料理好きな妖刀使い   作:ibura

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――真鞘、真鞘!!

 

誰かが自身の名前を呼ぶ。だが目の前は真っ暗で何も見えはしない、身体も動かない。

 

 

 

――おい、真鞘!!しっかりしろ!!

 

誰かの声は自分に呼びかけ続ける。けれども、それが誰の声かは分からない。

 

 

 

――俺の顔を見ろ!!呑まれるな!!

 

 

 

 

真鞘はゆっくりと目を開いた。

そこは自分が普段過ごしていた我が家だった。

そこに真鞘は立っていた。

そしてーー

 

 

周りには自分の家族が倒れていた。

 

 

 

どうしてこうなった。

 

どうして自分だけが立っている。

 

どうして周りに家族が倒れている。

 

どうして自分は血まみれで立っている。

 

どうして……自分は刀を持っている。

 

「誰か…」

 

「……真鞘」

 

ハッとして振り向けば、そこには血まみれの――――

 

 

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

 

「最悪な夢見たな」

 

真鞘が目を覚ますと、そこは一昨日から過ごし始めた自室だった。

今日の朝は、昨日約束した通り綺凛と一緒にトレーニングをすることになっている。時計で現在の時刻を確認すると、設定した目覚ましが鳴る少し前だった。隣のベットを見るとアルフはまだ眠っているが、今からもう一度寝るつもりもなく、軽く顔を洗ってさっぱりすると、身支度を整えて真鞘は部屋を出た。

 

約束の時間より少し早いが、すでに待ち合わせ場所にはトレーニングウェア姿の綺凛が到着していた。

 

「悪い綺凛、待ったか」

「いえ大丈夫です。私も先ほど着いたばかりですし、まだ約束の時間より早いです。おはようございます、真鞘さん」

「おぉ、おはよう。じゃあ行こうか」

 

 

合流した2人はまず、アスタリスクの外周を回るコースを走った後、綺凛の所有するトレーニングルームに移動した。

 

「今日はこんなものを持ってきてみた」

 

真鞘は言いながら、自身の鞄から木製の刀を日本取り出した。

 

「それは、木刀ですか」

「そう、これでちょっと模擬戦やってみないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とか言わなければよかった」

「朝からどんなトレーニングをしたらそんなに疲れるんだよ……」

 

現在真鞘は教室の自身の机の上にうつ伏せでぐったりとしていた。

こうなった原因は朝に綺凛と行った、木刀を使った模擬戦にあった。綺凛の現在の実力を知るという目的で提案した真鞘だったが、綺凛の実力は真鞘の予想以上のものであった。

 

「まぁ序列一位なんだから当たり前なんだけどさ」

 

綺凛は真鞘に自分の力を見てもらいたいという思いから初めから本気で戦い、真鞘も真鞘で相手の綺凛が久しぶりに純粋な剣術だけで勝負をしてくるタイプということもあってテンションが上がっていた。その結果、もはや模擬戦と言えるレベルではなくなったトレーニングになってしまった。

 

「使っていたのが木刀じゃなかったら全身傷だらけだったかもな、お互い」

「もうそれはトレーニングとは言わないし、模擬戦ではないよ。ちなみにどっちが勝ったの?」

「俺が勝った、ギリギリだったけどな」

 

最終的には綺凛が使っていた木刀を真鞘が真っ二つ折ったことによって模擬戦は終了となり、そのまま早朝トレーニングも終わりとなった。

 

「それで、どうだった?疾風迅雷の実力は」

「正直、予想以上だった。なめていたわけではないんだけど最初の時間帯はこっちが押された」

「それは、また……僕も模擬戦してみたいな」

「やめろ、それこそ怪我人が出る」

 

真鞘とアルフが話していると、綾斗と夜吹が教室内に入ってきた。

 

「おはよう、2人とも……って真鞘どうしたの?」

「おはよう綾斗、あぁ真鞘はほっといて良いよ。自業自得だから」

「うるせぇアル………まぁその通りだから返す言葉はない。おはよう、2人とも」

「あ、夜吹もいたんだ」

「アルフ、お前ひでぇな」

 

昨日と同じ4人で会話をしていると、綾斗は隣の席に座っていたユリスにも声をかけた。

 

「おはよう、ユリス」

「……あぁ、おはよう」

 

その瞬間、それまで騒がしかったクラス内の喧騒がピシッと収まった。

 

「おい、今の聞いたか……?」

「……あ、あのお姫様が挨拶を返しただと…!?」

「聞き間違いじゃないよね……?」

「あいつ、一体どんな魔法を使いやがった……!」

「いやまて、そもそもあれは本物なのか……?」

 

一転してざわめきだしたクラスメイト達。この反応は駄目だろうと真鞘が思っていたら、案の定ユリスは机をバンと叩いて立ち上がった。

 

