料理好きな妖刀使い   作:ibura

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「へぇ、真鞘があの疾風迅雷と知り合いだったなんてね」

 

真鞘とアルフは、ル・モーリスで真鞘の夕食を食べながら先ほどそれぞれに起きたことを話していた。アルフの方では、どうもユリスに序列九位のレスター・マクフェイルとその取り巻きが絡んでいるところに出くわしたらしい。何でも、レスターはユリスに一度決闘で負けてからライバル意識を持っていて、再戦の要求を何度もユリスにしているらしい。当のユリスはその要求を拒否しているらしいが、レスターは根気強く要求を続けているらしいが、アルフから見ても、それは鬱陶しいものとなっている。

そして今日レスターが、ユリスが決闘をしたということを聞いて、ユリスに詰め寄ったとのことであるが、問題なのはその場に綾斗本人が出て行ってしまったということだ。

 

「大人しく見ていればいいものを……、あいつは相変わらずだな。面倒事に自分から首を突っ込んでいく」

「止める暇もなかったよ……」

 

状況が状況なだけに、綾斗が出ていったことは状況を悪化させたらしいが、さすがにその場でレスターが暴れるということはなかったらしい。

 

「でも彼は何者なんだい?レスターに詰め寄られても飄々としていたよ」

「あいつは肝は据わっているさ。実力もそこそこある」

「へぇ、真鞘と比べたら?」

「まぁ”煌式武装(ルークス)のほうを使うのなら”いい勝負か、ギリギリこっちの負けかな」

「ほぇー、真鞘にそんな評価されるなんて…ちょっと戦ってみたいかも」

「……お前って言葉遣いとか雰囲気のわりに、戦闘狂だよな」

「まぁね」

 

姉であるクローディアが腹黒いのと同じように、弟であるアルフも戦闘狂という一面を持っている。そして、姉と同じ理由で自分の口調を丁寧にしている。一度、真鞘とアルフが本気で喧嘩をしたことがあるが、気づいたときには辺り一面が焼野原となっていた。

 

真鞘とアルフが話しながら食事を続けていると、ル・モーリス内に綺凛が入ってきた。

 

「ご、ごめんなさいです。遅くなりました」

「いや、いいさ。別に詳しく時間を決めていたわけじゃないからな。そういや綺凛、晩飯食べた?」

「いえ、まだです。これから何か食べようと思っていたんですが……」

「なら、俺が作ったの食べるか?まだ1人分残ってるんだけど」

「え!?それ真鞘さんが作ったんですか!?」

 

真鞘の提案に、綺凛が驚く。確かに、一学生が学食で自分の夕食を作るということは普通ではありえないことなので驚くのも当然なのかもしれない。

 

「あぁ、ここの料理長に頼んで、厨房の一部を貸してもらってるんだ」

「真鞘さんはお料理が出来るんですね、羨ましいです……」

「まぁ料理が趣味みたいなものだからな。それでどうする?」

「え、でも……」

 

もじもじしながら返答に困る綺凛。食べたいのだろうが、年上2人の前で遠慮してしまっていた。

 

「別に遠慮しなくても、趣味の範疇でしかないんだから金も取らないし」

「え?僕からはきっちり取ったよね。しかもそこそこの額」

「お前は別だ。これで何回目だと思ってるんだ。お前に飯を作ったの」

「覚えてない」

 

真鞘の言葉を受けてもなおも遠慮していた綺凛だったが、真鞘たちが食べている料理が美味しそうと思う気持ちと、先ほどから自分を苦しめている空腹感に負けて、真鞘にお願いした。

 

「すみません、それでは…ご馳走になります」

「はいよ、それじゃあ取ってくるからちょっと待ってて」

「あ、私が運びます!!」

 

そうして2人は厨房へと向かい、アルフは1人となって食事をつづけた。

 

(真鞘があんなふうに接するとはね。彼女にはいろいろとお世話になりそうだ)

 

