う通りです。何が起こるのか分からないのなら・・・いい事も起こる筈ですから。」

「うん!あたしも戦うよ!お兄ちゃんもきっと生きてる!」

「わたくしも最初から諦めるつもりなど_______毛頭ありませんわ!」

「・・・・そう、やってみないと分からない。」

「ティアも最後まで戦うの!」

「ん!」

「やれやれだわ・・・でも、やらないと結局死ぬのよね・・・それなら、死に方も私が決めさせてもらうわ。」

 

各々決意を口にし、武器を構える。

悠はイリスとティア、深月からダークマターを借り、マルドゥークを形成する。

3人が攻撃する為に悠は最低限のダークマターを借りるように留めた。それにより、やはり所々に欠陥が生じた大砲だった。しかし単発だけでも威力は折り紙付きだ。

彼は腹から声を絞り出し蒼色の炎弾を発射する。

クトゥルフもそれに気付き、左腕をノロノロと動かし炎弾を受け止める。

瞬間、全身までとはいかなかったが左腕を火柱が包み込む。その火柱が消えると多量の水蒸気を纏った左腕が現れる。

 

「効果は・・・あるのか?」

 

その水蒸気も消え去り、所々が欠けた左腕が現れる。確かに効果はある様だったが余りにも小さすぎた。

その小さな傷もたちまち塞がってしまう。

 

「効果は薄いか・・・・」

「なら、私たちが行きます。イリスさんはカタストロフ、キーリさんも攻撃をお願いします。ティアさんは兄さんにダークマターを貸して再び対竜兵器による攻撃を!」

「うん!」

「分かったの!」

「そんなアバウトな指示なら・・・好きにやらせてもらうわよ?」

 

イリスはダークマターを介さない、赤色のケリュケイオンを作り出す。

キーリもレーヴァテインを構え、クトゥルフに飛んでいく。

深月がブリューナグを構え、これまで対ドラゴンの決定打となってきた反物質の矢をつがえる。

そしてティアももう一度悠の手を握り、ダークマターを貸す。再び対竜兵器を生成する。今度はバベルを生成する。

 

「終の矢_____ラストクオーク!!」

「来れ来れ、時の欠片・・・終末よ、成れっ!」

「とりあえず・・・切ればいいのかしらねっ!!」

「バベル_______ファイアッ!!」

 

クトゥルフに反物質弾、時間を剥奪する紅色の閃光、高熱を帯びた炎の剣、黒の帯の形をした重力が飛んでいく。

バベルがクトゥルフの左腕を飲み込む。カタストロフとキーリのレーヴァテインも右腕を風化させ、切りつける。

しかし、バベルの重力も腕を振るわれただけで霧散し、レーヴァテインも接触した瞬間に蒸発、反物質の爆発も反対の腕で押さえ込んだだけで消えてしまう。カタストロフを浴びた部分もまるで変化が無い。つまり、この怪物には少なくとも数千年分の期間が空いたところで死ぬ事は無い、という事だった。

 

リーザやフィリル、レンも触手を必死に消し飛ばそうとしているが、耐久度はユグドラシルの枝の数倍はあり、数も多く、再生速度も尋常では無かった。

そしてクトゥルフは触手を槍のように伸ばし、リーザ達を串刺しにしようとする。危なげなく回避していくがやはり手数の多さからか避けきれず、体に浅いが確実に切り傷がドンドンと切り刻まれていく。

 

「くっ・・・このままだとジリ貧_______ですわね・・・」

「んぅ・・・」

 

特に気にしている様子も無かったがやはり腕にドンドンと攻撃が飛んでくるのを感じ、鬱陶しい程には感じたのか悠、イリス、ティアがいる場所へと鉤爪を振り下ろす。

 

「_______危ないっ!!」

 

咄嗟にイリスとティアを突き飛ばす悠。自身も鉤爪から逃れようとするが、逃れきれず右足に裂傷、肩口を貫かれてしまう。

 

「______ユウッ!」

「モ、モノノベ!大丈夫!?」

「っ______くそっ、ここまでか・・・・」

 

