ロストロギアの少女   作:幽々やよい

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2話目です。

少女がアースラメンバーと関わります。


第2話 少女の『名前』なの

 宇宙の軌道上に存在する時空管理局の次元航行船、アースラ。その中にある、アースラ艦長リンディ・ハラオウンの自室。和風装飾の施されたこの部屋の中に、部屋の主であるリンディとクロノ、エイミィ、なのは、ユーノ、そして先程魔力爆発現場から拾ってきた少女の6人がいた。彼女たちはテーブルを挟んで2列に分かれており、片方にはリンディを真ん中にクロノとエイミィ、反対側には少女を真ん中になのはとユーノが座っている。

 少女以外の5人のうち、なのはとユーノは移動中に、リンディ達は全員が顔を合わせたときに自己紹介をしている。

 

 

「それで。」

 

 

 リンディは、手元にある緑茶に角砂糖をボトボトと入れていく。その様子を見て、リンディと少女以外の皆、特に普段から緑茶に親しみのあるなのはが苦い顔をした。リンディはそれを気にすることなく話を続ける。

 

 

「その娘が魔力爆発の現場にいたっていう娘ね。」

 

 

「はい、そうなんです。」

 

 

「なるほど……。」

 

 

 管理局側の3人は、少女のことをまじまじと見る。因みに少女はここに来る前になのはから服を着せられているので、クロノが見ても何の心配もない。深蒼の髪と真紅の目、それに対する真っ白な肌。そんな特異な外見であるため、3人は興味深そうに彼女を見る。

 

 

 とここで、リンディが何かを思い出したように、少女に対して質問をする。

 

 

「そういえば貴女の名前を聞いてなかったんだけど……。何て言う名前なのかしら?」

 

 

 リンディは普通に名前を聞いただけなので、すぐに返答が返ってくると考えていた。しかし、

 

 

「……名前……?」

 

 

 少女から返ってきたのは、『名前』という言葉に対する質問であった。予想だにしなかった答えに、リンディは少し驚く。ただ、それ以上に

 

 

「あれ!?話せたの!?」

 

 

 なのはがかなり驚いていた。驚くのも無理はない。何故なら、さっき海鳴市で彼女に質問したときには、質問に対して全く声を出してなかった上、「何か話して」と言って「みゃ」と返答されるなど、全くと言っていいほど会話が出来なかったのである。

 そんなことを知らないクロノが、なのはに何故驚いているのかを訊ねる。

 

 

「なのは、何故そんなに驚いているんだ?」

 

 

「地上で話したときは、全然会話が成り立たなくて……。さっきまでと違って会話できてたから。」

 

 

「そうだったのか……。なあ、君。何でさっきは話せなかったんだ?」

 

 

 クロノが少女に問いかける。すると、少女は遠慮もなくさらりと答えを告げた。

 

 

「女の子、質問、難しい。」

 

 

「えっ!?」

 

 

 少女の予想外の答えに、女の子=なのはが驚く。なのは自身はそんなに難しいことを聞いてないと思っていたからだ。

 

 

「なのは……。君は一体どんな質問をしたんだ……。」

 

 

「普通に「貴女は誰ですか?」っていう内容を聞いたんだけど……。」

 

 

 なのはの返事を聞いて、クロノはため息をつく。そしてこう話した。

 

 

「確かに問いかけとして間違ってはいないが、先ずは「名前は何ですか」とか答えやすい質問をするべきだろう……。誰ですか、は流石に突然では答えにくい。」

 

 

「あっ。か、考えてなかった……。」

 

 

 クロノから指摘を受けて、なのはは漸く自分がやっていたちょっとした間違いに気が付いたようだ。なのはの方の話が一区切りついたので、クロノは何故突然話せるようになったか、という話をまとめる。

 

 

「つまり、君はなのはの「誰ですか」という質問が分かりにくかったから答えられず話せなかった、ということで良いのか?」

 

 

「……。」コクコク

 

 

 少女がクロノの要約に対して頷く。どうやらただ単になのはの質問に上手く答えられなかっただけだったようだ。

 とりあえず、彼女が突然話せるようになった原因はわかった。だが、最初の問題である彼女の名前の件が全く進展していなかった。

 

 

「そういえば、名前の件がまだ終わってなかったですよね?」

 

 

「はっ!そうだったわ。『名前』の説明だったわよね。」

 

 

 ユーノに言われてリンディは本来の目的を思い出す。コホン、と一息ついて、少女に再び向き直し話始める。

 

 

「えっとね、名前っていうのは他の人と自分を区別するためのもので、他の人から呼ばれるものなの。例えば、私はリンディ・ハラオウンっていうんだけど、こんな感じで他の人から呼ばれてたっていうもの、ある?」

 

 

「……One。誰か、わからない。でも、呼ばれてた。」

 

