あぁ、懐かしき日本。
相変わらず都心故なのか空気が悪いが、今はそれすらも日本らしいと思えてしまう。
私達は現在門を抜け検問を通り服屋を回り牛丼屋と来ている。
「牛丼大盛り汁だく卵付きで」
「パチェさん手慣れてませんか」
「気にしたら負けよ」
富田と栗林にも可笑しな目で見られるが気にしない。
牛丼。なんと甘美な響きであるか。惜しむべきはこの店が吉○家だったことか。私はどちらかと言うと松○が好みだったのだが・・・。ネギ玉牛丼とか美味しいよね?まぁあそこの味噌汁はあまり好みでは無かったが色々とトッピングをして食べるのが好きだった。
目の前に置かれた丼に七味と紅ショウガ、そして生卵を落とし混ぜ・・・。
「掻き込むのよ!」
「うわぁ、見た目美少女なだけにその光景は見たくなかった・・・」
栗林、食事と言うのは人それぞれ食べ方があるんだよ。例え見た目が美少女でもこうして掻き込むこともあれば、カレーを飲み物にすることだってある。
数分と掛からずに牛丼を食べ終えたのだが、お代わりはしても良いだろうか。先程経費で500円と聞こえたから流石にお代わりはやめておいた方が良いか・・・。
所変わって国会。
場所が場所なので食事前にテュカがスーツに着替えていたのだが、私は着替えるつもりは無い。別に自分の服に何か問題があるとは思ってないしね。
参考人として同行してきた私達である。ちなみにお忍びで訪れていたピニャとボーゼスは別の所で帝国兵の捕虜についての話をしに行っている。
「空飛ぶ戦車と本職の人間に言われるほどのドラゴンを、幾ら何でも無傷で、怪我人も無く死者もいないなど何か隠しているのではないのでしょうか!そう、例えば避難民に怪我人、死者が出た事を隠していると!」
ふむ、既に始まっている様で、女性がキーキー騒いでいる。
しかし相も変わらず何を話しているかさっぱり分からん。論点が可笑しな気がするが・・・。そもそもここに私達が呼ばれた理由は向こうの世界の情報を聞くために呼ばれたのではなかったのか?自衛隊の非を探るために私達は呼ばれたのだろうか…?
レレイ、テュカ、ロゥリィと続き
「パチュリー・ノーレッジさん」
私の番となった。
「貴女は何か自衛隊の対応に不満を持ったことはありませんか?」
「ねぇ、まず私も聞きたいのだけど。私達は何をするためにこの場に呼ばれたのかしら。自衛隊に文句を言いに来たのではないのよ?てっきり向こうの様子を話すために呼ばれたのだと思っていたのだけど・・・」
「えぇ、ですから向こうで自衛隊員が何か粗相を働いていないかと聞きたいのです」
面倒だなぁ、いっその事国会にいる全員炎龍の元に跳ばして上げようか。そうすれば皆黙ってくれるだろうし。二度目の日本という事もあり、向こうと此方のパスは完全に繋がった。
以前までなら出来なかった転移も今なら安易に行える。
とは言え、流石にそんな真似したらひたすら面倒なだけだろうし
「これを見れば自衛隊の事が詳しく分かるでしょう」
私は指を鳴らし魔法陣を展開させる。この魔法陣は記憶を共有させる魔法が掛けられており、今国会にいる全員に炎龍の脅威を見せつけている所だ。
エルフを襲った所と避難民を襲った所だけだが、それだけで自衛隊が貢献してくれた事を理解してくれるだろう。
時間にして数分、実際の記憶はそんな短い筈もないが脳の処理を早くさせて経験させているだけなので気にすることは無い。まぁその経験が空気も振動も全て感じる事が出来る4D映画張りのびっくり物なのだが。
「さて、見せる物も見せたので分かったでしょう?自衛隊は私達の為に汗水流して動いてくれている。貴方達が望むような結果は存在しないの」
放心したまま動かない女性議員を放置し、私は席に戻る。これ以上は話をする必要も無いと判断したからだ。
席に戻った私はロゥリィと二人のんびり紅茶を飲みながらくつろぐ。どうせこれ以上私達が何かをする必要は無いのだ。あとはただ無益な時間を過ごすだけ。
それから暫く、漸く再起動した議員の良く分からない話を聞き、私達は無益な時間を過ごし、解放された。
◆
さて、今回日本に来たのには食べ歩き以外にも理由がある。私が生前いた場所を訪れる事だ。
場所は銀座から左程離れている訳でも無いので、昔を懐かしむように地下鉄を乗り継ぎ移動する。道中に私がいると騒がれるのも癪なので幻術を使い日本人らしい容姿に見えるようにしておく。
何度か駅を乗り継ぎ、降りた駅から歩くこと数分。簡素な住宅街に辿り着き、その住宅の一つで足を止める。
「何も、変わっていないのね・・・」
記憶に残る面影と一寸も変わらない事に何ら疑問は抱かない。パチュリー・ノーレッジと言う存在に憑依するような事になり、彼女を真似て生活して既に何百と言う年が過ぎている。そんな長い年月を過ごせば常識も変わる。門が繋がる前に向こうと此方で時間のずれが起きたのかも知れないし、私がいなくなった時代に偶然門がつながっただけかもしれない。
こればかりは考えていても答えは出ない。
一抹の不安はある。
でも、願わくば、もう一度だけ父の、母の、家族の顔を見たかった。姿は変われども、貴方達が生んでくれた
震える手で呼び鈴を鳴らす。パタパタとスリッパの音が聞こえてきて、ドアが開かれる。
「どちら様でしょうか・・・?」
だけど、世界は残酷だった。
◆
あれから、どうやって伊丹達の所に戻ったか覚えていない。いや、別に戻るつもりがあった訳でも無い。
気が付けば幻術は解け、ふらふらと歩いており、そこをロゥリィに見つかっただけなのだ。
家にいて、私を出迎えたのは俺だった。
考えた事が無いわけでは無かった。パチュリー・ノーレッジと言う創作の存在がどうして現実として存在するのか。彼女になった時に最初に考えたことだった。もしかしたら東方の世界が存在しており、私はその世界に生まれる、または憑依したのではないか。
だけどそこには私以外の、博麗霊夢や十六夜咲夜と言った存在はいなかった。だから、もしかしたら私と言う存在は
「パチュリー?」
思考の渦から浮上する。
見ればレレイがこちらを窺うように顔を見てきており、何処か不安そうに顔を歪めている。
「どうか、したかしら?」
「何か思いつめている顔をしていた、私で良ければ話を聞くが・・・」
「大丈夫、気にしないで貰えるとありがたいわ」
言えるわけが無い、私と言う存在が、人の意識によって象られた偶像かも知れないなんて。
アルヌスには色んな伝承がある。その中ですべての種族は何処から来たのか?と言う題があった。答えとして皆がアルヌスから来たと答えたらしい。私が目を覚ましたのはアルヌスだった。門が現れたのもアルヌスだった。門は日本と繋がった。
暴論かも知れないが、考えられるのは一つ、私は向こうで多くの誰かが望んだ結果、その意識が門を経由しアルヌスに流れ着き、私が象られたのではないかと。
8柱ある神々に聞けば、もしかしたら答えが得られるかも知れない。だけどもう、どうでもよくなってしまった・・・。
そしてこの暴論である。