ハイスクールD×D~少年と堕天使   作:ドミトリ

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これで崇仁とレイナーレの出会いを描いた『少年と堕天使』は完結となります。この後の2人の物語は『とある堕天使の幸せ』(18禁)へと続きます。

よろしければ率直な感想や評価をいただけると嬉しいです^^


少年と堕天使・後編

どのくらいの時間が過ぎたであろうか…ようやくレイナーレは崇仁の体から身を起こした。

大量の涙を流した彼女の目元は涙で赤く腫れている…

 

そして彼女は自分を救った少年に話しかける。

「崇仁…」

「は、はい」

 

「お願い、一緒に来て…」

そう言ってレイナーレは崇仁の手を取った。彼女の白くなめらかで柔らかな手の感触に崇仁の胸の動悸が思わず高鳴る…

 

レイナーレに手を引かれて崇仁は教会の裏口を出た。すると月明かりに照らされた地面に大量の黒い羽根が散らばっているのが見えた。もちろん、崇仁はそれが何であるかを知っている。

 

「ああっ!ミッテルト!カラワーナ!ドーナシーク!みんなこんなになってしまって…!うっ、うううっ…」

レイナーレが再び身をふるわせて激しく嗚咽する。その彼女を崇仁は再び強く抱きしめた。

 

「彼女たちはね…みんな下級の堕天使だったの…そして上級の堕天使たちから馬鹿にされて、差別されてきたの…私と同じね…だから私は言ったの、『力を合わせて出世しましょう。そして私たちを馬鹿にしてきた連中を見返してやりましょう!』って…」

 

「彼女たちはそんな私に賛同してくれて、よく仕えてくれた…そして今日、ようやくその目標が達成される…そう思ったわ…なのにっ!!それなのにっ!!どうしてっ!!どうしてこんな事にっ!!」

話しているうちに感情が高ぶったレイナーレはまた激しく身をふるわせて泣き叫ぶ。

 

崇仁の抱擁でいったんは落ち着きを取り戻した彼女であったが、大切な仲間たちの変わり果てた姿を見て、冷静さを保てというのが無理な話であった。彼女の心の中では、圧倒的な力を持つ悪魔のグレモリー家に身の程を知らずに敵対し、仲間を皆、死に追いやってしまった自分に対する怒り、悔恨の思いが駆け巡っているのだろう。

 

(レイナーレさん…)

崇仁は知っている。彼女が会ったこともなく憧れていた堕天使の上層部の者たち、とりわけアザゼルがグレモリー家との、悪魔との争いを望んではいない事を…そして今回、レイナーレたちが独断でしでかしたこの事件の事をアザゼルたちが知ったならば、喜ばれるどころか、彼らの怒りを買って断罪された可能性が極めて高い事を…

 

その崇仁をレイナーレは涙に濡れた目で見つめて

「ねえ、崇仁、私は間違っていたの…?答えて…」

とすがるように問いかけた。

 

崇仁は迷った。間違っていたか否かという点でいえば、明らかに間違っていたとしかいいようがない。道義上の問題はともかくとしても、彼女たちの行おうとした事が、悪魔側(グレモリー家)と堕天使上層部の両方から怒りをかう性質のものであった以上、今回の計画の成否に関わらず、彼女たちには破滅の道しかなかったのだ。

 

むしろ、今回の計画が失敗に終わり、リアスたちに結果的に見逃してもらえたことにより、堕天使上層部に今回の事件を知られずにすみ、最悪の事態はなんとか回避できたのは不幸中の幸いといえた。

 

しかし、その事実をレイナーレに告げるのはあまりに酷な事だと崇仁は思った。そこで彼は…

 

「レイナーレさんの、そして皆さんの気持ちはよくわかります。でも…」

「でも…?」

 

