ロストロギアの少女   作:幽々やよい

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大変長らくお待たせいたしました。

最新話になります。


第20話 思いがけない廻り合いなの

 

 

 

 

「周囲空間状況安定。艦長、まもなく本局に到着します。」

 

 

「了解。船員各位に通達。本艦はまもなく本局次元港に到着します。総員、着港準備を急いで!」

 

 

「「はいっ!」」

 

 

 リンディの指示を受け、艦橋にいる船員達が各自の仕事の最終調整に入る。

 

 

 地球、海鳴市を出立してから数日。艦船アースラは、目的地である時空管理局本局へと近付いていた。

 

 

「いよいよですね、艦長。」

 

 

「クロノ。そっちの準備は、もう大丈夫なのかしら?」

 

 

「ええ。滞りなく終えています。あとは到着を待つのみです。」

 

 

 収集したデータの整理と引き継ぎの準備を終えたクロノが、リンディの背後から姿を現す。

 

 

「エイミィは彼女達の所?」

 

 

「はい。着艦後も含めて、彼女には4人と同行するように指示してあります。」

 

 

 プレシア、アリシア、フェイト、ソーフィヤの4人は、着艦後にまず身体検査のため医務室に移動、検査後に各々が入る部屋に送られる流れになっている。

 その同伴として、リンディはエイミィに指示を出していた。その為、他の船員で彼女の分を含めた作業をこなしている。

 

 

「まもなく本局に着くけれど、寧ろここからがスタートね…。着艦して引き継ぎを終えてから、色々と動き始めないと。」

 

 

「そうですね…。艦長は、引き継ぎ後に関連各所への連絡と面会。僕も今回の裁判に関する資料の調査と精査を進めなければいけません。」

 

 

「…何事も無いと良いけれど、そんな簡単にはいかないわよね。懸念材料も多いし。」

 

 

「間違いなく妨害行為等はあるでしょう。レティ提督のお力添えもありますし、ある程度は防げると思いますが…。」

 

 

「けれど、それに頼りっきりになっちゃダメね。現状彼女達を守れるのは、私達だけ。そこを十分に注意していきましょう。」

 

 

「はい、艦長。」

 

 

 二人は真剣な表情で、正面の大型モニターを見る。艦は先程よりも歩を進め、今次元港の入り口を潜ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────

 

 

「…はい、引き継ぎの全内容、確認いたしました!一一○○、只今をもって、リンディ・ハラオウン提督より業務を引き継ぎいたします!」

 

 

「確認しました。アースラの整備、お願いしますね。」

 

 

「はいっ!失礼致します!」

 

 

 そう言うと、作業服姿の女性は港内の事務室に向かって駆けていく。

 本局次元港に到着して20分。ようやく引き継ぎを終えたリンディは、少し伸びをしてからふぅ、と息を吐いた。

 

 

(さて、仕事を…と言いたいところだけど、どうしようかしら。レティと会うのは14時からだし、ソーフィヤ達にもクロノとエイミィが付き添いで行ってるし…。)

 

 

 リンディは端末を操作し、現在の時間を確認する。予想よりも早く引き継ぎが終わったものの、食事等の時間を考えると今手元にある仕事を終わらせるには少々時間が足りなかった。

 

 

(そうね…。12時頃には身体検査も終わるはずだし、昼食もかねてクロノ達と合流しようかしら。確か、第2検査室で検査をしてたはずね。)

 

 

 そう考え、リンディは身体を入口の方へ向きなおし、第2検査室へ向かおうとする。

 

 

 

 

 

 

 

「おや、これはなんとも、奇遇ですねぇ。」

 

 

 しかし、背後からかけられた声により、その一歩が踏み出されることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!あら、ごめんなさい。気付くのが遅くなってしまって。確か、初めまして…でしたよね?」

 

 

 その声に一瞬顔がこわばるが、すぐに接待用の表情へと切り替え、声がした方へ振り返る。そこには白衣を着た、長身で痩身の男が立っていた。

 その男は笑顔であったが、その表情からは、どことなく陰を感じさせている。

 

 

「ええ、お会いするのは初めてですよ。初めまして。私は中央技術開発局の第2局長、アバント・オベローンです。」

 

 

「こちらこそ、初めまして。艦船アースラ艦長、リンディ・ハラオウンです。」

 

 

 両者は、互いに握手を交わす。本来友好の意を示す右手の握手であるが、事前情報の事もあり、リンディはアバントに対して一切気を抜くことができない。

 

 

「アバント局長は、こちらには何かご用事で?」

 

 

「はい。本局の方から呼び出しがありまして…。本局に来たついでに局内を見学させていただいていたところ、偶然リンディ提督にお会いした形でして。」

 

 

「成る程。偶然ですか。」

 

 

 偶然。真偽のほどは分からないが、悪い冗談だと思った。出来ればこのような偶然は、起こってほしくなかった。

 アバントの表情は、最初の笑顔のまま全く動いていない。塗り固められた笑顔の裏側、彼の本心は、全く窺うことが出来ない。

 

 