悠の頭部に向けて、槍の触手が放たれる。

余りにも距離が近すぎて、イリスのミスリルを使った爆弾も使えず、ティアが風の防壁を生成するがそれで止まるほどの勢いではなく、止まらず悠の頭部に飛んでいく。

自分は死ぬ、彼はそう直感した_______

 

 

 

 

しかし、触手が悠の頭部を貫く事は無かった。

見ると眼前には悠達がレールガンに撃たれた時のような魔方陣があった。

まだノアが掛けた魔術が残っており悠を守ったのだと感じる。

 

「これは・・・?そうか・・・感謝する、ノア。」

 

静かに呟く悠。

今この場にはいない彼の名を呼ぶ。

微かな希望も見えてきた。しかし、やはり絶望的な状況の中、彼らは諦めず抗い続けた_________

 

〜*〜

 

樹海の中、アリエラがノアに必死に呼びかけていた。

大粒の涙を流しながら、悲壮な表情でも諦めずにやり続ける。

 

「ノアくん・・・戻って_______来てよっ!!頼むからさ、お願いだよ・・・1人にしないで・・・行かないでよ・・・・・っ!!」

 

〜*〜

 

水の中の様な場所でノアの意識はうっすらと覚醒する。しかし、彼はドンドンと落ち続けていた。既に水面も遠ざかり、海底へと近づいていく。

ノアがその海底に触れた瞬間に彼は死ぬ。そんな状況だった。

 

(何だ・・・誰が・・・俺を呼んでる?こんなほぼ死んでるような人間を誰が_________)

 

 

 

諦めかけていた彼の意識。しかし、声が聞こえた。どこか聞き覚えのある声。

水面に何かが薄っすらと映っているのが見えている。

それを見ようと彼は必死に眼を凝らす。

そして意識が一瞬だけ覚醒する。

その瞬間に水面から必死に呼びかけている者の姿をはっきりと捉える。

呼びかけていた彼女は自分が愛した者だった。

 

(そうだった・・・・・俺は!アリエラを・・・あいつを置いて、会わずには死ぬ訳には・・・いかねえっ!!守るんだ!あいつらと過ごした日常を、アリエラとの思い出を_________!!!)

 

そう覚悟を改め、彼は戻ろうと水面に手を伸ばす。

守るために、彼女と会うために_______

 

〜*〜

 

ノアの体を抱きかかえていたアリエラ。

もうダメかもしれない、そんな考えが脳裏をよぎったその瞬間、彼の口から小さな吐息が漏れた事に気がつく。

 

「!ノアくん!!戻って来て!!」

 

 

 

 

 

「待たせたな・・・・アリエラ。」

 

 

 

 

ノアが戻ってきた。ただそれだけの事実だったが今の彼女にとってはどんな事よりも嬉しな事だった。

涙はやはり止まらないが今度は嬉しそうな表情を浮かべる。

彼は右手を伸ばし彼女の涙を拭き取る。

 

「泣くなよ・・・お前は、笑顔が良いんだからそんなに泣くなよ・・・」

「こんな状況でもそういう事が言えるなんてね・・・ある意味凄いよ。」

「何言ってんだ、恋人として彼女を褒めるのは当たり前だろ・・・っと。」

 

何気ない普段の会話のような口調で話すとノアはアリエラの手から起き上がる。

そして未だ地面に座っているアリエラに手を差し伸べる。

 

「行こうぜ、大切な物を・・・守るために。」

「もちろん、ボクは君に着いて行くよ。ずっとね。」

「ありがとうな、アリエラ。」

 

彼女はノアの手を取り立ち上がる。

そして架空武装を2人揃って生成し、悠達の元へ、大切な仲間を守るために飛んでいった_______




ありがとうございました!

やっぱり絶望はサクサク書けるんですけどこうやって希望を書くのは手こずりますね(←おいコラ)
はいwノア復活でございます。
え?またすぐ離脱するんじゃないかって?
大丈夫です!
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