【完結】1人の男として、兄として。そして___   作:千倉

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【最終回】I"ll be with you

両者が激しくぶつかり合う。

その度に周りの地面は抉られ忙しなくその形を変えていく。そんな地球にも多大な影響を及ぼす戦いは1人の少年と1匹の怪物_______邪神だけの戦いだった。

ノアは九本の蒼刀を巧みに操り攻撃を絶やす事無くクトゥルフを斬りつける。しかし、それに対抗せんと言わんばかりに彼もよく使う防壁の魔術を全身に纏わせ、簡単には自分の一部を切り落とされない様にしていた。

蒼刀がクトゥルフの体を、触手を、手足を斬りつける度、金属質な音が辺りに鳴り響く。

基本的には一撃ではどれも切断出来ない事を彼は理解しており、それを踏まえ9本の内2本を全力で広範囲に攻撃が届くように大きく操る。そして4本の蒼刀でその2本がダメージを与えた部分を処理していき、残った3本を反撃に備え自身の周りで展開していた。

至って普通な理に適った作戦だった。しかし相手は常識の通じない邪神。ドンドンと手数を増やしてきて彼を確実に追い詰める。3本で処理仕切るには限度があったのか擦る程度だったが今の彼は力を防御は捨てて完璧に全て攻撃に回している。

従いその度に彼の体は小さく抉れていく。

幸い頭や心臓付近といった当たったらそれだけで命を落としかける様な部分には当たっていないが1本、また1本と攻撃が命中する度に彼は苦悶の表情を浮かべる。

 

「クソ・・・舐めんじゃねぇ!!」

 

すると蒼刀にDの能力を上乗せして斬りつける。

雷や炎、爆弾、反物質と言った力を纏った蒼刀は先程よりも効率的にダメージを与えている。

しかし彼の胸の花弁も明滅していた1枚が完全に消える。

もう残り2枚となってしまった花弁。しかしそうして自分の命が尽きかけている事も意に介さず攻撃を続ける。

 

〜*〜

 

激闘を続けていた彼だったが突然それは起こった。

自分の防御に回していた蒼刀が淡い蒼の光となって霧散する。

 

(!?・・・何故だ?まだ俺の命は尽きてな_______そうか、もう維持出来ない位になってきたか・・・)

 

見ると、花弁は残り1枚となっていた。そして、当然防御が手薄となった彼に触手と魔術が襲いかかる。

何とか左腕のブレードや残った蒼刀で防御するが攻撃の手を防御に回した事によりクトゥルフの防御に使っていた触手を攻撃に利用する。

さらにはその途中で蒼刀がまたも2本消えていってしまう。

ほぼ半分減った蒼刀と左腕、魔術では防ぎ切れない。左脚が切り落とされ、右腕も落とされ更に蒼刀が3本減らされ残り2本となってしまう。また、腹部には三箇所が貫通される。もう数少ない最後の花弁も明滅し始める。

 

「ぐっ・・・がはっ・・・ごふっ・・・」

 

口からおびただしい量の血を吐き出し満身創痍となる。

これまで行い続けていた空気生成もだんだんとガタが来たのか少しずつ高度が下がっていく。

しかし、残ったノアの左腕と右腕を触手で拘束すると自分の顔の目の前にまで持ってくる。

出血等の肉体的なダメージ、魔術の精神的ダメージからドンドンと右目は虚ろになっていく。その所為なのか目の前でクトゥルフがあの魔術塊を生成していてもまるで反応を示さない。

もはや思考も停止して死を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、彼の脳裏にふとある人物の顔がよぎる。

“彼女”は自分にとって最も信頼している人物。しかし、彼女になら裏切られても構わない、そう初めて感じた人物。苦楽を共にし、時間を、感情を、色々な物を分かち合った。彼はそんな彼女を愛し、守り抜くと誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうすぐで自分は死ぬ。しかし、彼女やその仲間達を自分の後を追わせる事はさせたく無いし、何より守ると誓ったのだからそんな事は彼自身が許さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の目に強い光が宿る。死人同然の彼からは想像も出来ない程の強い意志を持った光。

 

瞬間拘束されていた左腕から1束ねにした蒼刀をクトゥルフのある1点へと放つ。それは貫通して向こうの地面へと突き刺さる。蒼刀に刺された部分からは今まで決して出る事の無かった血の様な体液が滲み出てくる。それと同時に彼の最後の1枚だった花弁が_______消えた。

 

 

クトゥルフの創っていた魔術塊は霧散して得体の知れない粒子になる。

 

 

 

「ここ・・・・なんだろ・・・・お前の・・・・心臓に当たる・・・部位は。それを・・・消し飛ばしたんだ・・・俺の・・・・・勝ちだ。」

 

 

 

途切れ途切れながらも言葉を放つ。

言い終わった途端、大量の血が再び口から溢れ出る。

傷口からの出血もあり、殆どの血を流し尽くしていた。

 