「そう言えば、リンディ提督は今回の第97管理外世界での任務で、遺失物(ロストロギア)『ジュエルシード』の完全な回収に成功したとか。」

 

 

「!?…え、ええ。確かに『ジュエルシード』の回収は成功しました。…その話はどこから聞かれたんですか?」

 

 

「いや、本局内で少し耳に挟んだ程度ですよ。」

 

 

 ありえない。報告を上げてから僅かな期間しか経っていないにも関わらず、全く無関係な彼の耳に入るほど情報が流出することは無いだろう。

 仮に任務成功の情報が漏れたとしても、ロストロギア等の重大情報は厳重に管理される筈だ。

 

 

 間違いない。彼はクロだ。そして、管理局内部に、彼への内通者が存在している。

 こうして直接接触をしてきたということは、リンディから直接情報を抜き取ろうという考えなのだろう。

 

 

「ああ、今の話し方だと誤解を招いてしまいますね。本局勤めの仲の良い士官から、今回の話を聞いたのですよ。」

 

 

「となると、その方は結構高位の方ですか?」

 

 

「ええ、それなりには。古くからの付き合いでして。」

 

 

 その人物の詳細は一切明かさず、あくまで抽象的な表現に終始する。

 この話し方から見るに、こちらから彼の情報を引き出すことは難しいだろう。

 逆に、彼から情報を引き出されてしまう可能性が高い。相手の話に引き込まれないように注意しなければ。

 

 

 その後も、アバントとの対話は続いた。

 警戒しながら話をしていたが、途中から世間話に内容が変わった事で、少しは気持ちを楽にして話すことが出来た。

 無論警戒はしていたが。

 

 

 話し始めてから5分くらい経つ頃、ふとアバントがリンディに尋ねた。

 

 

「そう言えば、最初に声をお掛けした時、何処かに行かれようとしておられましたが、その用事は大丈夫ですか?」

 

 

「あら、そう言えば…。ごめんなさい、すぐに行かなければいけない事がありますので、この辺りで失礼致しますね。」

 

 

「いえいえ、こちらこそ急にお声をかけてすみませんでした。どうぞお気をつけて。」

 

 

 リンディはドックを出て、第2検査室に向けて歩きだす。少し時間が経ってしまったが、まだクロノ達は検査室にいることだろう。

 アバントと意図せず接触し対話したことを基に、クロノやレティ達と改めて彼への対応を練らなければ。

 そう考えながら、リンディは歩みを早めた。

 

 

 アバントはそのままその場所に留まり、リンディが出ていった方向を眺めていた。

 顔に笑顔を貼り付けたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────

 

 

 少し後の時間、中央技術開発局。

 

 

 アバントはあのあと開発局に戻り、自室へと向かっていた。

 

 

 すると、前から一組の男女がこちらに向かって歩いてくる。

 

 

「局長ォ!お戻りになられたのですかぁ!」

 

 

「局長、お帰りなさいませ。テーブルの上に研究資料が置いてありますから、後でご確認をお願いします。」

 

 

「ああ、ブンビー室長、マリカ室長。了解した。あとで確認しておくよ。」

 

 

 そう言うと、アバントは自身の研究室に入る。自分で紅茶を入れ、席につき一口啜ってからほぅ、と一息つく。

 気分を変えたのか、はたまた違う理由か。その顔に、笑みはない。

 

 

「考えてはいたが、彼女達にはやはり警戒されていたか。何か情報が得られるかもしれない故に、リンディ・ハラオウンと話してみたが…ほとんど何も得られんかったな。」

 

 

 そう言うと、アバントは傍らに置かれていた提出書類に目を通しつつ、呟く。

 

 

「彼女の反応を見るに、()の事を相当相当警戒していたな。反応を隠していた様だが、バレバレだ。まあ仕方あるまい。26年前の事実がある。自分から情報を抜き取られないように気を付けていた様だが…情報収集の方法ならいくらでもある。そろそろか。」

 

 

 そう言うと、部屋の扉がノックされ、作業服を着た男が室内に入ってきた。

 アバントはファイルを置き、紅茶をもう一口啜る。

 

 

「失礼致します。ご依頼の物をお納めに参りました。」

 

 

「ご苦労。下がってて良いぞ。」

 

 

 男はアバントにメモリーチップを渡すと、すぐに部屋の外へ出ていく。

 アバントは受け取ったメモリーチップを小型端末へと接続し、内部のデータを移行させた。

 

 

「アースラに残されていた履歴と修復したデータは、こんな感じか…。予想より少なめではあるが、まあデータの足しになるか。にしてもあの反応、もしかしたら俺の狙いを少し誤解している可能性があるな…。まあ、それならそれだ。彼女達の思惑に沿って動いてみるのもありだろう。」

 

 

 そう言うと、アバントは書類を手早く終わらせ、小型端末のデータ分析に取りかかる。

 静かな部屋の中、彼のキーボードを叩く音だけが鳴り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿が遅くなり申し訳ございません…

活動報告の方に、投稿が遅くなった理由を記載しております。

気になる方はご確認下さい。
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