ロストロギアの少女   作:幽々やよい

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約1年半ぶりくらいになってしまいました…。

ようやく身の回りが安定してきましたので、鈍足ですが連載を再開しようと思います。

お待たせいたしました。無印編のラストへと向かっていきます。


第13話 光が芽吹く時なの

 時の庭園内でもかなり開けた広間。プレシアは、そこでジュエルシードを発動していた。

 彼女の目の前には、隣で気絶しながら宙に浮いているソーフィヤを含めたジュエルシードが、円形に並び魔力光を発光し続けている。その光は、通常の魔導師が発するものよりも強く、辛うじてジュエルシード本体がその光の中に見える程である。

 それを見ているプレシアの表情には、うっすらと喜びが見てとれるようになっていた。

 

 

(流石はロストロギア…。発する魔力も、内包されている力も、軽く現代の技術を超えているわ…。今発している魔力は私の予想より少ないけれど、それでも想定の範疇。私の計画を達成するためには足りうるわ。あとは、時を待つだけね…。)

 

 

 プレシアがその様な事を考えている中、隣で宙に浮くソーフィヤは、プレシアに気付かれない程度ではあるもののうっすらと汗を浮かべて気絶しているふりをしていた。

 

 

(キツい!流石はオーパーツ…。発動されたらかなりの魔力がその間を行き来するとは予想してたから何とか自分の意識を維持できてるけど、循環する魔力量がとてつもない…!でも、何とか意識を保ちつつ魔力循環を抑えないと…!)

 

 

 自分が既に目覚めている事を悟らせないようにしつつ、ソーフィヤはジュエルシードの駆動を可能な限り抑え込んでいる。そうまでして、少しでも時間を稼ごうとしていた。

 

 

 先程までのアリシアとの会話の中で、ソーフィヤは行うべき事を2つ確認していた。

 一つ目が可能な限りジュエルシードの発動を遅らせること、そして二つ目が

 

 

(アリシアの身体の状態を確認すること…!もし全体の流れが上手く進んでも、アリシアの身体が死んでしまってたら元も子もない。何としても状態を調べないと…!)

 

 

 ソーフィヤは各ジュエルシードの間に細い魔力の糸を繋いでいき、ジュエルシードを疑似魔力知覚器官にしていく。膨大な魔力量に何度か意識が飛びそうになるものの、それを耐えきり全てのジュエルシードに魔力糸を繋ぎきった。

 

 

 ソーフィヤの魔力知覚範囲が、今いる部屋全体にまで一気に広がる。それと同時に、その部屋にいる人物一人一人の魔力情報・身体情報が、頭の中に勢いよく流れてくる。

 

 

(管理局の人達がこの部屋で倒れてるのもあって、供給されてくる情報がやっぱり多い…!でも、ここで失敗するわけにはいかない!)

 

 

 膨大な量の魔力波や生体反応波を一つ一つ認識、解析していく。一つを選り分け解析するだけでもかなりの魔力と精神力を削る作業の連続、ソーフィヤも例外ではなくどんどんと体力を磨耗していく。

 

 

 50人くらいを解析し終えた所だろうか、ソーフィヤは未解析の部分に少し違和感を覚えた。

 

 

(何だろう…。ちょっと魔力の感じが違う部分がある…?)

 

 

 ソーフィヤは違和感を感じる方向に意識を向け、更に解析を続けていく。その方向は偶然か、アリシアの入ったポットのある方だった。

 一つ、二つ、三つ…分離解析を続け、最後の魔力情報を引き剥がす。

 

 

(…これって…。)

 

 

 ソーフィヤは予想だにしなかった事実に辿り着く。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 フェイトの使い魔、アルフがアースラを出立した少し後。戦艦アースラ内の一室、なのはによって保護されたフェイトは一人、ベッドに腰かけていた。

 服装はいつものバリアジャケットではなく、病院等で扱われる簡易的な服。彼女はまだ、肉体的な負傷も、精神的な負傷も決して癒えていなかった。

 

 

「…バルディッシュ…。」

 

 

 彼女の手に握られたバルディッシュは、ひどく損傷していた。柄や宝石部分には大小複数の罅が入り、今にも壊れてしまうのではないかという状態だ。

 

 

「バルディッシュ…私は、何のために生きてたのかな…。」

 

 

