此処は、エギルが経営している現実世界のキリト達のたまり場。一人の少女が旅立ち意気消沈しているキリトとアスナを心配した彼は、二人に声をかける。
エギル「なあ、お二人さん。こんな時に何だが気分転換に、ALO…いやMMORPG以外のゲームをやってみるのはどうだ?」
エギルはカウンターにダサい緑の蛍光色のゲームパッケージを置く。見たことも聞いたこともないゲームだ。
キリト「POZ?なんの略だ?聞いたことないな。どんなゲームなんだ?」
エギル「協力プレイもできるステージクリア型のロボシューティングだ。ダイブ型のゲームでは珍しい。対人戦なし、実名登録オンリー、アバターもなし、とっておきにザ・シードとまったく関わり合いのない異色のゲームだ」
キリトもアスナもファンタジーならともかくSF、ましてやRPGでさえないロボシューティングにあまり興味が無いのか気の無さそうに返事をする。
キリト「で、おもしろいのか?」
エギルは苦虫を噛み潰したような渋い表情を浮かべながら答える。
エギル「百聞は一見…いや一プレイにしかず。やってみれば分かる。合う合わないもあるしな」
アスナ「何か、含みのある言い方ね」
エギル「少なくともキリトが聞いたこともないくらいマイナーなゲームだ。プレイ人口もほとんどいない。プレイすればそれだけでスコアランキングに乗れるだろう」
キリト「ただ単にクソゲーなんじゃないのかそれ?」
アスナ「キリト君、せっかく心配してくれて勧めてくれるのに…」
エギル「まぁ、悪く言えば本質的にインベーダーゲームと変わらない古典的ステージクリア型シュータだからな。MMORPGとちがって良くも悪くもあっさりしている。まぁ、話題にならないのも当たり前だな。だが、その分いろいろなことを気にしなくていいからお二人さんの気分転換になるかと思ってな」
キリト「ありがとう心配してくれて。エギルがせっかく勧めてくれたんだ。プレイしてみるよ。アスナ今日の夜、POZで会おう」
アスナ「分かった。キリト君」
◆
キリトは自宅の布団の上でゲームにダイブする準備を始める。POZの説明書にはザ・シードを利用しないゲームで一切ローカル側にデータが存在しないと書いてある。そのため、コンバートはできず(出来たとしても完全にシュータだから全く意味はないが)ユイを持ち込むことはできないだろう。その分、ザ・シードを利用したゲームと干渉はしないためALOのデータはそのままだ。POZへのリンクをスタートすると、視界が真っ白になり機械的な音声がアナウンスされる。今時、個人製作でもあまりない非常に簡素なオープニングだ。
~貴方は戦えますか?目の前の現実が崩れ去っても。これは、未来に起こる本当の物語~
アナウンスが終了するとログイン画面に切り替わった。名前の欄はすでに”桐ヶ谷 和人”になっていて、変更出来ないようだ。パスワードを入力すると、眼前が緑色の閃光に包まれ、真っ白な世界から無機質な機械的な鈍色の空間へと景色が変わる。此処は、今から操作する機体の格納庫のようだ。目の前には、ファンタジーで言うならサイクロプスの上半身だけのゴーレムのような機体が二機鎮座している。今から操作する機体なのだろう。今までのゲームは、MMOだったので初入場はロビーや広場だったがこのPOZは、そもそも対戦機能すらないゲームのためか、それともプレーヤーの交流を意図的にさせないようにようにしているのか…とにかく今までのゲームとの違いに戸惑い、不安になったため周囲を見渡すと先にログインしていたアスナを見つけて安堵すると話しかける。
和人「アスナ、先にログインしていたのか。またせてごめん」
アスナは、不安そうな面持ちで和人に話す。
アスナ「キリト君、このゲーム変よ。コンソール画面が出てこない。ほら」
アスナは、左手の人差し指を虚空に指差すが何も起こらない。コンソールが出てこないということは、ログアウト出来ないということだ。しかし、SAO、ALOとスキャンダル続きのVRゲームにおいて、そのようなゲームが販売されるということはありえない。あったとしてもすぐに、行政が対応するはずだ。まして、このゲームはエギルがすすめたゲームだ。しかし、和人には一人の男の姿が頭に浮かぶ。このゲームは、本当に、ザ・シードとこのゲームは関係がないのだろうか。
唐突に、どこからともなく、男女の二人組が靴音を鳴らしながら歩いてくる。どうやらこちらを観察しているみたいだ。AI…なのだろうか?このゲームは、ユニットの上にアイコンが出ないためどちらかわからないがプレイヤーには思えなかった。どこがどう違うと問われても返答に困るが。その、プレイヤーには思えない男女二人は、好奇心に満ちた愉悦の表情を浮かべながら意味深な会話をする。
