IS~八咫烏の導き~   作:誤字脱字

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お盆中に終わらす事ができてよかったです

とりあえず秋奈おめでとう!


三十六羽

「一夏っ、一夏なのだな!?体は傷は……」

「おう。またせたな」

 

慌てて声を詰まらせる箒の元へ飛んでいく一夏を横目に俺も自身が最も愛する人物の元へと飛んでいった

 

「セシリア、待たせた」

「ふふふ、レディを待たせるのはマナー違反ですわよ?」

 

海に突き出る岩礁に横たわるセシリア、〈ブルー・ティアーズ〉の損傷具合からどれだけ激しい戦闘が行われていたのか容易に想像でき、助けに行けなかった自分に対し苛立ちを覚えてしまう

 

「すまない・・・遅れた礼とは言わないがオイタを働いた奴を懲らしめてくる」

「そうですわね……それと秋奈さん」

「ん?」

 

自身の無力さを嘆くのは後で出来る!と込み上げてくる感情を制御し、いざ福音に向かおうと機体を返したが、セシリアに呼び止められた

 

福音は一夏の攻撃に思うように体勢を整えられていない処を見るとまだ時間はあるな

警戒を怠らないまま、顔だけをセシリアの方へ向ける

セシリアは涙を零しながら安堵した様に笑いながら……

 

「ご無事で良かったですわ」

 

と声をかけてきてくれた。

……なんだろうな、今のセシリアの言葉のおかげで込み上げていた激情がストンっと落ち着き、思考が前よりクリアになった気がする

これが、彼女(セシリア)の力だと言われれば俺は迷わずにYESと答える事が出来る!

 

「あぁ、心配かけた。……鈴達を頼む」

「はい……」

 

セシリアと言葉を交わすのが名残惜しいが、相手は待ってくれないだろう、それに一夏の方も準備は良いようだ

 

箒と何か言葉を交わしていた一夏は箒に離れているように伝えると福音に〈雪片二式〉を構えていた

俺も〈ベルヴェルク〉を呼び出し一夏の横に並び立った

 

「さて、現状を確認しようか……目視してわかるように相手は第二形態移行(セカンド・シフト)により戦闘能力が上昇している。ブースターにも変化が見られる処を見ると…第一形態の時よりは凡そ2.5倍は強くなっているだろうな」

「2.5倍って……大丈夫なのか?」

「ふ…所詮、1の力が2.5になっただけだ。それに前回と違うのは相手だけじゃないだろ?」

「違いない!」

 

一夏の掛け声を気に戦いの火蓋はおろされた

〈雪片二式〉を構え福音へ目掛けて振り下ろすが、それをひらりとのけぞってかわす福音。

白式が第二形態移行(セカンド・シフト)して追加された左手の新兵器〈雪羅〉の特徴は事前に一夏から聞かされていたが、エネルギー消費がデカイらしい、利便性が高い武器だとは思うが敵の戦力が未確定の中、無駄なエネルギーの消費は避けたい……なら俺のする事は!

 

「一夏!」

「っ!おう!」

 

―――ダンッ!ダンッ!

 

太刀を避けられ、隙が生まれた一夏に追撃を仕掛ける福音に対し俺は二つの弾丸を撃ち放つ

一夏に伸ばされた両腕を穴に糸を通す程の的確さで打ち抜き、両腕を無効化する

 

「逃がさねぇ!」

 

両腕を無効化されガラ空となった腹部に一閃――一夏の一撃は確実に福音の装甲を切り裂き大きなダメージを与える事に成功する

 

『敵機の情報を更新。攻撃レベルAで対処する』

 

吹き飛ばされながらもエネルギー翼を大きく広げ、さらに胴体から生えた翼を伸ばす。そして海面ギリギリに停止するやいなや、掃射反撃が始まった

 

広範囲にバラ撒かれるエネルギー弾雨に対し俺は機動力が増した八咫烏の力を信頼し空を駆け、一夏は雪羅をシールドモードへ切り替え、その場で光の膜を広げ福音の弾雨を尽く無効化していった

