2人の物語の始まりです
彼、佐藤崇仁(さとう たかひと)は高校2年生、体格は同年代の男子と比べて小柄で華奢、色白で容貌は女性的であり、いわゆる「男の娘」といった感じの美少年である。実際、彼が女装すれば美少女にしか見えないであろう。
趣味は漫画にアニメ全般、いわゆる「オタク」である。多くのオタクがそうであるように、彼は女性にはまったくモテない。大体世の中、少しくらい顔が良くても、性格が内気でオタクで運動神経も良くないとくれば、まずモテないものである。当人は年相応の少年らしく女性には興味しんしんで、よくエッチな本もこそこそと見たりしている。
友達といえる存在は特になく、学校内では浮いた存在である。とはいえ、学校で特にイジメを受けるというわけでもなく、学業の方は特に国語や歴史などの文系科目はかなり出来て、真面目で礼儀正しい性格なので先生からの受けは良い。まあ、とにかくあまり目立たないタイプの少年であった…
その崇仁が、最近注目した『ハイスクールD×D』というアニメ作品がある。その内容をかいつまんでいえば、スケベで熱血漢の兵藤一誠(イッセー)という少年(ちょうど崇仁と同じ高校2年生という設定である)が、初めて出来た彼女とのデート中にその彼女によって突然殺されるがメインヒロインのリアス・グレモリーという悪魔の女の子により悪魔として転生して持ち前のスケベ根性を糧に「ハーレム王」をめざして頑張っていくという筋書きである。そのアニメに出てくるキャラクターの中で崇仁が最も気に入って、まあオタクにはつきものの話だが恋をしたのが、主人公一誠の恋人を演じて彼を騙して殺害した悪役の女レイナーレであった。
そのレイナーレは堕天使という設定である。すなわち罪を犯したことによって天界を追われて地上にやってきた烏のような黒い羽をもった天使…彼女は天野夕麻(あまのゆうま)という偽名を使って女子高生に化けて一誠に近づき、2週間ほど付き合った後に彼を殺害した。それは一誠が強力な能力を持つ神器を知らずしてその身体に宿しており、それが危険であるとして堕天使たちを統括する教会の上層部から命じられたからであった。
天野夕麻としての彼女は純真な少女の役を演じたが、本来の堕天使としての彼女は長く艶やかな黒髪に赤い瞳が印象的な素晴らしい美貌、胸は大きく腰もくびれたプロポーション抜群の体に極度に露出度の高いボンテージ姿の衣装をまとった妖艶な美女である。ムッツリスケベたる崇仁が好きなのは特に妖艶な本来の姿の彼女である。
しかし彼女は物語の中では完全な悪役とされていて、その扱いは極めて酷い。物語冒頭で一誠を殺し、さらに高度な能力を手に入れる事で堕天使間での出世を望んだ彼女は、堕天使・人間・悪魔を問わず癒すことの出来る神器(セイクリッド・ギア)「聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)」を持つ少女アーシア・アルジェントからそれを奪って殺害した。
しかし、彼女のその行為は自らの破滅をもたらすことになった。悪魔に転生した一誠とアーシアは親しい関係にあり、彼がアーシアの救出を望んだ事により、リアス率いるグレモリー家の悪魔たちがレイナーレたちの住む教会へと乗り込んできたのだ。
レイナーレは、アーシアを殺された事に激怒した一誠と対面して彼と一対一の戦闘となり、当初は圧倒したものの、慢心からきた油断により、神器「赤龍帝の籠手(ブースデット・ギア)」でパワーアップした一誠に敗北、そしてリアスによって仲間の堕天使たちは皆殺しにされ、彼女も捕らえられて死刑を宣告される。恐怖の中で彼女は天野夕麻の姿になって泣きながら一誠に必死に命乞いをするも、彼から冷たく拒絶され、絶望の中でリアスにより無残にその美しい肉体を消滅させられる…そんな悲劇的な末路を迎えるのである。
崇仁は昨晩、彼女が最期を迎えた話を視聴した。彼はさめざめと泣いた。そして納得出来ない思いが胸中を駆け巡った…
そして翌朝、彼はその事を考えつつ道を歩いていた。
まず、彼が思ったのはリアスたちのやった事が過剰報復ではないかという事だった。レイナーレのやった事に対する報復ならば、彼女の仲間を皆殺しにして、彼女を叩きのめして屈辱の底に叩き込んだ事でもう十分だろう。なぜ、仲間を殺され、抵抗するすべも失ってただただ恐怖に怯えている彼女をあそこまで残酷に追い詰めて殺さなくてはならないのかと…
それに、泣きながら必死で命乞いをする彼女を非情にも見捨てた…いや、リアスに彼女を殺すようにはっきりと頼んだ一誠にも納得できない、いや、ふつふつと怒りがこみ上げた。たとえアーシアの件があったにせよ、仮にも一度は愛した女のはず、それがあのような哀れな姿で必死で助けを求めているのをあそこまで冷酷に切り捨てられるものなのか?「仏の顔も三度まで」と言うではないか。三度までとは言わないが、せめて一度くらいは改心の機会を与えてあげるのが筋ではないか…
(くそっ!僕があの場にいたのなら彼女を救ってあげるのに…!)
