炎に向かう
蛾のようだ
ロートレク、心の一句
トリステイン魔法学院の昼頃
貪食ドラゴンは食堂に近い場所にルイズを降ろし
なにか食えるものはないかと厨房の前に足を運んでいた
コン、コン
厨房の扉を指で叩き音を鳴らすと少ししてから
両扉の片方が開き黒髪のメイドが顔を出した
「・・・・こ、こんにちは」
『こんにちは』
再びこの姿を見るもそれほど怯えないメイドの様子に
貪食ドラゴンは手早く済むなら良しと早速用件を話す
『食事をしたい』
「食事・・・・ですか」
『食事』
貪食ドラゴンがそう答えると
黒髪のメイドは少し考えてから質問をする
「食べられる物、食べられない物はありますか?」
『ほぼ全ての生物、植物を食せる』
この答えを聞くとメイドはどんな名称の生き物を
思い浮かべたのかプルプルと体が震え始めた
『故に美味ければあまり物でもかまわない』
「そっ、そうですよね!美味しい物が良いですよね!
私いまから美味しいあまり物がないか聞いて来ます!」
そう言うとメイドは駆け足で厨房の中に入っていった
4分後、扉の中から近づく足音が聞こえ、扉が開かれると
大きな籠を持ったメイドと寸胴鍋を持つコック服の男が居た
「食べてもいい美味しい物をもって来ました!」
「ったく準備中だってのにいったいなんだって・・・・」
メイドは籠を貪食ドラゴンの前に置くとこの異形の姿に
困惑気味の男から鍋を受け取り籠と同じ場所に置いた
『食していいのか?』
「はい、食べてちゃってください」
「おおぉ!本当に言葉が伝わるな・・・・」
メイドと共に食べ物を運んで来た男は
驚くような感心したような様子で眺める
『ではいただく』
まず貪食ドラゴンは籠に入った果物を大きな指で摘み
爬虫類の様な頭のある口の方へと豆でも食べるかのように
どんどん食していき籠の中身は空になった
次に寸胴鍋の蓋を取ると様々な具材の入ったスープがあり
貪食ドラゴンは人間の胴より太い寸胴鍋をコップの様に持ち上げ
少しスープを飲むと味が良かったのか鍋を一気に傾けてゆくと
具材ごとスープ全てを食らい、空になると満足したような息を吐く
「・・・・・・もう食べちゃいましたね」
「ああ、いい食いっぷりだったな」
この間、1分半の食事風景であった
『とても満ち足りた味の食事だった』
「味か・・・・一つ聞いておきたいんだが
そのスープはどう美味かった?」
コック服の男が聞くと貪食ドラゴンは素直に答える
『野菜の甘味と塩の量が良かった』
「ほう、果物はどうだった?」
『酸味が強いが美味い』
「気に入った!碌に感想も言えないガキより上等だ!
昼頃にはもっといいあまり物を楽しみにしてくれ!」
そう言って気をよくした男は鍋と籠を持ち
軽い足取りで厨房の中に入っていった
「えと、私もまだお仕事があるので戻ります」
メイドも同じく厨房の中に入っていった
・・・・・・?
貪食ドラゴンはコック服の男に気に入られた事に対して
それほどの事をしただろうかと頭を斜めに傾ける
昼頃に生徒達が集い食事を取るアルヴィーズ食堂
この食堂にて数ある席の一つに座り
不機嫌な形相でパイを食べ続ける少女がいた
名をルイズ言い貪食ドラゴンを召喚した者であるが
貪食ドラゴンの行動によって絶賛ヤケ食い中の乙女である
しかしその不機嫌な顔色が変わる出来事が始まった
パァン!