 

「アレは…〈光の尾(リュミエール・クー)〉?……篠ノ之博士、また我々の先を行くか」

 

SSSが年単位で完成まで扱ぎ付けた『ナノマシンによるエネルギーの相殺』をこうも簡単に実現させる博士に軽く嫉妬してしまう

それだけではない、〈カラドリウス〉の最終体系である『ISによる人体治癒』まで実現させられた………ホントに厄介な存在だ

 

「…一人の人間が世界に多大な影響を与えていると言うのに世界は何もッ!っと、嫉みを言っている場合じゃないか」

 

今までバカみたいにエネルギー弾を撃ち続けていた福音は、それまでしならせていた翼を自身へと巻きつけはじめ、繭のような球状になるや一転、回転しながら一斉に翼を開き、全方位に嵐のようなエネルギー弾雨を降らせた

 

「秋奈ッ!」

「わかっている!」

 

全方位といっても狙って打ち出している訳ではない!

ならセシリア達に当たるモノだけ処理すればいいと言う事だ!

 

「5人の護衛……数には数で勝負か!コード・世界蛇!」

 

言語認証が術式の解放を承認し、ベルヴェルグが光に包まれ二つの光が一つとなる!

それに従い、八咫烏の放熱システムである背中の翼が強く輝き始めるが、以前の様な異常な熱量は感じられない

 

生物じみた翼が穂先まで淡い光に包まれた瞬間、手に納まるベルヴェルクは姿を変え、両手で持たなくては支えられない程、大きなガトリング砲に姿を変えた

 

「ターゲットロック!術式始動!『ヨルムンガンド』ッ!」

 

銃口から放たれる弾雨、それは福音の弾雨に劣っているが確実に被害が及ぶモノだけを打ち落としていった

弾雨と弾雨がぶつかり合うたびに激しい光と音を作り上げる

 

「流石だ!秋奈!」

「口を動かす前に手を動かせ!留まっている今がチャンスだ!」

「おう!決めて「一夏!」箒!?お前、ダメージは――」

「大丈夫だ!それよりも、これを受け取れ!」

 

箒の――〈紅椿〉の手が一夏の白式へと触れた瞬間、二人を包むように淡い光が走った

 

「な、なんだ……?エネルギーが回復!?箒、これは……」

「だから手を動かせ!箒ッ!いけるな?」

「ッ!あきな……あぁ!行けるぞ!」

 

どういう心境の変化かは知らないが、今の箒は戦力に加えてなんの問題はないだろう。奇しくも状況はあの時と同じ……ならやることも同じだ!

あの時はイレギュラーが起こり中断してしまった作戦だが今は違う!

 

「セシリア達への攻撃は俺が対処する!箒は一夏を弾雨から守れ!一夏ッ!お前は決めろ!」

「おう!」「あぁ!」

 

激しさを増すエネルギーの弾雨を白と紅は一閃の光となって切り裂いていき、そして……

 

「おおおおおおお!」

 

エネルギー刃特有の光が福音を突き立てたのであった

それに伴い、福音が纏っていたエネルギーの翼は光を失い、動きを停止しアーマーが解除され、ISスーツだけの状態になった操縦者は海へと墜ちていく

 

「しまっ―――」

「ツメが甘いぞ、一夏」

 

思わぬ緊急事態に一仕事とげて気を抜いていた一夏は、慌てて操縦者のもとへブースターに火を灯そうとしていたが、黒い閃光が走り操縦者を確保していた

 

「すまん、秋奈。……でも、終わったな」

「あぁ、やっとな…」

 

あれほどまでの青さを誇っていた空はもうすでになく、夕闇の朱色に世界は優しく包まれていたのであった

 

 

 

 

 

IS ~八咫烏の導き~

 

第三十六羽 八咫烏が鳴く頃に

 

 

 

 

 

