料理好きな妖刀使い   作:ibura

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お待たせしました。


7

放課後、真鞘達は話しながら帰る準備をしていた。

 

「紗夜の親父さんは相変わらずだな」

「ほんとにそう。もうちょっと大人しくしていてほしい」

 

そこへ、先ほどまで姿が見えなかったユリスがこちらへと話しかけた。

 

「あーこほん、そろそろ準備はいいか?」

「あぁユリス、じゃあよろしく頼むね」

「し、仕方がない。約束は約束だからな」

 

真鞘、アルフ、紗夜は事情を知らないために首をかしげる。夜吹は、新聞部の仕事があるとのことでこの場にはいない。

 

「約束って?」

「今日はユリスに学園内を案内してもらうことになっているんだ」

「リースフェルトに?なぜ?」

 

綾斗の答えに紗夜は疑問を持ったが、真鞘は大体の予想がついた。

 

「どうぜ、昨日の決闘の時の礼だろ」

 

真鞘の言葉に、綾斗とユリスは驚いた。

 

「た、確かにそうだが…よく分かったな」

「綾斗のことだ、どうぜ頼むことなんか思いつかなくて学園内を案内してくれとでも言われたんだろ」

「……」

 

綾斗は見事にいい当てられ返す言葉もなく、アルフは納得した。しかし、紗夜は新たな疑問が出てきた。

 

「リースフェルは綾斗と決闘をしたのか?」

「…そうだが?」

「その結果は?」

「途中で邪魔が入ってな、勝負がつかないまま終了した」

「……そうか」

 

紗夜はどこか納得いかないといった表情であったが、それ以上は何も言わなかった。

 

「さぁ行くぞ」

「あぁ。じゃあみんな、また明日」

 

そうして、2人が教室から出ようとした時だった。

 

「あら、でしたら私のほうが適任ということになりますね」

「おわっ!?」

 

いつの間にやってきたのか、クローディアが後ろから綾斗に抱き着いた。それを見たユリスの顔は険しくなる。

 

「ユリスは中等部三年からの転入です。一年から在籍している私のほうが、この学園の地理は細部まで理解しています」

 

今年に入学したアルフからこの学園を案内してもらった真鞘はどうなるのだろうか?

 

「ですから綾斗の案内は私が…」

「却下だ」

「ちょっ、クローディア当たってる」

 

クローディアの提案にユリスは即答した。綾斗はクローディアに胸を背中に当てられてあたふたしている。

 

「ふむ、残念です。では用件だけ済ませて帰ることにします」

 

クローディアは名残惜しそうに離れると、綾斗に向き合って書類の束を差し出した。

 

「先日申し上げました純星煌式武装(オーガルクス)の選定及び適合率検査を明日行います。この書類に目を通していただいて、問題がないようでしたらご署名をお願いします」

「あ、そのことか。分かったよ………って、結構量多いんだね」

 

綾斗が受け取った書類はざっと見て10枚ほどあった。

 

「あくまで統合企業財体の資産ですからね。まぁ形式だけですのでお気になさらず、さらさら~っと流してしまって結構ですよ」

「俺の時にはそんなこと一言も言わなかったよな。しかも綾斗より量多かったし」

「真鞘の時は違う書類でしたから。あちらは重要書類になりますので」

「………」

「ドンマイ真鞘」

 

まぁ確かに重要な内容ではあったが、真鞘は納得できなかった。しかし、それをクローディアに言ったところでどうにもならない。項垂れる真鞘の肩にアルフは手を置いて一言言って慰めた。

 

「……そんなものを生徒会長がわざわざ持ってくるとは、生徒会もよほど暇らしいな」

「本当は生徒会副会長に頼もうと思っていたんですけど……どこで油を売ってるのかなかなかこちらに来ないので」

 

そういってクローディアはアルフの方を見る。その瞬間、アルフは真鞘の後ろに隠れるも自分の携帯端末を見て顔を真っ青にしていた。そこには、クローディアからの着信が数件入っていた。

 

「えっと、ごめん、気づかなかった」

「……はぁ、まぁいいでしょう。今回は許します」

 

その瞬間、アルフは助かったと言わんばかりに脱力した。それと同時にアルフの携帯端末に着信が入った。

 

「ちょっとごめん」

 

アルフは一言断りを入れてから通話をしに、廊下へと出ていった。

 

「前から思ってたんだけど、ユリスとクローディアって友達なの?」

「はい、そうですよ」

「断じて違う!」

 

綾斗の質問に、2人は全く正反対の答えを返した。それを聞いた綾斗は困惑した顔で首を傾げ、真鞘は吹き出した。紗夜は相も変わらず無表情のままだった。

 

「あらあら、冷たいお答えですね」

「ウィーンのオペラ座舞踏会(オーパンバル)で何度か顔を合わせた程度の昔なじみで、それ以上でも以下でもない。いいから用が済んだのならとっと帰るがいい」

「ふふっ、ごきげんよう。ですが、明日は私が綾斗を独り占めさせていただきますので、悪しからず」

 

クローディアは一礼して、教室を出ていき、すれ違いにアルフが戻ってきた。

 

「お帰りアルフ、誰から連絡?」

「あぁうん、ちょっとね……、ねぇ真鞘。今日この後空いてる?」

「今日か?別に特に何もないが……」

 

この時真鞘は、何故かとてつもなく嫌な予感がした。

 

「おいアルフ、さっきの着信、まさか……」

「うん、そのまさかだよ。

 

 

 

束さんから連絡がきた、『今からそっち行くね!!』……だってさ」

 