「し、失敬だな貴様ら!私だって挨拶くらい返す!」

 

当然のユリスの反応に真鞘は苦笑していたが、そこでふとユリスとは反対側の絢斗の隣の席、昨日は空席になっていた綾斗の左隣の席が埋まっていることに気付いた。その席では、青みがかった綺麗な髪の女の子が、先ほどまでの真鞘と同じような机に突っ伏すような態勢で寝息を立てていた。

真鞘と綾斗が挨拶をしようかと悩んでいると、タイミングよくその少女がむくりと顔を上げた。

 

「おはよう、お隣さん。俺は昨日この学園に転入してきた天霧……」

 

先に挨拶を行った綾斗だったが、その言葉は最後まで口にすることはできなかった。その少女の顔を見た途端、ぽかんとした顔のまま固まってしまった。真鞘も綾斗と同じように固まっている。

 

「さ、紗夜……?」

「……まじかよ」

「……」

 

当の少女は無表情に真鞘と綾斗の顔を交互に見ていたが、やがて小さく首をかしげてぼそりとつぶやいた。

 

「……綾斗と……誰?」

「えええっ!な、なんで紗夜がここに!?」

「おいこらちょっと待て」

 

間違いなく、その少女は沙々宮紗夜(ささみやさや)であった。

驚きのあまり立ちつくす2人の前から、夜吹が身を乗り出して聞いてきた。

 

「なんだなんだ。お前ら知り合いなのか?」

「ああ、うん…古い友人というか、まぁいわゆる幼馴染ってやつかな」

「俺も一応は顔なじみだったはずなんだが……」

「……あ、真鞘だ」

「……………」

 

綾斗からかなり遅れて紗夜に認識された真鞘は、言葉なく自分の席に座った。

 

「幼馴染っていうんなら、どうしてうちの生徒だって知らなかったんだい?」

「いや、幼馴染って言っても、紗夜が海外に引っ越して以来だから……かれこれ6年ぶりぐらいになると思う」

「へぇ……そのわりに、こっちの反応は薄いようだぞ」

「それでも本人は結構驚いてるぜ……よな、綾斗?」

「うん……きっと」

「本当か?」

「……うん、ちょおびっくり」

「……いや、全然そうは見えないけどな」

 

ピクリとも眉を動かさない紗夜に夜吹は力なくツッコミを入れた。

 

「それにしても変わらないね、紗夜は。なんか昔のままっていうか…」

 

すると今度は首をふるふると横に振った。

 

「そんなことはない、ちゃんと背も伸びた」

「どこがだよ」

 

真鞘はそう言いながら紗夜を見る。

どう見ても、最後に別れた時とほとんど同じ身長に見える。

それは綾斗も同じようで、真鞘と同じような反応をしている。

 

「俺もあんまり変わってないように思うけど…」

「違う、2人が大きくなり過ぎ……でも大丈夫。私の予想だと来年くらいには今の綾斗くらいにはなってる」

「いや、さすがに1年でそんなには伸びないでしょ」

 

紗夜のとんでも発言にたまらずアルフが突っ込みを入れる。

 

「アルフうるさい、チビは黙ってろ」

「紗夜には言われたくないね…」

 

アルフは同年代の男子の平均身長と比べると少し小さい。だが、少し小さい程度であるため、チビ呼ばわりされるほどの低身長でもない。

 

「別に身長が低くても生きていけるし、煌式武装(ルークス)使いこなせるからそこら辺のデカい奴とも普通に戦えるし」

「それには同意。小さくても関係ない。うん、アルフはいいこと言う」

 

紗夜はチビ呼ばわりから一転、今度はアルフに向かってぐっとサムズアップした。

 

「お前らって結構仲良いよな」

「へぇ、そうなの?」

 

そんな二人のやり取りを見ていた夜吹はそうつぶやき、それを聞いた真鞘はアルフに問いかけた。

 

「まぁ仲がいいというか、話が合うんだよね」

「なんか意外だな」

「共通点が多いんだよ。重火器型の煌式武装(ルークス)使ってるところとか、その開発者がちょっと変わってる人とか…」

 

アルフに言われて真鞘は、紗夜の煌式武装(ルークス)を開発した紗夜の父親と、自分たちの使ってる煌式武装(ルークス)を開発した人物を思い出した。

 

「……あぁ言いたいことは分かった」

 

確かに似ている。

作るものがぶっとんでいるところとか、マッドサイエンティストのところとか……

 

 

そういえば、あの天災兎は何をしているのだろうか?

 

真鞘は紗夜に銃口を押し当てられている夜吹を見ながら、ふと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 




真鞘とアルフの煌式武装を作った兎さんはまたそのうち出していきます。

天災兎って言うだけで分かる人は分かると思いますが、あの人をこのSSに引っ張ってこようと思ってます。
また出したらタグは追加する予定です。

感想、評価等々よろしくです!
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