車椅子の少女、名を『八神はやて』知り合ったのは割りと最近でこの図書館、その時は少し総美と調べ物してる時じゃったが話せば少々長くなるゆえに割愛する。
「お主じゃよはやて、元気そうじゃな」
「この通りピンピンや!殿も総ちゃんも元気そうやな」
「雪信の暴走が無ければもう少し元気になれそうですがね。本、持ちましょうか?」
おお、ありがとなと総美が本を受け取ってから儂らは近くのテーブルに行きそこに全員座る。それにしてもはやては本当に本が好きじゃな、今日は…む?
珍しいな、料理本なんて、それにどれも数人で楽しむようなレシピ。じゃがこやつは一人暮らしのはずでは。
「ん?どしたん、殿?」
「ああ、いや、レシピ本とは珍しいなと思ってな、レパートリーに困るような才では無いはずじゃからなお主は」
視線に気付いたのか、はやてが本から儂に視線を変えて聞いてきたので素直に疑問をぶつけると、ああこれはなと柔らかな笑みを浮かべながら答え始める。
「今な、私を援助してくれてるおじさんが遠い親戚に声をかけてその家族が家に来てくれたんよ、だからもう少しレパートリー増やそう思ってな」
「おじさんってあの外国に居る人じゃろ?お主の遠い親戚に外国人もおったのか」
「うん、そうやで」
嘘をついてるようにも見えない位当たり前のように頷くはやて、ふむ、まぁ個人のことじゃからあまり深くは聞けんが妙にきな臭いのう。そもそもにしてその『おじさん』っというのも怪しい、いや両足が動かず独り身のはやてを援助してくれてるからいい人なんじゃろうが…
次の話題はその両足のことについて、見ての通りはやては両足が殆ど動かん。物心ついた頃にはもう症状は出てたとも言っておったがその時から一貫して原因は不明、しかも麻痺は進行していると言う。
「はやて、足の調子はいかがですか?」
「松葉杖や補助があれば歩けるけど近頃は流石にシンドくなってきた、けどまだまだ大丈夫や」
「そうか、じゃが無理に笑うなよ、泣きたくば儂も総美も…それにその親戚もおるのじゃからな」
真面目にそう伝えるとはやては恥ずかしそうな顔でな、なんや急にとまた本を読み始める。初対面の時からの印象、こやつは絶対に自身の弱音を吐かずに抱え込むと思っておる、杞憂ならそれでいいがこれでも儂は人を見る目には自信がある故の心配というわけじゃ。
さて、儂らもなにか読もうかの、魔法…の事はあるはず無いし無難に適当に探すとするかにするか、時間はまだあるから少し分厚くとも問題あるまいて。はやてと総美に一声掛けようかと思ったが集中してたので一人…ああいや頭にノッブが居たな、を連れて適当に本棚を眺める、どうせなら面白く分厚い本…ほう、これなんか面白そうじゃないか。そう直感で感じた本を抜き取りまた席に戻ると丁度総美がこっちを向き儂の手に持っている本を見て一言。
「あの、なぜその本を?」
「戦に必要なのは戦力と情報と昔から決まっておろう?」
「なんや殿、学校で新しい遊びでもするんか」
二人が驚いたその本はなんてことのない海鳴市の地理が乗ってる本じゃ。何かが起きるとすれば今日、これは勘じゃが魔法の戦いになると思っておる、だから儂は考えた、それが起きるのは何処かということを。
とりあえずはやてにはそれに近いことじゃよと答えてから本を開く。マシュは夜と断言した、次に何かを感じても気にするなとも言っておったからそれから推測するに我が家からそして、二人の家からもそんなに離れてない場所で何かが起きるということが考えられる。
命のやり取りが行われ、尚且つ儂の家及び二人の家からもそこまで離れておらず、戦いに適した所…鞄に入ってた自由帳に地図を写して、各家の中心から大体の半径を決めてコンパスで円を描いてその重なる場所を求める…ここじゃな、海鳴市中心街。最初は無難に山奥とか思ったが家からは距離があり過ぎるし他は戦場にするには狭くならばと思ったのがここ、人は沢山いるが魔法が秘密の存在ならば人に気付かれずに済む魔法があるはずじゃ。
とりあえず中心街と山を張り、戦略を考える。クックック、久しぶりで血が滾るわい!