そう崇仁は心の中で叫んだ。すると
「そうか、ならその願いをかなえてやろう…」
と誰かの声が聞こえた気がした。
(えっ!?)
と驚く彼の前に車が猛スピードで突っ込んできた。頭の中がすっかりレイナーレの事でいっぱいになっていた彼は交差点が赤信号になっていたのにそのまま歩いていたのだ。
「うわあああああっ!!!」
絶叫と共に彼の意識は遠のいた…
(あれ…?ここは…?)
気がつくと崇仁は、石柱に囲まれた大きな池のある公園のベンチに1人座っていた。
(僕は…車にはねられて…でも…ここは…?)
呆然としつつ彼は周囲を見まわす…
(あれ…?ここって見覚えがある気が…どこだっけ?あっ…!)
崇仁は気がついた。そこは『ハイスクールD×D』の第4話に出てきた、一誠とアーシアのデートの舞台となった公園とそっくりなのだ。
(ここがあの場所のモデル…?)
そう思っている彼は、自分の方へと歩いて来るカップルに気がついた。
(えっ!?ええっ!!!)
彼が驚愕したのも無理はない…なぜならその2人は…
(一誠とアーシア…!)
そうまさしくその2人は一誠とアーシアの姿をしていた。逆立った特徴的な髪型の少年、シスターの姿をした小柄で金髪の美少女…崇仁は先ほどの
「ならその願いをかなえてやろう…」
という声を思い出した。
(ま、まさかそんな…!そ、そうだよね!これはコスプレ!僕と同じファンの人たちが作品の「聖地」を訪れてそこでコスプレしているだけ…)
一旦はそう思い直そうとした崇仁であったが、そこでまた彼は考えた…
(もし、ここが本当に『ハイスクールD×D』の世界なのなら、ここには今から必ずレイナーレが現れるはず…)
そう思った彼は急いで身を隠すことにした。そして何食わぬ顔でベンチを立ち上がって、
「あっ、よろしかったらどうぞ」
と2人に向かって軽く頭を下げた。
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます」
と一誠とアーシア(?)は応じて、崇仁はその場を立ち去った…と見せかけて、少し離れた石柱の陰に身を隠して様子を伺った。
2人は真剣な表情で何かを話している…その話し声は離れている崇仁には聞こえない。しかし、崇仁は2人が話している内容を知っている。アーシアが故郷において悪魔でさえも癒せる能力によって人々から忌み嫌われて迫害された事、その後、彼女のその能力に目をつけた堕天使たちの下僕となった事、しかし彼らのやり方に納得出来ずに逃げ出してきた事、そしてそんな彼女に一誠が
「俺がアーシアの友達になってやる」
と言った事を…
崇仁はもはやここが『ハイスクールD×D』の世界である事を確信していた。2人の声は聞こえないが、その表情や仕草は、あの第4話の状況と全て同じであった。念のために腕をつねってみたが、ちゃんと痛覚があった。
(よしっ!)
彼はこれから起こる出来事についての対処を考えた…
そして、ついに彼が誰よりも待ち望んだレイナーレがその姿を現した。その漆黒の翼…長い黒髪に妖艶な美貌…ボンテージ姿の豊満で美しい肉体…まさしく彼にとっての「美の女神」である彼女そのものである。
彼女の姿に見とれる崇仁、しかし彼はすぐに冷静に戻る。
(浮かれてちゃダメだ…!)
