遅れ馳せながら、第3話投稿です。
あと、お気に入り60超え、ありがとうございます。
頑張って続きを製作していきます。
リンディによる命名の後アースラにて暫くの間暮らしていくことが決まったソーフィヤは、本来であれば検査室等で魔力や健康状態などの検査を行うところではあるが、片言でしか話せなかったり語彙が圧倒的に少なかったりと言語能力の面でかなり難が有った。
せめてちゃんとした文で言葉を話せないと対話が難航するだろうと考えたリンディやクロノは、一先ず健康診断のみを終わらせて魔力検査の前にエイミィ達アースラ船員に協力してもらってちょっとした言語習得の機会を作り、ソーフィヤの言語能力の強化を行っていた。
拾われてから1週間程経った今では、元々持っていた学習能力が高かったのか前よりもかなり流暢に話せるようになり、持っている語彙も増えていた。まあ、ちょっとした問題はあったが。
また、感情や表情が以前よりも表に出てくるようになり、明るく、よりマイペースな性格へと変化。社交性も強くなり積極的に他人と話すようになっていた。
それを踏まえて、そろそろ魔力検査をしても大丈夫だろうと考えたリンディは、クロノに命令してソーフィヤを迎えに行かせていた。その為クロノはソーフィヤの元へ向かうため、通路を進んでいた。
(確かこっちの方にある部屋で勉強をしていたはずだったが……。)
通路を更に奥へと進んでいく。目的の部屋へと辿り着いたクロノは、そのドアを開けて中へと入る。中ではエイミィがソーフィヤと一緒に、言語習得用の問題を解いていた。
「さて、この答えは4つの内どれでしょう?」
「うーん……、これ!」
「残念!こっちだ!」
「むー!」
……端から見たら、非常に微笑ましい光景が広がっている。少女に対して笑顔で接する女性と、問題を間違えて可愛らしい顔でむくれる少女。……いけないいけない、こんなことをしている場合じゃ無かった、と少々見とれてしまっていたクロノは頭を振って雑念を飛ばし、本来の用事を果たそうとする。
「二人とも、ちょっといいか?」
クロノが二人に声をかける。その声でクロノに気がついた二人は、席を立ってクロノの元へと駆け寄ってくる。
ソーフィヤは最初は運動能力にも難があったが、言語習得と同時に歩行訓練も行っていたことで、今では他の人と同じように歩いたり走ったり出来るレベルにまで回復している。
クロノに駆け寄ってきたソーフィヤは、クロノに話しかける。
「プリヴィエート、クロノ!」
「……その言葉は何処で覚えたんだ。」
先程言っていた問題とはこの事、ソーフィヤがいつの間にか誰も教えていないロシア語を少し覚えていたことである。
最初にこの事が判明したのは3日前、クロノと母親のリンディが話しているのを見つけてソーフィヤが歩きよってきた時だ。ロシア語をいきなり話したソーフィヤにビックリして、クロノは驚きを隠せず、リンディは変に噎せて飲んでいたお茶を鼻腔に流して激痛を味わっていた。
その時はビックリしていて聞き忘れたが、クロノはソーフィヤがいつ覚えたのか気になっていた。クロノからの質問に対して、ソーフィヤはこう答える。
「え?うーんとね、なのはから名前には由来があるって教えて貰ったから、私のはどんなのかなーって思って調べてたら覚えてた。」
ソーフィヤは言語習得にかなり真剣に臨んでおり、自ら色々調べて知識を身につけるようになっていた。その為にソーフィヤに日本語を調べる目的の通信機器を渡したのだか、近頃地球・ミッド問わず教えてない知識を知っている事態が起こっている。
ただ通信機器だけでは日本語等以外の情報は調べられないようにしているので、何かしらを使って地上のネットワークに繋げたのだろう。『何かしら』を考えたくもないが。
「あまり機械に無理させないでくれよ。」
「わかってるってー。」
クロノの心からの願いに対するソーフィヤの返答は軽い。恐らく守る気はなく、その内破るだろう。
ここで完全に流れから取り残されてしまっていたエイミィが、クロノに対して問いかける。
「で、クロノ君、何か用事があったんじゃないの?」
エイミィに言われて話が逸れてしまっていることに気がついたクロノは、コホンと一度咳をして気を一新させてから二人に本題を伝える。
「ああ、艦長がそろそろ魔力検査をやっても大丈夫なんじゃないかということで、二人を迎えに来たんだ。」
「あ、そうだったんだ。」
