クロスアンジュ・ネギま・ログホラの執筆が空中分離しており更新が遅くなりました
すみませんでした
ラウラの夏休み
『―――と言う訳なんだ、わりぃな、ラウラ』
「嫁の儘を聞いてやるのは亭主の務めだ。気にするな」
『亭主って・・・じゃあ、明日も早いからおやすみ』
「ああ、おやすみ」
――うむ、一夏は人気になったものだ。私も鼻が高いぞ
しかし、いつも我が儘を聞いてはいられないな、亭主としてよりレベルの高い『亭主関白』に私はならなければならないのだからな!
携帯電話を机の上に置き、机からナイフを取り出すと砥石で研ぎ始める
夕日で赤く染まった室内に、シュッシュっと刃物を研ぐ音だけが鳴り響く……そこに人が倒れていれば殺人現場と勘違いしそうな光景を醸し出していた
「ただいま~って怖!?」
「む、シャルロットか・・・実家に帰っているのではなかったのか?」
シュッと機械音を鳴らし扉が開くと、本来なら居るはずのないルームメイトの声が聞こえラウラは疑問に思った事を素直に尋ねていた
「うん、荷物を取りに来たんだ。駐車場でお姉ちゃんが待ってるよ……ラウラどうかしたの?ナイフなんて研いで?」
「ふむ、嫁に相応しい亭主になるべく『亭主関白』になる為、獲物と共に精神を研ぎ澄ましているのだ」
「う~ん…ラウラ『亭主関白』の意味、わかってる?」
「普通の亭主より格の高い亭主の事だ!クラリッサが言っていた」
「はは、はぁ~……意味違うよ、それでお嫁さんはなんて?」
「む、嫁はISの試験が入ったと言って私の誘いを断った。まぁ、浮気ではないのがわかっただけでも収穫だ」
「浮気って…」
シャルロットはタメ息をこぼしながら携帯電話を開くと何かを確認しラウラに話しかける
「……ラウラ、明日って用事ある?」
「ない。嫁と出かける予定だったからな」
「う~ん、なら実家に泊まりに来ない?」
「・・・泊まりに?」
満面の笑みを浮かべるシャルロットとは対照的にラウラは困惑して首を傾げるのであった
IS ~八咫烏の導き~
ラウラの夏休み
「―――ら、お――」
………
「――ら――ウラ」
…知らない空気、慣れない寝具、いつもとどこか違う………拉致?いや、日本において拉致はない。しかし、どちらにせよ、寝首を狩られる訳にはいかない
ラウラは太ももに装備したナイフが没収されていない事を確認すると同時に自分に声をかける存在に飛び掛り、その首筋にナイフを当てた
「あ、あの~…ラウラ、寝ボケてる?」
「う……?」
ペチペチっと私の頬を叩きながら声をかける人物は…
「…シャル、ロット?」
「うん、おはよう。ご飯作っちゃうから放してくれないかな?」
「あ、ああ……すまない」
頚動脈にあてていたナイフをどけ、そのままシャルロットの上から、ベッドからも離れる
オレンジ色のベッドシート、女子が好みそうな小物や家具が置かれた部屋をラウラは一通り見渡し自分がIS学園ではなくシャルロットの家に泊まりに来ている事をようやく理解した
「ん、別にいいよ。海里と付き合っているとよっぽどの事がない限りでは驚かなくなってきちゃったから」
シャルロットは苦笑いを浮かべながらベッドから抜け出し、本当に気にしていないとばかりにパジャマの上からオレンジ色のエプロンをかけて身嗜みを整え始めた
――一般人ならナイフを向けられたら驚くと言うのにシャルロットは恐れる事無く、私の頬を叩き意識を覚醒させる事を優先するか…非常識だな
いや、非常識は私の方だ。軍人としては間違ってはいないが、一学生としては大きく逸脱している……そんな私と友人として付き合ってくれるシャルロットに刃物を向けるなど……どうにかしている
