アースラに戻って、事態がある程度落ち着いてから。
リンディやエイミィ達は、時の庭園周辺の現在状況や、先程の爆発についての詳細情報、地球及びミッドチルダへの空間影響等について、情報の収集を行っていた。
「そう言えばエイミィ、先程の爆発について何か情報は集まったかしら?」
「それが…どうもよく分からないんですよね…。あ、これがその資料です。」
エイミィから、先程の爆発について情報が送られてくる。その情報を読み進めるうちに、リンディは険しい表情になってくる。
「…これ本当?これだと、あの爆発の原因が…。」
「残念ながら、本当なんです。調べれば調べるほど、さっきの爆発があり得ないものになってくるんですよ。」
「時の庭園の内部じゃなくて外部から、それも周辺には空間に拡散された魔力以外はほぼ原因となるものが無い状態…。しかも、もしあったとしても起爆原因が不明…」
「はい。それに、ジュエルシードの発動もほぼ関係が無いようでして…。ジュエルシード発動で発生した魔力波は、爆発の中心の所までは届いていなかったんです。」
「どういう事なのかしらね…。まるで、時の庭園が残ることが不都合だから消す、みたいな…。」
「これはあり得ないですよね…。一応、もう少し情報の収集に努めてみます。」
「お願いね、エイミィ。」
「かしこまりました!」
そう言ってエイミィは、アースラの資料室に戻っていく。
(本当にあの爆発は、何が元で発生したのかしら…。この現象…他のところでも起きていないと良いけど。)
そんな事を考えながら、リンディは角砂糖を4個入れた緑茶を啜った。
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同時刻。
なのは達や武装局員が怪我の治療を受けているなか、今回の事件の容疑者と重要参考人であるプレシア、フェイト、アルフは現在護送室に入っていた。
本来はアリシアも重要参考人なのだが、長期に渡ってポットに入っていた為一度身体状態を確認する必要があり、現在は医務室にいる。
護送室に入ってすぐ、プレシアはフェイトとアルフの前に立ち、頭を下げた。
「フェイト、アルフ。本当にごめんなさい。自分中心の考えで動いて、貴女達二人にかなり辛く、ひどく当たってしまった。親として、人として、許されない事をしてしまった。」
突然の謝罪に、フェイトは驚く。まさかプレシアから謝罪されるとは、思ってもいなかったからだ。
「…お母さんにも、アリシアを助けたいって事情はあったし、それでも、お母さんは私を愛してくれてたって事を知りました。私には、それが分かっただけでも十分です。」
フェイトはそう言って、笑みを浮かべる。
アルフは厳しい表情で目を閉じていたが、フェイトの発言から少しして、目を開け口を開いた。
「…あんたにも事情があったにせよ、フェイトが辛く、苦しい思いをしていたことに変わりはない。そこは、許せない所だ。」
「…そうでしょうね。貴女達が私を許せないのは、百も承知の上よ。」
アルフの厳しい発言に、プレシアも自分が犯した罪の大きさを改めて確認する。
でも、とアルフは付け加える。
「あたしは当事者じゃない。当事者はフェイトだ。フェイトが決めたことなら、あたしは文句は言わないし、反論もしない。ただ、これだけは約束してほしい。もうフェイトを、辛い目に合わせないでおくれ…。」
「…ええ。必ず。もう二度と、同じことは起こさないと誓うわ。」
「なら良いんだ。あたしもあんたに酷いことを言っちまった。あの時は悪かった。」
互いに謝罪を終え、もう二度と、誰も辛い思いをさせないと改めて決意を固める。まだぎこちないけれど、もっと笑顔を増やしていけるように。そう思ったプレシア達だった。
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―医務室―
ここには、身体検査の為連れてこられたアリシアと、未だ眠ったままのソーフィヤ、様子を確認しにきたクロノがいた。
「アリシアさんは、脳波、リンカーコア、心音、身体状態、全て異常はありませんね。長期間ポットに入れられていたため若干筋肉が衰えてしまっていますが、リハビリ次第で戻ると思われます。」
「なるほど。ソーフィヤの方はどうですか?」
「ソーフィヤさんについては、恐らく最後のジュエルシード発動の時に、疲労が限界を超えたのでしょう。数日休めば回復すると思います。」
「そうですか…。ありがとうございます。」
ホッ、とクロノは胸を撫で下ろす。
ジュエルシードを発動後に倒れてしまったソーフィヤと、長い間ポットに入ったままになっていたアリシア。この二人の身体に特に問題が無いことが分かり、一先ず悩みが一つ解消された。
「それにしても、ジュエルシード発動による疲労か…。元がジュエルシードと言えど、やはり身体に負担はかかっているんだな。目が覚めたら、無茶はしないように伝えないと。」
「…えーと、クロノさん、だっけ?それ、もしかしたら私のせいかも…。」
「?君のせい?どういうことだ?」
アリシアの発言に、クロノは首を傾げる。
ソーフィヤの疲労がアリシアのせい?
