魔王様がお亡くなりになりました。   作:九呂巣

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こちらの小説は不定期で投稿になりますが、少なくとも二ヶ月に一回は出そうと思ってます。お菓子な剣の方もよろしくお願いします。


最弱は肩身が狭い

ばしゅぅん!!

 

「ぷぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」

 

聖剣エクスカリバーで両断された魔王は、それはそれは情けない断末魔を上げた。

その日、人類はモンスターに勝利した。

 

「「「魔王様ぁーーーーー!!!!」」」

 

 

 

 

 

さんさんと日差しが降り注ぎ、空には雲が一つもない。空気が澄んでいて見渡す限りの草原を、三匹のモンスターが歩いていた。

 

「いい天気ー。」

そう言った、50センチばかりのドラゴン、ラオロンである。気持ちよさそうに伸びをしている。

「うへぇーー。」

こちらもヤル気なし、50センチ程のペンギン、クリット。くちばしからダランと舌がだれ出ている。

「気持ちの良い天気だわー。」

そう呟いたのは、またまた50センチの身長のコウモリ、キューラ。コウモリにしてはサイズがデカイ。

「気持ちよすぎて眠くなってくるのー。」

「もういっそ、この草原に寝そべっていようかー。」

「おいおい。今は仕事中だぞ。」

ラオロンが突っ込むが、少しうつろうつろしている。

「いいってー。どうせ異常なんてないやしー。」

「そうそう。こんなに良い天気なんだし良いって。」

「とは言え、早く帰らんとまた怒られるぞ。」

「あー。そうやねー。」

「早くしないとねー。」

 

この三匹は、現在見回りの仕事中だ。

 

この世界では、人間とモンスターが住んでいる。だが、共存しているわけではない。人間の方に危害をくわえるモンスターは、人間にとって天敵である。

三匹はそんな世界の、モンスターサイドのトップである魔王の城の元で働いているモンスターなのだ。

 

「あーあー。」

「どうしたキュラ。」

「俺たちって、見回りばっかだし、給料少ないなーって。」

「何言ってんの。」

「そうだぞ。オレ達はモンスターの中でも一番下級の方なんやから、仕事なんてほとんどないって。」

「最下級はできることほとんどないからなー。」

「そうだよなぁ。‥‥ならさ、どっかに簡単にレベルアップできるようなものないかなーって思わない?」

「ないだろそんなの。僕達はレベルが上がるかどうかもわからんし、上がっても一回二回が最高限度って聞いたぞ。」

「あ~あ。いいなー。上級モンスターに生まれたかったわー。」

「そうだなー。」

「でも上級モンスターだと戦わなくちゃいけないぞ。」

「それも嫌やなー。」

「それ事なんだけどさ、この前人間の王族の息子が勇者になったって聞いたじゃん。」

「おー。」

「そいつが一週間前、魔王四天王であるレッドドラゴンのレイスさんを倒したって。」

「え?まじで?」

「やべぇな。めっちゃ強くなってるじゃん。」

「でしょ?魔王様もそろそろ危ないな。」

「あー。大丈夫やろ。」

「そうだな。」

「なんで?勇者強くなってんだよ?」

「だってさぁ。」

「今まで何人の勇者を魔王様は倒してきたと思ってんの?」

 

人間の方はたびたびモンスターに困らされているので、勇者を派遣して、モンスター達を滅する旅を何度もさせている。だが、そのことごとくは倒されている。魔王城には勇者とその仲間達の死体が何体もある。

 

「そうだけど、でも一概にそうとは言えないじゃん。」

「大丈夫大丈夫。いつも通り返り討ちだって。」

「人間にやられるわけがないでしょ。」

「それ、フラグって言うんだぞ。」

「まーまー。今回も魔王様は勝つよ。」

 

すると、向こうの方に人影が見えた。

 

「お、やべっ。人間じゃん。」

咄嗟に身を低くする三匹。草原の草に姿が埋もれる。そこでラオロンが疑問を口にする。

「‥‥‥‥ねぇ。なんで隠れるの?モンスターでしょ僕達。」

確かにモンスターなら、普通は人間に攻撃するものだけれど。

「何言ってんの。」

それに、キューラがきっぱりと答えた。

 

「俺達、攻撃力がないじゃん。」

 

