これから段々と本編に介入していきます。
ソーフィヤが訓練を始めてから、数日が過ぎた。
ソーフィヤは、学習能力が高いのと、指導官が時空管理局でもかなりの実力を持っているクロノや結界魔法や防御魔法を得意とするユーノということもあって、短い期間で今まで若干上手く操れていなかった4つの魔力弾をほぼ完璧に操作出来るようになった。また、防御魔法も相手の攻撃を認識できない場合を除いて何時でも発動できるようになっていた。
そんな中、今日はソーフィヤの訓練をユーノが一人で担当するため、クロノはその分予定が空いていた。その為クロノは、艦の中枢である場所でエイミィと一緒にモニターを見ていた。
モニターには、全体的に黒を基調としたバリアジャケットを纏う、金髪の髪の少女が映っている。なのはと違い、時空管理局の最初の接触の際逃走したその少女は不明な情報が多く、彼女についての情報を少しでも手に入れようと、時空管理局のデータベースから情報を探していた。
エイミィがキーボードを使い、検索のキーワードを入力していく。最後にenterキーを押してキーワード検索をかけるが、該当情報が見つからないらしく画面に『NOT FOUND』と表示される。
「うーん、やっぱりダメだ。この娘はかなり高度なジャマー結界が使われてるみたい。」
「うーん……。」
クロノは頭を抱える。モニターに映る金髪の少女、フェイト・テスタロッサという名だという少女は、幾ら情報を探しても全くと言っていいほど出てくる気配が無かった。まるで、何か意図的に彼女についての情報が隠されているかの様に。
また、彼女の名前の足掛かりになるかもしれない、彼女に付き従っていた使い魔についても、同じく情報が見つからなかった。
「この娘の連れてたこの使い魔も、管理局のデータベースに全く情報が無かったんだよね。」
「ああ。フェイトと言う少女への足掛かりになるかと思ったんだが、使い魔としての登録情報すら無かったからな。」
「結果として、何も情報が無いんだよね……。」
「ああ……。」
幾ら探しても全く尻尾を見せない、フェイト・テスタロッサという少女。何か一つでも彼女について関係する情報を見つけないと、ジュエルシードの捜査を行う上での不安要素を解消する事が出来ない。その為、二人は情報収集を続けていた。
するとここで、クロノが彼女の名前を見て、ふとある事を思い出す。
「フェイト・テスタロッサか……。っ!彼女のファミリーネームが、嘗ての大魔導士と同じ名前だ。」
「えーっ、そうなの?」
クロノが言いたいことを、今一理解できていないエイミィ。そんな様子を見て、クロノは少し補足説明をする。
「プレシア・テスタロッサ。嘗て研究者として名の知れ渡った人で、26年前に行われた駆動炉の実験の際、次元干渉事故を起こしたということで失脚させられた人物なんだ。その人のファミリーネームと、この少女のファミリーネームが同じだ。」
「!じゃあ、もしかしてこの娘は……!」
「ああ。確定はできないが、恐らく何かしらの関係は持ってるだろう。」
「なるほど。ちょっとそっちの方で調べてみるね。」
クロノの想像していないところで話が結び付き、止まっていた手が少しずつ動き始める。何とか情報が全くない手詰まりの状態から状況が進みそうになり、クロノは内心ホッとする。すると、このタイミングでクロノが想像もしていなかった人から声がかけられた。
「あれ?クロノとエイミィ、何してるの?」
「?ソーフィヤか?何故ここに?」
クロノが後ろに振り向くと、小太刀の木刀を持ったソーフィヤが立っていた。
実は最初の訓練の直後から、ソーフィヤのベルカ式に対応できる近接武器を探そうと、様々な武具を用いて適性を調べつつその特訓をしていた。
しかし、ソーフィヤは予想以上に各武具への適性が低く、槍等の槍術と剣術以外のものはからっきしダメだった。残った中で一際高い適性を見せた剣術についても、普通の木刀だと木刀を振っているというよりは木刀に振られているような状態になってしまい、結果として小太刀が残り、それを独学ではあるが魔法訓練と同時に訓練していた。
魔法訓練の際に剣術の訓練もするので、ソーフィヤが小太刀の木刀を持っている理由はわかる。しかし、本来この時間は訓練しているはずのソーフィヤが何故ここにいるかが、クロノにはわからなかった。その疑問の意図に気が付き、ソーフィヤはクロノ達に何故ここにいるか説明する。
「いや、本当だったら訓練してる筈なんだけど、ジュエルシードが見つかったからなのはとユーノが今アースラにいなくて。で、魔法訓練は出来ないけど剣術訓練なら出来るからやろうと思って訓練室に向かってたら、この部屋からちょっと声が聞こえてて見てみたら2人がいたの。」