そこを疑問に思ったクロノに、アリシアは更に続ける。
「いやー、私を助けようとしてるときに、ちょっとね。私が助かっても、そのままだとママが死んじゃうから、ママの病気とかも治せないかなーと思っちゃって。そしたら、ジュエルシードが発動するときに、私だけじゃなくてママの方にも魔力が飛んでいったからさ。」
クロノは思い返す。そういえば、時の庭園でジュエルシードを発動させたとき、二筋の魔力がアリシアとプレシアに降り注いだ。本来の目的のようにアリシアの身体を治すのであれば、魔力はアリシアのみに降り注ぐはずだ。
「と言うことは、つまり…。ソーフィヤはプレシアだけじゃなく、アリシア、君の願いも叶えていたということか?」
「だと思う。まあ、多分偶然だと思うけどね。」
ジュエルシードを制御しつつ、同時に二人の願いを叶えていた。一つでもかなりの負担がかかるはずなので、それが2倍となれば想像以上の疲労が蓄積されてもおかしくないだろう。
倒れてしまうのも、当然とも言えた。
「はぁ、成る程…。…ん?と言うことは、プレシア・テスタロッサも検査しないといけないわけか…。」
「あはは…ごめんね、仕事増やしちゃって。」
「いや、いい。これくらいの事なら慣れてるさ。」
一つ悩みが解消されたと思ったら、また悩みが増えてしまった。
仕方ないか、と頭を押さえながら、クロノは医務室を後にした。
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医務室を出たクロノは、少し歩いたところでなのは、ユーノと遭遇していた。
「あれ?クロノくん!」
「そっちの方向だと、医務室に行ってたのか?」
「ああ。ソーフィヤとアリシアの検査の為にな。二人とも、今のところ大きな問題は無いみたいだ。」
「そうなんだ。良かった~。」
なのはとユーノはそっと胸を撫で下ろす。時の庭園で倒れてしまったソーフィヤと助かったばかりのアリシアの事を、二人も心配していたからだ。
なのはは安心した素振りを見せた後、真面目な表情になってクロノに問いかける。
「あのね、クロノくん。フェイトちゃん達の事なんだけど…。これからどうなるのかな…?」
「…そうだな。プレシアは今回の事件の主犯、フェイトは協力者という扱いになるだろうからな。テロ行為とテロ幇助で実刑判決を受けて、最悪数百年単位の幽閉になるのが普通だ。」
「そんな…!」
なのはが、強いショックを受けた顔をする。するとクロノは「だが」と付け加える。
「だが、フェイトは元々自分の意思でこんなことをした訳じゃないからな。その証拠も揃ってる。絶対に無罪を勝ち取るさ。」
「そうなんだ!良かった…!」
「それに、プレシア・テスタロッサも、上手くいけば助けられるかもしれない。」
「え?プレシアも?」
クロノの発言を、ユーノは疑問に感じる。プレシアは事件の主犯であるのに、何故助けられるかもしれないのだろうか。
「まあ、考えてる通り、今回の事件については弁明の余地はない。けど、26年前の駆動炉事件の方で、ある事実が分かったんだ。」
「ある事実?」
「26年前の駆動炉事件の裁判に使われた資料、その閲覧できる部分の複数箇所に、明らかに改竄されてる点が見つかったんだ。」
「え!?嘘が書いてあるの!?誰がそんなことを!」
「多分、当時のプレシアの上司と上層部の一部、それに一部の裁判官が手を組んで、プレシアを貶めるために仕込み、改竄したんだと思う。」
「クロノ、つまり駆動炉事件については…」
「ああ、これから出てくる資料にも依るが、冤罪で罪を被せられた事が証明できるかもしれない。そうなれば、冤罪が彼女を追い詰め精神に異常をきたし、今回の事件を起こしてしまった、と話を繋げる事が出来る。」
「そうしたら、ちょっとは考えてくれるのかな?」
「ああ、恐らく情状酌量が入ることになるだろう。そうなれば、監視下での数年奉仕、及び管理局での捜査協力等の執行を経て、元の生活に戻ることも可能になるだろう。」
「アリシアはどうなるんだい?」
「アリシアはそもそも、協力云々の状態じゃなかっただろう?まあ、流石に本人って言うと死者蘇生が何だとか大変なことになるから、プロジェクトF.A.T.E.の2例目ってことにすると思うが。」
「でも、もしそうできたら、フェイトちゃん達も家族でちゃんと暮らせるようになるんだね!」
一先ずフェイトにも家族と過ごせる未来があるということを知り、なのははとても嬉しくなっていた。そうなってくれたら、もっと笑ってくれるんだろうな、となのははそっと考える。
そのなのはの前を歩いているクロノは、なのはの様子に反して難しい顔をして思い詰めた雰囲気を醸し出している。
「寧ろ、難しいのはソーフィヤなんだ。どう説明したら良いものか…。」
「そのまま説明しちゃダメなの?」
「いや…ジュエルシードが地球に落ちました。落ちたところにいた幽霊の願いを叶えました。ジュエルシードが人間になりました。ついでに全部のジュエルシードを操作できます。なんて正直に言えると思うか?」
「まあ、確実に嘘だと思われるよね…。」
「でもさ、本当の事が分かったときが大変じゃない?後でソーフィヤちゃんとクロノくん達が大変になるくらいなら、早めに言っといた方が良い気がするの。」
「…それも一理あるな。まあ、この件は後で艦長と相談しておくよ。」
はぁ、と一つ溜め息を吐いて、クロノは気分を入れ換える。そして、目だけを後ろに向けながら、なのはとユーノに語りかける。
「それよりも、ユーノはまだ分からないけど、なのはは何日かしたら地球に帰るんだろう?短い残りの時間、思い残すことの無いようにな。」
「うん!ありがとうクロノくん!」
「じゃあ、僕らはこの辺りで失礼するよ、クロノ。」
なのはとユーノはここで別れ、食堂のある方に向かう。一人残ったクロノは二人とは違う方向に進んでいく。
「よし、なるべく早く出来ることは終わらせてしまおうか。」
そう言って一人、資料室の方へと進んでいった。
無印編はあと1話で終了予定です。
早くデバイスとか出したい…