「つくづく思うけど、最弱にしても攻撃力ぐらいちょっとはあってもいいやん。」

「それなのに、攻撃力ゼロという仕打ち。」

三匹が自分達を最弱と言うのも、全ては攻撃力がゼロであるからだ。噛む力も腕力も脚力もないため、相手に傷をつけることが全く出来ないのだ。

そんなかわいそうな現実を改めて感じて、クリットはガバッと立ち上がり、天を仰いで叫ぶ。

「神よ!私たちが何をしたと言うのだー!!」

「うるせぇ!何立ち上がってんだ!」

それをあわてて押さえ込むラオロン。

ばっと人間に目を向けるが、幸い気づいた様子はない。

ラオロン達が見ていた人間は何事もなく向こうの方に帰っていった。

「‥‥‥何しに来たんだ?今の人間。」

何もせずに帰った人間を訝しむラオロン。

「最近、モンスターを狩る人間が増えてきたんだよ。さっき言った勇者が魔王四天王倒してから、勇者の知名度が上がったもんだから、それに感化されたもの達が、狩人の集まりの『ギルド』なるものを作ったらしい。それでどんどんハンターが増える一方なんだって。」

キューラは意外と情報力があるため、色んな事を知っている。

「って、そろそろ帰らないと。日が暮れてきた。」

クリットに言われて、空を見る。日が段々と水平線の向こうへと消えていこうとしているところだった。

「ダラーっとしてたらいつの間にか日が暮れていたな。」

「帰って報告書書かないと。」

三匹とも、草原を越えた向こうにある丘の上に立つ魔王の城に帰っていく。

「‥‥‥っていうか、夜こそ僕達の番なんじゃないの。」

「何言ってんだよ。俺達最弱だぜ?」

「‥‥‥‥‥はぁ。」

つくづく最弱は仕事がないと実感するラオロンだった。

 

 

 

 

 

ガチャ

 

魔王の城の禍々しい扉を開けて、広々としたエントランスに入るラオロン達。

「‥‥‥‥‥あれ?」

クリットが疑問の声をあげる。

いつもはそこかしこを色んなモンスター達が動き回っている城のなかが、今日帰ってみるとがらんとしていたのだ。

「誰もいないのかな?」

誰もいない空間にキューラの声が響く。

「アレス先輩ー。ニォール先輩ー?」

ラオロンが仲の良い先輩の名前を呼び掛けるも、答える声はない。

「何か集まりでもあったかな?」

「うーん、分からん。部屋を回って見てみよう。」

「そうだな。」

少しおかしいこの状況。

三匹は部屋をめぐって誰かを探して見るも、何処にも誰もいない。

「何かあったのかなぁ。」

灯りもろくについていない城の廊下を歩きながらラオロンは言う。

真っ暗な廊下を進み、三匹はやがてある扉の前で止まる。

「流石に魔王様の部屋には誰かいるよな‥‥‥」

「そりゃあねぇ。魔王様がいないとおかしいでしょ。」

「でも、中なんか妙に静かだけど‥‥‥」

「いや、開けたら分かるって。」

「えー‥‥勝手に開けたら怒られるって。」

「いやでも、この状況明らかにおかしいじゃん。」

「そうだよ。状況の説明くらい求めても怒られやしないって。」

そして三匹は少し躊躇いがちに扉を開け―――

ようとしたところで声が中から聞こえてきた。

『ヌゥ‥‥‥‥お前、なぜここにいるんだ‥‥』

『いや、玄関から入ってきたよ。』

『何!!?何故だ!!この城には結界が張ってあって、この城の姿は見えないはず‥‥‥‥‥』

『いや、普通に丘の上に建ってたけど。』

『えーーー!!!』

少しだけ開いた扉から会話が聞こえてくる。なんだか聞こえてくる魔王様の声がやけに苦しそうに聞こえる。そして、もうひとつの声は青年と思わしき人間の声。

「‥‥‥おい、何か魔王様、調子悪そうやない?‥‥」

「‥‥‥確かに、何か声が苦しそうだったね‥‥」

「‥‥‥てかさ、このもうひとつの声、あれやない?‥‥」

「‥‥‥まさか‥‥」

ヒソヒソ声で三匹がハモる。

「「「‥‥‥勇者?‥‥‥」」」

勇者が知らない間に魔王城に侵入してきたらしい。

「‥‥‥いやまてまてまて。じゃあまさか魔王様、勇者にやられてるの?‥‥」

「‥‥‥アハハ。まさかね‥‥」

そういって、もっと中の様子を探ろうと扉を開けると―――

 

ばしゅぅん!!

