「あ、来ましたね。それじゃあどうぞ!一番風呂ですよ!」
「ど、どうも‥‥」
「ごゆっくり~」
幾分テンション高めの山田先生に見送られ脱衣場のドアが閉まる
「‥‥‥」
「‥‥‥」
そして沈黙タイムの到来である。
背中合わせ in 脱衣場
ついさっきまで例の事件の事情聴取を教師陣からされて、なんとかギリギリの所で晩飯にありつけたのだが‥‥
山田先生による朗報によって、この状況だ‥‥
いや、俺も最初は喜んだよ?
久しぶりにデカい風呂に入れるって聞いて!
山田先生が言った『2人で早速お風呂にどうぞ』の言葉を聞くまでは‥‥
‥‥いかん。いかんぞこれは!俺は風呂に入りたい。しかし、流石にシャルルと一緒にと言う訳にはいかない!
なんとかしなくては!
「えーと‥‥シャルル?」
「はっ、はい!?」
‥‥なんで敬語?まぁ、いいや
「シャルルも今日は疲れたろ?風呂入ってこいよ。俺は脱衣場で時間潰してから、頃合いを見て部屋に戻る」
「え!?一緒に入らないの?」
「‥‥‥‥へぇ?」
いやいやいや!何言ってんのシャルルさん!
確かに俺達は、ペア・パートナーだったが、この場で、連携プレーは必要としませんよ!
なんでこんなに大胆なんだよ!
減るぞ!?女子の尊厳が!大いに減るぞ!?
箒じゃないが『恥を知れ!』だ。
「何言ってんだよ!少し考えようぜ?」
「で、でも此処で出て行ったら山田先生に怪しまれるよ?‥‥‥それに一度見られてるし‥‥女は度胸だっけ?この国の言葉だよね?」
いやいやいや!いまその言葉を使うタイミングじゃないから!
‥‥しかし俺は風呂に入りたい!
‥‥覚悟を決めるしかないか!
「よし!シャルル!一緒に入り 「落ち着け馬鹿者!」 あ、秋奈!」
はっ!として秋奈を見た。
やべぇ、俺テンパってたんだな‥‥
秋奈が入ってくるの気付かなかった‥‥
「あ、秋奈!どうして此処に!?」
‥‥テンパってんのは俺だけじゃなかった
シャルルもテンパってたんだな‥‥
「シャルルに話しがあってな。探してたんだが、山田先生に『2人して』風呂に行ったと聞いてな」
いま、『2人して』ってところ強調しやがったな!
「そうなんだ。‥‥それで話しって?」
「狸狩りが終わった。この後、外に出るぞ。外出許可は取ってある。」
狸狩り?‥‥‥あぁ、シャルルを救う策ってやつか!
と言うことはシャルルは‥‥‥自由!?
「やったな!シャルル!自由だ!」
「え!?自由‥‥そっか、自由‥‥」
俺の言った言葉を、『自由』と言う言葉を何回も繰り返しだんだんと顔の表情が笑みへと変わっていく‥‥
その瞳にはうっすらと涙が伺えた‥‥
「ありがとう秋奈!」
「礼を言われるまでもない。‥‥それなりにリスクもあったからな」
「リスク?」
「あぁ、‥‥それは追々話すとして、今はこの状況を打破が先だな」
「「‥‥‥あ」」
やべぇ、忘れてた‥‥
しかし、此処には現代の諸葛亮孔明こと、雑賀秋奈がいる!
見事に東南の風を吹かしてくれよう!
「‥‥‥30分交代だな。合計一時間、男子にしてみれば永風呂だが妥当だろう」
へぇ?
「‥‥‥どうした一夏?」
「いや、もっと画期的な策が出るのかと思って‥‥」
「‥‥一番は、俺達が頃合いを見てでるのがベストだが‥‥‥風呂に入りたいのだろ?」
「あぁ!入りたい!」
俺は食事と風呂ならギリギリで風呂に軍配があがる男だ!
この機会を逃せばデカい風呂に入る夢はまた遠のくのだ!
だから!入りたい!
「即答だな。‥‥シャルルもこれから外出するんだ風呂に入っていたいだろ?」
「う、うん‥‥じ、じゃあ!先に入っていいよ!僕は、これからの事について少し考えたいから!」
「そうか‥‥わるいな」
「なら早く行こうぜ!秋奈!」
久方ぶりの風呂だ!しかも大浴場!いやが上にも気分が昴ぶってきた!
とりあえずシャルルの視線に入らない場所まで移動して、そこから一気に服を脱ぐ!