「そういうことか。ジュエルシードの方はどうなんだ?」
「まだ戦闘中らしいよー……って、何見てるの?」
ソーフィヤが、クロノ越しにモニターを覗きこむ。そんなソーフィヤに対して、クロノは見ているものに関する簡略的な情報を伝える。
「彼女は、今僕達が調べている人物だ。ソーフィヤも関わっている、今回のジュエルシードの件について関連があるかもしれない。」
「へー、なるほど……。」
クロノの言葉に返答しつつ、ソーフィヤはじっとモニターを見続ける。少しして、ソーフィヤはモニターを見つつ呟いた。
「ふんふん……、フェイト・テスタロッサ、ねえ。この娘、大魔導士プレシアと同じ名字だね。」
「!ソーフィヤ、知ってるのか?」
ポロっとソーフィヤの口から出てきたプレシアの名前に、クロノは驚く。そんなクロノから発せられた質問に対して、ソーフィヤは返答する。
「うん、知ってるよ。端末を使って色々調べてる時に見つけたの。かなり結果を残してるけど、その中でも安全を第一にしてるっていうのを見て、凄い人だなって思ってたの。裁判になったあの実験については納得がいかなかったけどね。」
ソーフィヤは自分の端末を操作し、情報を纏めたページを探す。目的の情報を見つけたソーフィヤは端末の画面を2人の方に向け、プレシアの情報を見せる。どうやらソーフィヤの言った通り、安全を第一に考えて研究をしていた、研究者の鏡のような人物だったらしい。
「あの実験っていうのは、多分次元干渉事故を起こした駆動炉の実験の事だよね?納得してないってどういうこと?」
ソーフィヤの言葉の終わりの方に少し引っ掛かりを覚えたエイミィが、ソーフィヤにその真意を訊ねる。ソーフィヤはそれに対して、はっきりとエイミィ達に真意を告げる。
「だって、それまで全員の安全を第一に考えて実験を行ってきたような人が、いきなり危険を省みないような指示を出すと思う?まして、自分の娘や使い魔が近くに居るような環境でだよ?もし本当なら人としておかしいとしか思えない。何かしらの偽装工作があるのは間違いないんじゃない?」
「「!」」
『今まで第一に考えていたことを、自分の家族を危険な目に会わせる可能性が有るなかで、突然変えることが本当に有り得るのか』。
ソーフィヤのこの核心を突く意見に、クロノとエイミィはハッとする。そう、プレシア・テスタロッサの駆動炉による次元干渉事故は、明らかに矛盾している。普通、自分の家族が近くに居る時に、自分の家族にまで危険が及ぶような実験をするだろうか。
ソーフィヤの端末にある情報を見るに、プレシアは安全を最も重視して実験を行っていた研究者だったらしい。とすると、26年前の事件においてその原因となったであろう事は、完全に整合性がつかない。つまり、誰かが名の知れた研究者であったプレシアを引き摺り下ろす為にやったとしか考えられないのだ。
もしかしたら、今回の事件がこれに関連しているかもしれない。今回のジュエルシードの事件と、26年前の次元干渉事故。クロノは全く予想だにしていない展開に、少々驚きを隠せなかった。
「まさかこんなところで意外な繋がりが出てくるなんて、思っても無かったな……。けど、これはかなり使える情報かもしれない。よしエイミィ、26年前の事件を中心に、もう少し深く調べてみよう。」
「了解!わかったよ、クロノ君!」
クロノとエイミィは、26年前の事件から今回の件に関連しそうな事を深く調べるために動き始める。そんな2人の様子を見て、ソーフィヤはあることを思い、クロノに相談する。
「ねえクロノ、私にも何か手伝える事はない?私も2人を手伝いたいの。」
クロノは少し目を見開き、ちょっとした驚きを露(あらわ)にする。今までソーフィヤがこのような事を相談してきた事が無かったからだ。クロノはソーフィヤに理由を訊ねる。
「何でだ?ソーフィヤ。」
「今まで2人には沢山お世話になってきてるけど、まだ何も返せていないから。いつも助けてもらってるから、見ているだけじゃなくて、私も手伝えるなら手伝いたい。邪魔になっちゃうなら、いいけど……。」
ソーフィヤが、心情を吐露する。ソーフィヤを保護してから、まだ2週間程しかたっていない。しかし、この2週間の間にソーフィヤは精神的にかなり成長していた。
「いや、ありがたいよ。端末を使って、何か関係のありそうな情報があったら伝えてくれ。」
「うん、わかった!」
「よし、情報収集を再開するぞ!」
「「了解!」」
クロノとエイミィ、ソーフィヤの3人は、それぞれモニターや端末を用いて情報収集を始める。
少しずつ、時が新しい方向へ動き始めていた。
さあ、ソーフィヤが本編に介入することで、どんな風に物語が変わっていくのか……。
早く次の話が投稿出来るよう、頑張ります。