 

「ぷぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」

 

勇者の聖剣エクスカリバーで両断された魔王は、それはそれは情けない断末魔を上げた。

 

「「「魔王様ぁーーーーー!!!!」」」

 

三匹そろって叫んでしまう。

だが、はっとした拍子にラオロンが二匹の腕を掴んで全速力で扉から離れ、廊下を走る。

ふらつきながらついていくクリットとキューラ。

「おい!!どうしたんや!!目の前で魔王様がやられたんやぞ!!」

「何で反撃しないんだよ!!」

走りながら言うクリットとキューラに、ラオロンはとても現実的に言う。

「何言ってんだ!魔王様がやられた相手に僕達が勝てるわけないだろ!僕達が最弱だって事を忘れたのか!?」

「だけど、だからって何もしないで逃げるなんて――」

「逃げるしかないだろ!僕達があそこに行っても何も変わらない!だったらもう逃げるしかないじゃないか!」

「うーー‥‥‥」

ひたすら廊下を駆け、懸命に出口へと急ぐ。

「‥‥‥うわぁ!!来てるぞ!!」

後ろを振り向いたクリットは、勇者達が追って来ているのを見た。このままでは追い付かれるのは時間の問題だ。

「‥‥‥よし!そこの角曲がるぞ!」

すると、キューラが二匹を先導して廊下の角を曲がる。

勇者達もそれを追いかけ、角を曲がるとそこには、

 

何もなかった。

 

さっきまで前を走っていた三匹のモンスターが全く見えなくなっているのだ。

「あれ?何処に行った?」

辺りを見回しても、自分の仲間以外誰もいない。

「逃げられたか‥‥」

探すのを諦め、引き返していった勇者。

そして、誰もいなくなったその空間に、ひっそり声が聞こえる。

「‥‥‥‥行ったか?‥‥‥」

「‥‥‥‥どうやらそうみたい‥‥」

すると、廊下の隅にある少し大きめの壺から三匹が出てきた。

「ふぅ‥‥助かったぁー‥‥」

「心臓に悪いあんなの‥‥‥」

「だねぇ‥‥少しチビったよ‥‥」

それぞれが生き残れたことに安堵する。

「‥‥‥んで、これからどうするの?」

これからの事を相談するクリット。

「‥‥‥どうやら、魔王城にいた魔物も全員やられてしまったらしいし、ここにいる意味はないでしょ。」

「でも、ここにいた方が安全じゃないの?」

「僕、聞いたことあるんだけど、」

ラオロンが挟んでくる。

「この城、魔王様がいなくなって一日たつと崩れるらしいよ。」

「‥‥じゃあ、ここにいるわけにもいかないやん。」

魔王の死亡が確認されると、一日で城が崩れるため、ここに住んでいるわけにもいかない。

「‥‥‥本当にどうすんの?」

「普通に、野生で暮らせばいいじゃん。」

「だから、忘れたのか?」

「何を?」

キューラは改めて言ってくる。

 

「俺達、最弱だろ。」

 

「どうやって食料を調達するんだよ野生で。こんな、何も出来ない俺達に。」

「‥‥‥‥はぁ。何でオレ達最弱なんや‥‥‥」

「肩身が狭いなぁ‥‥」

全員そろって肩を落とす。

「‥‥‥何処に行けるかな?」

「‥‥‥とりあえず、城出ない?何かミシミシいい出してるよ。」

「そろそろ崩壊が始まるのか。」

「だな。出ようか‥‥」

三匹は、重い足取りで城を出た。

 

 

 

 

 

城を出て、夜の草原を歩く三匹。

「本当、オレ達どうなるのかな。」

「やだなぁ。俺まだ死にたくないよぉ。」

「僕だってそうだよ。あーー‥‥‥」

三匹でとぼとぼしていると、草原の向こうに見える町から、

 

ワァァァーー!!!

 

人々の歓声が聞こえてきた。

「あれって‥‥‥」

キューラが顔を上げた。

「多分、魔王様を討伐出来たお祝いか何かのパーティだろうよ‥‥」

ラオロンがため息混じりに言う。

そこにクリットがちょっと思いついたように言う。

 

「町へ行こうよ。」

 

「‥‥‥何?その危ないタイトル。」

「タイトルじゃないわ!町へ行ってみたらどうなの?ってことや。」

「いや、無理でしょ。何でわざわざ危ない所に行くの?」

「一回先輩方に連れられて町に行ったことが一度だけあるんやけど、」

「うん。」

「多いんだよ。」

「‥‥‥何が?」

「隠れるところ。建物の影とか廃家とか町にはいっぱいあったんや。」

「たしかに。それならいいだろうけど‥‥‥」

「何でわざわざ町に?」

「だってさ、」

ちょっと力を込めてクリットが言う。

 

「最弱でも生きていけるじゃん!」

 

「食べ物も簡単に手に取り入るし、場所がしっかり取れたら安全だろうし。とにかく町の方が暮らしやすいんだよ。」

その言葉に、

「‥‥‥いいねぇ。」

「‥‥‥確かに良い。」

ラオロンとキューラは納得を示した。

「今ならみんなお祭り騒ぎで浮かれてるだろうから、」

「今なら入り込めるな。」

「よっしゃ!じゃあ行くか!町へ!」

と言うわけで、町に進入することにした。

 

 

 

町の入り口の塀の近くまでやって来た三匹。

「‥‥‥‥‥門番寝てるやん。」

「‥‥‥‥‥今ならチャンス!」

さささっと走って門番の横を通り抜けて行く。

そして町へ入ったそこには、

 

ワァァァーーー!!!