破裂音に近いなにか軟らかい物を叩くような音が聞こえ
パイを食べながらもルイズは音の鳴った方向を見ると
片手に薔薇を持ちその場で立ち尽くす男子生徒の姿があり
頬の片側が不自然に赤く、手で叩かれた痕に見える
「ふ・・・・彼女達は薔薇の意味を理解してないようだね」
まるで劇中の一言のように肩を竦めて口に出すが
一部が赤くなった頬を見るとその様は萎れた薔薇を連想させる
「・・・・・・そこの君」
「は、はい・・・・なんでしょうか・・・・」
「君が軽率に香水の瓶を拾い上げたおかげで
二人のレディの名誉が傷ついた、どうしてくれるんだ」
この言葉と現状を見てルイズは二つの事実に気づいた
一つは薔薇を持った男子生徒、ギーシュの自業自得で
目の前のメイドが余分な被害を受け掛けている事実
もう一つは貪食ドラゴンが話した初対面で逃げずに
道を教えてくれた黒髪のメイドと同じ特徴である事実
そうと分かればルイズは席から立ち上がり
このいざこざを止めようと二人の元へ行こうとするが
ヒュ
風を切る音が聞こえギーシュ近い位置のテーブルから
カン!となにか硬い物が当たる大きめの音がした
「な、なんだ!?」
ギーシュは音に驚いてテーブル見ると
光る文字が書かれた木片があり、光る文字を見ると
知らない形の文字であるのになぜかその意味が伝わった
『困る』
そう書かれた言葉にギーシュは困惑しつつも
どこから木片は投げ込まれたのかと周りを見渡す
すると幾らかの生徒達が窓に注目しており
ギーシュも目を向けるとまたもや言葉が伝わった
『そのメイドが動けなければ困る』
窓の外から顔を出し、光る文字が書かれた大きな手を見せ
言葉を伝える貪食ドラゴンに殆どの生徒達が唖然としている
しかし少し時間が経つとギーシュが貪食ドラゴンに問う
「な、なにが困るんだ?」
『失敗に巻き込まれると遅くなる』
「・・・・・・失敗?」
『そうだ』
ギーシュは話していく内に落ち着き
他の生徒も気になるのか話しに耳を傾ける
「・・・・僕がなにを失敗したと言うんだい?」
『隠し事に失敗しただろう』
この言葉に周囲の生徒達はざわめきが戻り
それは見世物を見るような好奇の目に変わっていた
「ぐっ・・・・そもそもメイドが機転を利かせれば
二人のレディを傷つける事にはならなかった筈だ」
『ならば浮気しなければいい』
「そうだぞギーシュ!」
一部の生徒が貪食ドラゴンの言葉に反応して野次を飛ばす
「ぐぅ・・・・・・ん?、ああ思い出した!
たしか君はゼロのルイズが呼んだ使い魔だったか」
『そうだが』
苛立っていたギーシュはなにか思い出すと途端に
弱点を見つけたと言わんばかりに軽い調子で話す
「なるほど主人がゼロなら貴族にふさわしい
礼儀と態度を知らないほどに知識がゼロなのも納得だ」
『礼も持たぬ相手に礼で返すつもりはない』
全く堪えた様子もなく淡々と言葉を返す貪食ドラゴンに
苛立ちが溜まり続けギーシュは物理的な手段を選んでしまう
「いいだろう貴族の礼儀を教えてやろう、決闘だ!!」
この成り行きに口勝負の次は決闘が見れると
周りの生徒達は一部を除いて盛り上がる
「ちょっとまちなさい!」
人ごみの中から前に出てルイズは声を上げる
「生徒同士の決闘は禁止されているわ!」
「それなら別に問題はない
なにせこの決闘は生徒と使い魔が行う決闘だからね」
「だからってあいつと決闘するのは!!」
「まぁ死なない程度に手加減してあげよう
それではヴェストリ広場で待っている!」
そう言ってヴェストリ広場のある方向へ
ギーシュは颯爽と食堂から立ち去って行き
決闘を見ようと他の生徒の大半が移動して行く
ある意味ギーシュの自爆行為であるが故にほっときたいが
決闘が始まれば本当に人死にが発生しかねない為
無視もできないこの事態にルイズは頭を抱えそうになるが
背中トントンと誰かに叩かれ振り向く
それは貪食ドラゴンでありルイズに言葉を伝えてる
『加減はいるか』
「・・・・・・怪我をしない程度にできる?」
次回、助けて