 

こんな決して勝ちとは言えない場面でも彼は苦し紛れのポーカーフェイスなのか、純粋な喜びなのかは分からないが確実に、薄っすらと笑みを浮かべた。

 

 

すると彼を拘束していた触手の力が弱まり地面へと重力に従い体は落下していく。何とか空気生成をして落下死だけは免れた。しかし衝撃は相殺出来ず弱りきった体は更に死へと近づく。

 

 

だがそんな状況下、彼はクトゥルフが突然咆哮し、その後は体の端から灰になっていき、ついには跡形も無く消えていったのを目撃した。

死んだのかは定かでは無い。しかし彼はもう2度と自分や仲間達がアレと相見える事は無いと実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の血で作られた水溜りの中。意識がドンドンと消えていき、目の前が暗くなっていく。

しかし残った左腕を倒れている状態でも清々しい青空へと突き出し、誰にも届く筈の無い言葉を放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してる・・・・ずっと・・・・お前を・・・・愛してる・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人の世界を救った英雄である少年______________男の物語は幕を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜*〜

 

悠達は方舟に運ばれてミッドガルの海岸に居た。

しばらくすると先程までの曇天が嘘だったかの様に空が晴れ渡る。それに加え空から8個の光球が飛んで来る。

それらは彼女達の体に当たると全身を包み込み、溶ける様に消えていった。

その後何か欠けていた物が満ちたような感覚を感じる。

 

「竜紋が・・・戻ってきた?」

 

自分の元々竜紋があった位置に再び竜紋があるのを見つけると声を漏らす。

 

「お前らに竜紋は戻ってるか?」

「是非確認したい所なんですが・・・兄さん、いつまでこちらを見てるつもりですか?」

「ん、あぁ・・・悪い。」

 

彼は遠くに歩いて行き覗くつもりは毛頭無いが何かと言われそうだと考え煙幕を張る。

数分後確認が終わったのか深月から戻ってきてもいいと声がかかる。

 

「それで・・・どうだったんだ?」

「兄さんと同じく私も含め、みなさん元の位置に竜紋がありました。特に異常もありません。」

「そうか。_________これって、ノアが勝ったって事なのか?それに天気も急に晴れたし・・・・・いや、勝ったって信じないとな。」

「そうですわ、わたくし達は信じる事も大切なのですわよ?」

「ん!」

「・・・・きっとそう、そうに決まってる。」

 

敢えて触れなかったノアの事を話に出すが彼女達は明るく返事を返してくる。

するとずっと黙っていたアリエラが突然話し出す。

 

「みんな、少しいいかい?」

「?どうしたアリエラ?別に構わないが。」

「ありがと、それでボクが言いたい事は_______みんなはこれからどうするんだい?ボクはずっと待つよ、彼の帰りを。彼が帰ってきた時に誰も居なかったら悲しむだろうしね。彼、案外寂しがり屋だし。」

「何言ってんだ?そんなの当たり前だろ。な、みんな!」

 

彼が全員に聞くと彼女達は何の躊躇いも無く頷く。

その姿を見てアリエラは必死に涙を堪え礼を言う。

 

「ありがとう、みんな・・・・ボクのワガママに付き合ってくれて。」

「アリエラ!泣かないでなの!それにワガママなんかじゃないの!アリエラの願いはみんなも同じなの!」

「ティア・・・・最近、良く慰められるね。年上なのに・・・情けないな・・・」

 

ティアの言葉を受け、笑顔を浮かべるアリエラ。

そしてそれを皮切りに彼女達は決意を新たに、再びブリュンヒルデ教室へと戻っていった_______

 

〜*〜

 

その日の夜。悠はイリスを初めて出会ったあの浜辺に呼び出した。

理由は彼女が戻って来てからずっと上の空といった雰囲気だったからだ。

彼女がやって来たのを確認すると横に座るよう促す。

 

「イリス、大丈夫か?」

「大丈夫って・・・何が?」

「言わなくても分かるだろ、ノアの事だ。

それに、目の周りが真っ赤だ。大方部屋で大泣きしてたん だろ?」

「うっ・・・モノノベって何でもお見通しなの?」

「お前が分かりやすいだけだ。」

「何それ、酷くない!?」

「冗談だ冗談・・・て言うほど間違った事でも無かったな。」

「酷いよ!あたしだって必死に我慢してたのに!」

「・・・不安か?」

「!_______正直、アリエラちゃんが言ってくれたお兄ちゃんを待つって言葉、凄く嬉しかった。みんなあそこまでお兄ちゃんの事を信じてくれてたんだって。でも、やっぱり・・・不安なんだ。お兄ちゃんが戻って来るかが。

