この素晴らしい世界に道連れを!   作:ユアシアン

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1話 冒険を始めるには 2

 異世界に来て二日目。

 天気は快晴。 私の心はドキドキワクワク! そんな絶好の冒険日和なお昼過ぎ。 私はお天道様のお膝元で、声高々に叫びます。

 

「いらっしゃいいらっしゃい! 今日は獲れたてのバナナがお買い得! あ、そこの奥さんどうですか? 今なら1房300エリスのバナナが、2房買うことで500エリスになるのでなって大変お買い得ですよ!」

「ん~、そうねぇ……でもたくさんあっても飽きちゃうしねぇ……」

 

 なるほどなるほど。 確かにそれはわかります。 バナナって腐りやすいもんね。

 ですが!

 

「それなら大丈夫です! 1房はそのまま食べるとして、2房目はリンゴとオレンジと一緒に細かく刻んでミルクに入れて一晩寝かせれば、美味しいフルーツ牛乳ができるんです! そうすれば、飽きる事は無いと思いますし、牛乳とフルーツを一緒に頂けるので、健康にも良いですよ!」

「へぇ~、それは良いわね! じゃ、バナナを2房ちょうだい。 あと、オレンジ2つとリンゴも1つ貰うわ」

「ありがとうございます! じゃあちょっとおまけして……全部で700エリスになります!」

「はいはい……じゃあこれで丁度ね。 ありがとうね~」

「いえいえ! お買い上げありがとうございました! また来てくださ~い!」

 

 私が快くお客さんをお送りしながら大きく手を振っていると、後ろから店長に声をかけられます。

 

「ツミレちゃんお疲れ様! ちょっと早いけど、もうあがって良いわよ! ツミレちゃん接客上手いし笑顔は可愛いしとっても助かるわぁ。 あ、これ今日の分ね。 ちょっと色つけておいたから♪」

「わぁ~! ありがとうございます! それじゃあ、お疲れ様でした! 失礼します!」

「はぁい、また宜しくね!」

「はい!」

 

 本日のお仕事を終えた私は、制服として着用していたエプロンと引き換えに日当のお給料袋を受け取り、お店を後にします。

 ふんふん…………ちょうど5000エリスかぁ。

 拘束5時間弱でのバイトとしてはまずまずですね。 ふっふっふ……ゲーム欲しさに親と学校に頭を下げてファーストフード店で働いていた時のスキルが生かされました!

 

 …………え? なんで私がバイトしているのかって?

 

 まぁ、私としても早くクエストとかを受けて冒険したい気持ちは山々なのですが、いくら後衛職とはいえ今のまんまだと丸腰過ぎるので、パーティー募集に応募しても私が募集しても仲間になってくれる人はいないと思うんですよ。

 だから軽い装備でも買えるようにするために、こうやってバイトをしているわけです! それにこれはこれで楽しいですしね!

 そんなわけで、現在の私の所持金ですが、この世界に来る際にアクア様から頂いたお金が大体1万エリス。 1日目に消費したお金が、登録料とリンゴとお風呂代とご飯代と宿泊費(馬小屋)で計3000弱程度。 そして今のバイト代を入れて今の所持金はだいたい12000エリスちょっとといったところです。

 やー、初日で宿屋ではなく馬小屋を選んだのは正解でした。 やはりその二つで金額は雲泥の差だったので。 それに馬小屋に泊まるって憧れあったんですよねぇ~! ホラ、RPGの最初って結構馬小屋で過ごすとか多いと思うんですよ。 それで試しに泊まってみたら、やっぱりお馬さんや藁の匂いがして、あぁ……最初冒険者は皆ここから寝泊りを始めるんだなぁと感激しました。

 そういえば他の部屋から「馬小屋なんかで寝られるかー!」とか「仕方ないでしょー!」とか騒がしい声が聞こえたんですけどなんだったのでしょう? なんか聞いたことある声だったような……………………ま、いっか!

 さてさてそれよりも、これからの私の予定は決まっています。 まずは武器屋に行くのです!