そう、今油断していてレイナーレに見つかったりしたら、彼女を救うどころか下手をすれば不審人物として殺されかねない…
その後の展開もまたアニメの状況と全く同じであった。アーシアを渡せ、渡さないの押し問答の後、レイナーレと一誠は戦闘になるが、まだ神器を十分に使いこなせない一誠はレイナーレに圧倒され、池の中に吹っ飛ばされ、レイナーレはアーシアを連れ去った。彼女の教会へと…
しばらく呆然と池の中に座り込んでいた一誠であったが、やがて身を起こして歩き出した。その様子を見た崇仁は彼に見つからないようにその後をつける…
もう夕暮れになっていた。崇仁はリアスの治める一誠たちの学校である私立駒王学園高等部の門の前にいた。時々、下校中の学園の生徒たちが彼を怪訝そうに見つめる…
そしてついにその時が来た…!一誠と、彼と同じくリアスの下僕悪魔である搭城小猫(とうじょうこねこ)と木場祐斗(きばゆうと)の3人が現れたのだ。これから3人はレイナーレの本拠である教会を襲撃するのだ。崇仁は3人に見つからないように急いで身を隠した。そして適度な距離を取りつつ、3人の後をつけた…
崇仁の胸は緊張と恐怖で激しく高鳴る…もし勘のいい木場あたりに気づかれたら終わりなのだ。運動神経にも乏しい全くの凡人である崇仁に気配を消すとかそういう技術の駆使は問題外である。しかし、彼が元来この世界の人間ではないゆえであるのか、幸いにも3人に気づかれることなく、教会までついていくことが出来た。
そして3人は教会の正面から突入していった…一方、教会の裏では先に来ていたリアスと彼女の友人でやはり悪魔の姫島朱乃(ひめじまあけの)が、レイナーレの部下である堕天使ミッテルト、カラワーナ、ドーナシークの3人と戦っているはずだ。このままの展開では3人はリアスによって皆殺しにされてしまうが、崇仁にその3人を救うすべはない。レイナーレを救うだけでも大変な困難と危険を乗り越えねばならない彼にとてもそんな余裕はない。彼は胸の痛みを感じつつも、この後の行動について考える…
(確かまず、教会に突入した一誠たちは礼拝堂でレイナーレの部下の生臭神父フリードと対決するはず、そして彼が逃げ出した後でレイナーレがアーシアから神器を奪って自らの身体に取り込む儀式を行っている地下祭壇へと行くはず、そしてそこから一誠は瀕死のアーシアを連れて礼拝堂へ戻ってきて、そこにやって来たレイナーレと戦う…そんな流れだったはずだ…なら、僕は…)
そう思った矢先に、教会の中からドスーン!!バターンッ!!と凄まじい物音が聞こえてきた…3人とフリードの戦いが始まったのだろう。崇仁は物音がおさまるまでじっと待った…
やがて物音がすっかりと消えてしばらくしたところで、彼は教会の中へと入り、礼拝堂の中を見回した。
(身を隠すところは…)
その彼の目に黒いカーテンが目に写った。
(あの中にでも隠れるしかないか…)
彼はその中に身を隠してじっと待った…緊張と恐怖で胸が激しく高鳴り、体がふるえそうになるのを懸命にこらえながら…
しばらくして一誠がアーシアを抱きかかえて戻って来た。アーシアはイッセーに
「私のために泣いてくれてありがとう…」
と言って息絶える…彼女を抱きしめて号泣する一誠…その前にレイナーレが現れ、激怒した一誠と彼女の戦いが始まった。
最初はレイナーレが一誠の力任せの攻撃を余裕でかわして、彼の両足に光の槍を叩き込んだ。ひざまづいて苦痛と怒りにあえぐ彼に勝利を確信して余裕の表情を浮かべるレイナーレ…しかし、彼女は次の瞬間、激しい怒りと殺気に満ちて立ち上がってきた一誠に驚愕し、