「他人を犠牲にして、踏み台にしてのし上がるというのは相手の憎しみを、怒りを買います。そして人は様々なところでつながっています。どこからどんな強大な敵が現れないとも限りません。そう…今回のように…レイナーレさん、リアスさんとまともに戦って勝てたと思いますか…?」

 

「………!」

リアスの名を聞いてレイナーレは青ざめる…彼女と対峙した時に感じた、自分を一瞬のうちに消滅させる事ができる、あの圧倒的な魔力…冷徹な眼差し…

(私は…私は…とてもかなわない…)

 

「…………」

しばらくの沈黙の後、レイナーレは再び崇仁に問う。

「じゃあ、私はこれからどうすればいいの…?仲間を皆殺しにされて、その仇も討てずにおめおめと生き恥をさらせと…?」

 

「僕は…ミッテルトさんも、カラワーナさん、ドーナシークさんも皆、レイナーレさんに生き延びて幸せになって欲しいと願っていると思います…」

 

「知ったような事を言わないでっ!!」

レイナーレは怒鳴った。

「何よっ!!そんなのおめおめと自分だけ生き残った者が自分を正当化するために使う都合のいい言葉じゃないっ!!」

 

「じゃあ、勝てるんですか?リアスさんたちに」

崇仁はあえて厳しい表情で聞いた。

 

「そ、それは……」

レイナーレは思わず口ごもった。先ほどの事で彼女の心にはリアスに対する恐怖感が徹底的に植え付けられている。リアスと再び対峙したら、きっと体がすくんでしまい、戦うどころではないだろう。その事を彼女は自分の感情とは関係なく、本能的に知っていた。

 

崇仁としてもここは絶対に譲れなかった。愛しいレイナーレを二度とあのような危険にさらしたくない彼としては…

 

「ミッテルトさんたちはレイナーレさんの事を慕っていたんでしょう?それなら、レイナーレさんに不幸になって欲しくないって思っているはずです。誰だって、大切な人に不幸になって欲しくない…幸せになって欲しいって思うはずです…」

「…………」

 

「それに…」

崇仁はレイナーレの体を再び、ぎゅっ!と抱きしめる。

「あっ…!」

 

「レイナーレさんが大切な仲間を失ってつらいのなら、自分を許せないって思って苦しんでいるのなら、僕も一緒にそれを背負います!どんな形でも構いませんっ!僕を、僕を一緒にいさせてくださいっ!!僕は、僕は二度とレイナーレさんをあんな目にあわせたくないんですっ!!」

そう崇仁はレイナーレを強く、強く抱きしめながら叫ぶ…涙を流しながら…

 

「崇仁…」

レイナーレの目からもまた一筋の涙がこぼれ落ちる…

(貴方って本当に変な子…会ったばかりの私のためにどうしてここまで必死になれるの…?どうしてここまで優しくなれるの…?)

 

(崇仁…もっと早く貴方と出会えていたら…私はきっとこんな過ちは犯さずに…)

そう思った彼女は心の中で首を振った。

(ううん…今更そんな事を言っても仕方がないわね…)

 

そして彼女は崇仁から少し身を離して、涙目で彼を見つめて微笑む。

「わかったわ…私、ミッテルトたちの分も生きていくわ…」

「レイナーレさん…」

彼女の言葉に崇仁の顔が歓喜で輝く。

 

「その代わり、これは命令よ。崇仁、貴方は私の下僕となりなさい。そして絶対に私から離れてはダメよ…わかったわね?」

 

「はいっ!」

崇仁は嬉しさ一杯といった大きな声で答える。

「うふふっ…即答ね。よろしいっ」

レイナーレも嬉しそうに笑った。その彼女の笑顔に崇仁の心はときめく…

(レイナーレさん…本当に綺麗…!)

 

「それでは、主従の誓いをしましょう。崇仁、こちらへ来なさい」

「はい」

 

レイナーレの命令通りに彼女に近づく崇仁。その彼に再び彼女から命令が下る。

「そこで止まりなさい。そして目をつむりなさい。私がいいと言うまで決して開けてはダメよ」

「はい」

 

(い、一体、主従の誓いの儀式って何をするんだろう…?)

