「確かに我が星導館学園は、その学生に自由な決闘の権利を認めていますが……残念ながらこの度の決闘は無効とさせていただきます」
群がるのギャラリー、というよりも野次馬連中を押しのけながらクローディアは綾斗とユリスの前へと近づいた。真鞘とアルフの2人も少し距離を置いて、その後を追いかけた。
すると、予想通りユリスの方がクローディアに突っかかった。
「……クローディア、一体なんの権利があって邪魔をする?」
「それはもちろん星導館学園生徒会長としての権利ですよ、ユリス」
――うわぁ、こいつ本当に生徒会長の権利使いやがった。
真鞘とアルフは同じことを考えるも、二人とも顔には出さなかった。当のクローディア本人はそんなことを気にもせず、笑顔で言葉をつづけた。
「赤蓮の総代たる権限をもって、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトと天霧綾斗の決闘を破棄します」
クローディアの言葉によって、赤く発行していた2人の校章がその輝きを失った。
ちなみに真鞘は先ほど、生徒会室を出る直前にクローディアから校章を受け取っている。
いまだ不満を口にするユリスの相手はクローディアに任せ、真鞘は呆けている綾斗に声をかけた。
「久しぶりだな、綾斗」
「え!?もしかして、真鞘!?うわぁ、久しぶりー!!何年ぶりだろう」
「お前の家に居候してた頃以来だから、6年ぶりってところかな?」
真鞘は嘗て綾斗の家、天霧家に居候の身として住んでいた時期があった。
しばらく真鞘と綾斗が話していると、クローディアに突っかかっていたユリスが真鞘に気付いた。
「そういえば、見ない顔だな。そこの変質者の仲間か?」
「……綾斗、お前マジで何やったんだ?」
「いや、事故だったんだって」
綾斗は両手を振って否定するが、本当に何をしでかしたのだろうか。
「まぁそれはいいか。俺は綾斗と同じでここに編入してきた神崎真鞘だ。よろしく、ユリス」
「ほぉ、私の名前を知っているのか」
「そりゃあ
「もう一人の編入生とは大きな違いだな」
「うっ……、て言うか、真鞘も編入してきたんだ」
「まぁな。ところでクローディア、時間は大丈夫なのか?」
真鞘は腕時計で時間を確認しながらクローディアに問いかけた。
この後、説明やら手続きやらがあるのなら、そろそろ移動しなければホームルームに遅れてしまう。さっき聞いていた限りでは綾斗は最終手続きが残っているということでユリスには納得してもらったらしい。ちなみにそのようなものは存在せず、綾斗はすでに学園の生徒であることを知っている真鞘とアルフは、2人に見えないように苦笑いをしていた。
「ユリス、先ほども言いましたが彼にはまだ最終手続きが残っていますので、この決闘は成立しないことになります。よろしいですね?」
「………あぁ、分かった」
「それでは移動しましょうか」
「……あっ!!」
クローディアの言葉で移動を始めようとしたが、綾斗が何かを思い出したかのように立ち止まった。初めは何のことかと他の人たちは考えたが、辺りを見渡していることから、何を探しているのかすぐに分かった。
「あの、ちょっと待って……」
「捨て置け。どうせとっくに逃げている」
ユリスを狙った犯人を捜そうとした綾斗の肩を、ユリスがつかんだ。
「まぁ今からじゃあもう無理だな、諦めろ綾斗」
「残念だけど
「そうですね、風紀委員に調査を命じておきましょう」
「ありがとう、えっと……」
「はい、星導館学園生徒会長、クローディア・エンフィールドと申します。よろしくお願いします」
「生徒会副会長のアルフ・エンフィールド、クローディアの双子の弟でもあるね。よろしく、天霧君」
「お前らあいさつはいいけど、本当に時間無くなるぞ」
ホームルームに遅れたぐらいなら生徒会長が何とかしてくれるのだろうが、初日から遅刻はしたくない。
「それでは行きましょうか。天霧君は生徒会室に行きましょう、真鞘はアルフとユリスと教室に向かってください」
「あぁ分かったよ。あ、綾斗、クローディアには気を付けろよ」
「え?なんで?」
「……まぁすぐに分かる」
「?まぁ分かったよ」
真鞘はクローディアにばれないように小声で綾斗に注意を促したが、無意味だろうと思いながらアルフを見た。
(綾斗とアルは似てるからな。腹黒女の餌食だろう……)
