side 一夏
「・・・・・・」
「・・・・・・」
場所は保健室。
時間は第三アリーナの一件から一時間が経過していた。
ベッドの上では打撲の治療を受けて包帯の巻かれたセシリアと鈴がむっすーとした顔で視線をあらぬ方向へと向けていた。
「別に助けてくれなくてよかったのに‥‥あのまま続けていればかっていたわ」
「‥‥‥‥」
感謝するかと思えばこれかよ‥‥
別に感謝されたくて助けに入った訳でもないから、いいけどな
俺自身がムカついて乱入した訳だし
実際助けたのは秋奈だしな‥‥
「鈴お前なぁ‥‥はぁ、でもまぁ、怪我がたいしたことなくて安心したぜ、なぁ秋奈」
「ん?あぁ‥‥」
?
なんか歯切れが悪いな
どうしたんだ秋奈?
どことなくセシリアも気まずそうにしているし‥‥
「なぁ~秋奈にセシリアどうしたんだ?なにか「わぁ~!一夏少し黙っていようか!」グッ!なんだよシャルル!」
いつの間にか飲み物を買って戻って来たシャルルに口を押さえられた!
というか缶が口に当たって痛い!
俺達は蚊帳の外にされ、重々しく秋奈の口が開いた
「‥‥セシリアどうしてあんな事を?」
あんな事ってラウラとの模擬戦か?
最初からいた訳でもないしどうしてなんだ?
「‥‥‥」
「ラウラから挑発されたからと言って乗るような君ではないはずだ」
「‥‥‥」
「君も薄々気付いていた筈だ。ラウラは今年の一年の中で頭一つ抜けている、なのに「秋奈!」‥‥どうした鈴?」
「セシリアわね!あ、あたしに付き合ってくれただけよ!だから!なんというか‥‥」
鈴はセシリアを庇うかのように慌てながら秋奈に説明してるが‥‥
これって修羅場ってやつのか!?
どうなんだ!箒!シャルル!
「「一夏は黙っていろ/いようね」」
なんなんだよ!
「だからね!あれは、その‥「鈴さんもういいのですわ」‥‥セシリアぁ」
セシリアは、秋奈と視線を合わせ一つ一つ丁寧に言葉を口にし始めた‥‥
「最初は鈴さんと学年別トーナメントの為の特訓をしようとしてアリーナにおりました。‥‥その時、ボーデヴィッヒさんが乱入して来て、その‥‥私達に挑発し始めました。‥‥いつもの私でしたらあの様な事はおこしませんでしたわ。‥‥ですが、あの方は母国の侮辱では終わらず、秋奈さんの事も侮辱し始め、口論のすえ我慢出来なくなりあの様な事になりました。すみません秋奈さん」
なんだよそれ!
完全にあっちが悪いじゃないか!
「謝る必要なんてないぞセシリア!そんなコトなん「だ~か~ら~黙っていようね一夏?」またかよシャルル!」
俺が助け船を出してるのに!
というかまだ缶持ってるのかよ!
中身が入ってるから硬くては‥‥痛い!
「‥‥いくら侮辱されたからと言って手を出すのは良くない」
「‥‥‥」
「その様な事をするようではまだまだ子供だ‥‥‥しかし」
「‥‥?」
「俺は嬉しいよ、セシリアが俺を大切に思ってくれていると知れて‥‥」
「秋奈さん‥‥」
「セシリア‥‥好きだ」
「私もですわ!秋奈さん////」
‥‥どうした修羅場?
さっきと雰囲気が全く違うぞ?
なんというか‥‥桃色?
そんな雰囲気が漂ってるな
というか手を出すのが子供ならラウラと戦った秋奈も子供だよな?
千冬姉も言ってたし‥‥
そうだろ?箒?シャルル?
「‥‥羨ましい、いつか私も一夏と‥‥」
「‥‥秋奈はやっぱりセシリアなんだね」
箒‥‥
羨ましいのか?恥ずかしいぞ?
というか俺がなんで出てくる!?
そしてシャルル‥‥
意味がわからん‥‥‥
場の雰囲気が一転し鈴達も落ち着いたので部屋へ戻ろうとしたが‥‥
‥‥あの2人に話しかけて良いものかどうか‥‥
ドドドドドドッ‥‥‥
かなり話しかけ難いが‥‥このままでもいけないし
しかし、何の音だ?
地鳴りに聞こえるそれは、どうやら廊下から響いてきている。
しかもだんだんと近づいてきているように思うのだが、たぶん気のせいではないだろーーーう!?