大浴場はすぐそこだ!
「じゃあ、入ってくる!」
「‥‥‥行ってくる」
「う、うんっ。ごゆっくりっ」
大浴場に入る前にシャルルに声をかけたのだが、何故だかおっかなびっくりの返事が、返ってきた。なにかイタズラでもしていたのだろうか?ーーーそりゃないか。
くだらない事を考えながらも理想郷へと繋がるドアを開いた
「うおー!!!」
「‥‥なかなかのもんだな」
広い!とにかく広い!
大浴場は湯船大が一つにジェットとバブルのついた湯船中が二つ、加えて桧風呂が一つ。
さらにはサウナ、全方位シャワー、打たせ滝までついている!
なんという充実の設備!これは『なかなかのもんだな』ところじゃないぞ!秋奈!
「‥‥とりあえず体を流してからだ」
「あぁ!そうだな!わはははは!」
大声を出しても平気!
秋奈から痛い目で見られたが気にしないぜ!
俺は全身を洗い、待望の湯船大へと身を沈めた
「ふううぅぅぅ~~~‥‥」
「‥‥少し熱いな」
あぁ、この全身に広がる安堵感。
疲労と体の凝りが溶けていく脱力感。
熱気が連れてくる心地よい圧迫感&疲労感。
つまり‥‥‥‥
「あ~‥‥生き返る~‥‥」
る~‥‥る~‥‥る~‥‥
流石は大浴場!
エコーも大変美しい!これは花丸20点をあげなくては!
あー‥‥このまま眠りたい‥‥
カラカラカラ‥‥
「‥‥一夏、何か聞こえなかったか?」
「う~ん?脱衣場の扉が開く音じゃね?」
「っ!なんだと!」
なにをそんなに焦ってんだ秋奈?
風呂場なんだから脱衣場の扉が開いても可笑しくないだろ?
‥‥‥ん?いま脱衣場にいるのって確か‥‥
「お、お邪魔します‥‥」
「「!?」」
半ば沈みかかった意識が急速に覚めた!
湯気の向こうから現れたのは、タオルを当てたシャルルだった!
と言うか薄手のタオルだからくっきりと見えるぅぅぅ!
「な、なっ、なぁっ!?」
「‥‥あ、あんまり見ないで。一夏のえっち‥‥」
「! す、すまん!」
ああああ、なんで俺は謝っているんだ!?
ーーーわからん!わからんが、謝ろう!
そしてすぐさま回れ右だ!
「ど、ど、どうした?どうしてここに?もう30分たったのか!?いや、まだ5分位しかたっていないはず!ーーーなぜにどうして、やってきたよシャルルさん!」
ああ、いかん!混乱している!
自分でもわかっているんだが、収まりようない!
つうか、この事態はどう収拾するんだ?
いや、待て!ここには、諸葛亮孔明がいる!
この事態をうまく片付けてくれるはず!
俺は、希望に満ちた眼差しを秋奈に向けたが‥‥‥
「セシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんーーー」
そこには、壊れた玩具のように同じ事を繰り返す秋奈がいた。
ーーーええい、怖いわ!
しかし、自分より焦ってる奴を見ると自身は冷静になるって本当だな。
OK、落ち着いてきた
「‥‥んで、どうして来たんだシャルル?」
「そ、その、2人に話があるんだ。大事なことだから、2人に聞いて欲しかったんだけど、秋奈に悪いことしちゃったみたいだね?」
後ろを向いているからわからないが、多分シャルルのやつ悪いと思ってないな
「話があるらしいぞ秋奈?大丈夫か?」
「セシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアごめんセシリアーーー」
こりゃダメだな……仕方ない
「‥‥秋奈は無理そうだから俺だけでいいか?」
「そ、そうだね」
そう言いながら、お湯に浸かるシャルル
もちろん、背中合わせだからな!
そしてシャルルの言葉に耳を傾けた。
「その前に言っていたこと、なんだけど」
「前って言うと‥‥もしかして学園に残るって話か?」
「そ、そう。それ。」
ん?でもこの話は秋奈が来る前に話していた事だよな?