クロノとエイミィがこのように話を進めている時、ソーフィヤは頭に疑問符を掲げて首を傾(かし)げていた。
「魔力検査……?」
「ああ、ソーフィヤにはまだ言ってなかったな。」
ソーフィヤがそもそも何も知っていなかったことを思い出したクロノは、簡潔に内容を纏めソーフィヤに教える。
「言ってみれば、魔力を持っているかどうかを調べるんだ。」
「んー……。つまり魔力の適性検査ってこと?」
「そんな感じだが……よくそんな言葉を知ってたな。」
「頑張って覚えたから!」
エヘン、と胸を張る少女に対し、エイミィがえらいえらいと頭を撫でる。かなり微笑ましい状況だがこのままでは埒があかないと考えたクロノは、その流れを一旦区切って事態の打開を図る。
「とりあえず、艦長が待っているんだ。早く向かうぞ。」
「「はーい。」」
3人はやっと検査室へと向かっていった。
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検査室に着いた3人の内、ソーフィヤのみが検査室に入っていき、残ったクロノとエイミィは部屋の前にいたリンディと話をしつつソーフィヤの検査が終わるのを待っていた。
「それにしても、若干イレギュラーではあったもののソーフィヤの学習能力はすごいわね。」
「確かに……。目を見張るものがあります。」
「1週間でかなり言葉が流暢になりましたからね。」
「あれだけ学習能力があるのなら、早い段階で防御魔法を教えた方がいいのかしら?」
「そうですね、ソーフィヤ自身がジュエルシードということで直接狙われる可能性もありますから、教えた方がいいと思います。」
「そうよね。クロノ、もしソーフィヤに魔力があったら、空いている時間でいいから簡易的な防御魔法を教えてあげて。」
「わかりました、艦長。」
そんな風に話している内にソーフィヤの検査が終わり、ソーフィヤが検査室の中から出てくる。笑顔で部屋から出てくる様子を見ると、どうやら何の問題もなく検査を終えられたらしい。
「艦長、無事滞りなく検査を終えました。此方が結果です。」
「了解しました。ありがとうね。」
リンディは、ソーフィヤと一緒に部屋から出てきた検査の担当者から詳細情報を纏めた書類を受けとり、それにざっと目を通す。
資料を見る限り、どうやら魔力自体はソーフィヤにもあるらしく、リンカーコアの反応があるという事が記されている。しかし、その後の記述の中にどうしても無視することが、看過することが出来ない記述があるのをリンディは見つけてしまう。ソーフィヤにその事をどのように伝えようか、とリンディは考える。
(これは流石に伝えなくちゃ不味いわよね……。でも、
最終的にその時のソーフィヤの反応を見つつ判断しようと考えたリンディは、その上で結果を伝えるためその場にいる全員を促し、纏まって艦長室へと移動した。
少しして、艦長室に検査に関わっていた4人とこれからも長く関わると思うからという理由で呼ばれたなのはとユーノの二人を含めた6人が集まる。以前のように管理局側とソーフィヤ達で向かい合い座った事を確認して、リンディが資料を見つつ検査結果を話す。
「それじゃ、今回の結果を伝えるわ。検査結果は魔力有り。リンカーコアもしっかり存在が確認されていて、正確な値は他の検査が必要だけどかなり魔力がある方らしいわ。」
「本当!?じゃあ、私もなのはやクロノみたいに魔法使えるの!?」
「ええ。練習を積めば使えると思うわ。」
魔力とリンカーコアがあると聞いて、ソーフィヤがかなり嬉しそうな表情をして上機嫌になる。どうやらクロノやなのはと同じく魔法を使えるという事が、かなり嬉しかったようだ。
そんなソーフィヤの様子を見て、他の5人も笑顔になる。しかし、リンディは少ししてから表情を変え、少々深刻な雰囲気で話を続ける。
「けど、この検査で幾つかの問題点も見つかったの。」
「問題点……ですか?」
ただ魔力を調べるだけのこの検査で、問題点なんて発生するのだろうか。そういった考えがリンディを除く5人の頭の中に浮かぶ。その中でふと上がってきたエイミィの問いに対して、リンディが答える。
「ええ。普通はないと思うかもしれないけど、あったのよ。実際にね。」
リンディは持っていた資料を1枚めくり、それを皆に見えるようにしてテーブルの上に置く。リンディが開いて置いたページには、ある一つのグラフが示されていた。
