IS~八咫烏の導き~   作:誤字脱字

20 / 47
十七羽

………ついにこの時が来た

 

一ヶ月の間デュノア社に潜入させていたノエルさんの情報によると、今日デュノア社は、運命を賭けた博打に打って出る

 

ベットは、自身の息子…

 

報酬は、デュノア社発展に繋がる貴重な情報…

 

……まぁ、デュノアにとってはベットは、無いに等しいがな

 

策を練って、自分だけ美味しい蜜を吸うつもりだろうが、そんな事はさせない……

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します!しかも二名です!」

 

さぁ、デュノアよ……

お前の見せる策が、俺に効くか試してみるがいい!

それなりの見返りを覚悟するのならな!

 

 

 

IS ~八咫烏の導き~

 

第十七羽 王子と兔

 

 

 

Side 一夏

 

 

クラスに入って来た二人の転校生を見て、ザワメキがぴたりと止まる

方や『貴公子』方や『軍人』……

そんな印象を持つ二人だった

しかし、クラスのザワメキが止まる理由は違った

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

「お、男……?」

 

そう――片方が男だったのだから

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方々がいると聞いて本国より転入――」

「きゃ……」

「はい?」

「きゃあぁぁあぁぁ―!」

 

ソニックウェーブと言う奴だろうか

いや冗談じゃなくて

窓が震えているぞ?

 

「男子!三人目の男子!」

「しかもうちのクラス!」

「美形!守ってあげたくなる系の!」

「ワイルドな織斑君!SSS社長の雑賀君!貴公子的なデュノア君!地球に産まれてよか 「SSS社長雑賀!?」 あっ!………」

 

騒がしかった教室が、一斉に静まり返る

ん、どうかしたのか?

 

「あっ!デュノア君のご実家と雑賀君のご実家が敵対企業同士だからみなさん気を使っているんですね?学校の中ですし大丈夫ですよね、雑賀君?」

 

山田先生が問い掛けるが、沈黙の秋奈……

つーか、デュノアの実家って会社なのかよ、と言う事はデュノアは、次期社長?

……このクラスに社長的ポジションが二人

しかも、男……

俺は、社長でも次期社長でもないぞ!?

 

「さ、雑賀君?」

 

いくら声を掛けても沈黙を貫く秋奈にオロオロし始める山田先生

いい加減、応えなければ山田先生泣き始めるぞ?っと意味合いを込めて秋奈に視線を向けるが、多分向けているのは、俺だけじゃない筈だ

 

「……仲良く…とは行きませんが、学校で騒ぎ立てるつもりはありません。」

 

立ち上がり、友達にはなりませんよ発言を言う秋奈…

表情が険しいのもあって、静かな教室がお通夜レベルまで上がった

どうするんだよ、この空気……

 

勇者よ!このクラスを救ってくれ!

 

「……雑賀その辺にしとけ、転校生はまだいる。」

 

おぉ!流石我が姉!

関羽も逃げ出す程の武勇伝だ!

 

ばしーん!

 

「織斑くだらない事を考えるな。」

「……はい、すみません千冬ね……織斑先生」

「!」

 

我が姉は、弟の心を読めるスキルを持っているようだ。

姉の理不尽なスキルを考えている中、輝くような銀髪のもう一人の転校生が、こっちに向かって来た

 

バシンッ!

 

「………」

「う?」

 

いきなり、殴られた

それも無駄のない平手打ち。――は?

 

「テメェー!いきなり何しやがる!」

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ!………私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

そして、俺の前から立ち去り、空いている席に座ると腕を組んで目を閉じ、微動だにしなくなる

……ドイツじゃ初対面の相手を殴るのが友好の意味なのか?そんなのごめんだね!

先の行為に意味があるのか考えてる内に、HRが終っていた

 

ってヤバい!確か今日は、第二アリーナ更衣室しか空いていない!

急がなければ!

 

「おい!秋奈いそ 「待て織斑。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」 ……秋奈は、いいんですか?」

「……雑賀は、既にいないぞ?」

「は!?」

 

教室を見渡すが、同じ銀髪のボーデヴィッヒはいるが、秋奈はいない

 

「君が織斑君?初めまして。僕は――」

「!」

 

そうか!

秋奈は、この展開を見通して先に行きやがったのか!

 

「一夏って呼んでくれ!」

「あ、うん。僕の事もシャルルでいいよ」

「わかった、シャルル。―いきなりで悪いが、第二アリーナ更衣室ってわかるか?」

「え?うん、入学前に確認したけど?」

「俺、少し秋奈と話があるから先に行く。悪いなシャルル!」

 

そう言い残し、全力で走り出す

後から「え!ちょっと待ってよ一夏!」って聞こえたが、俺は振り向かなかった

 

OUT 一夏

 

 

 

 

第二アリーナ更衣室――

 

ドゴンッ!

 

俺は感情に任せ、思いっ切りロッカーを殴った

殴った右手から伝わる『痛み』を感じながら、唇を噛み締めた

 

「……何をやっているんだ!俺は!」

 

自分の器の小ささに苛立ちを覚える

デュノアとの関連性がまだ不明なシャルル・デュノアに『同じ境遇』と言われ、冷たい言葉を吐いた自分に…

その後、気まずくなり逃げるように教室を出た自分に……

唇を噛む力が強まり、唇から血が滴れる

 

冷静になれ!雑賀秋奈!

SSSの……両親の教えを忘れるな!

相手の後ろ盾を気にせず、直接相手を見て判断しろ!