秋奈には関係ないんじゃ……
「僕ね、全て一からやり直してみようと思うんだ。秋奈が僕の居場所を作ってくれたし、一夏が僕に勇気をくれた。2人の親友と一緒に此処にいたいと本当に思ったんだ。だから‥‥」
「だから?」
「本当にありがとう!2人に何か起きた時、僕は全てをかけて2人を助けるよ!」
シャルルの感謝の言葉‥‥
言葉にすると短いけど、その想いは強く伝わってきた
「ありがとうなシャルル!俺もお前に何かあったら全力で助けるぜ!」
「‥‥シャルル、お前はもうSSSの仲間なんだ。八咫烏の加護のもと、お前を全力で守ってやる」
‥‥‥いつの間にか復活したんだな秋奈
と言うか加護とかじゃなく素直に友達だからって言えばいいのにな。
「‥‥さて、俺はあがるぞ?」
「もういいのかよ?」
「俺は長湯するタイプではない。‥‥それに此処にはシャルルがいる。俺は早くこの悪夢から離脱したいんだ」
「あ、悪夢って‥‥‥」
シャルルのやつ、少なからずショックを受けているぞ?
異性と風呂に入るのって悪夢なのか?
普通は善夢の感じがするんだけどな
「校門に磯野が待っている。先に行くからしっかり温まってから来てくれ。‥‥行くぞ一夏」
「え?あ、そうだな」
大浴場は名残惜しいが、さすがに異性と風呂に入るのはよくないよな
俺は秋奈に続き、脱衣場へ向かい風呂場を出たのであった‥‥
それから部屋に帰って寛いでいたが、シャルルから『先に寝てて』とメールがあることに気付き、今日の疲れも後押しして、すぐに眠りについた。
‥‥‥しかし、秋奈が去り際に言った『明日はニュースを見ない事をオススメする』って何のことなんだろう
‥‥まぁいい、もう寝よう‥‥おやすみ‥‥
IS ~八咫烏の導き~
第二十五羽 新たな一歩
翌朝。朝のホームルームには秋奈とシャルルの姿がなかった。
秋奈が昨日言っていた事が関係しているのか?
一度ぐるりと教室を見渡すと、2人以外にラウラもいなかったが、これはまぁ昨日の負傷で休んでいるんだろう。
「あっ!織斑くん!雑賀くんとデュノアくん知らない!?」
慌てて教室に入ってきたのは確か‥‥
「黛先輩?‥‥2人とも今日は見てないですけど?」
「やっぱり、学校に来れないか~‥‥特ダネが書けると思ったのに!」
やっぱり?特ダネ?何の事やら?
「えーと‥黛先輩、特ダネってなんですか?」
「えぇ!織斑くんニュース見てないの!?」
「はい」
秋奈が見るなって言ってたからな
俺は朝からテレビを見てないぜ
「SSSがデュノア社を買収したんだよ!」
「はぁ!?」
どういう事だ!?
確かにデュノア社を潰せばシャルルは自由だが、結婚とか委員会とか黙っていないんじゃないか!?
いや、秋奈には関係無いのか?
‥‥‥だぁ~~!意味がわからん!
「み、みなさん、おはようございます‥‥‥」
頭が混乱しているなか、山田先生がフラフラと教室に入ってきた。
朝からどんなダメージを受けたのだろうか
「今日は、ですね‥‥みなさんに転校生を紹介します。転校生といいますか、すでに紹介は済んでいるといいますか、ええと‥‥」
なにやら山田先生の説明はよくわからないが‥‥何?転校生?
今月は2人も転校生が来ているのに、それにまだ来ると言うのだろうか。なにがどうなっているんだ?
「じゃあ、入ってください」
「失礼します」
ガラガラと教室のドアが開くーー
ん?この声ってーーー
「SSS専属パイロットのシャルロット・ヴァーミリオンです。皆さん、改めてよろしくお願いします」
ぺこり、スカート姿のシャルルが礼をする。
ん?ヴァーミリオン?SSS専属?
どういうこっちゃ?
「ええと、デュノア君は養子になってヴァーミリオンさんになりました。と言うことです。性転換じゃないですからね!‥‥はぁぁ、また寮の部屋割り組み直す作業がはじまります‥‥」
なるほど、山田先生の憂いはそこにあったのか。
‥‥‥て、ま・て・よ?
「え?デュノア君って女‥‥‥?」
「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったわけね」
「って、織斑君、同室だから知らないってことはーーー」
「ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場使ったわよね!?」 ピクッ!
