【完結】1人の男として、兄として。そして___   作:千倉

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若干投稿ペース上げようかと考えております。
後色々とアイディアが思い浮かんだんでタグを追加させてもらいます。


最善の判断

スレイプニル対物部悠の戦闘が始まった。普通に考えれば、プロの軍隊8人と16歳の少年1人。勝ち目は無い。だが今の悠はイリスやノアがよく知る物部悠、では無い。この少年は軍隊にいた。そして配属された部隊は_________スレイプニル。その隊長をしていた。何故こんな少年が一部隊の隊長、それも人殺し、対人戦闘のプロが集まった部隊を率いたのか。それはロキ少佐、彼を部隊に引き入れた男が育て上げた意識の怪物、ファフニールによるものである。この怪物、普段は悠の意識に潜んでいる。だが、一度普段の温和な彼からその怪物が出てきたら、彼は無機質な殺人マシーンへと変貌する。最も効率的なやり方で対象を排除する。また、五感も急激に過敏になり周りからの気配や視線、殺気なども容易に察知でき、隙は無い。

こんな事に対しての恐怖は無い。そんな物はこのファフニールが出た瞬間に捨てている。痛みも、無い。ファフニールが意識して切り離す事が出来るからだ。つまり、今の彼は最強の暗殺者である。いくらスレイプニルが相手でも負けるはずが無い。そう自負しているし、慢心でもなんでも無い、それが彼の考えだった。そしてその考えは正鵠を射ていた。

感知した気配に向かってネルガルを放つ。此処は熱帯植物が生い茂っており、ノアやイリスへの被弾の心配は無い、が射撃する際も見ずに敵に当てる事などは出来ない。__________筈だった。悠の放ったネルガルが茂みを貫き、潜んでいた何者かに直撃する。ネルガルは射出式のスタンガンの様な物だが、スタンガンの様に気絶させるだけでは無い。当たった相手は少なくとも10時間以上は気絶し、目覚めた後も筋肉が痺れ、まともに歩く事もままならない。

グアッ!と短い嗚咽が聞こえた後にドサッと何かかが倒れる音がする。

次に察知した隊員に向かって走りながらマガジンの中にダークマターを生成しネルガルの弾丸へと変換する。

 

(そこかっ!)

 

藪にネルガルを連続して撃ち込むが反応は無い。と、突然右方向から銃弾が放たれ、射撃が地面を削る。威嚇射撃として撃ち返し、彼はジャングルに飛び込む。そしてネルガルを回避した敵へと接近する。森林用の迷彩に防弾ベスト、ヘルメット、マスクといった、姿をした男が至近距離でサブマシンガンでの射撃を始めようとした。常人ならばこのまま蜂の巣だ。が、

 

(遅い)

 

自分に向かって向けられている銃口を蹴り上げ、銃口を外させる。サブマシンガン特有の高レートで放たれた多数の弾丸が周りの植物を意味もなく撃ち抜く。そしてがら空きになった懐へネルガルをダイレクトで叩き込む。何も発する事もなく痙攣させし、気絶した男を放置し、固まった気配の所へ視線を向ける。するとノアとイリスの所へ3人の隊員が走って行った。

 

「舐めた事してくれるじゃあないか。」

 

即座に男たちの元へ走り出す。

コンッ。と進路上に硬質的な音が響き黒く、丸い物体が転がる。グレネードだ。

 

「こんなもの・・・・効くわけが無いだろっ!」

 

対爆装甲ウルク73E。足元にダークマターを生成し、戦車などに使われる装甲を作り出す。

弾切れを起こさない銃を作り、防壁を作り駆使して、敵へと肉薄する。それが彼のスタイル。ジークフリートは人間相手には高火力すぎて使う必要が無かった。

グレネードが下で爆発し、装甲ごと彼を吹き飛ばし、世界が反転する。しかし敵をしっかりと捉え続け、ネルガルを連射する。空中からの射撃だったため狙いは定まらなかったがなんとか1人に命中させ、無力化する。

だが、残った殺気は五つ。ノアとイリスの所へ向かった敵が2人と、広場に2つ、さらに少し遠い気配があり、狙撃兵だと予測する。

と、次の瞬間2人へと向かっていた男の気配が二つ同時に消えた。

 

「悠!!狙撃は任せろ!!」

 

見るとノアが隊員2人を無力化し、悠に向かって叫んでいた。そして狙撃兵の悠へと伸びている射線を遮る様にミスリルの防壁が展開される。

 

「__________感謝する!!」

 

森の中からの射撃に対してピンポイントで対物装甲のダマスカス09Pを生成する。放たれた銃弾は予測通り、装甲に直撃する。それと同時に弾薬補給を行う。そして着地と同時に広場の2人のうち右の男を狙う。だがもう1人が飛び出してきたためにその男に命中する。

 

「ぐあぁっ!!?」

 

苦痛をあげて倒れる男。残り2人となった。隊員の1人から庇われた事を踏まえこの男がリーダーだと予測しネルガルを突きつける。

 

「そこにいるスナイパー!!動くな!」

 

隊長に銃を突きつけつつ、遠くにいるスナイパーに向かって注意を放つ。

 

「この・・・・化物めっ・・・・!」

「おいおい、酷いじゃないか。俺は一応前隊長だったんだがなぁ・・・・ん?お前は・・・・誰だ?」

「お前こそ一体なんなんだ!?何が目的だ!」

 

よく見てみるとスレイプニルとは装備も違う。ネルガルが支給されるはずだがこの隊長はそれを持っていない。そして彼は改めて考える。いくら自分の対人スキルが高かろうと、明らかに手応えがなさすぎたと。どうやらロキ少佐とは別の部隊らしい。そう悟る。彼との約束を守ったのだろうか、だが8人というのは彼の作為を感じる。