崇仁は言われるままに目を閉じつつ考える…

 

その彼の両方の頬にひんやりとした、すべすべな感触が伝わる…

(えっ…!!これは…!!)

 

そう思った瞬間、崇仁の口はふさがれていた。口の中に感じるねっとりとした…そして甘美な感触…

 

「あむっ…ああっ…」

崇仁はまるで魂がとろけそうな快感を感じた…そしてしばらくの後、彼の美しい女主人はゆっくりと彼から顔を離した…

 

「レ、レイナーレさん…」

唖然とした顔で自分を見つめる崇仁にレイナーレは悪戯っぽく微笑む。

「うふふっ…これが主従の誓いの儀式よ」

 

「えっ…堕天使の誓いの儀式って、キスなんですか…?」

そう尋ねる崇仁にレイナーレは再び妖艶に微笑む。

「いいえ、私の自己流の儀式よ。今、考えついたの」

「ええっ!?」

 

崇仁は大いに驚きつつも

(ぼ、僕にレイナーレさんがキスをっ!!それもあんなに濃厚な…し、信じられないっ!!)

と心の中で思わず喝采を叫んだ。

 

「うふふっ…それにしても貴方ってとても可愛い顔してるのね。これからが楽しみだわ」

「えっ?」

「うふふっ…」

 

それから、2人は地面に散らばっていたミッテルトたちの羽を集めて、彼女たちの弔いの儀式を行った。

 

レイナーレと共に祈りをささげる崇仁…彼は心の中で直接会うことはかなわなかった3人に語りかける。

 

(ミッテルトさん、カラワーナさん、そしてドーナシークさん…今までレイナーレさんを支えてくれてありがとうございます。これからは僕が彼女をずっと支え続けます。ですから、どうか僕たちを見守っていて下さい…)

 

そして………

 

「わわわっ!レイナーレさんっ!勘弁して下さいっ!」

「ダ~メ、私は貴方の主人なのよ。下僕がご主人様の命令に従うのは当然でしょ」

 

「そ、そんなあ…」

そう涙目で抗議をする崇仁は頭にリボンをつけ、裾やスカートがヒラヒラしたゴスロリ風のドレスを身につけている…そう、あのミッテルトと同じ格好をしているのだ。

 

「うふふっ、とても可愛いわよ。どこから見ても女の子にしか見えないわね…」

そううっとりとした表情で女装した(強制的にさせられた)崇仁を見つめるレイナーレ…

(それにしても…本当に似合いすぎているわね…)

 

実際のところ、崇仁も口で言うほどには嫌がってはいない。レイナーレがすっかり明るさを取り戻した事、そして彼女が自分の存在を大切に思ってくれているのは嬉しい。

 

(でも…やっぱりこれじゃあいけない気が…)

そう思っている崇仁をレイナーレが突然、ぎゅっと抱きしめる。崇仁の顔がボンテージ姿の彼女の豊満な胸に埋まる…

 

「あっ…」

「うふふっ…崇仁ったら私の胸が大好きだものね…こうされるのがいいんでしょ?」

「は、はい…」

「うふふっ…可愛い顔して本当にエッチなんだから…」

 

「レイナーレさん、エッチな人は嫌いだったんじゃないんですか…?」

「ええ、今まではね。でも、崇仁は特別よ。私をエッチな目で見ても貴方だけは許してあげる…私の大切な下僕なんだから…」

「レイナーレさん…」

 

崇仁は彼女の言葉を嬉しく思うのと同時に、少し残念さも感じる。レイナーレは下僕だと言いつつも、自分を大切にしてくれている。一通りの家事は下僕として任されているが、(女装以外には)決して理不尽な事を強制される事はないし、崇仁が何かミスをしても、ほとんどの場合、笑って許してくれる。

 

そして、家事が片付いた後は、いつもこうして優しく抱きしめてくれる。崇仁はそんな彼女との毎日にこの上ない幸福感を感じている。でも…

 

(でも…やっぱり、早くレイナーレさんから「下僕」じゃなくて「恋人」として認められたいな…でも、僕、まだまだ頼りなさすぎだし…頑張らないと…!)

