インフィニット・ストラトス~八咫烏の導き~
第二十羽 兎
今日は土曜日・・・
午後は自由時間になっている為、俺達は、いつも通り一夏の訓練に付き合っているのだが、今日は一味違い………
「えぇとね、一夏が雑賀夫婦や凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握していないからだよ」
一夏の訓練に参加するようになったシャルルが先生役をしている。
…………うむ
シャルルは、訓練に参加する事で『白式』と一夏、『八咫烏』と俺のデータを収集しようとしている事は、直ぐに分かった、なので、シャルルがいる時、俺は『八咫烏』を動かさず、一夏にISの知識を教える様にしている。
……まぁ、シャルルもその事に気付いている様で積極的に『八咫烏』について聞いてこない。
聞いてきたとしても、適当にごまかしているがな
だが、実際にシャルルが訓練に参加する事は、私的にはよろしくないが、一夏にとっては大きなプラスとなっている。
説明下手な箒
感覚的な鈴
理論的なセシリア
変則操縦中心な俺
に教えを問うより、とてもわかりやすいだろう…
バンッ!!
うん、今だって実際に銃を撃たせて射撃武器の特性を覚えさせている
人は、知識として教えられるより実践する方が覚えがいいしな
………と言っても影ではデータ収集、か
しかし、近接戦闘オンリーの『白式』のデータは必要ないだろう?
たぶん、性質上センサー・リンクは無いだろうな
そんな射撃武器使用可能性0の欠陥品機の射撃データなんてSSSにはいらない
本当に製作者の考えを疑うよ……
「―――だと思うよな?秋奈。」
「あぁ、お前のISは欠陥機だな。」
「いやそうじゃなくて、いやそうだけど……」
「ん?」
いつの間にか、銃を撃つ手を止めて俺に話しかけていた一夏
「前に『贋作者』ってISについて教えてくれただろ?あれとシャルルの専用機って似てるなって思ってな?」
似てるも何も、オリジナルは『贋作者』だよ…
「……確かシャルルのISは、拡張領域が広いんだよな?」
「う、うん……」
詰まる様に返事をするシャルル
ん?
その反応を見ると気付いているのか?
「『贋作者』のコンセプトは、゛あらゆる場面の対応゛を想定して作られているってのは、話したな?」
「あぁ。」
「そこで、全ての武器に対応出来る様に調整した。その結果、拡張領域が広がり全ての武器を有効に使えるスペックになった。……似ているのはコンセプトが同じなのだろうな。そうだよなシャルル?」
「うん、それに僕、゛装備呼び出し゛《コール》には自信があるんだよね。」
「なるほど、なら『ラファール・リヴァイヴⅡ』は、お前にピッタリだな。」
「……何がピッタリなんだ?」
「ん?あぁ…武器が多様する際に生まれるタイムラグの問題だ。」
「タイムラグ?」
いきなりそんな事言われても流石にわからないことだな、これがな
「えぇとね…その場面に合った武器を探すのに時間がかかるでしょ?探してから量子構成して照準、だと時間がかかるんだ。でも僕の場合その時間がほとんどないんだよね。」
「相手の装備を見てから自分の武器を変更出来るとは凄いな!」
「そうだな箒……まぁ、そう言うタイムラグの話しがあって『贋作者』は乗り手を選ぶんだよ。」
「「なるほど」」
代表候補生のセシリアと鈴は、わかっていたらしく会話に参加してこなかったが…一夏と箒はわかっていなかったようだな。
とりあえず一夏は謎が解決した為、またシャルル先生の指導の下、射撃を再開した。
しかし、今までスルーしていたが……雑賀夫婦って俺とセシリアの事か?
それが原因で、セシリアが顔を赤くしたままだし、鈴は、そんなセシリアを弄ってるし……
俺らの会話に参加しなかったのって『理解』してるんじゃなくて、聞いてなかっただけか?