「ウ、ウソよ…ありえないわ…」
と激しく動揺する…
激しい怒りに身を焦がして、赤龍帝の籠手を自分に向けて向かってくる一誠にレイナーレはたじろぎつつも、光の槍を再び彼に投げつける。しかしそれを一誠は腕一降りで粉砕する。それを見たレイナーレの顔は恐怖に引きつる…
「ひっ!ひいいいいいっ!」
もはやレイナーレの常々口にしている「私は至高の堕天使」という誇りは粉々に粉砕され、彼女はただ恐怖に怯えて逃げだそうとした。その彼女を一誠は怒りの形相で追いかける…
「いやああああっ!!」
そして彼女の腕を捕らえた一誠は、かつてはその美しさに心を奪われた彼女の美貌に容赦ない一撃を見舞った…
悲鳴と共に彼女の身体は大きく吹っ飛び、窓ガラスを突き抜けて外へと放り出された。そしてその様子を崇仁はカーテンの隙間からじっと見ていた…
よくあれで彼女が死ななかったと思う。堕天使の身体が人間と比べて耐久力があるせいなのか、それともアーシアから奪った神器の力によるものなのか…もし、崇仁が今後の展開を知らなかったのなら、いても立ってもいられず、彼女の様子を見に行ったであろう。しかし、今はまだ動くべき時ではない…だが、もはやその時は間近に迫っていた。
間もなく、木場が駆けつけ、次いでリアスもやって来た。そしてしばらくの後、小猫が外に吹っ飛ばされたレイナーレを引きずって戻って来た。リアスの前に引き出されるレイナーレ、一誠の一撃で大きなダメージを受け、もはや抵抗することも逃げることもかなわなくなった彼女をリアスは冷たい殺意を込めた瞳で見つめる…
リアスはレイナーレに彼女の仲間たちを皆殺しにした事を告げ、その証として彼女らの羽の残骸を見せた。さらに一誠が本来の能力でははるかに勝っていたはずのレイナーレになぜ勝てたかについて詳しく説明した…
そして説明を終えたリアスが
「じゃあ、消えて…」
と言いかけたところで
「待って下さい!!」
と他の皆が耳慣れない声が礼拝堂内に響き渡った。
「!!?」
リアスも、そして恐怖と絶望にうちひしがれていたレイナーレも驚いてその方角を見つめる…
その次の瞬間、小柄で華奢な体をした少年がリアスたちの方へと飛び込んできて、座り込んでいたレイナーレの体にぎゅっと抱きついた。
「………!!?」
レイナーレは驚いた表情を浮かべたものの、抵抗はせずにそのままその少年に身をゆだねる…レイナーレの大きな胸が少年の胸にぎゅむっと押しつけられるが、今の少年にはその事を喜ぶ余裕はない。
これがその少年、崇仁の第一の作戦だった。目的はまず、リアスたちの虚を突いてレイナーレに抱きつくことで、彼女に手を出しにくくする事、そしてもう1つ、このまま放っておけばレイナーレは天野夕麻の姿になって一誠に命乞いをすることになるが、それは一誠の神経を逆なですることにしかならないことが分かっていたゆえに、それを阻止する事であった。
そして崇仁はレイナーレを抱きしめたまま叫ぶ…
「お願いです!!レイナーレさんを許してあげて下さいっ!!!」
その彼を見て一誠が
「お前、あの時の…」
とつぶやいた。
しばらく唖然として見つめていたリアスであったが、やがて
「貴方がどこの誰なのか知らないけれど、それは出来ない相談ね」
と冷然とした表情で言った。
「どうしてですか…?」
崇仁は当然予想していた反応ではあったが聞き返した。
「その堕天使は私の可愛い下僕を散々に弄んでくれたわ…その罪は万死に値する」
(…っ!)