 

その時、「お~い!!崇仁っ!!いるか~っ!!」

「タカヒトさん、いらっしゃいますか~!?」

と大きな声が聞こえた。

(一誠君、そしてアーシアさん…!)

 

「あっ…じゃあ私、しばらく部屋にこもっているから…」

レイナーレは慌てて退散した。

 

あれから、一誠は度々、この教会にやって来ている。その理由は彼自身が言っているように「崇仁の事を気に入ったから」という事らしい。そして、あの時の戦いであちこちが壊れた教会の修理を手伝ってくれたりしていた。特に力仕事が苦手な崇仁としては、彼の助けは心強かった。時には今日のように一緒にアーシアが来ることもあり、その時は彼女も手伝いをしてくれていた。

 

しかし、彼らがやって来るとレイナーレは必ず身を隠してしまい、決して会おうとはしない。一誠たちもあえてその事について触れることはない。何しろあれほどの事があったのだ。レイナーレとしてはアーシアはともかく、一誠に対しては当然、強いわだかまりがある。一誠の方でも同様だろう。簡単に水に流すなど出来ようはずもない…

 

「あっ、待ってっ!すぐに行くからっ!」 

そう叫びつつ、崇仁は慌てて部屋を飛び出した…

 

「お、おい…崇仁…」

「タカヒトさん…」

 

「えっ…?」

唖然とした顔で自分を見つめている2人に、崇仁は自分がいまだにレイナーレに強制された女装のままである事に気づく…

 

「わ、わわわわーーーーーっ!!!」 

崇仁の絶叫が教会内に響き渡った…

 

そして十数分後、着替えた崇仁は食堂で、テーブルをはさんで2人と向かい合っていた。2人の前には崇仁が入れた紅茶の入ったカップが置かれている。

 

「わははははっ!!そうかそうか!!やっぱりあいつ、すごい女だなあ!!お前も大変だ」

「でもタカヒトさん、すごいです!本当に女の人にしか見えません!とても綺麗ですっ!」

「あっ…いえ…そんな…」

崇仁は顔を真っ赤にしてうつむく…

 

「おいおい…もし何だったらアーシアからあいつにあまり崇仁に無茶なことさせるなと言ってやったらどうだ…さすがに俺が言ったんじゃ角が立つしな…」

 

一誠の言葉に崇仁は慌てて叫ぶ。

「そ、そんなのいいよっ!レイナーレさんはとても優しくしてくれているもの!」

 

「それに僕…レイナーレさんが最近明るくなってきてくれて、とても嬉しいの…僕がこんな格好するだけであんなに喜んでくれて…だから僕、本当のところ少しも嫌じゃないんだ…彼女の笑顔を見るのが僕の幸せなんだから…」

崇仁はそう言って、少女のように可憐な顔を赤く染める…

 

その崇仁の言葉と姿に一誠は圧倒されたという感じで

「ま、まあ…他人の恋愛のあり方に口を差し挟むのはあれだしな…お前がそれで幸せだっていうんならそれでいい…」

と言い、一方、アーシアは青い目を輝かせて

「タカヒトさん、レイナーレ様とラブラブなんですね…!私たちも負けてられませんよね。ねっ!イッセーさんっ!」

と彼にぴったりと寄り添った。

「お、おい…アーシア…」

 

そんなやり取りの後…

 