 

 One。彼女はそう呼ばれていたという。One=1だが、何かの番号なのか、それとも考えたくはないが違法研究所等で使われる素体番号なのか。

 

 

 この事でリンディが悩んでいると、向かいに座っていた少女が突然左手を動かしなのはを指差す。いや、正しくは彼女のポケットにあるレイジングハートを指差していた。レイジングハートの持ち主であるなのはを中心に他のメンバーも、この少女の動きが理解できない。すると、少女はこう言い出した。

 

 

「……Seven、Ten、Thirteen、Sixteen、Seventeen、Twenty、Twenty-one。」

 

 

「ちょ、ちょちょちょちょっと待って!」

 

 

 いきなり話し出した少女に対して、リンディがストップをかける。リンディはこの少女の奇行があまりに突然すぎて、驚いて頭の回転が止まってしまっていた。そんな中、驚きつつも彼女の言葉を聞いていたクロノとエイミィは、彼女の言葉を思い出していた。

 

 

「Seven、Ten、Thirteen、Sixteen、Seventeen、Twenty、Twenty-one。」

 

 

「Seven……は地球の英語でいう7だよね。つまり、7、10、13、16……」

 

 

「ちょ、ちょっと待って!それって、なのは!」

 

 

「えっ!?私!?」

 

 

 エイミィの言葉をユーノが突然遮って、焦りながらなのはに話を振る。突然話を振られたなのはは驚くものの、頭を冷静に戻してエイミィ達の言葉を繰り返す。

 

 

「7、10、13、16、17、20、21……っ!それって私の封印したジュエルシードの番号!」

 

 

「「「!?」」」

 

 

 なのはの発言に、既に気がついて驚いていたユーノとこの場の流れを全く読めていない少女以外の3人が驚く。何故少女は、なのはがレイジングハートで封印した7つのジュエルシードの番号を知っているのか。いや、そもそも何故この件に全く関わっていなかった少女が、なのはのレイジングハートにジュエルシードがある(・・・・・・・・・・)ことを知っているのか。これは、彼女がもうそもそもわかっていたとしか考えることが出来ない。

 

 

 他の人からOneと呼ばれていたこと、知っているはずがないのになのはが持っているジュエルシード7つをその番号まで的中させたこと。

 リンディは1つの結論に辿り着く。理解する反面、信じられない、本当にこんなことがあるのか、といった感じの驚愕を隠しきれない。あくまで可能性ではあるが、絶対にない訳ではない。そう思いながらも、リンディは少女に訊ねる。

 

 

「貴女、もしかして……、ジュエルシードが変化した者なのかしら?」

 

 

「……そう。」

 

 

「「「「!」」」」

 

 

 リンディと少女を除いた4人は、リンディの発した問いによってその可能性に気がつき、そしてそれに対する彼女の返答に驚愕した。

 

 

 誰も想像できないだろう。例外を除いて明確な人格や意思を持たないロストロギアが、まさか人格や意思を持った人を造り上げるとは。

 

 

「えっ!?それって本当なの?」

 

 

「……本当。証拠。」

 

 

 彼女の額の真ん中が明るい水色に光る。そこには『Ⅰ』というローマ数字が浮かんでいた。これは明らかに他のジュエルシードが自らの番号を示すときと同じだ。つまり、この少女は本当にジュエルシードだということになる。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!君が本当にジュエルシードであるなら、何故君は人としての身体を持っているんだ!?」

 

 

 クロノが少女に対して問いかける。それに対する少女の返答は、至って簡単なものであった。

 

 

「……誰かの、願い、叶えた。人として、生きたい、思い、叶えた。そしたら、こうなった。」

 

 

「誰かの、願い……?」

 

 

 クロノは理解出来なかった。少女がいたのは廃寺(・・)魔力爆発現場(・・・・・・)だ。普通に考えて人がいるとは思えないし、もしも近くに人がいたとしてもあの魔力爆発に巻き込まれて無事ではすまないはずだ。少女の発言の真意を理解できないクロノに対して、予想外の所から補足が入ってきた。

 

 

「そういえば、この娘がいた廃寺って、確か噂話があった場所かも。」

 

 

「噂話?そんなものがあるの?」

 

 

「うん。えーっとね……。」

 

 

 なのはの呟きに反応したエイミィの発言に対して、なのはは返答する。そして、あの廃寺のある辺りの噂話について話す。

 

 

「そうなのか……。何にせよ、霊、までとはいかないものの強い執念、残留意思みたいなものが存在していた可能性はあるな。」

 

 

「その残留意思に反応してジュエルシードが発動、この娘が誕生したというわけね。」

 

 

