6月も最終週に入り、IS学園は月曜から学年別トーナメント一色にとかわる。
その慌ただしさは予想よりも遥かにすごく、今こうして第一回戦が始まる直前まで、全生徒が雑務や会場の整理、来賓の誘導を行っている。
‥‥まぁ、来賓の俺には関係ない事だがな
「‥‥私は今、あんたの誘いに乗った事を後悔してるわ。セシリアあんたは大丈夫なの?」
「慣れましたわ。それより鈴さん、代表候補生として恥ずかしくならないようにお願いしますわ。」
「わ、わかってるわよ!」
んで、グダグダと文句を垂れている鈴だが‥‥
只今、廊下にて先頭で来賓《オレ》を案内する2人
周りには大企業の社長や政府の重要人が沢山いており、IS学園の制服を着ているのも際立って俺《SSS社長》に挨拶にやってくる
まぁ、その時に2人も紹介するのだが‥‥2人や3人なら鈴も大丈夫だが、つい先ほど20人を越えた
そりゃ~精神的に疲れるよな
「‥‥楽は出来ているだろ?知らない重役を案内するよりはよほどマシだ。」
「‥‥忘れてたけど、あんたって凄い奴よね」
「社員の努力のおかげでな。」
その後、挨拶周りも落ち着き、セシリアや鈴と一言二言話ながらも、来賓席に到着した
鈴はというと挨拶周りという緊張感から開放され大きく深呼吸を繰り返していた
その様子に俺とセシリアは笑みをこぼす
「笑ってんじゃないわよ。でもなんかここ、普通の来賓席と違くない?個室だし‥‥」
おっと、見られたか‥‥
「此処は学園に援助金または政府関係者の重役に与えられる部屋だ。SSSは前者だがな。」
「へぇ?それってつまり‥‥」
「あぁ‥、此処は「IS学園で一番の部屋!よーするにVIP席って所だな!」‥‥海里か?」
俺はこの声に聞き覚えがあった。
奥から人数分のお茶を持って来ている辺り、流石っと言う所か‥‥
「久しいな社長!お嬢もお元気そうで!」
「ごきげんよう、海里さん!」
「‥‥海里、学校はどうした?」
「今日はサボりじゃねぇーよ!‥‥兄貴が狸殺してるから代理で来たんだよ!SSSの代表が社長だけって味気ないだろ?」
「‥‥わざわざすまない。学校には俺から連絡しとくよ。」
「助かるわ~、最近センコーがウルサくてな!」
「就職先が決まっていますからね。‥‥呉々も留年は避けてくださいね」
「お嬢‥‥俺はそこまで馬鹿じゃーよ!」
久しぶりに会った友に話が弾むが‥‥
‥‥鈴から白い目で見られている、何故?
「‥‥どうかしたか?鈴?」
「どうもこうも誰よそいつ!?いきなり現れて社長のあんたに軽々しく話しかけるし、お茶なんか淹れて待ってるし! 「緑茶だ、のんでくれ!」 あ、うん、ありがとうございます‥‥じゃなくて!」
あ~なるほど、鈴が言いたい事がわかった
今まで、挨拶に来た人達は、敬語、もしくは企業間の探り合いだったが、コイツはフレンドリーに接して来ているのが不思議なんだろう‥‥
「鈴は初対面か‥‥コイツは、磯野海里。藍越学園三年で来年からSSS技術部に入社する。俺のまぁ‥‥磯野に継ぐ新しい右腕かな?」
「磯野?‥‥磯野ってあんたの所の執事の?」
「そうですわね。海里さんは磯野さんの弟さんですわ。」
「まぁ~、鈴で言う弾みたいな存在だ」
「へぇ~、あんた弾に会ったんだ。なるほどね‥‥うん!あたし、鳳 鈴音。よろしくね!」
「おう!よろしく頼む!」
飲んでいたお茶を置き、お互いに和やかに握手を交わす2人‥‥
うんうん、友情は良きかな‥‥
2人を横目に俺とセシリアはモニターでトーナメント表を確認する
「時に鳳。甲龍の衝撃砲について教えてくれ!」
「‥‥‥‥へぇ?」
「いま開発中の武器に搭載しようとしてるんだが、今一つ情報がたらん!‥‥空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ち出すーーーここまでは公開されてるな?」
「え!?あ、うん。」
「ここまでの事だと小型化するには専用の圧力管が必要か?いやそうすると威力が弱くなってしまう。ならーーー」
「ちょっと!待ってよ!って聞いてる!?」
「先端に付けて使用用途をーーー」
「聞けってば!!」
あ~トリップしたか、しかし‥‥
「‥‥鈴、放ったおけ。あぁなった海里は周りが見えなくなる。‥‥‥それより見てみろ一回戦目から荒れるぞ?」
「え!?」
モニター画面を操作し鈴にも見えるように映し出した。
「‥‥一夏さん達の対戦相手は、箒さんとボーディッヒさんですか。‥‥何事も無ければいいんですが‥‥」
友達を心配し不安になったのかセシリアが俺の手を握ってきた
「大丈夫だ。あの2人ならな‥‥」
「!‥‥そうですわね////」
握って来た手を握り返し、不安がるセシリアに微笑みながら言葉をかけた
いまオレに出来る事は、セシリアと一緒に一夏達を見守る事だけだ。
俺達は手を繋いだまま、アリーナ中央に向かう2人を見つめるのであった。
‥‥‥そして鈴!
