今日、儂はとんでもない出会いをした。
「ノーブーノーブー!」
この今、目の前をちょこちょこと動き回るわしに似た人形、そうこれがとんでもない出会いといった物の正体じゃ。しかしあの古ぼけた物しか入れてないはずの蔵に何故こんな物がおったのじゃろうか、それに自立してしかも喋るなんてそんなもの開発されたというのも聞いたこと無い。
「ノッブ!」
「ええ、頭を叩くな、聞いておるわい」
うーむと考えこんでおるとそいつ、もといノッブがいつの間にか頭に乗り儂の頭をペチペチと叩いてくる、どうやらさっき暇だと言ったのに無視されたと思わいそれが気に食わなかったらしく少し怒ってるみたいだ。
「雪信、その人形の言ってることが分かるんですか?」
「うむ、不思議とな…はて、なぜ分かるのじゃ?」
「いえ、知りませんよ…」
そうか、総美は分からんのか、言われれば儂は初対面からこやつの言葉は不思議と分かった、思えばそれすらも疑問に思うことじゃったな。
頭に乗っているノッブの首根っこを掴んで目の前に持ってきてじっと見つめる、感触も只のぬいぐるみ何だがのう…
「さっきも言いましたが明日マシュに聞くまで悩んでも仕方ないのでは?」
頭を悩ましているのが分かったのか総美から言葉をかけれた、確かにこやつの言い分も最もじゃ、うむ、悩んでいるなら剣を振るうのも悪くはないかもな。
「…そうじゃな、総美、一本打ち合い頼めるか」
「おや、貴女からとは珍しい。良いですよ、手加減はしませんからそのつもりで」
「ノブノブ?」
「手加減なしはいつものことじゃろうが、今日こそ一本取ってみせるわい!見ておれノッブ、儂の勇姿をな!」
近くに掛けてあった竹刀を手に持ち、軽く数回素振りを始める。悩んだら打ち合ってみる、昔からそうやって気を晴らしておった、まぁ戦績は芳しくないがの…
と言うのもこやつ、総美はあの『沖田総司』の血筋を引いており在ろうことか生まれ変わりとまで言われるほどの腕前、儂も『織田信長』の血を一族で一番濃く受け継いでるなんて言われるものの剣の腕前では天と地の差があるのじゃ。
因みにじゃが儂らがやる打ち合いは限りなく実戦に近い形で行う、昔こそ防具をつけておったが長年やりやったお陰かこの二年くらい前から絶妙な打ちの手加減ができるようになってからは防具すら付けておらぬ、危ないかもしれんがコイツの本気を見るには防具が重りだったのじゃ。
道場の中心で距離を向かい合い一礼、そして竹刀を構える。この瞬間、総美から来る空気が変わった、さっきまでの穏やかな少女ではなくそこにいるのは…
(侍、末恐ろしいやつじゃよ全く…)
「ノ、ノブ…」
「準備は良いですか?」
隙のない構えと言葉に答える形で自分も構えを取り見据える、ここからは一瞬の勝負になるじゃろう。
「…」
打ち合いの時の総美は少々特殊で、中段の構えから半身に構え竹刀を傾斜させて切っ先を少しだけ下げて構えてグッと重心を低くして足に力を込め一気に間合いを詰める形を取る。
『平晴眼の構え』、手加減無し、そう言っておったがその構えを見た儂は思わず苦笑する、そういったのもこの構えを取られてそこから繰り出される攻撃を未だ防ぎきった、もしくは凌いだ試しが無く正に必殺と言っても過言ではない構えだからだ。
総美は元々体はそこまで強くなく、儂と比べればスタミナもない、故になのか短期決戦を好む節があり逆に長期戦となると一気に不利になる。つまりこの一撃さえ凌げばわしの勝率は大きく跳ね上がることになる…と思っておる、さっきも言ったが凌ぎ切った試しが無い故何とも言えんのじゃ。
実際は数秒、しかし相対する儂らには数十分にも思える睨み合い、向こうも考えておるのじゃろう長年こうやって打ち合ってきたが故に儂が慣れていること、そして攻め方も割れているだからこそどうするか
を。
(さぁて、どうする。怖いのは初撃、こいつ速いからなぁ)
儂?まぁ考えてはいる、いるが考えとかを読まれているのはわしも同じ、つまりこっちも攻めあぐねている。
(考えても答えが出ないなら…)
「(あの目、動くっ!?)チィ!」
(初撃を防げるようにはなりましたか…しかし!)
竹刀と竹刀が交わる音が道場に響く、総美の目が変わったと思った時には奴は既に間合いを詰めて奴の持つ最速の突きを放たれていた、咄嗟に反応して防御の構えを取らなければこれで落とされていただろう。だがそれだけで奴が終わるわけもなくそこから怒涛の攻めと連撃が繰り出される。
(出遅れた!こやつ相手に後手はかなり…マズイ…!!)