???「これが今回の実験体か」
???「こいつらにアンヴァールはもったいない」
???「しかたないさ。コックピットが存在する機体は、アンヴァールの他にコブラルしかないのだから」
アスナは、勇気を振り絞り、二人に疑問をぶつける
アスナ「このゲーム、どうやったらログアウトできるの?」
???「ログアウト?ああ、実験が終わればサーバに戻す」
和人は荒い口調でまくし立てる。もっとも相手はNPCなのだろうから意味はないのかもしれない。
和人「実験って、このゲームはいつ終わるんだよ!」
???「光無き者のくせに」
???「そう怒るな。こいつはただ単に質問しているだけだ。そうだな、アンヴァールに乗って30分程度で終わるそんな実験だ。機体に乗るには、そこのテレポータの上に立つといい」
男は、そう言ってALOだと転移門にあたるであろう物体を顎でしゃくる。
???「説明は、果たした。あとは、機体のAIにでも聞くんだな」
一方的に、男は言い放ち、そして、二人共消えた。
アスナ「なんなのこのゲーム?」
和人は、さまざまな可能性を頭に浮かびあげる。もっとも可能性が高いのは、スコア不正防止のための一時的なログアウト禁止だ。対戦型のゲームだと。負けるのが嫌で、敗色濃厚になると投了せずに強制ログアウトしてしまうプレーヤーが少なからず存在する。そのような不正を防止するために一時的にログアウト出来ない状態にするゲームは実際に存在する。
和人「たぶん、スコア不正防止のログアウト禁止措置にそれっぽいSF設定つけてるだけなんじゃないか」
そう言い放ち、和人はテレポータの上に立つ
アスナ「もうっ、キリト君たら!」
アスナも続いて、テレポータの上に乗る。二人は別々の機体に乗り込むと、無機質な機械音声が木霊する。
AI『マニューバの登場を確認、アンヴァール、起動します。マニューバに操縦方法のインストール開始』
AIが冷たい声でそう言うと、和人の脳内に、操作方法が自然と浮かび上がる。何か変だ、脳に直接情報をインプットするなんてまるで須郷のやっていることじゃないか?アイツは、逮捕されたハズ。
AI『最初の任務は、デフテラ領域内での操縦訓練になります。ガイドが出るのでそれにそって飛行してください』
和人「アスナと会話したいつなげてくれ。アスナ、そっちはどうだ?」
そう言うと側面にパネルが浮かび上がり、アスナが現れる。ロボットアニメなどではよく見かける光景で意外と良く出来ている。
アスナ「キリト君。今のところ、コンソールが出ない事以外は普通ね。でも、これ操縦できるのかしら?いくら操縦方法が分かると言っても、分かるだけで、実際に操縦するのとは違うみたいだし」
和人「まあ、そりゃそうだろうな」
機体が勝手に格納庫から動き出し、原子炉の内部のような場所に進む。ここから、ステージに以降する作りのようだ。
AI『機体をチャンバーに移動、復元座標セット、レイノズル曲線安定、転送復元確率99.9%、CHIP損失率0.2%…エンタングル』
モニターが青く染まったあと、周囲の光景が切り替わる。そこは、不自然な鈍色の空に、おそらく日本の都市ではないであろう廃墟の姿があった。建物や地形のグラフィックは、まるで本物のようにリアルだが。鈍色に揺らめく空が台無しにしている。崩壊した未来世界が舞台とは言え、これはないだろう。左手前方に、もう一機、上半身だけのサイクロプスが宙を漂っている。アスナの機体だろうか?ISSがパネルに青色のアイコンでサイクロプスを指し示している。
AI『今回の任務は操縦訓練になります。ガイド・ビーコンにそって操縦してください』
和人「アスナ、チュートリアルみたいだ。今までのゲームにくらべると随分親切なんだな」
アスナ「そうね、でも、なにかこのゲームはおかしいと思う」
和人「今までは、MMOばかりやっていたからな。スタンドアロンのゲームならこんな感じなんじゃないか?」
二人は、多少手間取りながらも、所定のルートにそって操縦する。10数分かけてゴールに辿り着くとAIが冷たい声でアナウンスをする。
AI『訓練終了、帰投します。エンタングルタイムアウト』
◆
目が覚めるとそこはキリトの自室の上であった。いろいろ警戒したが、結局のところ、少しログアウトの融通が利かない普通のゲームであることにキリトは安堵した。
タグの原作キャラ死亡は、まあそう言うことです。