「ところで一誠君、今日はどんな用事で来てくれたの?」

と崇仁は彼に聞いた。

最近手伝ってもらっていた教会の修復作業(というより、ほとんど彼にやってもらっていた。まあ、壊れていた箇所はほとんど一誠をはじめとするグレモリー家一同に破壊された部分ではあるのだが…)もほぼ一段落していたという事もあり、崇仁はあえて訪問のわけを聞いてみた。

 

「あっ、ああ…実はな…」

一誠は思い出したように話を切り出した…

「僕が駒王学園に転入…?」

「ああ…リアス部長もどうかしらと言っている」

 

「で、でも僕は自分の素性もよくわからないのに…」

自分の素性を話してもまず狂人扱いされるだけだと思った崇仁は、自らを記憶喪失だと装っていたのだ。

 

「なに、それは大丈夫だ。うちの学園の支配者はリアス部長だ。部長の考え次第で、お前の素性なんてどうとでもなる。お前もここで暮らしていく以上、高校は出ておいた方がいいだろう。俺としてもお前が来てくれるのは嬉しい。どうだ?」

一誠はそう言って崇仁に判断を促した。

 

「…………」

崇仁はしばらく考える風を装ったが、それは自分を心配してくれる相手に対する気遣いであって、彼の気持ちは最初から決まっていた。

 

「一誠君、ありがとう…でもごめんね…それは出来ないよ」

「なぜだ?」

 

「僕はレイナーレさんの下僕で、いつもそばにいるって彼女に誓ったの…彼女が駒王学園に通うのならともかく、それはまず出来ないでしょう。なら、僕は自分だけ学園に通って彼女を1人ここに残すなんて出来ない…」

そう崇仁は一誠の目を見つめてはっきりと告げた。

 

「まあ、お前なら必ずそう言うだろうと思っていたよ」

そう一誠はうなずきつつ言い

「私も、崇仁さんなら必ずそうおっしゃるって思っていました」

アーシアもそう言って、 にっこりと笑った。

 

「リアス部長には俺から伝えておくよ。悪かったな、2人の時間を邪魔して」

「タカヒトさん、すみませんでした」

そう謝る2人に崇仁は

「いや、心配してくれてありがとう。でも『僕は大丈夫ですから』とリアスさんには伝えてね」

と言いつつ頭を下げた。

 

「じゃあ、崇仁、またな!」

「タカヒトさん、レイナーレ様を大事にしてあげてくださいね!」

そう言って2人は手を振りつつ去っていった。

 

2人を玄関の外に出て見送った崇仁が家の中に戻ると、そこにはレイナーレが立っていた。

「あっ、レイナーレさん…」

「崇仁、あの2人と何を話していたの…?」

 

彼女の問いに崇仁は正直に答える。

「実は、駒王学園に転入しないかって誘われたんです」

「えっ…?」

レイナーレは明らかに驚き、動揺した様子を見せ

「そ、それで、何と返事したの…?」

と聞いてきた。

 

「もちろん、断りました。だって僕はレイナーレさんの下僕で、いつも貴女のそばにいるって誓ったんですから」

そう言って崇仁は彼女に向かって微笑んだ。

 

「そ、そう……良かった…」

レイナーレは明らかにホッとしたという表情を浮かべた。

 

彼女からすれば、駒王学園は仲間たちを皆殺しにした仇であり、恐怖の権化であるリアス・グレモリーが支配する学園である。そのような所に、今や彼女にとって唯一の心の支えである崇仁が入ることに賛同出来るわけはなかった。そして、その誘いを崇仁が断ってくれた事に彼女は強い喜びを感じていた。

 

(崇仁…貴方はいつも私の事を考えていてくれていて、何よりもそれを優先してくれている…それがとても嬉しいの)

 

本当のところをいえば、崇仁が一誠たちと交流することも彼女からすればあまり嬉しい事ではないのだが、さすがにこれまでのいきさつもあり、また圧倒的な力関係の差もあり、それに反対するわけにはいかなかった。

 