クローディアが別れる前に見せたまるで悪戯を企てるような顔を思い出して、この後綾斗に訪れるであろう展開に同情しつつ、真鞘はアルフとユリスとともに教室に向かった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「あー、とゆうわけで、こいつらが特待編入生の神崎と天霧だ。テキトーに仲良くしろよ」
「やっさん、紹介適当すぎだろ」
「前言撤回だ、神崎とは仲良くしなくていい。全員無視だ」
「酷ぇなおい!!」
「ここでその呼び方をするな神崎、次はないぞ」
「……了解、
言いながら釘バットを振りかぶってくる教師?を目の前に、殴られたくない真鞘は素直に従う。
クローディアと綾斗と別れた真鞘とアルフは授業を受ける用意を取りに、ユリスとも別れて一度部屋に戻った。その後、編入生ということもあって、真鞘は教室ではなく職員室に案内された。そこまでは何も問題はなかった。真鞘にとって問題だったのは担任と言われて紹介された、ひょんなことから昔知り合った、というよりも絡まれた
(腹黒女が生徒会長で、暴力女が教師って……大丈夫なのか?この学園)
「おい、お前今何か失礼なこと考えてないか?」
「そんなことないですよ、谷津崎センセー」
「本当か?」
「本当ですよ、八裂きセンセー」
「お前、後で殺す」
この教師、教師が生徒に対して絶対に言わないであろう言葉を平然と言った。
「あぁもう話が進まん、てめぇらとっと挨拶しろ。あと神崎は死ね」
「いや、すいませんって……あぁ、編入してきた神崎真鞘だ、よろしく」
「えっと、同じく編入してきた天霧綾斗です、よろしく」
無難に挨拶を行った2人だが、そんな彼らを見るクラスメート達の視線は様々であった。編入してきて早々に冒頭の十二人と決闘をした綾斗に対する興味津々なものや、探るようなもの。そして自分達にとって恐怖の対象でしかない担任に対して、ふざけた態度をとった真鞘に対するある種尊敬のようなものまで。そんな中である少女は複雑な表情を浮かべ、ある少年は苦笑いを浮かべていた。
「お前らの席だが……あぁ火遊び相手の隣と、生徒会の奴隷の隣が空いてるな、そこにしろ」
「だ、誰が火遊び相手ですか!?」
「だ、誰が生徒会の奴隷ですか!?」
少女と少年、ユリスとアルフは同時に立ち上がって同時に叫んでいた。
「お前ら以外に誰がいるか。リースフェルト、朝っぱらから派手にやりやがって。レヴォルフじゃねーんだぞ、うちは」
「ぐっ……」
言い返せずにいるユリスを置いといて、真鞘と綾斗は自分の席に移動する。真鞘の席はアルフの隣で、その前でユリスの隣の席に綾斗となった。
「まさか全員揃っているとはな」
「……笑えない冗談だ」
真鞘の言葉にユリスはため息をつく。
「今朝はいろいろとあったけど、これからよろしくね」
ユリスの言葉にもめげずに綾斗は話しかけた。
「お前には借りができた。要請があれば一度だけ力を貸そう。だが、それ以外では馴れ合うつもりはない」
ユリスの返す言葉は相変わらずのものだった。もしも真鞘が綾斗の立場だったら、キレていただろう。
「はは、振られたな。まぁ相手があのお姫様じゃあ仕方ないか」
綾斗の1つ前の席から、綾斗にそう声をかけてくる人懐こい笑顔を浮かべた男子がいた。
「俺は
「ルームメイトって…、寮の?」
「そういうこと、一応うちの寮は基本2人部屋だからな」
「じゃあ今まではそこを1人で使っていたのか、悪い、狭くなっちゃうな」
「いいってことよ、俺は賑やかな方が好きなんでね。それと……」
夜吹は綾斗の後ろに座る真鞘に目を向けた。
「そっちは久しぶりだな、神崎」
「あぁそうだな、夜吹」
「あれ?2人知り合いだったの?」
顔見知りで会った2人に綾斗は疑問を持つ。
「「まぁな」」
そんな綾斗に対する返答は2人とも同じであった。
「そんでもって、さっき自己紹介したけど改めて。僕は生徒会の副会長やってるアルフ・エンフィールドだよ。生徒会長のクローディアは僕の双子の姉になるね。あ、生徒会の奴隷なんかじゃないからね」
「「え?違うのか?」」
「ほんと、やめてよ!?」
アルフに対しても真鞘と夜吹の2人は同じ返答をした。
「はは、まぁアルフもこれからよろしくね」
「うん」
結局、ユリスがこの会話に入ってくることはなかった。
アルフと真鞘が入って原作と少し座席の配置を変えました。
原作の夜吹の席に真鞘が入って綾斗の前に矢吹が移りました。
夜吹
紗綾 綾斗 ユリス
アルフ 真鞘
早く綺凛ちゃんを出したい……