 

さっきの俺は、完全にシャルル・デュノアではなくデュノア社を見ていた

俺らしくない……

 

冷静になりつつも、まだ晴れない苛立ちと共に更衣室を出ようとした時、呼吸を切らした一夏が入って来た。

 

どんだけ急いでいたんだ?

 

「ハァハァ…あ、秋奈よかった、まだいたか…って血が出てるぞ!」

「いや、少し口を切ってな……で、どうしたんだ?」

「ちょっと話しがあってな……」

 

話しだと?

 

「お節介かもしれないけど…秋奈、シャルルに対して壁作っていただろ?秋奈らしくないなって思って……」

「ッ!」

 

……鈍感な一夏にもわかるぐらいデュノア社を意識していたか

 

「会社同士の柵なんだと思うけど……シャルルはシャルルだろ?節介、この女だらけの学校で出会った男なんだし仲良くしようぜ?」

「………。」

 

……くくく、一夏の奴

SSSの心得を、この俺(SSS社長)に語るか……

さっきまで、渦巻いていた苛立ちが消えていくのがわかり、自然と、頬の筋肉が緩む……

 

「…本当にお節介だ、これがな」

「なっ!」

 

ジャージを羽織り、更衣室の出口に向かう

 

「……相手がどう思うが、知らないが、壁って奴を壊してみるわ。…………………ありがとう、一夏。」

「お、おう!頑張れな秋奈!」

 

やはり慣れない事はやらない事に限るな…

照れ隠しなのか分からないが、足速にグランドにむかったのであった。

 

 

 

 

……グランドに来たのはいいが、シャルル・デュノアの姿が見られない

 

当たり前か……

 

同じ更衣室を使うのに、入ってこなかったんだからな……

普段なら見落とさない様なミスに自分が緊張していた事に気づいてしまう

息を吐き、心を落ち着かせた……

 

 

「秋奈さん!」

「ん?どうしたセシリア?」

 

眼を閉じていたので、セシリアに声を掛けられるまで気付かなかった

 

「いえ、教室での秋奈さんは、少し様子が――ッ!血が出てますわよ!」

「あぁ、拭き忘れていたな」

「少し失礼しますわね」

 

オロオロしながら、羽織ってあるジャージからハンカチを取り出し、口に着いた血を拭き取ってくれる

 

「悪いな、セシリア。ハンカチが汚れてしまったな」

「構いませんわ。ただ……」

「ただ?」

 

何かを言いかけ、俯いてしまったセシリア。

声音から怒りや不安な後は感じられないので、続きを促してみた

 

「わ、私は!あ、秋奈さんのか、彼女ですから!………困った時は相談してください」

 

俯いた顔をあげ、照れているのか、頬を赤く染めながら俺に笑いかけてくれた

 

 

……………

 

 

…………あぁ

 

…………抱いていいか?

 

彼女に対するひいき目もあるが……

 

今のセシリアの笑顔は、男心と言うか理性?を崩壊させるのには、十分な破壊力を持っていた

 

「ね?」

 

「ッ!」

 

首を傾け、『ね?』を頂きました!

可愛さプラス100!愛おしさプラス200!

 

その結果……

 

「セシリア……」

「あ、秋奈さん!」

 

……我慢出来ませんでした、はい

 

今セシリアを抱きしめています

近付いた事で、女特有の甘い臭いが鼻につく

抱きしめた腕の力を更に強めてしまうのは仕方ない事だ

 

「セシリア……」

「秋奈さん……」

 

セシリアも当然の様に腕を回し、俺のハグに答えてくれる

 

「……セシリアの事は心から愛している。」

「はい……」

「今回の事は、SSSとデュノア社との因縁が原因だ」

「はい……」

「SSSが……俺が、どんな決断をしても……俺の傍にいてくれ……」

「はい、私は秋奈の傍にいますわ……私も秋奈さんを愛してますから……」

「セシリア……」

「秋奈さん……」

 

二人の顔が近付いていく……

唇と唇が重なり会うまで、あと数センチの所で…

 

 

 

「秋奈にセシリア。続きは後にした方がいいわよ〜?」

「「!!!」」

 

……またしても、鈴に邪魔された

しかもニヤニヤしながら……コイツ狙ってないか?

 

「狙ってないわよ!」

 

コイツも心が読めるのか!?

 

「……口に出てたわよ?ていうか『も』ってなによ」

「おっと!」

 

平然を保ちながら、口を抑える

 

「はぁ〜……グランドの隅だし、人もあまり来ていないから、良いけど……あと数分したら沢山くるわよ?」

「それはそれは……」

 

確かに、多くの女性にチヤホラされるのはキツイ

主にセシリアが……

今だって――

 

「/////」

 

顔を伏せながらも、頬を赤く染めているのだからな

 

「気をつけた方がいいわよ?何処でも桃色雰囲気をだしていたら注目の的になるわよ?」

「あぁ…気をつけるさ」

 

注意はするけど自重は、しない

それが雑賀の教えだ!

 

「本当にわかっているのか……」

「そんな事より織斑先生が来たぞ?速く行くぞ」

「わかってるわよ!」

「はい////」

 

織斑先生は遅刻に厳しいからな

俺は、セシリアと鈴を連れてグランド中央に向かったのであった

 

 

セシリアと手を繋ぎながら……

もちろん恋人繋ぎである。

 




来る決戦の為、秋奈は甘えを捨てた

……セシリアには甘いが
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。