ロストロギアの少女   作:幽々やよい

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フェイトとの決戦、その前夜の話です。

投下します。


第9話 それぞれの想いと決戦前夜なの

 なのはが実家に戻った翌日、本来であれば敵対しているフェイトの側にいる使い魔、アルフが狼の状態でなのはの友達に発見された。見つかったときにはもう既にボロボロの状態だったらしく、なのはの友達によって手当てされた上で保護されている。

 

 

 アースラへと戻って次の戦闘に対する準備をしていたリンディ達は、突然相手側の使い魔が傷だらけの状態で発見されたことに驚きを隠せなかった。自分達と関わっていなかった僅か一日の間に、敵対する人物がいきなりボロボロになって現れたのだ。現状を理解しがたいのは致し方無いだろう。現場の状況から、ユーノを中心としてアルフから事情を聞いた。

 

 

 ユーノ達がアルフから聞いた話を纏めると、フェイト・テスタロッサは、母親であるプレシア・テスタロッサから命令されてジュエルシードを回収していたらしい。命令したプレシアからはどのような事にジュエルシードを用いるのかは知らされておらず、母の助けになりたいという思いから行動をしていたという。ただ、プレシアは何かを成し遂げたいという狂気に取り憑かれてしまっており、フェイトはそこに捕らえられたままになってしまっている。しかし、自分の言葉ではフェイトを救うことが出来なかった。また、アルフ自身がいなくなってしまったことで、今フェイトは完全に孤立してしまっている。よって、今は幾度となく戦ってきたなのはしか頼める人物がいない為、なのはにフェイトを助けてほしい、というものだった。

 

 

 この発言により、リンディを中心とするアースラは目的をプレシア・テスタロッサの捕縛へと切り替え、更なる事件の解決を目指していくこととした。ソーフィヤは、少し違う考えだったようだが。

 

 

 なのははフェイト・テスタロッサがどの様な考えでジュエルシードを集めていたかを知り、改めて事態の重さを痛感した。アルフの話を聞き、なのははより一層彼女を助けてあげたいと、そういう風に感じた。その意思をアースラに居るクロノに伝えると、クロノは快諾しフェイトに関する部分を一任してくれることとなった。

 

 

 その日の夜、なのはは自宅に併設された道場で、一人上座の方を向いて座っていた。今まではあまりそういったことをしたことが無く、なのはにしてはかなり珍しい動きだった。すると、意識の外からなのはに声がかけられた。

 

 

「いい顔になったな。迷いは消えたのか?」

 

 

「!お父さん。」

 

 

 なのはに声をかけたのは、父親である高町士郎だった。士郎がかけた言葉は、なのはが何かに対して迷っていた事を知っているような口振りであった。それになのはは疑問を持ち、士郎に訊ねる。すると、

 

 

「勿論。父さんは、なのはの父さんだからな。」

 

 

 と返してきた。どうやら父親にはバレてしまっていたらしい。またこの発言から、なのはが迷っていた時に士郎達に心配をかけていたことを悟り、またこれから直ぐに出立しなければならない事から更に心配をかけてしまうだろうと考える。

 

 

「明日もまた早く行っちゃうんだけど……、ご心配をお掛けします。」

 

 

 それに対し、士郎は微笑みながらなのはの言葉に返した。

 

 

「まあ、父さんはそんなに心配してないよ。なのはは強い子だからな。」

 

 

 そしてなのはの頭を撫でながら、こう続けた。

 

 

「頑張ってこい、しっかりな。」

 

 

「……!うん!」

 

 

 なのはは士郎の言葉に対して、笑顔で返答する。父親である士郎からこういった言葉を貰いなのはは嬉しく感じると同時に、絶対にフェイトに自分の言葉を伝えようと改めて気を引き締めた。

 

 

 その後、夜、なのはが寝る前。なのはの元にアースラに戻ったはずのソーフィヤから念話がとんできた。

 

 

 〈なのは、聞こえてる?〉

 

 

 〈うん、聞こえてるよ。どうしたの?ソーフィヤちゃん。〉

 

 

 〈明日の事について訊ねたいことがあってね。〉

 

 

 〈明日の事?何?〉

 

 