「・・・シャルロットが朝食を作っているのか?」
ふぅ、とタメ息を漏らし落ち込んだ気持ちを切り替える為にも、シャルロットに話題を振る事にした
「うん、お姉ちゃんはセシリア以上に料理が『アレ』だから・・・初めて食べた日には一日中寝て過ごす事になったよ」
私と同じようにタメ息を漏らし何処か遠くを見つめるシャルロットの背中には哀愁を纏っていた
それからなのであろう、シャルロットがヴァーミリオン家の台所を管理し始めたのは…
そんなシャルロットの気持ちを知るはずのないラウラは、何か思考顔をして顎に手を添えた後、予想外な言葉を口にした
「シャルロット、私も一品作るぞ」
「え!?ラウラって料理できたの?」
シャルロットの驚きはごく当然のことであり、料理と言う娯楽を軍人であるラウラがしているとは思わなかったのだ
「うむ、訓練中の夜食など手掛けた事はある。それに毎日嫁にミソスープを作るモノだ、とクラリッサが言っていたしな!シャルロット、ミソスープは私が作ろう!」
「えっと…今日はパンだけど?」
「スープはパンと相性がいい。問題ない」
「・・・まぁいいか。でも服は着てきてね?」
どこかずれた事を言うラウラに味噌汁を作る事を止めさせる事が出来ないと理解したのか、シャルロットは諦め身嗜みを整えるようにラウラに伝えたのであった
◆
「へぇ~、二人で買い物か~・・・いいな~」
トーストにスクランブルエッグ、サラダと言う洋食が並んでいる中、具無しの味噌汁と言う場違いな料理が並ぶ奇妙な食卓を向かえ、二人が料理を終えた頃に起きてきたノエルを含めラウラは、3人で朝食を取っていた
「お姉ちゃん、次のお休みは?」
「来週の日曜ですね、その時は私も行きます!」
「うん、楽しみにしているね」
傍から見れば姉妹の微笑ましい会話だが二人の、特にノエルの顔は引きつっていた
原因は一目瞭然であった。ラウラがノエルの事を、味噌汁を無言で啜りながらジッと見つめているのだ
「…ええっと、ラウラちゃん、なにかな?」
そんな雰囲気に耐えることが出来なかったノエルは堪らずラウラに事の真相を聞こうと話しかける
「・・・間違いであったらすまない、貴女は軍にいた経験は?」
「へぇ?一応ありますよ?これでもエリートだったんですから」
胸を張って威張るように自慢するノエルにシャルロットはニヤ付きながらトーストを口にした
「へぇ~、お姉ちゃん軍人だったんだ……そんな風には見えないね」
「あっ!ひど~い!これでもシュテルンに所属していたんですからね!」
「シュテルン?・・・ドイツ語で『星』って意味――ガタン!――どうしたのラウラ!?」
ラウラはシャルロットの言葉を遮り、椅子を倒しながらも直立でノエルに敬礼をしていたのだ
「やはり貴女でしたか!御会い出来て光栄であります!ヴァーミリオン大佐!」
確信を得たとばかりに、直立の敬礼を辞めないラウラに対しヴァ―ミリオン姉妹は目を大きく見開いて驚きを表した
「……え?」
「……どうしたの、ラウラ!?」
「む?上官に礼儀を尽くすのは当たり前だ。ノエル・ヴァーミリオン大佐、シュテルン・ベルン州警察特別部隊に所属し後にSSIMCスイス特殊IS対策部隊初代隊長を勤めた実績がある上官だ」
ラウラの口から流れ出る軍隊の名前に心当たりのないシャルロットはラウラの言っている意味が半分も理解する事が出来なかったが、凄い部隊と言うことはラウラの態度から察する事が出来た
しかし、ラウラがそこまで敬意を表す部隊に義姉が所属していたとは思えなく疑う視線を送りながら本人に尋ねた
「……お姉ちゃん、本当?」
「……事実です。でも、軍職に詳しいですね~?」