 アースラで倒れる直前、母プレシアからフェイトへと放たれた言葉。それは、彼女が細く繋いできた心を容赦なく、悉く叩き折った。

 母に認められるため、母を救うため、それを行動の原動力としてきた彼女にとって、最もダメージを受ける所業であった。

 

 

(…母さんは、最後まで笑ってくれなかった。私は、どんなに酷いことを言われても、母さんに笑って欲しかった。認めて欲しかった。もう、あの頃には戻れないのかな…。あの優しかった母さんには…。)

 

 

 フェイトは、在りし日の事を振り返った。彼女が生まれてから、この騒動に至るまで母と過ごしてきた日常を。しかし、それは余計に自分に虚しさを募らせるだけであった。

 

 

(…私、まだ母さんにすがりついてる。あんなことを言われて、はっきり捨てられても、まだ母さんを忘れられない…。)

 

 

 フェイトの頭の中を、今までの記憶が駆け巡っていく。プレシア(母さん)と過ごした昔から、現在まで。その中で、ふと白い服の少女が頭をよぎった。

 

 

(…そういえばあの白い服の女の子、ナノハだったかな…。あの子は何で、私なんかに構ってくれたんだろう…。)

 

 

 ふと気になった彼女、なのは。フェイトはなのはに初めて会ってからの事を思い出していた。

 大きな邸宅の庭で会ったのを皮切りに、温泉や夜の町、公園で戦ってきた。自分から話しかけることは無かったが、なのはは一生懸命に自分に言葉を伝えようとしていた。たとえどんな状況にあったとしても。それが、フェイトとプレシアの間の問題であったとしても。なのはは、初めて自分に対等にぶつかってきてくれた、自分と向き合ってくれた子だった。

 フェイトは、なのはの言葉を一つ一つ思い出す。そうして、ある二つの言葉へと行き着いた。

 

 

『ただ捨てればいいってわけじゃないよね……。でも、逃げればいいってわけじゃ、もっとない。』

『私達の全ては、まだ始まってもいない。』

 

 

「私の、私達のすべてはまだ始まってもいない。そうなのかな、バルディッシュ。まだ始まっても無かったのかな」

 《yes,sir.》

 

 

「そうだよね。バルディッシュも、ずっと私の傍にいてくれたんだもんね。」

 

 

 フェイトはバルディッシュに涙を流す。ずっと側にいてくれたバルディッシュの言葉に、フェイトは涙を止められなかった。

 

 

「バルディッシュ、あなたも、このまま終わるのなんて、嫌だよね」

 《yes,sir.》

 

 

 部屋を出る前、アルフが最後にかけてくれた言葉を思い出す。

『全部終わったら、ゆっくりで良いから、私の大好きな本当のフェイトに戻ってね。これからはフェイトの時間は全部、フェイトが自由に使っていいんだから。』

 今この状況になって、アルフが伝えたかったことがわかった気がした。

 今までは、ただ『プレシアに言われたから』動いてきた。自分の意思では、まだ、全然動いていない。戦いの終わりどころか、まだ自分の戦いは始まってすらいなかった。自分で動けてすらいなかった。

 

 

「…まだ、私は何も出来ていない。なら、私はどうしたい?」

 

 

 フェイトは、必死に考える。それまでほとんど生かせていなかった思考能力を、全開で回し続ける。

 

 

「…私は。」

 

 

 回す、回す。思考を張り巡らせる。走らせる、走らせる。

 

 

「…私は!」

 

 

 思索する。只ひたすらに考える。そうして、フェイトは一つの光を導き出した。

 

 

「…私は、母さんを助けたい。誰かに言われたからじゃない、自分の意思で、母さんをこの手で助けたい!」

 

 

 ベッドから起き上がる。その右手には、強くバルディッシュ(相棒)を握りしめている。

 

 

「辛いときにごめんね、バルディッシュ。もう一度、私と一緒に来てくれる?」

 《Yes,sir》

 

 

 バルディッシュが強い光に包まれる。その光が周囲に散ると、その中からキラキラ輝く、完全回復したバルディッシュが姿を表した。

 

 

 バルディッシュのコアが光だし、フェイトがその光に包まれる。

 次の瞬間、その光からバリアジャケットに包まれたフェイトが現れた。

 

 

「上手くできるか分からないけど、一緒に頑張ろう。行こう、バルディッシュ。私達の力で、母さんを助けに!」

 

 

 フェイトは医務室の扉を開ける。

 そして、全速力で転送装置のある管制室へと向かう。

 

 

