The story of a certain ARCS 作:緑ノ狐
≪アデルカ・ジルバーク≫ 16・男・ヒューマン
ある事情によりエルシィと一緒に道場に住んでいる。小さい頃の記憶がなく、一番古い記憶では既に道場にいた。道場師範であるユリオンを師と仰いでいる。剣術の腕はユリオン曰く粗削りだが、素質はあるそうだ。ある剣の黒い魔物と戦う力に目覚める。
≪エルシィ・ジルバーク≫ 16・女・ヒューマン
ある事情によりアデルカと一緒に道場に住んでいる。以前は有名な商家の娘だったが、アデルカに気を使い昔のことは話に出さないようにしている。一時期アデルカと共に剣術や体術を学ぼうとしたものの、自分には合っていないとやめてしまったところにユリオンが魔法書を持ってきて薦めてくれたのを勉強し自らの魔法の素質に気付いた。
≪ユリオン・ジルバーク≫ 25・男・ヒューマン
ジルバーク道場の師範+エルシィとアデルカの保護者。剣術の腕は確かでアデルカには負けたことがない。しかし道場を開いている周りに人がいないため、弟子はアデルカ一人。アデルカとエルシィを引き取ったのは彼だが、その理由はまだ明かされていない。
「ふっ!!」
カスラが撃ちぬいた爆弾が轟音を立てながら爆発し、辺りは土煙に包まれた。
その中でマリアが俺に伝える。
「いいかい?作戦は単純、死なずになんとかしな。それだけだ」
作戦と言っていいのか解らないものを聞かされたが、それも仕方がないと自分で納得していた。
この3人の技量もあるが、連携もかなりのものだ。長い付き合いからくるものだろう。
そんな中に出会ったばかりの、ましてや彼らに比べれば格段に弱い俺がその連携に加われと言う方が無理な話だ。
「つまりは自由にやれってことでいいんだよな?」
「まあ端的に言えばそうなるね。ただし自由に動いた先を補助できるかどうかは解らない」
「いいさ・・・やってやる、よ!」
土煙が晴れないうちに不意の一撃を喰らわせるために、相手の懐へ潜り込む。
「っらあああああ!!」
敵の下から一気に上に斬り上げようと体をひねる。
しかし、『異形』は嘲笑う。
『そんなトロい攻撃、当たるわけないじゃん』
赤黒い巨大な手が俺の体を横からはたいた。
「がっ!」
ミサイルのように一直線に家屋へと吹き飛ばされた。
「ぐっ・・・ふっ!」
なんとか体を起こし、自分の闘志がまだ尽きていないことを確かめる。
我ながらよくあんなものを受けてケガ一つないとは頑丈なものだ。ギリギリで防御態勢はとったものの、大ケガを負っても不思議ではない。
「いや、それだけじゃないってことか・・・」
自分の手に握られた大剣を見つめる。この剣から体へと伝わる力のようなものが、自分を補強してくれているような感じがした。
「ただ・・・やっぱりでかい得物は振り慣れてないな・・・」
ジルバーク流は基本的に二刀流である。
一刀の技もあるが、それは片手で扱えることを前提とした技であり、今持っている剣は片手で振れるような重さではない。
と、その時だった。
「な・・・」
持っていた大剣が光を出しながら宙に浮き、2つに割れた。
否、分離したのだ。
「俺の思いに呼応した・・・ってことなのか?」
二対の剣に問いかけるも答えなどあるはずもない。
しかし、青く輝く双剣は自分の手にとても馴染んだ。
そしてその光は、ひどく懐かしく感じた。自分にとっての誇りであり、憧れであったような思いが何故か俺の中に溢れてくる。
「?・・・よくわかんねえけど、これならやれるかもしれない!」
『どうしたの?防戦一方じゃない。もしかして、疲れちゃったのかなあ?アハハッ』
「そうだな・・・老骨には!少々・・・辛いものがある・・・な!」
『だったらさあ、諦めちゃいなよ。すぐ楽にしてあげるからさあ!』
「そうか。だが・・・私はもう賭けてしまったのでな」
『賭けただって?何に?僕達が君らを見逃してここを去ることに?』
「違うな。未来ある若者に、とでも言えば格好がつくのだろうが・・・言ってしまえば私の勘に、だ」
『・・・やっぱり君らの考えることは僕達には理解できない』
「それはお互い様だろう、ダークファルス」
『そうだね。だからここで・・・消えてしまえ』
ダークファルスの右手に力が集中される。
あれが一気に解き放たれれば、この一帯は焼け野原になるだろう。
「させるかああああああ!!」
突如現れた二対の刃が黒炎を宿す右手を切り裂いた。
『ぐうっ・・・何!?』
ダークファルスが自らの腕を斬った剣を見て驚愕する。
『その武器・・・何でお前が!それは確かに消したはず!』