 なのはの話を聞いて、他のメンバーは大まかに今回の原因について理解する。まあ、霊だったり執念、残留意思だったり、目で見ることが決してできない、本当に存在するのかもわからない物の関わる話であったため、完全に理解、納得することは出来なかったようだ。

 

 

 ここで、先程の事も踏まえてクロノはある事が気になり、少女へと問いかける。

 

 

「なあ、さっきなのはの持っているジュエルシードの場所を知っていたみたいだが、見つかっていない他のジュエルシードの場所はわかるのか?」

 

 

「……わからない。さっき、近く、あった。でも、今度、無い。だから、わからない。」

 

 

「……そうか。すまない、手間を取らせた。」

 

 

 要するに、なのはの持っているジュエルシードは至近距離にあるから気が付いたものの、近くにない他のジュエルシードの場所は同じジュエルシードでもわからないらしい。

 

 

 ただ、今回の話からこの場にいる少女がジュエルシードであることがわかった。しかし、彼女がジュエルシードであったが故に、まだ解決していなかったもう一つの問題が解決不可能となってしまった。リンディはそれに気付き、顔を悩んでいる表情に変え、頭を右手で押さえる。

 

 

「まだ色々聞きたいことはあるけど、とりあえず彼女がジュエルシード本体であることはわかったわ。でも、要するにそれはこの娘にちゃんとした名前が無いってことも意味しているわよね。」

 

 

「「「あっ……。」」」

 

 

「確かにそうなりますね、母さん。」

 

 

 そう、本来はまず名前を聞こうとしていたのだ。名前を知らないと交流の際に支障がおき、色々面倒になることが目に見えているから。しかし元から名前が無いとなると、誰かが名付けない限りこの問題が解決できなくなってしまう。そこで、リンディはあることを思いつきクロノに念話を通して相談する。

 

 

(ねえ、クロノ。この娘の名前が本当に無いのなら、一先ず私達が名前を考えて上げた方が問題解消へ進むと思うんだけど、どうかしら?)

 

 

(そうですね……。確かに最終的には名前が無いと色々不便になりますからね。彼女がジュエルシードであることから、この一件の後管理局等様々な場に向かうことがあると思います。その時名前がないと非常に不便なので、いいんじゃないですか?母さん。)

 

 

(そうね。なら、とりあえず彼女に提案してみるわ。)

 

 

 念話を通してクロノからいいんじゃないか、という意見をもらったリンディは、再び少女に向き合い、そして少女にこう訊ねた。

 

 

「ねえ、貴女は名前が無いのよね?この先名前が無いと色々差し支えるところがあるから、私達が貴女の名前を考えようと思うんだけどいいかしら?」

 

 

「……了承。」

 

 

「ありがとうね。さて、どんな名前がいいかしら……。」

 

 

 少女から了承を貰ったリンディは、少女に与える名前を考える。幾つかの案を頭の中で考えた上で、その中の一つをリンディは決めて少女に提示した。

 

 

「そうね……。ソーフィヤ。ソーフィヤはどうかしら?」

 

 

「……そー、ふぃや。ソーフィヤ。」

 

 

「ええ。どうかしら?」

 

 

「……。」

 

 

 少女から返答はない。しかし、少女の表情は先程までの無表情から僅かだが変化しており、少女からは歓喜の明るい雰囲気が感じ取れる。どうやらこの名前を気に入っているようだった。

 

 

 それを見たリンディは笑みを浮かべ、少女が名前を気に入ってくれたことを理解して安堵する。それから、リンディは少女を含めた5人に対してそれぞれ話し指示を出す。

 

 

「じゃあ、今からこの娘の名前はソーフィヤね。ソーフィヤ、貴女にはまだ色々と聞かなきゃならないことがあるの。暫くの間この船にいてもらうことになるんだけどいいかしら?」

 

 

「……大丈夫。」

 

 

「そう、ありがとうね。とりあえずソーフィヤの部屋とかを準備しましょう。エイミィ、よろしくね。」

 

 

「はいっ!」

 

 

「クロノはこの娘の諸検査が出来るように、各場所のスタッフに通達しておいて。私は関連書類等を作っておくから。」

 

 

「わかりました。」

 

 

「なのはちゃんとユーノ君は、ソーフィヤと話していてくれないかしら?多分彼女初めてでかなり緊張してると思うから、話しかけたりして緊張を解してあげて。」

 

 

「「はい!」」

 

 

「それじゃ、各自自分の持ち場に移動!」

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 かくして、アースラに新しいメンバー、ソーフィヤが加わった。

 

 

 この事が、ソーフィヤを新たにアースラのメンバーに迎えた事が、この後に起こる物語に大きく影響を及ぼすことはこの時誰も思っていなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ソーフィヤという名も、考えてこの名前にしました。タイ支部の人とは関係ありません。

無印編の筋書きは大方出来たので、後は文章力ですね……。
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