ロストロギアの少女   作:幽々やよい

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半年ほど更新できませんでしたが、生存しておりました。

久しぶりの更新になります。
今回、管理局の設定について、資料が不足している部分に独自設定があります。


第22話 見えざる攻勢なの

 ソーフィヤとアリシアがデバイスを受け取ってから1週間。

 本局内修練場の一室には、剣撃と砲撃の音が木霊していた。

 

 

「行くよ、ネージュ!御神っ!」

 

 

《OK,my lady. Zwillingsschwert》

 

 

「なんの!コール、スロット6!」

 

 

《Call,Sword star.》

 

 

「「てやぁぁぁぁぁぁ!」」

 

 

 両者ともに剣を持ち、斬りかかる。

 突きに振り下ろし、かちあげ、薙ぎ。様々な攻撃が展開される。

 剣技についてはソーフィヤに一日の長があるが、アリシアは数十合の打ち合いの後、何とか直撃を避け鍔迫り合いに持ち込んだ。

 

 

「上手く避けるね!でも、剣では私に勝てない!」

 

 

「重々承知だよ!だからこそ避けるのさ!フォトンランサー!」

《Photon Lancer.》

 

 

「っ!チッ!」

 

 

 鍔迫り合いの状態で放たれたフォトンランサーを避けるため、ソーフィヤはアリシアの剣を蹴り反動を利用して距離をとる。

 それを逆手に、アリシアは剣をしまい遠近両距離を狙える銃を展開していた。

 

 

「距離を離されちゃったか…。ネージュ!」

《Shot form.》

 

 

「銃撃戦なら同等!今度はこっちから行くよ、ソーフィヤ!フォトンランサー、マルチショット!」

《Photon Lancer Multishot.》

 

 

「来なさい、アリシア!ネージュ行くわよ!ヘイルシューター、カルテットショット!」

《Hail Shooter Quartetshot.》

 

 

 両者とも多数の直射弾と誘導弾を展開し、砲撃戦を開始する。

 弾幕がぶつかり合う度に電気と氷が破裂し、周囲に拡がっていく。その間に距離を詰めたり離したりと、攻めの駆け引きを行っていく。

 

 

 30数発ほど撃ち合った後、ソーフィヤがボソッと言葉を漏らす。

 

 

「弾幕を撃ち合って弾けさせたことで、周辺の空間一体に私とアリシアの魔力が大きく拡がってる…。どう、集束できそう?」

If this is the case, there is no problem.(これならば問題ありません。)You will be able to shoot enough.(十分撃つことは出来るでしょう。)

「了解。じゃあ行くよ!」

 

 

 ソーフィヤが杖を構え、周囲に4つの環状魔法陣が発生する。構えられた杖先には周辺に散布されていた魔力が集束され始めていた。

 

 

「…!?まずい、あれ集束系魔法(ブレイカー)撃つつもり!?このままじゃ撃ち落とされちゃう。フォーチュンドロップ、私たちも対抗するよ!」

OK,my master.(了解です、我が主。)Start preparing.(準備を始めます。)

 

 

 アリシアも負けじと砲撃準備を始める。

 足元に魔法陣が展開され、自身の内側から魔力を抽出し始める。

 

 

 十数秒して、互いに砲撃を撃つ準備を終える。

 ソーフィヤは目の前に展開された直径2mほどの魔力球に対し杖を振りかぶって、アリシアは二丁の銃をソーフィヤに向けて構え直す。

 

 

 

 

「エーリヴァーガルッ!」

「プラズマー!」

 

 

 

 

「ブレイカー!」

《Elivágar Breaker》

 

「スマッシャー!」

《Plasma Smasher》

 

 

 