戦士たちの帰還は、それはそれは冷たいものであり、慌ただしいものであった

織斑先生の30分にも及ぶ説教から始まり山田先生から万が一の為のメディカルチェック、海舟の男泣き、ノエルさんのシャルロットへの過剰な過保護、海里からの福音との戦闘データの要求、作戦の成功報酬である各自への10万$の報酬金の配布及びSSSへの1000万$の寄付金の手続きと……正直、猫の手を借りたい程、忙しく全てが終わった頃には日が真上まで昇っていた

 

窓から照り付けてくる陽気と夜明けの戦闘の疲労感、そして今回の書類整理のトリプルコンボに俺の意識は完全にブラックアウトし布団が優しく俺の体を抱きしめたのであった

 

 

 

 

「…さん…なさん」

「…んん……せしり、あ?」

 

目に掛かった髪を払いながら頭を撫でてくれる手の暖かさと、覚えのある愛おしい声に意識が覚醒する前に隣に座る人物を特定する事ができた

 

「はい、秋奈さん。お夕食の時間になっても降りて来ないものでしたのでお呼びにまいりました」

「ん……ありがとう。だが、どうも食力がわかない」

 

なんだか胃がキリキリと痛む、この状況では無理に胃の中に食べ物を詰めるのはキツイな

 

「だと思いましたわ。今の秋奈さん、仕事明けと同じ顔をしてますわ…仲居さんに頼みまして軽く摘めるモノを作っていただきましたわ」

「セシリアぁ…」

 

あぁ、どうやら俺の彼女は女神だったようだ

目を横に移せば膝の隣にパックに詰められたおにぎりが置かれていた、魔法瓶も置かれているので中身は相性的に味噌汁であろう

 

「お部屋で食べてもよろしいと思いますが……少し外を歩きませんか?」

「あぁ…俺も少し体を動かしたかったところだ」

 

はい、嘘です

体はまだダルく動かすのも気が引けるが、彼女からのデートのお誘いを断るほど俺は腐ってはいない

 

包容力が強い布団の魔力を気合でねじ伏せ、先生の目を掻い潜りながらセシリアと共に旅館を抜け出した

満月の今日は、真夜中であっても明るく、昨夜の戦闘が嘘に感じるほどに穏やかな波の音が砂浜一辺に優しく響いていた

 

「秋奈さん、どうぞ」

「ありがとう、セシリア」

 

海と岩場を見渡せるベンチに腰を下ろしセシリアから味噌汁を受け取って一飲み、真夏だが夜になると冷え込むので味噌汁の温かさを味わいながらまた一飲み味わった

 

「今回は……色々ありましたわね」

「色々、か……」

 

確かに色々とあった

指名手配犯の篠ノ之博士の出現、第四世代型紅椿の登場、第三世代型軍事用IS『銀の福音』の暴走、一夏の白式の第二形態移行……そして俺の八咫烏の第二形態移行

 

八咫烏は兎も角、残りの出来事は全て世界を震撼させる出来事であった

まったく、それもこれも全て篠ノ之博士が起こしたと言うのがなおさらたちが悪い

貴女の妹はこれ程の事をしなくては目立たないと自分で首を絞めているようではないか

 

「でも、無事にみんな帰還出来た」

「そうですわね……この子の損傷も軽微で良かったですわ」

 

そう言ってセシリアは耳にかけたイヤリング(ブルー・ティアーズ)を撫でる

その姿が月夜も相まってとても美しく、ただ見惚れてしまった――手に持った味噌汁を忘れるぐらいに……

 

「熱!!」

「秋奈さん!」

 

魔法瓶で保温されていた味噌汁は高温で熱く、ちょうど火傷を負っていた箇所にこぼしてしまった為、普段はやらないようなオーバーリアクションで驚いてしまった

 

不運は続く、いやこの場合は幸運か?