「なんのことか知らないが、これは俺が拾った剣だ!」
『チィッ・・・!だったらもう一回消すだけ・・・』
ダークファルスの意識が俺に向いたところをすかさず3人が連続攻撃を仕掛けていく。
「アンタの敵はこっちだろ?それとも、あの小僧の方が骨があるってのかい?」
「別に競争心を燃やしているわけではないのですが、私達はアークス。その最大の敵に無視されるのもいい気分はしないので」
「どうした?動揺を隠す余裕も無いか、ダークファルスよ」
徐々にではあるが、見るからにダークファルスは手傷を負ってきている。
何より俺の剣を見てから完全に様子がおかしい。
『アークス如きが・・・調子に乗るなぁ!!』
まだ使えるもう片方の腕を横に大振りし、3人に距離を取らせた。
だが、その一撃は「誘われた一撃」だった。
「今度は・・・当ててやるよ!」
横に払われた腕の影から懐に入り込む。
『なっ・・・』
ダークファルスはとっさに防御の姿勢を取ろうとするが間に合わない。
「速さが、足りねえ!!」
異形の体を真正面から斬り上げながら自分も宙へと舞う。
斬り上げ叩き斬る二段階の斬撃を与えるジルバーク流奥義。
「空襲、雷牙あああ!!!!」
巨体が縦に一閃を受けた。
深手を負ったダークファルスはゆらゆらと後ずさり、
『嫌なものを・・・見つけたな・・・』
とこぼして、闇に包まれて消えてしまった。
「倒した・・・わけじゃないよな」
「ええ。逃がしたのは口惜しいですが、これだけの戦力で撤退させただけでも十分でしょう」
「見事だった、少年。君の勇気に感謝をささげる」
「い、いや・・・俺も無我夢中だったから・・・」
「なに、作戦は達成できたわけだし、上々じゃないか。さて」
マリアが何かを言いかけようとしたその時
自分の意識が遠のいていくのを感じた。
「!ちょっとアンタ!気をしっかり持ちな!」
3人が何かを言っていたのはわかったけれど、その内容を理解するより前に俺の意識は完全に途切れた。
目を覚ました時、目の前にはよく知っている顔があった。
ただその表情は、ずっと隣で見続けてきた俺が見たことのないものだった。
「!・・・グズ・・・やっとお目覚め?ほんと、寝坊助なんだから」
「エル・・・」
「なによ。言っとくけど、これはあくびのせいだからね、あんたを心配してとかじゃ・・・」
「心配、かけたよな・・・ごめん・・・」
「・・・」
「師匠にも、ちゃんと謝らないとだな・・・」
「・・・たのよ」
「え・・・?」
見上げたその顔は涙で溢れていて、くしゃくしゃだった。
「心配したんだから!!あんなのと戦ってたら、あんた死んじゃうんじゃないかって!!あんたがいなくなるかもって思ったら不安でしょうがなくなって!!」
「エル・・・」
「無理してほしくないのにそんなにボロボロになって!!このまま目を開けなかったらどうしようって!!もう、バカ!本当にバカァ!!」
「ごめん、ごめんな・・・」
「ちゃんと反省しなさいよもう!!本当に・・・無事で・・・よかった・・・!!」
その涙の言葉は優しさで溢れていて、厳しく、温かいものだった。
「グス・・・ユリオンさん?」
「うん、師匠。今どこにいるかな」
「ユリオンさんなら、多分道場の方にいると思うわ。あの人も心配してると思うから行ってあげて」
「そうだね。それもあるけど・・・師匠に聞かなきゃいけないことがあるんだ」
「・・・?何を?」
「俺の・・・過去の話」
「!・・・思い、出したの?」
「はっきりはわからないけど、さっき戦ってる時に何かを思い出しそうだったんだ。それがなんだか・・・本当は忘れちゃいけないものだった気がして」
「・・・そう。・・・ねぇ、アデル」
「なに?」
「あんたの過去は・・・思い出したら苦しいものかもしれない。だけど」
エルが俺の目を真っ直ぐ見ながら言う。
「自分を責めるようなことはしないで。あんたはずっと頑張ってきた。あたしはそれを知ってるから」
「エル・・・」
彼女のこの優しさに、何度救われたことだろうか。
「うん、ありがとう。いってくる」
「ん、いってらっしゃい」
道場に向かって歩く俺の背中をエルが押してくれている気がした。
「あんたなら・・・ううん、アルならきっと大丈夫」
その小さな囁きは、吹き抜けた風にかき消されていった。
だいぶ間があいてしまいました。これからはまたぼちぼち投稿していくと思うので、よろしくお願いします。あと前回の後書きでアデルカの過去がわかるみたいな前振りしましたけど思いっきり嘘つきました。次回その話からでございます。すいませんでしたぁ!!