「まず一つ目は、ソーフィヤの元となったジュエルシードが、ソーフィヤのリンカーコアとかなり癒着しちゃっているという事。余りに強く癒着してるから、分離させることは非常に難しいらしいわ。」
「……つまり、無理に引き剥がそうとすればソーフィヤのリンカーコアにかなり大きな影響が出て、最悪破損しかけないということですか?」
「そうね。ソーフィヤの
「「「「!」」」」
リンディの言葉にその場にいたソーフィヤを含めた5人が驚く。つまり、ソーフィヤからジュエルシードを取り出そうとすると、必然的にソーフィヤ自身に強い悪影響を及ぼすという事だ。いや、悪影響で終わればまだ良い状態になるかもしれない。
ソーフィヤ本人からしたら、この事は簡単に見過ごせるような事ではない。最悪の場合、自身が殺されることに近い状態になる可能性もある。
先程までの表情とは打って変わって、かなり真剣な表情へと変化する。
それを見たリンディは、このような状況に持っていかないためにある提案をソーフィヤにした。
「現状だとソーフィヤが対抗できる手段が一つもなくて、もし何者かに襲われたりしたときにソーフィヤはやられるがままになってしまう。」
「うん……。」
「そんな状況に持っていかないために、ソーフィヤ、貴女に防御魔法を教えたいと思っているの。」
「防御魔法……?それってなのはやユーノの使ってる『Protection』とかのこと?」
「ええ。防衛手段の一つとして身に付けておくと役に立つと思うの。やってみない?」
ソーフィヤは、リンディの言葉を聞いて考える。確かに防衛手段は手に入れておいた方が、自身にとってかなり良い。しかしそれだと他のアースラメンバーに迷惑をかけてしまうのではないだろうか。今まで言葉等を教えてもらってきたソーフィヤは、これによって更にアースラメンバーに負担をかけてしまうのではと考える。マイペースな性格のソーフィヤでも、流石にこれは悪いのではと悩んでいた。
皆に頼むべきなのか、流石に迷惑がかかるし独学で学んだ方が良いのか。そんなことを考えていると、リンディの右隣に座っていたクロノがソーフィヤに声をかけた。
「ソーフィヤ、他のメンバーに迷惑がかかるんじゃないか、とかそんなことは考えなくていい。仲間の安全を守るためなら、迷惑だなんて思わないよ。」
「そうだよ、ソーフィヤちゃん!仲間だもん、寧ろ色々頼ってほしいの!」
クロノに続いて、なのはもソーフィヤに声をかける。ユーノとエイミィ、リンディも声には出さないものの、微笑みながらソーフィヤを見て頷いている。
ソーフィヤは、話を聞いてこんなことを考えていた。皆はヒトではない自分のことを仲間だと言ってくれた。その事は非常に嬉しいことだ。しかし、それは皆が『庇護するべき対象』としてソーフィヤを見ているということを暗示している。いわば、守られる存在としてソーフィヤが考えられていることを示している。
その上でソーフィヤは考える。確かに自分は今はしっかりとした力を持たず、守られる立場にいる。ならば頑張って力をつけよう、守られるだけじゃなく、皆を守れるような存在になろう、と。そしてその為にはどんな努力も辞さないと。
それを踏まえて、ソーフィヤは魔法を学ぶことを決意する。そして、改めてリンディに向き直りこう告げる。
「リンディさん、防御魔法を、いえ、魔法を私に教えていただけませんか?私も、ただ守られるだけじゃ嫌なんです。自分の身を自分で守れるようにしたいんです。」
ソーフィヤは何時に無く真剣に、そして普段使わない敬語を用いてリンディにお願いする。
リンディはソーフィヤを見る。ソーフィヤと今までアースラで一緒に過ごしてきた中で、一番自らの意思のこもった眼。彼女の持つ意思の強さを感じたリンディは、その真剣さに少々驚くもすぐに表情を戻してソーフィヤの願いを受け入れた。
「わかりました。じゃあ、クロノ達の都合が空いている時に教導できるよう調整しておくわ。というわけでよろしくね、クロノ、なのはちゃん、ユーノ君。エイミィも補佐をお願い。」
「「わかりました。」」
「「はい!」」
「……ありがとうございます、リンディさん、クロノ、エイミィ、なのは、ユーノ。」
ソーフィヤが皆に頭を下げお礼を言う。皆はそれに対して笑顔を返す。頭を上げたソーフィヤもまた、笑みを浮かべていた。
こうして次の日から、ソーフィヤの魔法訓練が始められる事となった。
二つ目の問題点は、次話で出します。
忘れてる訳じゃないです。
次話はもう少し早く投稿出来るよう頑張ります。