最初の一撃は突き、そこから身体全体を動かして右、左、上、全てがいやらしいタイミングでの連撃になんとか対応して防ぐが兎に角全部速い、防御と言うのは攻めるよりも考え、身体を動かすから体力を使う、このままじゃ確実にジリ貧からの一本で負けが見えると分かってはいるが…
(こうなった総美から攻めに転じる方法が…これしかあるまいか!)
迫り来る攻撃を防ぐ、そうすれば総美はすぐに竹刀を引いて連撃に移ろうとするがそのタイミングでそのまま押し込んで鍔迫り合いに持って行く、こうすれば連撃を止められさらに仕切り直しも出来るようになるからの。
「考え、ましたね」
「伊達に長くやりやっておらんからな」
この状況になって初めて総美が口を開く、こやつは基本勝負中は一言も発しない、強いて言うなら気合を入れる時くらいで本当に無駄口は叩かず敵を屠ることに集中する。そんな奴から口を開かしたのだがその声は称賛が少々と面白くなったといった感じが大半を占めていて思わずコイツ絶対戦闘狂の気質があるじゃろと心の中で苦笑してしまった。
「しかし、そのナリで力が意外にあるのは卑怯じゃろ」
「これでも鍛えてますからね」
ググッと竹刀を持つ力を込めて押し込もうとするがそれと同じくらいの力で均等にされるのを感じて愚痴をこぼす、まぁ年中竹刀を振るって鍛えているのだから分からなくもないがそれでもこんなヒョロっとした身体の何処にこんな力が…
(ちっ、防戦でスタミナを使いすぎたか、もう連撃を捌ける余裕はないのう…)
(思ったより今日は粘りますね。私もあまり余裕はない…)
((次の一手で勝負を決める))
今こやつと思考が被った気がしたがまぁ良い、なんて思いながら竹刀に力を入れると向こうも同じくらい入れてそして同時に相手を押す動作をしこれには総美も驚いたような顔をしているがそれは儂もじゃ!お陰で距離は離せたが少しよろけてしまったわい!
じゃがそれは向こうも同じ、なら。直ぐ様体勢を直して身体全体に力を入れて一気に前に出る、向こうは迎え撃つ形にしたのか儂の詰めに合わせて竹刀を振るう。だが残念だったの、その行動は…
(読み通りじゃ!)
その軌道を読み取り、姿勢を低くして一気に飛び込む、ギリギリではあったがこれで竹刀は回避、証拠に竹刀が広がった自慢の髪にあたった感触がした、それを感じ転がりつつ次の行動に移ろうと顔を上げた瞬間、目の前には竹刀の切っ先。
「王手、まだやりますか?」
勝ち誇った笑みを浮かべながらも決して油断した雰囲気を出さない顔、これはもうどうしようもあるまいと竹刀を起き両手を上げ降参の意を示すと綺麗な流れで竹刀を腰に添え直し一礼、全くあの状況から見るにこやつめ。
「…感覚だけで儂の行動読みおったな?」
「貴女相手に読み合いは不利ですからね、だったら見てから行動した方がやりやすいですし」
それができるのはお主だけじゃ…キチンと見ていないから分からないが恐らく竹刀を振りきってそのまま即座に竹刀を引き身体を儂に向け直し今に至るって感じじゃろう、これだから規格外は普通相手の動きを見てからなんてすんなりされてたまるか!
む、そう言えばと周囲を見渡すとノッブの姿が見えなくなっていた。
「総美、ノッブを知らぬか?」
「は?そこにって居ない…」
「ノッブー!」
景気のいい掛け声と同時に頭に重さが加わる、どうやら儂らが終わったのを見計らって宙を浮き上から降ってきた感じじゃな。
「全く…で、どうじゃった儂の勇姿は」
「ノブノブ」
「なに?まぁ、確かにそうじゃが」
「何を言ってたんですか」
おお、そうじゃった、他の者には分からないんだったな。
「いや、儂は剣より射撃のほうが得意って言われてな」
「ああ、確かに」
…なんでノッブはそんなことまで知っておるのじゃ?儂はコヤツの前でまだ射撃の腕なぞ見せてはおらんはずじゃが、まぁ良い元々謎の存在、これくらいの事が起きても不思議ではないか。あとは適当に総美と語り合いながら適当な時間で切り上げ家に帰って翌日の準備をしてから布団に潜る。
一応母上にも見せたのだがその時の反応が
「あらあら、可愛いわねぇ」
そう言っただけで特に不信がりもせずにノッブを可愛がり何か知らぬかと聞くも知らないわねぇごめんなさいと返された、こうなると父上も知ってるか怪しいな…
謎の存在、ノッブとの一日はこうして幕を閉じた、まぁ明日マシュマロさんに聞けばいいじゃろ、はっきりせずとも何か答えが返ってくるだろうからなそう思いながら気付けば寝てるノッブを見て儂も睡魔に身を委ねた。
次回!マシュマロおっぱいサーヴァント似の少女が登場!