 明日の事についてソーフィヤが聞きたいことがあるらしいが、なのはは何故ソーフィヤが念話をして来たのか全く事情が把握できない。そんななのはを余所に、ソーフィヤは話を続けた。

 

 

 〈明日、なのははやっぱりフェイトと戦うんだよね?〉

 

 

 〈うん。私の思いを伝えるためにも、絶対に戦うよ。〉

 

 

 〈だよね。で、一つお願いがあるんだけどさ。私を明日二人の戦う場所に連れていって欲しいんだ。〉

 

 

 〈……えっ?いや、ダメだよ!?危ないよ!〉

 

 

 突然のソーフィヤのお願いを、なのはは全力で拒否する。まあ、なのはの反応も当然の事だ。ソーフィヤの様に未だ強い力を持たない者が強い者達の戦いの場に行った場合、流れ弾や強い力に当てられたり等安全性を保証できない。特に今のソーフィヤの様に力が不安定な状態であれば、尚更である。これはソーフィヤも百も承知の筈だ。

 

 

 だが、ソーフィヤはその上でなのはに頼んできた。なのはは、何故とこの事を疑問に思い、ソーフィヤに理由を聞いてみた。

 

 

 〈ねえ、ソーフィヤちゃん。危険性が分かってても尚お願いするのって何で?〉

 

 

 〈私が居る必要があるから。なのは達、戦う上でお互いが持っているジュエルシードを賭けるでしょ?なら、その場には全ての(・・・)ジュエルシードがある必要がある。だから、私が行かないなんて出来ないでしょ。私は『なのは側のジュエルシードシリアルNo.1』なんだから。〉

 

 

 ソーフィヤは、さっきまでよりも言葉に真剣さを含ませて言う。面と向き合っての対話では無い為表情等からソーフィヤの本心を読み取ることは出来ないものの、自分が実際現場にいないといけないというソーフィヤの思いの強さが言葉から滲み出ていた。

 

 

 固い意思を持って紡がれたソーフィヤの言葉を聞き、なのはは自分がソーフィヤを止めることが出来ないと悟った。なのはも本心としてはソーフィヤを危険な場所へと連れていきたくはない。だが、ソーフィヤの持つ思いの強さを知ってしまった以上どうすることも出来なくなってしまったのだ。しかし、なのはもただ真剣さが有るからといって、戦いの場へと連れていくような事は出来ない。その為、なのははもう一度ソーフィヤの真剣さを確認した。

 

 

 〈ソーフィヤちゃん、もう一度聞くよ。ソーフィヤちゃんは、その場に行って本当に大丈夫なの?クロノくん達はどう説得するの?〉

 

 

 〈可能な限り魔力濃度や密度が高くなる戦場からは、離れた位置で待機するよ。過剰な魔力供給が起こらない限り、私の中のジュエルシードは暴走しない筈だから。流れ弾に関しては極力避けて、駄目なら防御するようにするし。クロノ達は、アースラに戻ってすぐに説得した。後は、なのはが許可してくれるかだけなの。〉

 

 

 なのはの質問に対して間を開けずに返答する辺り、ソーフィヤがこの事に対して真剣に考えていることがよく分かった。既に保護観察者であるクロノ達に話を終えてから当事者に頼んでいる所から、用意周到な面も見える。 なのははこの返答を聞き、ソーフィヤを連れていく事を了承した。

 

 

 〈……わかったの。でも、幾つか約束して。戦闘区域からは極力離れるようにすること。本当に危険な状態になったら、すぐにアースラへと避難すること。それでもいい?〉

 

 

 〈わかった。今回の件に関してはなのはに一任されてるし、なのはの命令に従うよ。じゃあ、明日の朝、海鳴公園に着く前に合流するから。〉

 

 

 〈了解なの。それじゃあ、また明日。〉

 

 

 こうして、なのはと共にソーフィヤも決戦の場、海鳴公園へと向かうこととなった。

 

 

 同時刻、時の庭園ではプレシア・テスタロッサがフェイトに残りのジュエルシードも集めてくるように命じ、フェイトはその意に従おうとなのはとの戦いの準備をしていた。

 

 

 物語が、一つの終焉へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 




とうとう無印編の大きな山に入っていきます。

次話は、9月5日までに投下します。
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