 ビーストテイマーは魔物関連のスキルの他に、短剣、投剣、鞭のスキルがあり、私はその中でも一番扱いやすそうな短剣を選ぶつもりです。 ナイフとかだったら1万エリスも行かないですし、それに実はもうどのナイフにしようか決めてるんですよね~♪

 そんなわけで、レッツゴー!!

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 無事武器屋で欲しかったナイフを購入(頑張って値切って6000エリスで買えました!)した私は、次にギルドに来ました。 目的はモチロン、仲間を集めるためです! もう丸腰じゃないので、初心者ではありますが募集くらいはしてもいいでしょう。

 そんなわけで私が今いるのはギルド内の掲示板の前です。 ここにはクエストの張り紙だけでなく、仲間募集のための張り紙も貼られています。この中の物を参考にして募集用紙を書こうと思います。

 

「んー、これが良いかな?」

 

 私はその中の丸文字ながらも達筆な文字で書かれた募集用紙を手に取ってみます。

 えーっと、なになに……

 

【パーティーメンバーを募集してます。 優しい人、詰まらない話でも聞いてくれる人、名前が変わっていても笑わない人。 クエストがない日でも一緒にいてくれる人。 前衛職を求めています。 できれば歳が近い方。 当方――――】

 

 なんでしょうこれは。 彼氏募集か何かでしょうか? 確かにギルドは出会いの場ではありますが、結婚相談所じゃないんですからこういうのは良くないと思います。 他の真剣に仲間を探している人達に失礼ですよまったく! こんなものを書いた犯人を見つけたら説教してあげましょう。

 まぁとにかくこれは戻そう。

 あ、でも書き方はうまいし纏まってるなぁ。 内容はともかく書き方は参考にさせて貰おう!

 私は手のひらを返すようにそう決めると、カウンターに行って受付のお姉さん(昨日と同じ巨乳の人)に用紙を貰います。

 

「はいどうぞ! ついに仲間を募集するんですね!」

「はい! といっても、まだナイフしかまともな武器のない初心者なので、仲間になってくれる人がいるかどうか……」

 

 不安な表情を見せる私にしかし、お姉さんは安心させるようににっこりと微笑んで、

 

「そんなに気にすることはないですよ。 最初は皆誰しもが初心者ですし、むしろ他の初心者の人が初心者の人の募集を見て応募したがる例なんて良くありますしね! あ、そういえば初心者で思い出したんですけど、実は昨日ヒビタさんの後と今日の朝で、ヒビタさんをも上回るルーキーが4人も現れたんですよ!」

 

 ほほう、チート能力を持つこの私を上回る人がそんなに。

 興味が湧いたので私はそのままお姉さんの話の続きを聞くことにします。

 

「どんな人たちなんですか?」

「そうですねぇ……皆かなり個性的でしたよ。 今日朝に来た二人の女の子は初心者と微妙に違うんですけど、アークウィザードという上級職魔法使い職で、2人ともヒビタさんより若い女の子でしたね」

 

 なんと、それはスゴい。 私より年下で上級職とは。

 ちなみにビーストテイマーは、上級職ではないそうです。 残念。

 

「3人目は、知力と運以外はとんでもない数値を誇る青い髪のアークプリーストですね。 この人は凄いですよ! 知力と運以外は本当に見たことのないくらいの高さでした。 きっと只者ではないと思いますよ! …………色々な意味で」

 

 なんでしょう。 喜ばしい事のはずなのにお姉さんの顔には微妙に憂いが見えます。

 さ、3人目についてはあまり長く触れないほうがよさそうですね。

 

「え、え~っと……4人目はどんな人だったんですか!?」

「え? ……あ、そうですね、もう1人は…………うーんと…………」

 

 4人目の特徴を言おうとしたところでお姉さんの口が止まりました。

 ? どうしたのかな? なんか目が泳いでるけど……

 

「どうかしました?」

「あぁ、いえ、その人の事はあまり意識しないほうがいいかなぁって……正直、なんで冒険者を目指そうとしたのかわからないくらいに…………まぁ、珍しい職業ではあったので、見かけたらすぐにわかるかもしれませんね」

