嘘、レレイを撫でたいだけなんですお巡りさん。
気が付けばたくさんの方に見ていただき感謝感激雨あられ。
さてさて、無事に自衛隊の駐屯地に辿り着いた私達。久し振りに見る鉄を支柱に使った建造物に懐かしさを覚えながら、伊丹に連れられこの駐屯地で一番偉いお方、確か狭間浩一郎と言ったか。と面談する事になった。
さして時間もかけずにその人がいる部屋に辿り着き、伊丹が姿勢を正し部屋に入る。私はそれに続き作法も無しに入っていく。
「よく来てくださった、私は特地方面派遣部隊指揮官の狭間浩一郎。噂の賢者様から話が聞けるとは光栄の極みだ」
「あら、別にそんな堅苦しい言葉は要らないわ。私は一般市民で貴方はここを統べる長なのでしょう?誰かに見られでもしたら大変よ?」
「下げるときに頭を下げない長ならばただの飾りと変わらない。それに賢者様には第3偵察隊の皆を救っていただいたどころか守るべき市民の皆様を助ける助力までしてもらったと聞く」
「私がやりたいからやっただけよ、気にしないで」
狭間はその言葉にありがとうと告げ、私に席に座る様に促す。私は促されるままに部屋に置かれるソファに座り、伊丹が用意してくれたコーヒーに口を付ける。
此方ではあまり飲むことの無かったコーヒーであるが、偶に飲むとその苦みと風味が美味しく感じる。今度コーヒー豆でも買っておくとしよう。
「賢者様はコーヒーを飲めるのだな、此方ではあまり見慣れないものだと思っていたのだが」
「賢者様って呼ばれるのはあまり得意でないのよ、出来るのであればパチュリーと呼んで貰っていいかしら?」
「了解した、ではパチュリーさんと呼ばせて頂こう」
狭間は意外と融通の利く性格の様である。さて、何時まで続くか分からないこのお話は一先ず終わりにし、本題に入るとしよう。
「報告書があるのかは分からないけど、現在伊丹が避難民を連れてきているわ。そこで、私の要求は取り合えず二つ程」
1、避難民が安心して暮らせる様に自衛隊による守護を望む
2、避難民が暮らせる共同生活の為の住居を設置する事の許可
「これぐらいかしらね」
「ふむ・・・一つ目は兎も角、二つ目となると私の一存で決める事は出来ないかも知れんな・・・」
「そこまで深く考えなくてもいいわ、場所さえ融通してもらえれば後は私が何とかするから」
「で、あれば一先ず使用していない場所がある。そこで良ければ好きにしてもらっても構わない」
承諾を得たので、後で住居を建設する事にする。まぁ私からすれば許可を得る必要なんて無いのだが、一応現在はアルヌスの麓は自衛隊の管理に置かれているので念のためという事で話をしておいたに過ぎない。別に誰が管理していようと私を止める事なんて出来やしないのだから。
これは別に誇張した話では無い、その気になれば知らず内にすべてを終わらせることだって可能だ。賢者の名前は伊達では無い。
「ありがたい話だわ。対価として私からは此方の情報を提供するとしましょう。貴方達自衛隊が今後活動するのにきっと役立つと思うわ」
指を一つ鳴らし、紙に纏められている此方の地図や国の情報を提供する。狭間はそれを少しだけ確認しこちらに頭を下げて来た。
「貴重な情報を提供していただきありがとうございます。これで、隊員達に余計な怪我をさせる事も減るでしょう」
「良い上官で良かったわね伊丹」
「アハハハ・・・」
私の言葉に伊丹が苦笑をするが、これで上官が部下を使い潰すような人であったら渡した情報が危険な物になっていただろう。
一先ず目的は達成したので、狭間に一礼してから部屋を出る。許可を得たのであれば早速建造を開始しなければ・・・。
◆
「師匠は、これをやれと言われて出来るか・・・?」
「出来ない事も無いとだけ言っておくかの、ただこれほど直ぐに作るのは無理じゃ」
私の目の前で、パチュリーが自衛隊が使っていた機械を用いる事無く、紅茶を飲みながら片手間に居住を作り上げている。土と鉄、そして木で作り上げられていくその住居に避難民である私達が住むことになるのだが
「師匠は、大賢者と呼ばれていたのでは?」
「本当の意味で賢者を名乗ることが出来るのは、パチュリー様一人であろう。パチュリー様の前ではワシもレレイも赤子同然じゃよ」
それを告げる師匠は何処か誇らしげで、何処か寂しそうだった。