「ラウラは現役の軍人だから」
「それだけではない!我が母国ドイツとスイスは協定を結んでいるからな!大佐、自分はブラックラビット所属ラウラ・ボーデウィッヒ少佐であります!お会いできて光栄であります!」
なおも続く、ラウラの態度にノエルは事態の改善を図るべく口を開いた
「BR…でもラウラちゃん?私がSSIMCにいたのは一週間たらずでSSSの入社を阻止しようとした政府が勝手に縛り付けただけの肩書き…実務経験はありませんよ?」
「しかし名高いSSIMCの初代体長に就任した事実はかわりません!」
だが、失敗に終わりラウラの態度は変わる所か更に厳しくなっていった
これから仕事に出かけ、一日頑張れるように愛する妹とその友達で癒されようと思っていたノエルにとって今回の朝食は軍に所属していた頃の思い出を感じさせ。逆に気分がまいいってしまう話題……今日一日を気分よく過ごす為にノエルは自身に枷るていた封印を解く事を決めたのであった
「はぁ~、クラリッサはどういう教育をしたのよ。・・・ラウラ・ボーディッヒ少佐!」
どこか諦めた面持ちでノエルは姿勢を直し、いつもとは違う厳しい口調でラウラに語りかける
「ッ!ハッ!」
「お、お姉ちゃん!?」
義姉の豹変ふりに驚き、シャルロットはラウラと同じ様に姿勢を正してしまった
「貴官の上官に対する儀礼、軍人としては敬意に値する」
「ハッ!ありがとうご 「しかし!」 ッ!」
「今この場においては上官である私に対する侮辱だと気づいていないのか!」
「ッ!ですが!「返事はどうした!」 マム!イエスマム!」
いつもほんわかとして誰にでも優しい義姉の態度に本当に軍に所属していたのか半信半疑であったシャルロットであったが確信した。自分も元フランス代表候補生、フランス軍人とは少なからず対する事があり、義姉が醸し出す雰囲気は対峙した軍人と全く同じであることを。その事に対し、義姉の過去をしれて嬉しい反面、本当の…自分に対する義姉が偽物なのではないのか?と不安に感じてしまったが、それは杞憂でしかなかった
「貴官の上官を敬う心遣いも十分に理解しているが・・・今は除隊した身です。上官ではなくて友達のお姉ちゃんとして接してしくださいラウラちゃん」
軍人だったのは少しの間だけ、どちらが本当の姉なのかは直ぐに理解でき、安堵の息をこぼす
……だが、ラウラは違った
「・・・」
今世の軍人であり、生まれた時から軍に所属していたラウラにとって除隊した軍人の対処などマニュアルにない事であり、困惑するものであったが―――
「僕もそうしてほしいな~」
「この家にいる間だけでも…そうしてほしいな?」
友人と友人の姉からの言葉にため息をつつくのであった
「ふ、流石はシャルロットの姉だな、了解した。ではヴァーミリオン姉と呼ばせてもらう」
「いやいやいや、なんでよ!?」
「千冬さんみたいですね?…まぁ呼び方は追々、直していくとして――」
ラウラも十分に譲歩しているつもりなのだろうが、どうしても硬さが残ってしまうのはラウラらしいと思いながらもノエルは椅子に掛けた鞄から携帯電話を取り出すと徐にかけ始めた
「もしもし秋奈くん?ノエルです――いえ、そうじゃなくて―――そうです!だから有休を使います!―――え?当日に言うな?私と秋奈くんの仲じゃないですか~―――もう!それでいいですよ!だから今日は休みますからね!お疲れ様です!」
ぜぇぜぇっと息を荒くさせる姉はどこかやりきったとばかりに達成感に浸っていた
しかし、同時に同じ会社に勤める妹は義姉の強引さもさながら電話の向こう側で悪態をつく友人が脳裏に浮かんだのだ