 

人々があちこちで騒いでる音がよく聞こえた。外にいる人は皆酔っぱらっている様子。

人がいるということでサッと家の脇にある草に隠れる。

「‥‥‥かなり盛り上がってるな。」

「‥‥‥んで、これからどうするんだよ。」

「そりゃ、まずは寝床の確保だろ。」

表通りではなく、建物と建物の隙間の狭い場所を通っていく。

すると、

「おい、あれ廃家じゃないか?」

キューラが見つけたのは、植物の蔦が壁に絡まっている、いかにも廃れた家だった。

「確かにそれっぽい。入ってみるか。」

蔦を足場にゆっくり上り、二階の割れた窓から侵入する三匹。

中は埃まみれで、古びた家具のあちこちには蜘蛛の巣があった。

「誰かが住んでる形跡もないな。」

「どうやら当たりみたいや。」

クリットは窓から降りて、部屋のベットを叩いてみると、白い埃が噴き出てきて、ゲホゲホと咳き込んでしまう。

「すごい埃だなっ‥‥‥‥」

「一回掃除でもするか。」

「来た!僕のターン!!」

「あー、そう言えばラオロンは掃除が得意だったよな。」

「そうさ!僕は二年間ずっと掃除をしていた時期があるからね!」

言うなり、どこから取り出したのか三角巾とマスクをつけたラオロン。手にはこれまたどこから取り出したのか、はたきを持っている。

そしてパパパとあちこちをパタパタしだす。

「それじゃあ任せたー。」

「頑張れー。」

二匹は埃まみれのベットに座る。

「おう!‥‥‥‥っておい!お前らもやるんだよ!」

「えー?やだよめんどくさい。」

「そうだー。ラオロンは掃除が好きなんだからやってればいいよ。俺達はイヤだから。」

「これ一人でやるの大変だぞ!お前らも手伝え!」

「えーやだーもー。」

「ファイトー。」

「‥‥‥やらないと窓から放り投げるぞ。」

「何だとー!やってみろー!」

「そうだー!お前に出来るのかー!?」

そして喧嘩が始まる。

ドタバタとやるもんだからあちこちで、

 

ドタン

 

ガシャン

 

タンスやらドレッサーやらが倒れて余計に部屋が荒れてしまう。

 

「‥‥‥‥はぁ、はぁ‥‥」

「‥‥‥‥ふぅ‥‥‥」

「‥‥‥‥‥はぁ‥‥」

ひとしきり暴れた三匹はここで頭が冷えてきたらしい。

「‥‥‥‥‥掃除するか。」

「‥‥‥‥‥そうだな‥‥」

「‥‥‥‥‥時間の無駄やったな‥」

三匹そろってせっせと掃除を始めた。

 

 

 

掃除が終わり、部屋は元のシックな感じの部屋になっていた。

「‥‥‥‥ふぅ。終わったー。」

「他の部屋はどうすんの?やっぱり掃除するの?」

「いや、ここだけでいいやろ。三匹だけなら充分だろうし。」

部屋の広さは六畳位だが、ミニサイズの三匹には丁度いい広さだった。ベットも大きめなので、三匹で使える。

「じゃあ、早速だけど今日の晩御飯はどうしようか。」

ラオロンが次の案件に取りかかる。

「‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥」

だんまりしてしまう三匹。

「え?やだよ晩御飯抜きなんて。」

「‥‥‥‥とは言ってもねぇ。」

「食べ物てにいれるっても、買うわけにはいかないじゃん。」

「おいクリット!お前ご飯手にはいるって言ってたじゃん!」

「それは‥‥‥まあそうだけど。実際手に入れるとなると、あれだよな。」

「何?あれって。」

「盗むしかないだろ。」

「まあそうだけど。でも、大丈夫なのか?見つかったらヤバイぞ。」

「確かに。確実に盗まないと。」

「じゃあ、とりあえず今はチャンスじゃん。」

クリットは窓の外を指す。

「今、外はお祭り騒ぎしてるから、騒ぎに紛れて何気なく盗めばいいだろ。」

「‥‥‥‥うーん。うまく行くのか?」

「分からん。とりあえず行くしかないでしょ。」

そう言ったタイミングで、三匹のお腹が同時に鳴った。

「‥‥‥‥だな。」

「‥‥‥‥とりあえず行くか。」

こうして三匹は、夜の町に出ていった。

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