崇仁は内心反発する、
(報復ならもう十分じゃないか!彼女の仲間を皆殺しにして、彼女をこんな状態にまで追い詰めた事で…)
と言い返そうとしたが、そこで彼は思い直す。
(ここでそんな事を言ってもどうせ水掛け論になるだけ…)
そう思った彼は訴える対象を変える…
「一誠君!!」
「お、お前何で俺の名前を…?」
驚く一誠に崇仁は
「それは後で説明するよ。それより、彼女は君が以前好きだった人でしょう?だからお願い!今回だけは彼女を見逃してあげるようにリアス先輩を、皆を説得してっ!!」
「うっ…」
一誠の表情が揺らぐ、それを見たレイナーレは彼に向かって叫びだそうとするが、崇仁はその彼女の口を手でふさいだ…
「あぐっ…」
「ダメですよ、それを言ったら逆効果にしかならないから…」
「あ、貴方一体…あむっ…」
しばらくためらいを見せた一誠であったが、やがて彼は悲しそうな表情を浮かべつつ言った…
「ダメだよ…そいつは俺の彼女になるふりをして俺を騙して殺した…その上、アーシアを自分の出世したいという欲望のために殺した…俺、そいつを許すなんてとてもできないよ…」
そして一誠はリアスの方を見て
「部長、もう限界です…後はお願いします…」
と言った。その言葉を聞いたレイナーレの顔は蒼白となり、彼女は一誠に向かって叫びだそうとするが、その口をまた崇仁は押さえる。
一誠の言葉を聞いたリアスは大きくうなずいて崇仁たちの方に向き直ると、
「さあ、その堕天使がどんな女かよく分かったでしょう。その女から離れなさい」
と2人に向かって歩み出した。
「お願いっ!!助けてっ!!」
レイナーレはもはや彼女にとって唯一の味方である自分を抱いている少年に必死にすがる。
「貴方を愛してるわ!!私には貴方だけなのっ!!だからお願いっ!!助けてっ!!」
その美貌に涙を浮かべて懸命に訴える彼女…
「見苦しいわね…堕天使レイナーレ…」
リアスが冷たい蔑みの眼差しでレイナーレを見下ろす。
「一誠の次は、その子を騙してその好意を利用して生き延びようっていうの…なんてあさましい女なの…」
そしてリアスはもう一度告げた。
「その女から離れなさい」
崇仁は叫ぶ。
「嫌ですっ!!もしレイナーレさんを殺すっていうのなら、僕も一緒に殺して下さいっ!!」
その叫びにレイナーレも涙に濡れた顔に驚きの表情を浮かべる…
(なぜ、この子は見ず知らずの私のためにここまで…)
リアスが信じられないという表情を浮かべる…
「貴方…どうしてこんな女のためにそこまで…まさかこの女が言った『貴方を愛している』だの『私には貴方だけなの』とかいう言葉を本気にしているわけじゃないわよね…この女は貴方を利用するためにこんな事を言っているだけ…」
「分かっています!分かってますけれど、それでも僕はレイナーレさんが大好きなんですっ!!だからお願いですっ!!彼女を許してあげて下さいっ!!」
崇仁だってさすがにリアスに言われずともそんな事は分かっている。何と言っても崇仁はレイナーレには今日初めて会ったばかりなのだから、その彼女が本気で自分を愛しているなどあるはずがない…しかし彼にはそんな事はどうでも良かった。
(たとえレイナーレさんの本心がどうであっても僕は彼女が好きなんだ!)
その彼の体をレイナーレがぎゅうっと力を込めて抱きしめる…
(うっ…)
崇仁は今更ながら彼女の大きな胸の感触に、彼女の汗の臭いに胸が高鳴るのを感じた…何しろ彼女はボンテージ姿の、ほとんど裸でいるのと同然の姿なのだ。その彼女に抱きしめられる刺激は、オタクで童貞の彼には強すぎるものがある。
そして崇仁は、今まで恐怖に怯えていたレイナーレの表情が安らかなものになっているのに気づく…彼女も自分の運命を全て、彼にゆだねる事にしたのだろう。
(レイナーレさん…)
「………」
その2人の様子を黙って見ていたリアスであったが、やがて
「仕方がないわね…小猫、祐斗、2人を引き離しなさい」と言った。
「………!!」
「リアスさんっ!!そんなっ!!」
驚愕する崇仁にリアスは告げる。
「いいこと、貴方はこの女の色香に騙されているだけなの。大丈夫、すぐにこれで良かったと思えるようになるから」
2人が迫ってくる…崇仁は再び叫ぶ…
「一誠君っ!!」
「………」
呼ばれた一誠は明らかに動揺した表情は見せながらも黙っている…崇仁の言動に心は動かされたものの、やはりアーシアの件があってレイナーレを許す気にはなれないようだ…
そこでついに崇仁は最後の手段に出る…
「一誠君っ!!アーシアさんは助かる!!助かるんだっ!!そこのリアスさんが彼女を蘇生させる方法を知っているっ!!君がレイナーレさんを許せないのはアーシアさんの事があるからだろう!!それならっ!!」
「……!!!」
一誠の顔に驚きの表情が浮かぶ、リアスも大いに驚いた様子を見せたが、次の瞬間、彼女の表情は険しいものに変わる…
「貴方、一体何者なの…?私たちみんなの名前を知っているのも変だけれど、そんな事まで知っているなんて…堕天使の上層部から使わされて私たちの様子を探っていたスパイか何かかしら?正直に答えてもらうわよ…」
そう言うリアスの青い目は殺気を帯びていた。
(次回に続く)