「えぇっと・・・お姉ちゃん会社は?」
「有休をもぎ取りました!…よって今日は女の子3人で買い物に出かけます!」
「うん、それは嬉しいんだけど…秋奈はなんて?」
「……後日、厳罰だと思います」
「ははは……頑張ってね、お姉ちゃん?」
「…はい」
義妹の慰めを受けてもなお、後日くる社長からの処罰に身を震えさせるが、やってしまったモノは仕方がないとばかりに声を上げた
「さて!何を買いに行く?」
「そうだね~、季節的にも秋物がほしいから見て回ろうか?・・・あとラウラのパジャマも買わなくちゃ!」
「・・・なぜ秋物なのだ?今は夏だぞ?」
「「・・・え」」
方や初めて出来た義妹との買い物に心を躍らせて、もう片方も久しぶりな義姉との買い物であり、友人との買い物と言う事もあり声を弾ませたが……友人の声に二人は声を揃えて体を固まらせた
「え、ええっとねラウラ?女の子は常に流行を先に読まなきゃいけないの!」
「なぜだ?秋物は秋になったら買えばいいだろう」
「それじゃ、遅いんだよ!『秋』って言う時間は限られているんだよ!」
「そうだな、でも秋は少し冷えるだけだ。……コートを1着買えば今秋は乗り切れるだろう」
ラウラの言葉を聞いてシャルロットは軽い眩暈を覚えた
シャルロットが『秋は限られた時間なのでなってから考え始めたら冬になってしまう』と伝えようとするも、一向にラウラの頭上からクエッションマークが消える事はなかったが、戦っている者は一人ではなかった…
「だ~か~ら~「ここは任せて!」お姉ちゃん?」
救世主現る!
醸し出す雰囲気が先程の『軍人モード』だと言う事が少し不安ではあるが、自分より軍人の事を良く知っている義姉にラウラの説得を任せる事にしたのだ
「ラウラ少佐、戦闘において一番大切な部隊はどこだ!」
「ハッ!後方支援及び補給部隊であります!」
「…え?」
今度はシャルロットの頭上にクレッションマークが浮かんでしまった
……確認しておくが、今は『洋服の話』をしているのだ、決して軍略の話ではない
「ほう…それは何故?」
「いくら前衛部隊が優れていようと支援がない事には継続的にその力を発揮できないからです!」
「よろしい……と言う訳で買い物にいきましょう♪」
「わかりました!」
「わかったの!?」
一般人のシャルロットにとって二人の会話は予想の範囲を軽く超えており、なぜ先程の話の流れで『流行を先読みする』結論に至るのか不思議でならなかった
「……ですが、何故そこまで気合を入れる必要がありますか?」
否、理解はしていなかった。が、ノエルはその答えを待っていました!とばかりに不敵な笑みを浮かべる
「ラウラちゃん良く訊きなさい・・・・戦争なのですよ」
「なっ!?」
「女の子にとって洋服とは戦闘服ッ!相手の領地を自分だけのモノにする為に必要なモノなんです!そう!その名も恋の争奪戦争!」
「な、な、な!?」
「ええっと、二人とも大丈夫?」
ドイツは過去に大きな戦争にかかわっているだけではなく、自らも起こしてしまっているので軍人であるラウラにとって『戦争』とは聞き流せない言葉であり、一般人のシャルロットにはついて行けない会話であった
そして―――――核は討ち放たれた
「私は知っています!・・・貴女が欲している領土がある事を!」
「ッ!!!」
領土と聞いてラウラは一気に顔色を赤く染めるが、ノエルは止まらない
「さぁ!私について来なさい!貴女に勝利の栄光を与える武器を選んであげましょう!」
「マム!イエスマム!教官!」
「nein!お姉ちゃんと呼びなさい!」
「イエスマム!姉上!」
……海里、私に姉妹が出来たよ?