まったく、あの二人は………ちなみに、俺は夫婦って呼ばれて嬉しかったぞ?
セシリアの事は本当に愛しているし……まぁ〜俺は、セシリアみたいに動揺しないがな
「ねぇ、ちょっとアレ…」
「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」
「まだ本国でのトライアル段階だって聞いたけど……」
ん?急にアリーナ内がざわつき始めたな?
俺は注目の的に視線を移した
「…………」
そこにいたのは、俺と同じ銀髪の女……
……たしかボーデヴィッヒだったか?
しかし、おれと似ているな……
銀髪に赤眼、さらにはISの機体色……
違うのは性別と眼帯、あと身長か?
「おい」
うん、声質も違うな…
「……なんだよ」
「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話は早い。私と戦え!」
模擬戦って事か?しかし、醸し出している雰囲気は違うが……
「イヤだ。理由がねぇよ」
「貴様になくても私にはある」
……この雰囲気は・・・因縁、か?
なら、俺が口を挟むの事は出来ないな
「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろう事は容易に想像できる。だから、私は貴様を――貴様の存在を認めない」
大会?あぁ、モンド・グロッソか……
確かに、織斑千冬が決勝戦に出ていたら優勝していただろう……
しかし、あれはドイツ軍が織斑千冬を引き込む為に仕組んだ茶番だと報告があったが……コイツ、ドイツ軍だろ?
この言い方……知らないのか?
「また今度な」
「ふん。ならば――戦わざるを得ないようにしてやる!」
っておい!コイツッ!
「!」
――ゴガギンッ!
「……こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツ人は随分沸点が低いんだね。ビールだけでなく頭もホットなのかな?」
「それは、知らないが……密集空間で戦闘ってのは同意だな。………俺の女に当たったらどう落し前つけるつもりだ?」
「貴様ら……」
俺は横合いから割り込んできたシャルルが実弾を処理するのを、予想し『八咫烏』を起動させベルヴェルクの銃口をボーデヴィッヒに向けた。
……しかし、同時にアサルトカノン《ガルム》か?を向けるとは……
゛コール゛に自信があるだけはあるな……
「フランスのアンティークごときで私の前に立ち塞がるとはな」
「未だ量産化の目処が立たないドイツのルーキーよりは動けるだろうからね」
……ふむ。
「二人でヒートアップするのはいいが……俺もいる事を忘れるな」
「クッ…………」
ん?
互いに睨み合っていたが、俺が参入の意志を見せるとボーデヴィッヒは、武器を下ろした。
「……本国からお前とは、問題を起こすな!っと言われているんでな、ここは引かせてもらう」
ボーデヴィッヒは、あっさりと戦闘態勢を解除してアリーナゲートへと去っていった。
『お前とは』か……
ドイツ軍は、SSSの力を恐れているのか……
だが、まだ裏があるような
「一夏、大丈夫?」
「あ、ああ。助かったよ、秋奈もありがとうな」
「いや、気にするな。……しかし、流石だなシャルル。あの状況から反撃の態勢まで入るとは……」
「秋奈こそ!IS展開スピードが早過ぎるよ!武器まで展開してるし!」
「お前には劣るが、俺も゛コール゛には自信があるんでな」
と言うか、TRAより゛コール゛の練習の方が先にやったな……
なんでも゛コール゛はTRAの基礎らしいからな
「なぁ、俺を仲間外れにしないでくれよ、アリーナの閉館時間も近いし、さっさと着替えに行こうぜ」
おっと、考え込んでいたか……
でも……
「わるぃ一夏、俺は少しコレと話があるんで先に行ってくれ」
コレを示す様に、小指を上げた。
「……リア充め、わかったよ。シャルル行こうぜ」
「えっと……ごめん、先に着替えて戻ってて」
「……シャルルもコレか?」
一夏は小指を上げ、シャルルに問いかける。
「ち、違うよ!い、一夏の今日のデータをまとめようと思っただけだよ!」
焦り過ぎだろ……
別に隠す事でもなんだから
「そうだったか…悪いな、たぶん力になれないから先に行くよ」
「……俺も行くぞ?」
「うん!二人ともまたね」
笑顔で返事を返すシャルル、でもその笑顔の裏に焦りが見えるが……気のせいか?