 

 前半で濁した言葉が微妙に気になりますが、珍しい職業とは興味深いですね。

 

「ちなみにその職業というのは?」

「はい。 その方の職業は――――――」

 

 

 

【パーティーを組んでくれる仲間を募集しています! 当方は最近冒険者登録をしたばかりの「ビーストテイマー」です。 初心者大歓迎! 一緒に頑張って、冒険を楽しみましょう! お昼過ぎから夕暮れまで、酒場の窓際の席で待っています!】

 

 そんな内容の募集の紙を貼り付けた私は、用紙に書いたとおり窓際の席を陣取って誰か来ないかなー? とワクワクしながら待ちます。 とはいえ何も注文しないで居座り続けるのは悪いですし小腹もすいたので、私はウェイトレスさんを捕まえて適当に軽食を注文します。

 

「は~いかしこまりました! 注文入りましたー! スモークリザードのハンバーグ定食ご飯大盛一丁、セットのエリスコーヒーお願いしま~す!  ………はぁ」

 

 ん? どうしたんだろう?

 ウェイトレスさんは厨房に向かって注文を伝言するやいなや、小さくため息をつきました。

 

「お疲れですか?」

「え? あ、あぁごめんなさい! お客さんの前で…………」

「気にしないでください! ここってお昼を過ぎても結構忙しそうですもんね」

「まぁ、ここは駆け出し冒険者の街なんで、冒険者の総人口はやっぱり多いですし、しょうがないっちゃしょうがないんですけどね……お昼時と夜は特に大変ですよ。 なのにお昼の時に来た二人ときたら……」

 

 ウェイトレスさんの表情が段々と曇っていきます。

 よく見れば他のウェイトレスさんたちも、お客さんと接していないところでは微妙に疲れた顔をしています。

 

「何かあったんですか?」

「あぁいえ、大した事じゃないんですけどね。 お昼ごろ丁度忙しい時間に、ヘルプで入った人が二人いたんですけど…………その二人がどうも変な人達で、一人は勝手にお酒を飲んで、お酒が注文されたら変わりにお水を運んだりして……」

 

 それはひどい。 仕事中に何やってるんですか。

 ウェイトレスさんは「しかも私は飲んでない~勝手に水になっちゃうの~なんて言い訳するんですよその人」と付け加えて、

 

「もう一人は、サンマの塩焼き定食が注文で入った際に、店長が『サンマの補充が切れたから裏の畑から2匹獲って来てくれ~って言ったんですよ」

 

 ふんふ…………ん? え、畑?

 

「そしたらその人なんて言ったと思います? いきなり『なめんな!』ってキレだしたんですよ! …………まぁ、モチロンすぐに店長が叩き出して、大事にはならなかったんですけど……――あの、なんでそんなに目をキラキラさせてるんです?」

「え!? い、いや、なんでもないです!」

 

 畑にサンマがいるの!? え、もしかして生えてるの!? すっごーーーーい! なんて思っていたらどうやらそれが顔に出ていたようです……ウェイトレスのお姉さんがちょっと引いた顔しているのがちょっと寂しいなぁ。

 だって、サンマって言ったら普通海で獲れるものじゃないですか。 畑で獲れるって聞いたらちょっと面白そうだから見てみたいって思うじゃないですか! すっごくファンタジーじゃないですか!!

 

「まぁつまりは、人員が増えて少しは楽になるかなぁなんて思ってた矢先にあんな事になったので、みんなガックシきているんですよ……」

 

 言葉のまんま、肩のガックシと落とすウェイトレスさん。

 うーん、なんだかちょっと気の毒だなぁ…………あ、そうだ!