 電気と氷の2つの魔力砲撃が衝突する。

 圧倒的破壊力を誇る2つの光線は、衝撃波を吹き荒らし周囲を破壊していく。

 途中で互いの光線が融和したのか、接触部を中心に大きな爆発が発生する。

 周囲を完全に覆い尽くすような砂ぼこりが起こった後、段々とそれらが晴れていく。

 爆発後に残ったのは抉れて氷に覆われた地面と、ボロボロのバリアジャケットで肩で息をしながらも何とか立っているソーフィヤ、それと撃墜されたアリシアの姿だった。

 

 

『そこまで!二人ともお疲れ様。』

 

 

 スピーカーを通して、クロノの声が届く。

 ソーフィヤはデバイスを解除してアリシアに駆け寄り、アリシアはソーフィヤの肩を借りつつ立ち上がった。

 

 

「いつつ…あー、負けちゃった!悔しい!」

 

 

「いや、私も結構危なかったよ…。鍔迫り合いからのフォトンランサーは、正直想定外だったし…。」

 

 

 お互いに試合の感想を述べつつ、互いの身なりを直す。

 ある程度直し終えた所でクロノ達が修練場まで降りてきて、二人に話し始めた。

 

 

「二人ともお疲れ様。中々良い試合展開だったと思う。」

 

 

「そうだね。二人ともデバイスとの連携もよく取れてたし、自分の長所を見極めて攻守を行えてたよ!」

 

 

「まあ、勿論改善点もあるけどな。取り敢えず一人ずついこうか。まずはソーフィヤからだな。」

 

 

 うん、と返事をしつつ、ソーフィヤはクロノに視線を向ける。

 

 

「ソーフィヤはやはり、剣を使うときの捌きが上手いな。緩急の付け方と身体の動かし方は、僕以上かもしれない。で、問題は…」

 

 

「うん。」

 

 

「やはり、得意分野になると視野が狭くなりがちな傾向がある所だな。クロスレンジからロングレンジに変わったとき、不意打ちの攻撃だったとはいえ完全に動きが後手に回ってただろう。あそこで刀を蹴って距離を取らなくても、もう少し少ない動きで避けられた筈だ。」

 

 

「確かに。もう少し周囲を見れてれば、あそこまで大きく動く必要は無かったかも。」

 

 

「だから、今後は得意分野での視野の拡張が課題だな。クロスレンジを中心に、訓練を進めていこうと思う。」

 

 

「うん、分かった。」

 

 

 ソーフィヤが頷くのを確認してから、クロノはアリシアの方に向き直る。

 

 

「次は、アリシアだな。アリシアは、クロスレンジもロングレンジも、全体を良く見れていたな。だからこそソーフィヤに不意打ちの一撃を入れて、レンジ転換に持っていけていた。」

 

 

「うん。となると、私の課題は…」

 

 

「ああ。アリシアの場合は、純粋にクロスレンジの戦闘、特に剣の技術不足だな。ソーフィヤの攻撃を何とか捌いてはいたが、姿勢を崩されたり攻め込まれる場面も見受けられた。今後は地道な練習を基に、技術を固めていこうと思ってる。」

 

 

「分かったよ。地道な練習は得意だから!」

 

 

「よし、それじゃあ今日の訓練は終わりだ。後はゆっくり休んで、体力を回復してくれ。」

 

 

「「はい!」」

 

 

 二人の返事を確認し、クロノとエイミィは修練場を出る。次の予定の為、執務室へ向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

 

 

 

「それにしても、二人とも強くなったよねぇ。これならランク試験も突破できそうだね。」

 

 

「いや、まだまださ。実力云々の前に、まだ社会的知識で覚えなきゃいけないこともある。これからそこも詰めていかなくちゃいけない。」

 

 

「そうだね。二人とも、ちょっと特殊な環境にいるし…。でも、その言葉が出るってことは、実力はある程度評価してるって事だよね?」

 

 

「まあな。あの二人の知識の吸収速度は、かなり早い。恐らく僕よりも。だからこそ、あの二人はもっと成長できると思うんだ。」

 

 