呆れた顔をするな!
素直に羨ましいと言ったらどうなんだ!
IS ~八咫烏の導き~
第二十四羽 黒兎
side 三人称
秋奈の予想通り、試合は荒れていた
試合開始と同時に攻勢に打って出る一夏
しかし、対するラウラは今期一番に近い実力を持つドイツ軍のエース
つい最近まで普通の学生だった一夏が考えた戦略など通じることなく苦戦することに‥‥
会場にいるほとんどの生徒ならびに来賓者はラウラの勝利だと確信していたが‥‥
それはタイマンーーー1対1の場合である
ペアと連携を取ろうとしないラウラと一夏の手綱を上手く握って戦うシャルル‥‥
事実上、2対1の構成になった試合ーーー
序盤でシャルルが箒を倒したことにより試合はさらに加速した‥‥
いくらラウラが2人より実力が上でも、数には勝てなく間合いに入る事に成功したシャルルによって追い詰められ‥‥‥
「ああああああああっ!!!!」
突然とラウラが身を裂かんばかりの絶叫の後‥‥‥
ブリュンヒルデの虚像が現れたのであった‥‥
《Valkyrie Trace System》‥‥‥boot.
out三人称
「なんなんですの‥‥あれは!?」
セシリアの驚きの声が室内に響いた‥‥
もっともだ。
今まで追い詰められていたラウラが突如、漆黒の何か《‥‥》に姿を変えたのだから‥‥
ISがその形状を変えるのは『初期操縦者適応』と『形態移行』の2つだけ‥‥
しかし、あれはどちらとも違う‥‥
ならあれは‥‥‥
「‥‥海里、あれはもしかすると?」
「あぁ、VTシステムだ!」
海里は苦虫を潰した表情になる‥‥
IS技術に詳しい海里があそこまで言い切るのだ、間違いないだろう‥‥
「ちょっと、VTシステムってなによ!私達にもおしえなさいよ!」
鈴が説明を求めてくる‥‥
俺は海里に視線を送り、説明をうながす
「VTシステム‥‥正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。過去のモンド・グロッソで成績を残した実力者を真似するくだらねぇシステムだ。」
「「っ!!!」」
2人は息をのんだ。
代表候補生だった山田先生に2対1で負け、実力差を身を持って経験した2人だ。
今、一夏達が対峙しているのはそれよりはるかに凄い実力を持っているのだろう。
『それがどうしたあぁっ!うおおおっ!!』
「ッ!一夏!」
ッ!一夏なにしやがってる!!
何を思ったのか、一夏のやつ、あのISに突撃していった!
一夏の拳が、あのISに触れるその寸前で、一機のISが一夏を引き離した‥‥
‥‥‥箒よくやった!
あのシステムが強力な力を宿しているのに、策なしで突っ込むのは無謀すぎる
‥‥あのISを倒すには、『零落白夜』が一番有効だが、エネルギーが‥‥って!