2人はため息を吐き、頭を抱えた。

 

 

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

 

 

篠ノ之(しののの) (たばね)

真鞘とアルフの使う煌式武装(ルークス)を開発した人物であり、一時期真鞘とアルフと行動を共にしていた。彼女を一言で表せばと問われると、真鞘は『狂った兎』と答え、アルフは『頭のイカれた天災発明家』と答える。

 

 

 

綾斗とユリスが教室から出ていった後、残った3人はアルフの所有するトレーニングルームへと移動していた。

 

「まさかアルフがここの序列3位だとはなぁ」

 

アルフがトレーニングルームを所有しているのは、冒頭の十二人(ページ・ワン)としての特権を使用してのものであるということを、真鞘は移動前に聞かされた。

 

「まぁこの学園の実力が知りたかったから入学したての頃はよく決闘したね」

 

そのどれもが1分も経たずにアルフの勝利で終了してからは誰もアルフの決闘の申請を受諾しなくなったが、その後に行われた公式序列戦で序列3位となった。

 

「決闘と言えば、さっきの話。真鞘、綾斗がリースフェルトと決闘したという話は本当か?」

 

それまで黙っていた紗夜が、決闘という言葉で思い出した質問を真鞘に問いかけた。

 

教室から移動する際、束がやってくる理由を考えたときに、真っ先に思い当たったのが煌式武装(ルークス)のメンテナンスであった。

真鞘とアルフの使う煌式武装(ルークス)のメンテナンスは不定期に束が行っている。今回のように唐突に連絡をよこして唐突に現れてメンテナンスを行って帰っていく。

そして、その煌式武装(ルークス)のメンテナンスという要件に紗夜が食いついた。アルフと似ている煌式武装(ルークス)を使う紗夜はその煌式武装(ルークス)を開発し、メンテナンスを行っている束にも興味を持ったということだった。束が極度の人見知り、というよりも極端に他人に興味を示さない人物であるということで、真鞘とアルフは紗夜を連れて行くかどうか悩んだが、束と紗夜の父親が顔見知り、というよりもかなり仲が良いということを思い出して、まぁ大丈夫であろうという2人の判断で紗夜も一緒にアルフのトレーニングルームへ向かうことになった。

 

「あぁ、途中で中止になったけど確かに決闘していた」

「……おかしい、綾斗の実力ならリースフェルト相手なら余裕なはず」

「そうなの?」

 

紗夜の言葉にアルフは驚き、聞き返す。

 

「確かに、昔の綾斗のままだったら勝ってたと思うが……」

「何か理由があるのかい?」

「まぁな……まだ確証はないが、おそらく綾斗は何らかの方法で力を封印されてるんだろう。魔術師(ダンテ)魔女(ストレガ)の能力だとは思うが…」

「なるほど、それなら納得」

「でもどうしてそんなことを…」

「そこまでは分からねぇよ。本人から聞くしかないだろう」

 

(まぁそんなことを出来る人で思い当たるのは1人しかいないけどな)

 

 

 

「そういえば、束ねさんはどこに来るんだ?」

「それが、分からないんだよ……用件だけ言ってすぐに通話切られちゃったし…」

「アルフ、あれ何?」

 

トレーニングルームまで後少しという時、紗夜がトレーニングルームへと続く一本道の隅の、その地面から伸びている二本のうさ耳を指さしていた。

 

「「……」」

 

真鞘とアルフははそれを一度見て、何も言わずに空を見た。

 

「まーーーーくーーーーん!!!!あーーーーくーーーーん!!!!!」

 

2人が見上げた空から、突如としてロケットが降ってきた……人参型のロケットが。そしてその中から、何食わぬ顔をした束が姿を表した。

 

 

 

 

 

 

「やぁやぁ久しぶりだねー、まーくん!!あーくん!!」

「あぁ、久しぶり」

「ほんと、いつもながら急だよね」

 

束が合流し、真鞘たちはトレーニングルームの中へと移動した。

 

「ところで、そっちの子はもしかしなくてもそーくんの娘かな??」

「そうだけど、よく分かったね」

「そーくんからよく話聞いてたからね、写真も見せてもらったことあるし。私も一度会ってみたいと思ってたんだけど、まさかこんなに簡単に会えるなんて!!2人ともナイスだよ!!」

「それはよかったよ」

 

真鞘とアルフに向かってサムズアップする束に対して2人は苦笑いを返しながら、ひとまずは束が上機嫌なことに安堵した。この人物が不機嫌になると面倒臭くなるということを、2人は熟知していた。そしてなにより――

 

「私も父から話を聞いてあなたに会ってみたかった。あなたの作る煌式武装(ルークス)には興味があった」

「それは嬉しいねぇ。私もそーくんが作った煌式武装(ルークス)をさーちゃんがどんな感じで使ってるのかは見てみたかったんだよ。後で使って見せてみてよ。私の作った煌式武装(ルークス)も使ってみていいからさ」

「それは構わない、むしろ大歓迎」

「あ、私のことは束さんでも束姉さんでも束でもなんでも好きな風に読んでくれていいから」

「分かった、束」

 

この2人が会って数分もしないうちにかなり仲良くなっている状況に、真鞘とアルフは安堵した。

 

 

 

 

 




ということで、束さん登場回でした。

綾斗×紗夜というのはこのSSには一切ございません。
お互いに認識は幼馴染の友達です。


ここまで戦闘シーンが皆無ですが、話の都合上たまたまです。決して作者が戦闘シーンが苦手で避けてるわけではないです。本当です。

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