「私たちのすべては、まだ始まってもいない。だから、本当の自分を始める為に。」

 

 

 

 

 

「今までの自分を、終わらせよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 魔力炉に向かう途中、クロノとなのは、アルフ、ユーノはかなりの苦戦を強いられていた。

 

 

「何だっ、これはっ!敵の数がっ、異常だ!」

 

 

「これっ、きりがっ、ないの!」

 

 

「いくらあのババァでもこれはおかしいって!」

 

 

「多分プレシアがジュエルシードを持ってるからじゃないか!?それで魔力がずっと供給されるからって、うわ結界が!」

 

 

「成る程な、それで尋常ではない魔力の使い方をしてるわけか!」

 

 

 八方を囲まれた状態での強いられるなのは達。かなりの数を倒したが、まだまだ敵は残っており、魔力が有限な4人は徐々に不利な状況になってきていた。

 

 

「誰か高威力の範囲攻撃魔法を使えればいいんだがな!ユーノ、お前は使えないのか?」

 

 

「無茶言うな、僕は結界とかが中心だぞ!範囲攻撃魔法はあまり得意じゃないし、高威力はもっての他だ!」

 

 

「あたしも全体に対する攻撃は無理だね…」

 

 

「ねえ、私のスターライトブレイカーはダメかな?」

 

 

「「「あんな魔力消費量が多くて隙の多い危険(ロマン)砲はダメ(だ)!」」」

 

 

「えぇー?」

 

 

 このような口を叩きながらも、4人は着々と敵を減らし続ける。しかし、それでもじり貧なのは目に見えていた。

 

 

「うーん、じゃあどうすれば…ん?この魔力波って…?」

 

 

「なのは、どうしたんだい…って、これは…」

 

 

 なのはとアルフは、自分達に接近してくる大きい魔力反応に気が付く。最初は確証を得られなかったが、徐々に近づくにつれそれは確信へと変わっていった。

 

 

「これ、やっぱり…!」

 

 

 4人が戦う広間に、新たに1人の影が現れる。それと同時にその影は周囲の敵を殲滅した。

 

 

「…はぁーーーっ!」

 

 

 強力な雷撃を周囲に放つ。4人の周辺にいた傀儡兵は、その粗方が行動を停止する。

 その影は、アルフとなのはの目の前に降り立った。

 

 

「「フェイト(ちゃん)!」」

 

 

 2人は、嬉しそうな笑顔を浮かべ、その影、フェイトを見る。

 フェイトも振り返り、2人に対して笑顔を見せる。

 すると、フェイトの背後の地面が突然隆起し、大型傀儡兵が出現した。

 

 

「!?フェイトちゃん!」

 

 

 なのはは「危ない」、と彼女に危険信号を送る。しかしフェイトは動かず、真剣な表情に戻ってなのはに語りかける。

 

 

「2人なら、いける。」

 

 

「…??」

 

 

 最初、なのはは意図を掴みかねた。しかし、真剣な表情を見せるフェイトの目を見るうちに、その真意を何となく感じた。

 

 

「…私と一緒に?」

 

 

 なのはの呟きに、フェイトは頷きで返す。

 なのはは一際眩しい笑顔を見せたあと真剣な表情になり、フェイトの隣に並び立った。

 

 

「それじゃあ行くよ!ディバインバスター!」

《Divine Buster.》

 

 

「サンダースマッシャー!」

《Thunder Smasher.》

 

 

「「せーのっ!」」

 

 

 2人同時に力を放ち、大型傀儡兵にぶち当てる。2人の合体攻撃を食らった大型傀儡兵は、跡形もなく砕け散っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 時の庭園、アリシアのポッドのある部屋にて。

 

 

 戦闘によって引き起こされる揺れが近付いてきたことからプレシアは、管理局の面々が来ている、猶予はもう無い事を悟っていた。

 

 

「もう、この場所にも管理局の戦闘員達がやってくる。私に残されたあらゆる猶予(・・・・・・)はもう無いわ…。」

 

 

 ポッドの中にいるアリシアに憂いの視線を送る。そうしながら、ポツリと言葉を溢した。

 

 

「ああ、アリシア、アリシア。私の可愛い娘。絶対に貴女を救ってみせる。」

 

 

 

 

 

 

「例え、どんなに大切なものをこの手から失ったとしても。」

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりなので、文章がおかしいかもしれませんね…。
誤字ありましたら、連絡をお願いします。

早くA's 編に入りたいものです。
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