ドカーン! と保健室のドアが吹き飛ぶ。
‥‥いや、本気で吹き飛んだんだ。
俺は初めてドアが吹き飛ぶという光景を目にしたぞ。
「織斑君!」
「デュノア君!」
「雑賀君!」
ーーー『入ってきた』なんて生易しいものではない。文字通り『雪崩れ込んで』きたのは数十名の女子生徒だった。
室内はあっという間に人で埋め尽くされ、しかも俺や秋奈、シャルルを見つけるなり一斉に取り囲み、まるで人に群がるゾンビのように手を伸ばしてきたのである。
‥‥‥うわぁ、軽いホラーだぞ、これ。
「な、な、なんだなんだ!?」
「ど、どうしだの、みんな‥‥ちょ、ちょっと落ち着いて」
「‥‥‥そして、邪魔をするな」
なんかセシリアとのイチャイチャを邪魔されたせいか、秋奈不機嫌だな。
‥‥よかった!話しかけないで!
「「「「これ!」」」」
状況が飲み込めない俺達に、バン!と女子生徒一同が出してきたのは学内の緊急告知文が書かれた申込書だった。
「な、なになに‥‥?」
「『今月開催する学年別トーナメントでは、実戦的な模擬戦闘を行う為、ふたり組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りはーーー』」
「ああ、そこまででいいから!とにかく!」
ふたり組?あぁ!秋奈が勘違いした発端か!
そう言えば、俺ってまだ組んでいなかったな‥‥
‥‥と言うことは
一度やんだ伸びてくる手がまた一斉に!
「私と組もう、織斑君!」
「私と組んで、デュノア君!」
「私と戦って!雑賀君!」
やはり、ペアの申し込みだったのか!
シャルルや秋奈はともかく俺と組んで勝率上がるのか!?
学園内で三人しかいない男子ととにかく組もうと、先手必勝とばかりに勇み迫ってきているのだろう。しかしーーー
「一夏はシャルルと組んでいるからペアには、なれないぞ?」
鶴の一言ならぬ秋奈の発言により女子生徒一同は動きを止める。
はて?
俺は、まだシャルルに学年別トーナメントのペアについて話していないぞ?
疑問に思い秋奈に視線を送ると‥‥
「シャルルの性別を考えろ。今、シャルルの性別がバレたらマズい。ーーー計画に支障がきたす」
俺にしか聞こえない声で教えてくれた
あぁ、なるほど‥‥
今後ペア同士での特訓も行うだろうし、いつどこで正体がバレてしまうとも限らない。
なら、知ってる奴で!って事か‥‥
シャルルに確認の意味を込めて視線を送ると最初は驚いていたが、軽く頷いてくれた。
ーーーよし
「悪いな、そういう事だから諦めてくれ!」
シーン‥‥と女子生徒一同は沈黙したが、何を思ったのか目に輝きを取り戻した。
「な、なら雑賀君!私と組もうよ!」
「残り一人の男子逃がすものか!」
女子生徒一同《ゾンビ》は、標的を一人に絞ったのか、一斉に手を伸ばし始めた。
その光景に秋奈は苦笑し、セシリアは不機嫌に‥‥
そりゃ、彼氏が他の女子と一緒にトーナメントに出るのは嫌だよな‥‥
あれ?
秋奈って女子生徒一同《ゾンビ》にセシリアと交際してるっていってないのか?
不思議に思いながらも秋奈を見る‥‥
すると秋奈は‥‥
「俺はトーナメントには出ない。SSSの社長としては参加するが‥‥。ーーーそれに‥‥」
そっとセシリアに近づき‥‥
「彼女《セシリア》以外と組むつもりはない。」
優しく抱き寄せた。
このタイミングで言うか!
衝撃の発言に女子生徒一同《ゾンビ》は‥‥
「イヤァァー!玉の輿が!!!」
「先越されたー!!セシリアの馬鹿ー!」
「嘘だと言ってよー!!!」
各々の叫びをあげ崩れ倒れる女子生徒一同。
さながら、日差しを浴びたゾンビのように‥‥
そして足取り重く、一人また一人と保健室を去っていく。
しかし、どうでもいいが‥‥
そろそろセシリアを放してやれよ
茹でタコ状態だぞ?セシリア。
その後、いつまでも保健室に居たい訳でもないので、セシリアの介抱を秋奈に任せて鈴に肩を貸しながら鈴の部屋に送ったのだが、自分達の部屋でシャルルのお尻を事故で!そう事故で!鷲掴みした後の記憶が途絶えた。
何が起きたのか‥‥‥‥がくっ。
out 一夏
IS ~八咫烏の導き~
第二十三羽 全ての女子に幸福がありますように・・・・・