基本的に他人と自分との間に壁を作りがちな自分の親友の変化を、アルフは嬉しく感じた。

 

 

 

 

 

真鞘とアルフに加えて綺凛も含め、3人で食事を再開した。

 

「お、美味しいです!!本当に真鞘さんが作ったのですか!?」

「でしょう!!真鞘の料理はレパートリーも豊富だからね、毎日食べたいんだよ」

「こ、こんなに美味しいものを何種類も作れるんですか!?」

「そうだよ。もう僕はこの学園で真鞘の料理以外を口にするつもりはないよ。刀藤さんも僕の分と一緒に毎日作ってもらえば?」

「ふぇっ!?そ、それは……確かにこんなにおいしいお料理を毎日食べさせてもらえるのは嬉しいのですけど…」

「遠慮しなくても大丈夫だよ。1人分が2人分になったところでそんなに変わらないから…多分」

 

ついさっきまでほぼ初対面だったはずの2人の会話が盛り上がっているのを、真鞘が呆れながら聞いていた。そして呆れているうちに何故か毎日2人分の食事を作らなければならないことになった。

 

「おいこらアル、いつ俺がお前に毎日飯作ってやるって言った?」

「えぇ!?作ってくれないの!?」

「……何で作ってもらえると思ってた。俺にだって忙しい日とかはあるんだから毎日は無理に決まってるだろうが」

「じゃあ、それ以外!!予定がない日だけでいいよ」

 

アルフは両手を合わせ頭を下げて真鞘に頼んだ。

 

「なんでお前はそんなに必死なんだよ………はぁ、分かったよ。忙しいとき以外は作ってやる」

「ほんとに!?」

「そのかわり、俺の頼み事も極力聞いてくれよ」

「何でも聞くし何でもやるし、何でも協力するよ!!」

 

本当に何でもしてくれそうなアルフは、長年の夢が叶ったかのように歓喜した。

 

「綺凛もそれでいいか?」

「わ、私の分も作ってもらえるんですか!?」

「まぁさっきアルが言ったみたいに、1人分増えたところでさほど影響はないからね。綺凛が食べたいんなら作るよ」

「で、ではお願いします!!……でも、女として少し悔しいです」

 

綺凛は最後、小声で真鞘に聞こえないように言ったみたいだが、他の星脈世代(ジェネステラ)よりも身体能力が高く聴力も良い真鞘は、それが聞こえてしまった。

 

「なんなら料理、教えてやろうか?」

「え!?で、でも真鞘さんのお手を煩わせるのは……」

「別にいいさ、俺は料理を息抜き代わりにしてるところもあるからな。綺凛に料理を教えることが俺の負担になるってことはない」

「で、では…よろしくお願いします」

 

綺凛はとても嬉しそうにそう言った。

果たしてそれは料理が覚えられることからなのか、真鞘と2人で過ごすことができる時間ができたからなのか、はたまたその両方なのか……アルフはそう考えながら、残りの料理に手を付けた。

 

 

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

 

 

夕食を食べ終えた後、真鞘は綺凛を女子寮まで送っていくことにした。

本当は他にもっと話したいことがお互いあったはずなのだが、気づけば料理関係の話だけになってしまった。幸いにも、ル・モーリスから女子寮までは少し距離があるので、2人で少し話す時間はあった。

 

「まぁ話そうと思えば、どこかで座って話すこともできるし、明日以降も時間は作れるとけどな」

「そうですね」

 

お互い同じ学園に在籍しているのだから再び会うことは当然可能となる。故に2人は、必要最低限の気になることだけをお互い質問しあいながら女子寮まで歩いて行こうということになった。

 

「真鞘さんはどうしてアスタリスクに来たんですか?」

「まぁ別に特に理由があったわけではないんだけどな」

「それじゃあ望みがあって来たわけではないんですね」

「そうだな、これまでも自分がやりたいことを自分がやりたいようにしてきた生活だったし。綺凛は?何か望みがあってきたのか?」

「私ですか?私は……父を助けるためです」

「誠二郎さんを?」

 