「鈴!どこに行くつもりだ!」
鈴は待機状態の『甲龍』を握りしめ、部屋を出ようと駆け出していたが‥‥
「凰、ここは行き止まりだ‥‥」
海里の手によって遮れた
「どきなさいよ!一夏が!一夏がピンチなのよ!」
「‥‥いま凰が加勢してどう状況がかわる?‥‥見たところ、そのISは修理は終わっていないだろ?大人しくしてろって!」
「でも!あ、秋奈!あんたからも言ってよ!一夏が!!」
海里が通さないので、俺に助けを求めるか‥‥しかし‥‥
「鈴、それは無理だ‥‥俺もダメージを追った『甲龍』が加勢した所で足手まといになると思う‥‥」
それに海里は、社員ではない‥‥
俺に命令する権利はないしな‥‥
「な、なら!あんたが行ってよ!あんたなら十分に手助け出来るでしょ!?」
‥‥確かに俺なら倒せるかもしれない、だが‥‥
「‥‥それも無理だ。‥‥ただの生徒なら助力出来るが、俺は今、SSS社長として、この場にいる‥‥‥一企業が介入する事は禁じられている」
「そんな‥‥」
鈴は、唇を噛み締め、行き場のない焦りと助けにいけない自分の無力さに手が震えている、が‥‥‥
「鈴さん‥‥大丈夫ですわ‥‥」
セシリアが、震える手を両手で包んだ‥‥
「一夏さんは強いですわ‥‥」
「‥‥‥」
ん?あのケーブルは‥‥‥
あぁ、なるほど‥‥エネルギーの移行か‥
モニターに目を移すとシャルルのリヴァイヴからケーブルが伸び、待機状態の白式に繋がれていた
「一夏さんの強さをあなたが信じないで誰が信じるのですか?あなたが惚れた男でしょ?」
「っ!‥‥うん、私信じるわ!一夏の事を!」
さっきまでしていた暗い顔が、嘘のように晴れその目には強い意志が感じれる
「‥‥なら信じてやれ‥‥決着がつきそうだ‥」
「わかってるわよ!」
鈴は、すぐさまモニターに目を移した
モニターでは黒いISが刀を振り下ろしている
しかし一夏は、その一撃を弾き、頭上から真っ直ぐに相手を断ち切った
『ぎ、ぎ‥‥ガ‥‥』
ジジッ‥‥と紫電が走り、黒いISは真っ二つに割れて‥‥そして消えた‥‥
モニターには、解放されたラウラを抱きかかえる一夏が移しだされているだけだった‥‥
しかし‥‥‥
「ははは‥‥やったわ!一夏やるじゃない!」
「そうですわね!お見事な一撃でしたわ!」
「こうしちゃいられないわ!一夏の所に行って誉めてあげなきゃ!」
「でしたら私も行きますわ!‥‥秋奈さんに海里さんはいかがされますか?」
「いや、俺は少し海里と話があるから後で行く。先に行ってくれ」
「そーゆーことー」
「行くわよセシリア!」
「ちょっと待ってください鈴さん!‥‥先に行きますわね、ではまた」
セシリアは、鈴に急かされ手を引かれながら部屋を出て行った。
‥‥‥‥‥
「‥‥‥ふぅ」
「織斑一夏、だったけか?やるなアイツ!ISに触れて2ヶ月ちょいで、アレを倒すなんてな!」
「一夏がずっと憧れていた人が相手だったからな‥‥どう動くか判ったんだろ」
「だとしても凄い事には変わりない。‥‥‥アイツ『カラドリウス』に乗ってくれないかな?」
「いや、一夏が姉の武器を持ったISを手放す事はないな。‥‥それより『カラドリウス』と『光の尾』との適合率は?」
「ほぼ100%、‥‥なんの問題もない。」
「そうか‥‥」
「おう!やっぱり乗るのは、あの嬢ちゃ『Ppppp‥‥Ppppp‥‥』‥‥悪い。」
一言、詫びを入れ電話に出る海里‥‥
ふむ‥‥
「‥‥‥磯野か?」
「おう!狸狩りが終わって今、調理中だってさ!」
電話を切り、簡潔に内容を伝えた海里
その顔には悪巧みが成功した子供のような笑みがこぼれる
「‥‥なら、俺はシャルルと話してくる。海里は、『カラドリウス』の完成に力を入れてくれ」
「りょ~かい」
6月‥‥イレギュラーが起きた学年別トーナメントが終わり‥‥
世界に新たな風が吹き荒れる‥‥
さぁ~て、シャルルはどこにいるか‥‥‥