一方、崇仁の方でも自分が一誠たちと付き合っている事をレイナーレが喜んでいない事は十分承知していた。しかし、現在の状況でレイナーレの身の安全を確保するためにはグレモリー家一同の好意を得ておくことが不可欠である事を彼はよく理解していた。もし、リアスたちの怒りを再び買うような事態になれば、今度こそレイナーレは間違いなく抹殺されてしまうだろう。

 

それともう一つ、崇仁にはリアスたちの好意をつなぎとめておかなければならない事情があった。それは…

 

(レイナーレさんは堕天使、僕はただの人間…このままでは、レイナーレさんはずっと若いまま、僕だけ老いて死ぬことに…そんなの嫌だ…!ずっとずっと若い姿で彼女と一緒にいたい!)

 

崇仁の心の中でレイナーレの事を愛する気持ちが強まれば強まるほど、その願いは強まっていき、彼の心を苦しめていた。

 

彼女と同じ堕天使になれればそれが一番良いのであるが、今のところ人間が堕天使になったという話は聞いたことがない。ならば最悪、悪魔に転生するという選択肢も考えておかなければならない。そしてそのためには、リアスの力が必要なのだ。

 

もちろん、レイナーレが悪魔を忌み嫌っていることはよく知っている。しかし、彼女もきっと、自分にずっと若いままでそばにいて欲しいと願ってくれているはずだと崇仁は思っているし、少なくともその気持ちは理解してくれるはずだと考えている。

 

(いずれ、レイナーレさんにこの気持ちを打ち明けて相談しないと…)

崇仁はその決意を固めつつあった…

 

そんな事を考えていた崇仁の頬にレイナーレの白く綺麗な手が触れる…

「あっ…」

「どうしたの?何を考えているのかしら…?」

 

「い、いえ…ずっとこうやってレイナーレさんと一緒にいたいなって…」

崇仁の言葉にレイナーレの瞳が潤む…

「崇仁…私も…私もよ…ずっと貴方と一緒にいたい…」

 

レイナーレの両手が崇仁の頬を優しく挟み、彼女の桜色の形の良い唇が崇仁の唇に重なる…そして2人は濃厚なキスを交わす…

「あむっ…はふっ…ああっ…」

 

そして崇仁から唇を離したレイナーレは、その美貌を赤く染めて潤んだ目で彼を見つめ、そして言った…それは崇仁が強く待ち望んでいた言葉…

 

「崇仁…愛しているわ…貴方は永遠に私のものよ…」

 

(THE END)




ハッピーエンドという形でひとまずこの物語は完結しました。

とは言いましても、最後に出てきたように2人の間にはまだ「種族の違いによる寿命の差」という大きな障壁が立ちはだかっており、それをいかにして解決するのか?そして、それをめぐってのリアスや一誠たちとの関わりはどうなるのか?そうした問題が残されたままで、それは続編の『とある堕天使の幸せ』で描かれます。ただ、そちらは18禁作品になりますのでお気をつけください。

崇仁は女装の似合う美少年!(笑) 高校生の男の子としては相当に小柄で華奢で、愛しのレイナーレよりもだいぶ小柄という設定です。アーシアとほとんど変わらないくらいの体格だと考えてもらって結構です。

レイナーレと一誠やリアスとの関係については、やはりあれほどの事があった以上、すぐにこれまでの事を水に流して打ち溶け合う、というのはとても無理だろうという事でああした描写になりました。

「至高の堕天使」と自らを称し、そう思い込むことによって本当は弱い自分を無理に覆い隠して虚勢を張り、思慮に欠けた行動を取ってしまったが故に悲劇的な結末を迎えてしまったレイナーレ…もし彼女に彼女だけをただひたむきに愛して、彼女の本当は弱い心を全力で支えてくれる存在があったなら、彼女はきっと道を踏み外すことなく幸せになれただろう…そんな思いを込めてこの作品を描きました。

私のつたない作品を読んでいただき、ありがとうございました!

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