兄妹だから何と無く分かっちゃうんだ。お兄ちゃんが今どうなってるか。でも今は全然分かんない。まるで再開するまでの間みたいに・・・」

「こんな事しか言えないが_________きっと大丈夫だ。ノアは死んでも死なない様な男だからな。お前もそれは1番分かるだろ?」

「うん・・・そう、そうだよね!」

 

悠の言葉で何処かいつもとは違った彼女の態度もいつも通りの少しドジな彼女特有の物となる。

それを見ると彼は優しく微笑む。

 

「それでこそイリスだ。やっぱりお前はその姿が1番良い。」

「え!?こ、これって・・・ナンパ?」

「どうしてそうなる!?俺はただ褒めただけだぞ!?それなのにどうしたらナンパと受け取る!?」

「わわっ!ゴメンゴメンってば!だからそんな怒らないでよ!」

「はぁ・・・まぁ良いか。ほら、掴まれ。」

「ん・・・ありがと、モノノベ。本当に・・・ありがとうね。スッキリしたよ。」

「どういたしまして、それじゃあ・・・行こうか。」

 

彼は彼女の手を取り歩いて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜*〜

 

あの激闘から2年後。

悠達はミッドガルの崖に立ち、遠くに浮かんでいる対竜兵装バベルのコピーを積んだニブルの戦艦と対峙していた。

先頭にはアリエラが立っている。

バベルのエネルギーが充填され始める。それを見ると彼女は周りの者へと声をかける。

 

「皆のダークマターを貸して!最大規模で防壁を生成する!ティア達はその間に船へ!」

「ん!」

 

その言葉にレンが真っ先に頷くとアリエラの腰にしがみつく。それから、ティアは空へと舞い上がり船へと飛んでいく。他の者も同様にアリエラの体に手を添える。

 

 

「防壁、展開_______セラス・アテナ!!」

 

 

彼女が叫ぶと目の前に視界を遮る大きな壁が放射状に広がる。それは何処か雪の結晶を連想させる形をしていた。

そしてそれとほぼ同時にバベルから重力の帯が放たれる。内側に闇を湛えた不気味な輝き、悠はそれを見て本物と何ら遜色ないと感じる。

 

バベルの重力とセラス・アテナが激突する。

数秒と経たずに亀裂が入る。

 

「くっ・・・」

 

苦しげな声を漏らしつつ懸命に盾を維持する。

すると悠が申し訳無さそうな顔で謝る。

 

「すまないアリエラ_________俺はきっと殆ど力になれてない。」

「ううん・・・物部クンは大きな力をくれてるよ。前・・・ボクがどうして架空武装をどうしてこのアイギスにしたのか・・・クイズを出したよね?」

 

小さく首を振ると悠に彼女は語りかける。

 

「ああ_______あの時の俺の答えは全然的外れだったが・・・」

「あの時、キミは・・・レンを、皆を守る為って・・・・言ったよね。・・・それは確かに違ったけど・・・凄く眩しい答えだった。・・・・そうやってなりたいって・・・ボクに思わせてくれた。だから_________」

 

彼女はそこで一旦言葉を区切る。

その間にドンドンとアリエラの架空武装が消えていく。全てのダークマターを盾に回している証拠だった。

そして、深く息を吸い叫ぶ。

 

「ボクは、絶対に皆を守り抜くっ!盾の後ろに守らなきゃいけない人がいる限り、どんな物でも跳ね除けるっ!!彼と同じように命を賭してでも!!」

 

亀裂にダークマターが生まれ復元していく。

傷つき、歪みながらも崩壊の一歩手前で踏みとどまり続ける。

その時、彼女の頭の中に声が響く。

 

《良く言ったな、アリエラ。それでこそだ。まぁ最初の内はそんな物じゃないだろうと思ってたが・・・まぁ良い。手助けしてやる、と言っても2年前に仕込んでた物だが。》

 

 

(!?こ、この声って・・・・それにこのダークマターは彼の・・・・深くは考えないでおこう。感謝するよ、

“ノアくん”。)

 

声が聞こえなくなったのと同時にダークマターをほぼ絞り尽くした筈の彼女の体からあり得ない量のダークマターが生成される。しかもそのダークマターはアリエラの物では無かった。それらが一気に盾に浸透し、元どおりに復元する。

 

 

バベルとの鍔迫り合いが終わると彼女の体は脱力し、倒れる。

しかしその僅かな間でも目にした幻覚。

それは2年前に別れた彼の眩しい笑顔だった_______




ご愛読、本当にありがとうございました!
色々裏事情もありましたが何とか続けられました!
このシリーズ、最初の内は原作の文がめちゃくちゃ多かったので2期では改善していけるよう精進します。
そしてこの終わり方も決して万人ウケする訳では無いと思っていますが自分なりに考え、思いついた最高の終わり方がこれだったんです。
最後に、此れ迄続けられたのもお気に入りや感想を書いて下さった方々のおかげです!
また、やはり読者ありきのssですので全話見た、1話だけ見たという方も本当にありがとうございました!
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