「クロノ君なりの期待って訳だね。まあ、あの二人には頑張ってほしいよね。」

 

 

 そんな話をしながら執務室に到着し、二人とも席につく。

 いざ作業を始めようと資料を開いた際に、クロノはある異変に気付く。

 

 

「さて、作業を…うん?」

 

 

 クロノは書類作成の為データにアクセスしようとするが、昨日まで接続できたファイルに何故か接続出来なくなっていた。

 もしや、と思い別のファイルも開いてみるが、そちらも開けなくなっている。

 別の、また別の…。順々に開いていくものの、どれも似たような状態になっていた。

 突然多数のファイルを開き始めたクロノに、エイミィは疑問を感じる。

 

 

「?どうしたの、クロノ君?」

 

 

「“The authentication credentials entered are not valid.(入力した資格証明が無効です)”…やられたか。エイミィ、艦長は今日は書類仕事の予定だったよな?」

 

 

「そうだけど…どうしたの?」

 

 

「やられた。駆動炉事件の裁判資料に、閲覧制限をかけられた。」

 

 

「!それって、裁判資料だけ?」

 

 

「いや、関連資料含め全てだ。僕や艦長じゃ閲覧できない階級の制限がかかってる。」

 

 

「そんな…!取り敢えず、艦長に連絡を入れるね!」

 

 

「ああ、頼む。…一体誰の差し金だ?何を狙っている?」

 

 

 クロノはそう呟きながら、手早くデスクの荷物をまとめる。

 そしてエイミィが連絡を終えるのを待ち、リンディの執務室へと向かった。

 

 

 

 

 ──────────────────

 

 

 四半刻後。

 リンディと合流したクロノ達は、先程の内容についてリンディに伝えていた。

 

 

「…という訳なんです。」

 

 

「そう。いつか手を出してくるとは思ってたけど、まさか情報を遮断してくる形で妨害してくるなんて…。」

 

 

「想定していた中で、最悪に近い状態になりましたね…。情報の抹消に比べれば、まだましですが、制限をかけた者に内部の情報を書き換えられてしまっている可能性もあります。」

 

 

「そうね…。一先ず、私達が相対する存在が、組織の中でも上の階級にいる者だと知ることは出来たけど…。今の段階で私達が打てる手は防がれてしまったわ。」

 

 

 リンディはそう話すと、溜め息をつく。

 以前アバントと会話した際に彼の協力者がある程度上位階級の人間であるとは分かっていたが、今回の件でその協力者が自分より上の階級である事実が改めて突き付けられたからだ。

 

 

 リンディ自身提督というかなり上位の階級であるが、それより上位だと対象となる人物はかなり限られてくる。

 

 

「二等海佐から一等海佐クラスの権限を持ってる私でも開けないとなると、かなり面倒なことになりそうね。」

 

 

「面倒な事…ですか。」

 

 

 エイミィはリンディの発言の真意をいまいち把握できなかったのか、少し曖昧な返事を返す。それに気付いたクロノが、リンディの言葉に補足する。

 

 

「母さんよりも上、となると、残るは将官しかいない。しかも、自分達が今回の件について調べていることを、これだけ早く察知して手を打っている。ここまで来れば、自分達が相手をしているのが分かるだろう?」

 

 

「…なるほど、(次元航行部隊)の少将以上にアバントの協力者がいるって事だね。」

 

 

「そういうことよ。だけど、こうなると私やレティだけでは、フォローが難しくなるわね…。」

 

 

「立場のバックアップもそうですが、裁判の資料についてもかなり辛い状況です。今まで作成していた分の資料では明らかに証拠として不十分ですし、そもそもその信頼性を上げる為の証拠が無い。」

 

 

 八方塞がりね、とリンディは呟き、砂糖入り緑茶を口にする。口の中に緑茶の渋さとそれを覆う砂糖の甘味が広がるが、リンディの表情は晴れない。

 