時間も時間なので解散になりゲートに向かう一夏、箒、鈴、『ラファール・リヴァイヴⅡ』を展開させピットに向かうシャルルを見送り、俺達は、規則を無視し無人となったアリーナに残り、ベンチへと座った。
夕日が優しくセシリアの金髪を照らし、セシリアの魅力を引き立てていた。
「………お話とはなんですの?」
俺の視線に気付いたのか、照れながらも尋ねてきた。
もう少し眺めていたかったが、本題に入らなければな……
「……シャルル・デュノアの事をどう思う?」
恋仲になった時から俺は、よくセシリアに意見を聞くようにしている
それは、セシリアを信頼している為であり、また違う方向の意見を聞く事で新たな考えをまとめる為だ
「……そうですわね、あの様な殿方は、社交界や家の付き合いでお会いになった時がありますが……少しおかしい所がありますわね。」
「………おかしい?」
「えぇ、そんなに長く付き合っていませんが……行動や仕草がぎこちない様に感じまして……」
「…………」
………性別の偽装?
ありえない事ではない
一夏や俺の様な特殊なパターンが次々に出る可能性は低い
第一、IS開発許可が危ういデュノア社に男性操縦者が所属していたら、政府に売りIS開発の開発援助を貰う方が俺らのデータを集めるより効率的だ。
一夏の……男性操縦者の可能性を利用した広告塔か?
「……シャルル・デュノアが女って可能性、か」
「えぇ、私が今まで育てた『眼』で見てそう感じましたわ」
「その考えは思いつかなかったよ。女性(セシリア)だから考えられた可能性だな」
「お役に立てて良かったですわ」
「あぁ…っとタイムアップだ。名残惜しいけど、コレ以上アリーナにいたら織斑先生に怒られるな」
「……そうですわね」
時刻を見てみたら、かなりの時間が経っていた。
……そんなに長時間、セシリアを見てたのか?俺…
そりゃ〜照れるよな
ベンチから立ち上がりゲートへと足を向けたが…
「秋奈さん……」
セシリアに呼び止められた。
「ボーデヴィッヒさんから私を守ってくださいましてありがとうございました」
………ふむ。
「礼を言われるまでもない。惚れた女を守るのは、男の役目だ」
「それでも……ありがとうございます」
そう言って軽く頭を下げてから微笑むセシリア……
………あ〜もう!可愛いな!畜生!
俺はセシリアに近付き、セシリアを抱きしめた。
「あ、秋奈さん////」
「…俺を魅了するセシリアが悪いんだぞ?」
「……秋奈さん、最近大胆ですわ」
「嫌か?」
「大好きです///」
力を少し緩め、セシリアの顔を伺えるスペースを作る……
そして、二人の顔が近付き…………
「不純異性交際は、控えて貰いたいものだな。」
「「!!!」」
…………織斑先生に注意された。
「……織斑先生、空気読んでください」
「個人的には見逃したいが、私も教師なんでな。許せ」
……なんで毎回誰かしらに邪魔されるんだ?
SSSの力を使って調べるか?
ノエルさんなら意気揚々に調べてくれるだろう
「何を考えているか知らないが、アリーナの閉館時間はとっくに過ぎている。今回は見逃してやるからさっさと行け。……そしていつまで抱き合っているつもりだ!」
「おっと!。抱き心地がよかったもので……セシリア行こう」
「はい////」
「では織斑先生失礼します」
「………失礼します」
織斑先生に挨拶し、セシリアとゲートへと足を向けたのであった。