悠は息を吐き、怒りに震えている隊長と対峙する。

 

「いいのか?戦闘を続けたら、お前らは全滅。撤退もできなくなる。」

「・・・・・」

「それに、この件に関してはお前らが死んでも生きても証拠は残る。ミッドガルは邪魔はしないとはしたが、別に上陸は許可されていない。これが表沙汰に出てもいいのか?」

「くそっ・・・・!・・・・・・・・撤退だ。」

 

そう告げると男2人で6人を担いで行くというなんとも奇妙な光景を見せつつ、森の中へ消えていった。そして波の音に混じってボートで逃げる音が聞こえたのを確認し、警戒を解く。そして目覚めたファフニールを意識の底に沈め、普段の自分を出す。

 

「イリスー、ノアー、出てきても良いぞ。」

「終わったの・・・・・?」

「やったな!悠。」

「おう、言っただろ?おれ1人で大丈夫だって。」

「あぁ、凄いな。あの対人スキル。簡単に身につくものじゃあないと思うんだがどうしたんだ?」

「それは・・・・「そんな事より、良かったよぉ〜!モノノベが生きてる〜!お兄ちゃんも途中から戦っちゃうし!う、うううぅぅぅ・・・・」

「あ・・・・。悪かった・・・・つい手が出た・・・・悪いな、心配かけて。だから泣くな、頼むから。イリス。」

「そうだぞノア!結果的にプラスだったから良いが2人を倒すなんて危険過ぎるぞ!」

「いやお前、俺の3倍は敵倒したのにそんな事言うか・・・・」

「俺が相手してたんだからしょうがないだろ・・・・というか、どうやって倒したんだ?」

「良いだろ別に・・・・・いずれ分かる。」

「何だよそれは・・・・まぁいいか・・・・」

「モノノベ、お兄ちゃん。早くシェルターに戻ろ?」

「「いや、無駄だ(ろ)。」」

「えぇ!?そんなに否定しなくても・・・・」

「だってあんな攻撃されたらシェルターにいたら攻撃が当たらないにしても地下の所為で生き埋めか、どうせリヴァイアサンなら探し当てるだろうから、ちょっとした延命にしかならねぇ。」

「だな。という事で行くか。」

「そうだな。ほれイリス。行くぞ。」

「うん・・・・・ん?行くって何処に?」

「決まってんだろそりゃあ・・・・

「「リヴァイアサンを倒しに行くんだ。」」

「え、えええぇぇぇぇ!?どうして!?」

「それが最善だと思うからだ。」

「おう。やっぱりな、こういう絶望的な状況でこそ、諦めず、最善を尽くす。それが普通だと思うが?それに、」

「それに?」

「リヴァイアサンには多分お前の攻撃が1番有効だからな。」

「え?そうなの?お兄ちゃん。」

「あぁ、お前の攻撃をリヴァイアサンの体ギリギリに生成すればダメージを与えられるはずだからな。」

 

この様な会話をしながら3人は広場から続く細い階段へ向かう。波の音が近くなり、視界が開ける。そして空と海が見渡せる高い崖の上に3人が立つ。水平線の近くにはミドガルズオルムが並んでおり、その向こうにリヴァイアサンが並んでいると実感し、3人に緊張感が走る。

 

「ここでリヴァイアサンを迎え撃つ。良いか?」

「あぁ問題ない。_____っ!?左目が・・・・誰か来るぞ!これは・・・・・深月!?」

「嘘だろ・・・・?何で来た?」

 

唐突に空から声が響いてくる。

 

「迎え撃つとはどういうことですか?兄さん。それにリヴァイアサンを倒す力は無いと______言っていませんでしたか?」

 

そこには物部悠の妹の深月が立っていた_____ではなく、宙に浮いていた。映像では驚かなかったが実際に人が浮いている光景は異様なものだと、改めて衝撃を受ける。そしてノアの左目で感じ取ったという事は、敵意を持って近づいてきたという事。実際に深月は虹色に輝く架空武装の弓を装備している。

 

「深月・・・何でこんな所にいる?」

「それはこちらが聞きたいのですが。イリスさん、ノアさん。貴方達は自分の立場が分かっているのですか?」

「「ごめんなさい・・・・・」」

「お前ら・・・・屈服するなよ・・・・それに、謝らなくて良い。この戦いでお前らの命が決まるんだ。生き残るためなんだ。その為に最善を尽くすのは悪い事では無い。」

「どうする・・・・つもりなんですか?」

「リヴァイアサンを迎え撃つ、と言ったが?」

「本気・・・・ですか?」

「もちろん、後俺の質問にも答えろ。どうしてここにいる?リーザ達と戦ってただろう。」

 

悠の問いかけに対して険しい表情を作り出し、拳を握り締める。

 

「第三次防衛ラインが突破されました。もう・・・後がありません。」

「嘘だろ・・・・?お前の反物質はどうだったんだ?」

「はい、残念ながら。レーザーでリヴァイアサンの斥力場を誘導して生じた隙になんとか1発だけ当てる事はできました。ですが・・・・爆破を斥力場で抑えられ、結局大きなダメージにはなりませんでした。」

「そんな・・・・・」

 

あっけなく打ち砕かれた希望に対して嗚咽を漏らす。クラーケンを討伐した反物質ならばと思ったがそれすらもリヴァイアサンには通用しない様だった。そして深月はイリスとノアを殺しにきた。自分の手はもう汚れている。だから自分が汚れ役をすればいい、そんな考えを持って___________




ありがとうございました!
深月戦までいけませんでした(泣)どうしてこうなった・・・・
というわけで後2.3話程で1巻は終わりです。そしてその次にはギャグ回!ノアと学園長(シャル)といろいろやってもらいます。
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