 

 このままでは、またアリシアとフェイト、プレシアを引き離すことになってしまいかねない。アリシアとフェイトはまだ何とか執行猶予等まで持っていけるかもしれないが、プレシアは間違いなく冤罪が晴れることはない。寧ろ、今回の件も上乗せで有罪判決が出る可能性が高い。そうなってしまえば、プレシアは良くて無期懲役、悪ければ極刑だ。

 かつて冤罪で引き裂かれた家族を、再び同じ状況に陥れたくはない。その思いはリンディだけでなく、この場にいるクロノとエイミィ、協力してくれているレティを含め、関わっている多くの人物が持っている。

 

 

 だが、状況が許してくれない。

 将官クラスの誰かが関わっている以上いつ協力してくれている者達に被害が及ぶか分からず、そもそもデータも…

 

 

「…紙媒体」

 

 

「え?」

 

 

「クロノ、確か裁判記録は電子データと同時に、紙媒体でも作成されていたわね?」

 

 

「はい、電子データと共に作成されています。電子データは本局のメインサーバーに、紙媒体は無限…なるほど。」

 

 

「…え?クロノ君、どういうこと?」

 

 

「いや、すっかり自分達の思考が凝り固まってしまっていたことを認識させられたよ。エイミィ、本局の裁判所で裁判が行われた後、判決に関する書類や判決そのもの、その書証を裁判記録として保存するんだ。時空管理局では電子データと紙媒体の二つでデータを作成して、電子データは本局のメインサーバーに、そして紙媒体は無限書庫にそれぞれ保管されている。」

 

 

「…あっ!つまり、今回データ閲覧を制限されちゃったのは電子データだけど、紙媒体の方ならまだ閲覧出来るかもってこと?」

 

 

「いや、流石にそこまで抜けてはいないだろう。多分紙媒体も閲覧は出来なくなっている筈だ。だが、紙媒体はすでに紙に印字されていて文字を書き直したりする事は出来ない。誰かに協力を依頼してデータが閲覧できるようになったとき、紙媒体だけが唯一書き換えられた危険性のない、確実な証拠になるんだ。」

 

 

「その通りね。このままここで燻ってしまっていては、何も進まない。データ閲覧の件は、私の方で何とか出来ないか進めておくわ。」

 

 

「承知しました、母さん。では、こちらは改めて無限書庫の方を調べてみます。」

 

 

 そう述べるクロノの隣で、エイミィはふとあることを思いだす。

 

 

「って、クロノくん!無限書庫って文字通り膨大な資料が集まってるでしょ?今から調査を進めて裁判に間に合うの?」

 

 

 その問いかけに対して、クロノはあくまで冷静に返答する。

 

 

「間に合うか、じゃない。間に合わせるんだ。今回の裁判は一人の人間の命と、一つの家族の未来がかかっている。絶対に負けられない。幸い、レティ提督から人員をお借りしているし事情もある程度把握してくれているから、流れでお願いすれば協力してくれるだろう。それに、完全に無策という訳では無い。」

 

 

「?それってどういう…?」

 

 

「…本当はまだ呼び出すつもりでは無かったんだがな…」

 

 

 クロノは目を閉じ、片手で頭を抱える。その意味が分からないエイミィは、その様子に首を傾げている。

 リンディはその考えを察し、真剣な表情でクロノの顔を見つめ、次の言葉を待つ。

 

 

 2秒ほど困り顔をしてから目を開け、真剣な表情でリンディを見返しながら口を開く。

 

 

 

 

 

「緊急の為、致し方無いでしょう。地球、海鳴市から、ユーノ・スクライアを呼び戻します。」

 

 

 

 

 

 




次元航行部隊の階級はほぼ情報が無かった為、自衛隊等の階級を参考に海佐、海尉クラスを作成してしまいました。

執筆が間に合えば、明日もう1話投稿するかもです。
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