普通に飛べるんじゃね?と思う、まだ飛ばさないが
広い領域の壁は一部が大きく崩れ、青い空が見え
外の光りが薄く照らす石作りの水路を古めかしく、神秘的に映し
水路に点在する折れた石柱は壮絶な破壊の傷跡を感じさせず
風化して自然に折れたかのように見えてしまう
崩れた壁の下には横に広がった暗い谷間が存在し
流れ来る水を落とし続け、響く水の音は滝の様であり
その広大さと深さが目にしなくとも伺える
「・・・・・・え?」
ルイズは気が付くとその広大な水路の中央で立ち尽くしていた
「・・・・私、部屋のベッドで寝てた筈よね?」
己か誰かに聞くかのように呟くが誰もおらず
聴こえるのは流れ落ちる水の音だけ
ざぱ
ふと水を軽く叩くような音が背後から聴こえ
ルイズはなにかと目を向ければ水の流れ落ちる穴から
顔をだけを出してこちらを見つめるものが居た
それは紫色で大きな鱗の様な皮膚と黒くつぶらな瞳を持ち
角張りがなく一見無意な顔の竜、貪食ドラゴンであった
「貪食ドラゴンよね?」
・・・・・・
「ねぇ・・・・聞こえてないの?」
不安げに貪食ドラゴンへ声を掛けるが反応はなく
その視線は自分ではなくその先を見つめている事に気が付く
「うしろ?」
ルイズが後ろを向くば遠くに石の壁から突き出た見晴らし台があり
その上で鎧姿の赤黒くぼやけたなにかが両手で大剣を持ち
革鎧を着けた男の腹部を貫いていた
「・・・・・・ひと、が・・・・」
なにがあるのか振り向いて見れば赤黒い人型のなにかが
人間を大剣で刺し貫いて殺す瞬間を見る事になった
突然の殺伐とした現実にルイズはあいた口が塞がらず
じんわりと浮き出る汗が背筋を冷やしていく
呆然とその一部始終を見ていると赤黒いなにかと
ルイズはふと視線が合わさり両者の動きが止まった
・・・・・・・・
「(お願い、こっちに来ないで)」
静寂、静止が続く中でせめてあの危険なものが
こちらへ来ないようにと願うと赤黒いものは動き始めた
ユラァ
ゆったりとした動きでルイズの居る水路の中央へと
続くであろう階段を下り、近づいて行く
「(こっ!?、こっち来ないで!こっち来ないで!)」
コッ、コッ、コッ、コッ
そう願うも赤黒いものは悠然と階段を下り終わり
まだ遠くありながらもルイズをじっと見つめ、歩き近づく
「(なんで来ないでって思ったら来るのよ・・・・あ!)」
その時、ルイズはどうすれば良いのかと考え閃いた
こっちに来ないでと願い近寄るならば
こっちに来てと願えば離れて行くのではと!
「(こ・・・・こっち来て?)」
そう願うと赤黒いものの歩みはそこで立ち止り
ルイズに向かい猛然と走り始めた
ダダダダダダダダ!!
「(なんでこっちに来るのおおおおおおお!?)」
走って来る赤黒いものへのあまりの危機感に
助けを求めようと貪食ドラゴンが顔を出す場所に振り返るが
「貪食!・・・・ドラゴン?」
そこに貪食ドラゴンの姿はなかった
そしてどこに居るのかと周りに目を向けると気が付く
はっきりと見えていた水路全体が霧に覆われ
近くにある柱すらも薄っすらと見えるだけとなり
赤黒いものが居た方向も見るがただ霧があるだけで
恐ろしく思えたあの姿は消えている
周囲が完全に霧で覆われると
次はルイズの体までもが白く包まれ霞んでゆく
「なんで霧が、こん・・・・なに・・・・」
ルイズの姿が覆い隠されるとその意識も白く薄れ
その場で眠るように倒れた
魔法学院が生徒の誰もがまだ目を覚まさぬ早朝
寮の一室にてルイズは眠りに着いていた
苦しげな顔でみじろぎが多いが
「・・・・」
ぐいぐい
そんなルイズを起こそうとなにかが体を押して揺らす
「んうぅ・・・・」
ルイズは押された方向の反対へ転がり、まだ眠る
・・・・・・がし
しかしなにかはルイズの体を軽々と持ち上げ
どこへ移動したのか目を開けぬルイズの頬に冷たい風が触れる
「うぅぅ」
この冷たさと肌に当たる風の感触に
ルイズはなぜ室内で風が吹いているのかと目を開く
「んえ?」
目を開けると広大な大空と地平線から昇る太陽が見えた
その景色は単純なものであるがただ美しく、輝いている
「・・・・・・・・・・」
ルイズはなぜ目が覚めると部屋の内装ではなく
広い大空と輝く太陽を見えているのかと困惑していた
ちら
自分がどこに居るのかと下を見れば遠く見える地面と
己の体を包むように持ち上げる紫色の巨大な手があった
「・・・・なんで!?」
状況確認をすると更に訳の分からない現状と判明し
ルイズは思わず声が出た
そうしているともう一つ紫色の巨大な手が現れ
その手に書かれた文字の意味がルイズへ伝わる
『新しき朝だ』
・・・・
ルイズが後ろを見ると裂けた体を起き上がらせた
貪食ドラゴンと窓が一つだけ開かれた建物があった
あの開かれた窓から寝ていたルイズは掴み出され
この言葉から察するにルイズを起こす為の行動だと理解した
だがそれとは別の用件があっての事かもしれない
そう考えると断固として抗議する前に確認すべきだろうと思い
ルイズは貪食ドラゴンにどんな理由があるのか問いかける
そして返事はすぐに返ってきた
『人は朝に起きるべきものなのだろう』
合ってはいるが人によって違う上、早過ぎる朝の目覚めと
その起こし方に対して、ルイズの断固とした抗議の声がしばし続いた
まさに夢に出てるくる話し
ゲストは御存知、赤いあいつら