宙に浮いた味噌汁を掴もうとするセシリアと味噌汁の中身がセシリアに当たるのを体で庇おうとした俺は重なり合うようにベンチに倒れこんだ

 

―――からん…

 

「「…………」」

 

魔法瓶の蓋が地に落ち軽い金属音を鳴らしながら転がるが、知った事ない

俺はセシリアに覆い被さるようにして倒れこんでしまったのだ

 

「「…………」」

 

夜ということで顔色はわかりづらかったが、吐息がかかる程近づけば相手の表情なんて手に取るようにわかった

お互いに無言で、目と目だけが重なり合う……うっすらと滲む汗が色気を醸し出しセシリアを抱けと俺の理性を崩しに掛かってきていた

 

「ん……」

「ッ!」

 

体勢の悪さとベンチの凹凸に当たり所が悪かったようで、セシリアは軽く声を漏らしながら表情を歪めた

 

………その表情が俺の理性を崩した

 

「…俺は我慢弱い人間のようだ」

「え?」

「セシリア、約束は覚えているか?」

「約束?………あ」

 

そうセシリアと交わした約束

『俺が無事に帰還できたらキスをしたい』と言うモノ……

今更ではあるが、付き合って3ヶ月経つというのに俺たちは『キス』をしていない、なぜか知らないが、いつも寸前のところで邪魔が入ってしまうのだ

 

「いま…この場でいいますか?」

「あぁ、俺はいまセシリアがほしい」

 

ストレートな口説き文句にセシリアは顔をさらに赤くさせたが、コクリっと頷くと目を瞑り『キス』がし易いように軽く口を突き出した

 

俺はゆっくりと口を近づけ目を瞑りセシリアの口に―――

 

「死ねぇぇぇ!一夏!」

「嫁の教育は亭主の務めだな!」

「ちょっ!まって一夏!」

「ちくしょぉぉぉぉぉぉ!」

 

……岩場の方から聞きなれた声と銃声が鳴り響いた

 

「……また一夏さん達ですか」

「……あぁ」

 

毎度の様に人の邪魔ばかりする奴だ。折角ロマンチックに演出したと言うのに!

 

 

 

…だからと言って、今回は止まる必要はない!なぜなら今の俺は我慢弱いのだから!

 

「いつもいつも少しは周りに――!?」

 

少し強引であったが、一夏達を眺めていたセシリアの顔を正面に向けて口を合わせた

最初は触れるだけ…いきなり唇を奪ってしまった事への罪悪感から手加減をしたのだが、直ぐにセシリアも俺を求めるように唇を舐め始めたので口を軽く開け互いに舌を絡めあった

 

「ん―――んんっ―――」

「ッ!―――」

 

『キス』の合間に漏れるセシリアの吐息が更に俺の理性を焦がし激しくセシリアを求めた

 

時間にしては1,2分だろうか?互いが十分にお互いを求め合い、むさぼりあい、口を離すと互いの口を繋ぐ糸が垂れる

 

いつまでもこうしていたかったが、旅館の方から織斑先生の声が聞こえたのでここが、タイムリミットと理解し、いまだに暴れ狂う欲望を再構築した理性で押さえつけセシリアをベンチから起こしあげた

 

セシリアはと言うと顔をトマトの様に赤く染めながら浴衣の裾から取り出したハンカチで口元を拭いていた

 

「………少し強引だったか?」

「……えぇ、強引でした。でも――」

 

拭いていたハンカチに口付けを交わすとそのまま俺の口に当てて…

 

「ファーストキスは情熱的に……母からの教えですわ」

 

微笑みながらそう言ってハンカチを離し、頬に触れるだけの『キス』をしてくれた

 

「行きましょう、秋奈さん」

「……あぁ、いこうセシリア」

 

差し出された手を取り、絡ませながら俺たちは旅館へと足を向けるのであった

 

 

 

 

出会い、悲しみ、そして発展……巡りに巡って荒れた臨海学校は最終的には最愛の人と愛を確かめ合って終わりを告げたのであった

 




次回から夏休みに入ります
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