(…なぁ総ちゃん、殿が凄い悪い顔して地図を読んどるんだけど)
(久しぶりに病気が発病しただけです、お騒がせしてます)
(せ、せやか、でも楽しそうやな)
二人がコソコソとなにか話してるが気にしないで地図に赤い印をつけていく、位置的には少々不安だがまぁ問題ないと思われるしそれに何も参戦するわけでは無い、観戦するだけなのでこんなものでいいのじゃ。
なぜさっきまで戦う気満々なこと言ってたのに観戦だけ?と思われそうじゃが、戦力がなくとも情報があれば地の利で参戦も可能だったじゃろうな。しかし今の儂らには戦力も魔法に関する情報も無い、故に出来ることの第一歩は情報収集しか無い、歯痒いがの…
(これだけ目星を付けておけばあとは現地で臨機応変って所じゃな、出たとこ勝負と言うのは本来避けるべきだが贅沢も言えん、更に言うなら双眼鏡くらい持って来るべきじゃったか)
鞄を漁ってみるが無論入ってる訳もなく、ここで時間を潰すつもりだったが一度家に戻るか…?父上が帰ってるならついでに聞けるし、と言うか晩飯のことを考えてなかったし外食でも構わぬがやはり家の飯のほうが美味しいからの
「雪信、何か困りごとですか。さっきから表情がコロコロ変わってますよ?」
「む、そうじゃ、総美かはやてよ、双眼鏡を持ってはおらぬか?」
「いえ、持ってませんが?」
「私も無いなぁ」
ま、そうだろうな。これは本当に一度帰るか、親には夜出る時に星を見に行くとでも言えばいいじゃろうし、やれやれ流石に無計画が過ぎたかのう。いや、まぁはやてと会いたいのもあったから決して完全な無計画ではないか、うむそうじゃな。
とりあえず総美に一旦家に帰ることにすると伝えよう、と言うことで伝えるとふむと読んでいた本を閉じて何かを考えるように目を瞑ってから
「まぁ、制服じゃ動き難いですし良いんじゃないですか?」
「ああ、それも考えてなかったな。と言うことじゃはやて、すまぬが儂らは少々早めに切り上げる」
「ええよ、気にしなくても。私ももう少ししたら家に帰ろう思ってたし」
そう言うはやての声は少しだけワクワク感が混ざっていた、どうやら今日の晩ごはんの献立が決まったようじゃな。さてとりあえず電話して迎えを呼ぶか…制服の(勝手に改造して取り付けた)懐のポケットから携帯を取り出して迎え用の電話を呼び出してコールする。
「…雪信じゃ。すまぬが迎えに…なんじゃと?うむ…ああ分かった、それではな」
「何か問題でも?」
「いや、父上の指示で近くで待機してたらしくてな、恐らく直ぐにでも…」
「お嬢、迎えに上がりました」
速いのう…声の方を見ると見慣れた織田家の使用人の姿が、仕方ないことじゃが周りの客が少々引いているのは多分気のせいではないと思う。怖いかのう…どいつも気のいい人間なのじゃがこればかりは仕方ないか。
「ご苦労、おおそうじゃ、折角の機会だ、送ってゆくぞ、はやて」
「いや、悪いよ。それにほら私車椅子やし」
「ふっ、織田家を舐めるなよ。と言うことじゃ、準備を頼む」
は、直ちにと一言言ってから図書館を出る使用人、少ししてから儂らも外に出るとそこには既に準備が整った迎えの車と使用人の姿、じゃが車はいつもと違う、少々大型のワゴンになっており後部座席の一部は昇降シート、トランク部分にはレールが出せて車椅子が入れやすいようになっておる。
これを見たはやては、かなり驚いた様な顔をして儂の方を見る。じゃから言っただろうに織田家を舐めるなよと、あの父上はもし万が一必要になってから用意するじゃなくてこんな事もあろうかとって既に用意しておく人間じゃからな。
「こういうことじゃ、でどうするはやて?」
「え、えっと、じゃあお願いしようかな」
「一々驚いてたら疲れますよ」
こうして、儂らは車で帰路に着いた。そう言えば、はやての家に着いて降ろして別れてから後ろを見たら何やら金髪の女性が少々慌てた感じで出てきたな…あれが件の親戚、まぁ良いか。
え?どうやってすぐに車を用意したかって?そこはほら、知ったら消される秘密ってことで…
次の投稿は…どっちやろうな…(遠い目