真鞘は綺凛とともに、綺凛の父である刀藤誠二郎とも面識があった。

 

「はい、……父は今、罪人として収監されています。それを助けたいのです」

「…罪人?」

 

真鞘が知る限り、誠二郎が罪を犯すということは考えられないことだった。

 

「父は何も悪いことはしてません!!ただ、私を助けようとしてくれただけなのです」

「何があったんだ?」

「……五年前、私が父といたお店に強盗が入りました。そして人質にされそうになった私を助けようとして……父は、父は…不可抗力とはいえ、その人を殺めてしまったのです」

 

ギリッと歯を噛みしめる音が聞こえてくるくらいに、その声には悔しさがにじんでいた。

 

「相手は星脈世代(ジェネステラ)ではなかったのか」

 

綺凛はこくりとうなずく。

それがどのような状況でも、相手がいかに凶悪な犯罪者でも、星脈世代(ジェネステラ)がそうではない人間を傷つけたということは、たとえそれが正当防衛だとしても罪にとわれてしまう。ましてや誠二郎のように相手を死亡させてしまえば、それは過剰防衛として厳しい判決が下される。

 

「強盗犯はわたしが星脈世代(ジェネステラ)だと気づいていないようでした。もし気が付いていたとしたら、私を人質に選ぶことはなかったでしょうけど、私は刃物を突き付けられて……怖くて怖くて、何もできませんでした」

 

当時の綺凛は子どもであれ星脈世代(ジェネステラ)は相応の力を持つ。とはいえ、訓練を積んでいない限りは武器を持った大人は十分脅威となる、無理もないだろう。

 

「そこを誠二郎さんが助けてくれたのか」

「はい……このままでは父はあと数十年、出てこられません。ですので私は、その父を助けたいのです」

 

話をしながら歩いていた2人は、そこで女子寮の前に到着した。

 

「今日はありがとうございました。夕食までご馳走になって」

「いいさ、俺も久しぶりに話せて楽しかったよ」

 

真鞘はそう言いながら綺凛の頭を撫でた。

 

「……っ!!あ、あの、真鞘さん!!」

「お、おう?どうした?」

「そ、その…真鞘さんは普段どんなトレーニングをしてるのでしょうか?」

「トレーニングか…といっても俺がこの学園に来たのは昨日だからまだ決めてないんだよな。今日の朝はいつもやってるように走り込みとかで体を動かしたな」

「ふむふむ」

 

見ると、綺凛は熱心にメモを取っていた。

 

「走り込みはどのくらいやっているのですか?それから……」

「綺凛もメニューは自分で決めてるのか?」

「はい、ですがやっぱり不安で……それに1人だと組太刀もできませんし」

「なら、俺とやるか?」

「えっ?」

 

よほど意外だったのか、綺凛は大きく目を見開いた。

 

「い、いいのですか?」

「まぁ俺だって組太刀はしたいし、1人でやる鍛錬にも限界があるからな。綺凛さえ良ければ」

「そ、それは真鞘さんと、ふ、ふ、二人っきりで、ということ、ですか?」

「まぁそうなるな。他に人がいれば、誘うけど」

 

真鞘の言葉に綺凛は複雑そうな表情を浮かべる。

 

「ん?どうした?」

「い、いえ。ええっと…そ、それじゃあお言葉に甘えて」

「今日はもう遅いし、詳しい時間と場所は後で連絡する」

「はい」

 

時間も遅くなってきているので、2人は連絡先を交換してひとまず解散することになった。

 

「じ、じゃあ、また明日、よろしくお願いします」

「あぁ、お休み」

「お休みなさいです」

 

綺凛は直角になるくらいしっかりと頭を下げると、小走りで女子寮へと入って行った。真鞘はそれを見送って、男子寮へと帰って行った。

 

 

その時の足取りは、2人とも軽いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




綺凛ちゃん出せて満足したけど思ったより話が進まなった…

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