ザワザワと教室が一斉に喧噪に包まれ、それはあっという間に溢れかえった。
ーーーあ。まずい。まずい気がする。
その後の俺は語る‥‥‥
その後、俺は鈴に殺されかけたり、ラウラにキスされたり、鈴に殺されかけたり、教室を出て行くセシリアを見送ったり、箒に日本刀を突き立てられたり、シャルルに見捨てられたりされた。
うん。
1つ言える事は‥‥‥空は青かった。
out 一夏
時は数分戻り‥‥‥
ふぅ‥‥‥また徹夜だった
「随分と派手に動いたな雑賀?」
転校生としたてシャルルを紹介する為、一応遅刻扱いの俺は廊下で待っていた
眠いし、教室は煩い……マジで休みたいと思っていた……織斑先生に捕まるまでは‥‥
はぁ~‥‥‥
「‥‥派手にとは?企業の合併・吸収はよくあることですよ?」
「よく言う。‥‥1人の人間の為に社会が大きく動いたのだぞ?‥‥フランス政府もよく手放したモノだ」
あ、鈴が……
「‥‥デュノア社は確かにフランス政府と手を組んでいましたが、今回の性別偽装ならびに今までのデュノア社の不正、コレを隠蔽するには余りにもデメリットが多すぎる。なら手放しSSSと手を組んだ方がよいと判断したのでしょう」
「‥‥政府に見捨てられたか。しかしデュノ‥‥ヴァーミリオンはSSSの専属操縦士になったのだろ?政府がやすやすと代表候補生を手放すとは思えないが‥‥」
「‥‥シャルルは、性別偽装の張本人ですし委員会が煩く言うのは目に見えています。委員会の圧力に屈しないSSSにやった方が色々と隠しやすいですよ‥‥‥まぁ、リヴァイブは回収されましたが‥‥‥」
「蓄積データの回収か‥‥だがヴァーミリオンにやるのだろ?新しい翼を‥‥」
ん?今度はラウラか‥‥
「‥‥情報速いですね。と言うか極秘事項ですよ。‥‥マザーの差し金ですか?」
「アイツは関係ない。‥‥SSSは一企業の存在でコアを3つ保持しているからな。‥‥‥推測だ」
なるほど‥‥
確かにSSSはコアを3つ持っている
『ヤタガラス』にシャルルの新しい翼『治病鳥』、開発中の『剣鳥』
‥‥さすがに『剣鳥』までは推測はつかないだろう
あぁ‥‥そう言えば‥‥
「マザーで思い出したのですが‥‥ラウラのISに搭載されていたVTシステムの出所がわかりましたよ」
「ッ!本当か!?」
「えぇ‥‥ドイツもうまく隠していた様でしたが‥‥」
「それでどこにあるんだ!?」
「‥‥今はどこにもありませんよ」
「‥‥どういう事だ?」
「つい数時間前に何者かによって爆破されたと報告がありました‥‥‥私の推測ではマザーのかの 「もういい」 ‥‥そうですか」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
ガシャァァァン!!!
2人の間には沈黙が生まれたが、教室ではガラスの割れる音が生まれた
「ふぅ‥‥」
その破壊音を聞いたのにも関わらず織斑先生は教室とは反対の方向に歩み始めた
「‥‥どちらに?」
「‥‥少し用事ができた。山田先生には遅れると言っておいてくれ」
「わかりました」
そう言い残し、織斑先生は去っていった
用事‥‥‥
‥‥マザーへの確認の連絡だな
国家指名手配犯の連絡先を大開に公開しないのはブリュンフルデがなせることか‥‥‥
‥‥‥とりあえず
「俺に出来る事は終わったな‥‥‥残る目的は亡国だけ、か‥‥」
「まだ終わってなくてよ秋奈さん?」
俺の独り言に返答を返したのは‥‥
俺の愛しき人‥‥つまり‥‥
「セシリ」
あ、?
振り返った先には般若がいた
いや、違う!
般若だがセシリアだ!
いかにも怒ってますオーラ全開のセシリアだ!
なぜ!?なぜ!?怒っていらっしゃるのでしょうか!
「‥‥昨日、シャルルさんと混浴したそうですわね?」
「?」
混浴?まさか!?
「いや、あれは不可抗力で!」
「私と言う者がいると言うのに!しかもシャルルさんの正体に気付いていたと言うのに!私も秋奈さんと入りたかったのに!秋奈さんは裏切らないと思っていたのに!秋奈さんは紳士だと思っていたのに!秋奈さんはーーー」
ヤバい!聞き耳持たずだ!
「あ、あれには深い訳があってですねーーー」
その後、俺は語る‥‥
あの後、俺は、あの状況の説明を何度もしたが、惚れた弱みなのか結局俺が折れ、セシリアに誤り続けた
それは織斑先生が帰ってくるまで続いたのであった‥‥
はぁ~‥‥空が青いなぁ~・・・