「彼女に弟子入りした時に、何時か彼女に追いつき隣に並び立てる様になるつもりだった。しかしじゃ、彼女は遠すぎた。人種の寿命では彼女の隣なぞ一向に見えてくることも無く、足元にすら及ばなかった。だが、レレイ。お主ならば或いは・・・」
その言葉の続きを言う事なく、師匠は忘れてくれと悲しげに俯いた。
私はパチュリーを見る。さして苦労しているように見えない彼女の超常の魔法。何時かは私もあの位置に行けるのだろうか・・・。
「さて、これで人が増えてきても大丈夫でしょう。後は自衛隊の人達が色々と手伝ってくれるらしいし、私は席を外すわね」
「ありがとうございますパチュリー様。ワシではここまでの事は直ぐに出来ませんでの」
「あら、私が育てたカトーという賢者なら、いいとこまで出来ると思っていたのだけど」
「勿体ないお言葉ですじゃ」
パチュリーに褒められたからなのか、師匠は嬉しそうに顔を綻ばせた。
そしてパチュリーはふよふよと何処かに飛んでいく。その後ろ姿を見ながら、私は一層の努力を積むことを心に決めた。
一先ず、今後の寝食を出来る場所を確保できたのでこれで一安心だと思う。だから私は知的好奇心を満たしに行く事にした。
「すまない、これは何だろうか」
「あー・・・、こんにちわ?ご機嫌如何・・・?」
まずは彼等が使う言語の習得から始めよう。
(・・・・・・パチュリーは何処で彼等の言語を学んだんだろうか)
そんな疑問が、私の頭に浮かんだ。
◆
避難民が安心して暮らせる住居を作り終え、私は一人自衛隊の宿舎を歩いている。何故かって?ご飯だよご飯!自衛隊で出されるご飯であれば和食もきっと出してくれるだろう。
懐かしき和の味に舌鼓を打つ為に、食堂に向かって歩いているのだが。
「別に監視なんてされなくても何も仕出かさないわよ」
「ぎっくぅ!」
私の背後からそんな声が聞こえて、声の主は観念したのか曲がり角から出てくる。
確か、栗林と言ったか。第3偵察隊の中で数少ない女性隊員だったから覚えている。黒川とは違い見た目活発そうな女性だ。
「その、監視とかじゃなくて、ただ貴女が一人で出歩いてたから念のため見ていたと言うか・・・」
「それは監視と同じでしょ、まぁ丁度良かったわ。良ければ食堂まで連れて行って貰えないかしら、虱潰しに探していくのもいい加減疲れて来たのよね」
「まぁ、それぐらいなら構わないけど・・・」
栗林がお供に加わった!
寧ろお供するのは私の方なのだが、一先ず和食の為に彼女に着いて行く。
着いて行くのは良いのだが只管無言の時間が過ぎていく。と言うか物凄く警戒されている様だ。
「栗林、別に取って食おうとしてるわけじゃないんだからそこまで警戒する必要無いじゃない」
「や、私は貴女の事全く知らないし・・・。警戒するのも仕方が無い事何だけど。と言うか栗林って呼び捨てにするのね、貴女見た目からして年下でしょ?」
何か不機嫌になっていたのはそういう事情だったのか。しかしながら今更私は誰かを敬称を付けて呼ぶつもりは無い。
「残念ながら、私もロゥリィと同じで何百と言う歳を重ねてるのよ。一つだけ忠告と言うかお節介になるかも知れないけど、此方では見た目で人を判断するのは止めなさい。何時か痛い目に合うかも知れないわ」
その言葉を聞き、栗林は開いた口が塞がらないでいた。此方では見た目通りの育ち方をしているのは人種のみだろう。
「ちゅ、忠告ありがと・・・。取り合えずここが食堂ね」
「ジャパニーズ和食が、遂に・・・!」
味噌汁が飲みたい、米が食べたい、漬物が食べたい!
待ちわびていた和食の存在に自然と頬が綻んでしまうが仕方が無い、和食が私を呼んでいるのだから・・・。
だけどげんじつはざんこくで
「・・・・・・パン?」
「あーごめんね?楽しみにしていた手前否定するのも失礼かなと思って・・・。こっちに来るのに米はあんまり持ち込んで無くて、今回見たく避難民を保護する可能性を考えたらパンを持ち込んだ方が良いんじゃないかって事で・・・」
くそっ、くそっ!伊丹は何処だ、私は今すぐ日本に行くぞ!
残念ながら日本に行く事は叶わず、私はこっそりと涙を流した。
でも久し振りに食べた味噌汁、いや、あれは豚汁かな?美味しかったので文句は言うまい。