 

「あの、もし良かったらなんですけど、夜、私ヘルプに入りましょうか?」

「え!? そ、そりゃあ助かりますけど、良いんですか? 受付でのやり取り見てましたけど、パーティーメンバー募集のためにここで待ってるんですよね? ちなみに接客の経験は?」

「構わないですよ。 むしろ雇ってもらえるなら働き口が確保できてラッキーです! ここで待っている時間も、夕暮れまでって書いておきましたし。 あ、ちなみに接客経験はありますよ。 持ち運びはあまりした事無いですけど、注文やお会計ならやっ」

「店長ーーーーーー!! 夜にヘルプ入ってくれる人確保しました!!」

 

 「たことありますよ」と続けようとしたところでウェイトレスさんは私が注文したときよりも大きい声で厨房に伝えます。 厨房からも「よぉし、よくやった!」と勢いの良い返事が帰って来ました。

 

「それじゃ、今夜の19時から23時辺りまで、宜しくお願いします♪」

「あ、はい」

 

 自分から言ってむしろ希望通りになったとは言え、そのあまりにも早過ぎるテンポに私は引きつった笑みを浮べる他ありませんでした。

 

 

 

「ふわぁ……こっちの世界でも夕日は綺麗だなぁ……」

 

 テーブルに肘を立てて頬杖をつきながら、酒場の窓を眺め、一人ごちました。

 私が住んでいた町で見える夕日もこの位綺麗で、下校する時は畑の見える帰り道を歩きながら、よく眺めていました。

 なんだろう。 まだこっちに来て二日も経っていないのにもう前の世界のことを懐かしんでる。 ていうか来ないなー…………。 やっぱり初心者冒険者って言うのがダメなのかなぁ?

 といっても、実は1,2回程声を掛けられる事自体はありました。 といっても、

 

『はぁ……はぁ……お、お嬢ちゃん可愛いねぇ……ぼぼぼ、僕が君を守っ「他をあたってください」』

『ぬふふふふ……君、なんだか見ているだけで興奮するなぁ……襲われちゃいけないから僕が「あなたに襲われそうなので警察の人呼びますね」』

 

 と、なんか妙に熱のこもった――――というか危なげな目つきをした中年男性しか寄ってこなかったので、それは全部丁重にお断りしました。

 うーん、難しいなぁ……というかやっぱりセーラー服がダメなのかなぁ? ……ま、まさかこの格好は、セーラー服という概念が存在しないはずのこの世界でもちょっとしたフェチズムを感じさせてしまうとか!? だからさっきからちょっと気持ち悪い感じのおじさんしか寄ってこないとか!? そういうことなの!? ううぅ…………となるとやっぱりナイフだけじゃなくって服装もどうにかしてからじゃないとダメなのかなぁ……。

 そうなると冒険できるまであとどの位バイトしていなきゃダメなんだろうか、なんてまだここに来て2日目だというのにそんな甘っちょろい事を考えながら頭を抱えていた、そんな時でした。

 

「……仲間を募集しているビーストテイマーというのは君かい?」

 

 来たああああああああああああああああああああ!! しかも声からしておじさんじゃない! 一体どんな人が……ッ!

 私は顔を上げて、その声の主の顔を確認します。

 声を掛けてきたのは、顔に嘴のような仮面を付け、黒いローブともマントとも取れる衣類を羽織った黒い髪の剣士でした。 身長はとても低くて、年齢でいえば12、3歳位でしょうか。 右の腰に剣は携えていますが、明らかに子供です。

 そしてその子は羽織ったマント(?)をバサァ! と広げ、その仮面の端を帽子のつばの様にクイッとつまんで、

 

「我が名はきゅーかっぱ! 『魔剣士』を生業とし、『暗黒魔法』を操りし者!!」

 

 そう、名乗りました。

 

 




いつも読んでくださりありがとうございます。ユアシアンです。

今回で新キャラが顔出ししました!
参考までにですが、服装のデザインが↓のやつを紅魔族風にアレンジしたもの。
http://img15.shop-pro.jp/PA01242/155/product/94543110.jpg?cmsp_ti

仮面は↓のものをイメージしています。
http://www.4gamer.net/games/121/G012152/20110425036/TN/005.jpg

皆様の感想、評価、質問、アドバイス等を心からお待ちしております!気に入っていただけたらお気に入り登録していただけると喜びます!

……きゅーかっぱって名前を思いついた時、俺は紅魔族なのではないかと思ったり。
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