もはや止める人も異議を唱えるモノいない。シャルロットはこの場にいない彼氏に心の助けを求めながら現実放棄するのであった
「姉上・・・いいですね。さぁ!シャルちゃんも着いてきなさい!」
「そうだぞシャルロット!戦場では遅れを取ったものから死ぬぞ!」
「・・・二人のノリについて行けないんだけど?」
「「Die Gewinner bleiben schweigsam!」」
「なんでドイツ語!?」
さぁ、領土取得戦争は開戦された
意気込む二人について行けないのか苦笑いしか出来なかったシャルロットであったが、タイミングを見計らったかのようにシャルロットの携帯がなった
「え?『mon-mon』編集部?なんだろう、こんな時間帯に……」
二人で、どの服が男にウケるとか話している姉と妹(仮)を尻目に電話に出たシャルロットだが、電話の受け答えをしている内に雰囲気が暗くなっていった
流石に二人もシャルロットの雰囲気に気づいたのか、話を止めてシャルロットの応対を気にし始めた
最終的には「…よろしくお願いします」と言うシャルロットの声に何があったのか悟ったノエルは苦笑いを浮かべながら電話を置いたシャルロットに笑い掛けるのであった
「今の感じ……モデルの助っ人かな?」
「うん、秋の特集を飾るモデルが二人とも体調を崩しちゃって…代わりのモデルもいないし無理を承知でお願いしますだって…」
「あはは…、『mon-mon』も合併した後だからモデルの人脈が限られているんですね?」
「うん…でもよりによって今日なんて…」
気を落とす二人にラウラは首を傾げた
「どうした、行かないのか?」
「…モデルの仕事が急遽入っちゃって…買い物はまた今度になっちゃった…ごめん、ラウラ」
「だから何故行けないのだ。服があればそこは服屋だろう。モノのついでだ,私も手伝えば早く終わって品定めが出来る」
「ラウラ話聞いてた!?それに手伝うってモデル撮影だよ!?」
「ふ、軍人に後退の文字はない!それに…今朝の侘びだ」
「ええっと…」
自分だけでは対処しきれないと姉に助けを求める視線を送るが…姉の方は爛々に目を輝かせていた
「…いい。すごくいいです!金髪のシャルちゃんと銀髪のラウラちゃん!二人とも絵になります!」
「えっ!?おねえちゃん!?」
なぜかやる気の姉に戸惑う妹…
そしてなぜ姉と妹(仮)の相性がこんなにも適応しているのか不思議でならなかった
「カメラマンには私から言っておきます!シャルちゃんと一緒に一面を飾りましょうね!ラウラちゃん!」
「うむ!」
「ははは…もうなせになれ」
苦笑いを通り越し、諦めの境地に入るシャルロットであった
◆
時は流れ、某スタジオ―――
大勢のカメラマンが集まったスタジオの隅に幼きモデルが二人、片方は場違いな少女がいる事でハラハラしており…もう片方は苦笑いを浮かべながらお茶請けに出された飲み物を口にしていた
「その…本当にやるの、ラウラ?」
「自分で言った事さ、それに姉上の頼みだ、断る理由がない」
「…うん、ありがとう、でもいいの?今更だけどこんな姿を晒しちゃって?」
シャルロットの不安。それは軍に所属するラウラが公共で発売される雑誌に載ってしまって良いモノか?と言うモノであったが、ラウラは大丈夫だと言って笑みを浮かべた
「確認したが出版範囲は日本国内だけと聞いた。母国なら兎も角、大丈夫だ」
「そっか…とりあえず「撮影始めま~す!準備お願いします!」 あ、は~い!今日はよろしくね、ラウラ!」
「了解した」
仲良く手を繋ぎながら二人は着替え室に入っていく……舞台裏で悲鳴をあげる義姉の存在を忘れて……
カメラマン達は熱狂していた。時間を忘れ撮影終了時間を当に過ぎている事を忘れるぐらいに……
理由はシンプル、被写体の二人が『女神』だった…それだけ。
ただえさえ、今期売り出しモデルで一番人気のSSS所属「暁の天女」ことシャルロット・ヴァ―ミリオンに加え無理を承知でモデル依頼した少女ラウラ・ボーデウィッヒの存在がカメラマンのプロ意識に火をつけたのだ
以下、撮影に参加したベテランカメラマン(36歳独身)の感想
染めモノではない天然物の金髪、中性的な顔立ちだがスタイルは黄金比を良く理解した素晴らしいモノであり、ポージング・着こなし・目線送りと言うモデルの必須技術を難なく披露する暁の乙女。カメラに物怖じしない。度胸も素晴らしいが、なにより撮る側を楽しませてくれる飽きさせない笑顔は彼女の可能性の広さを物語っていたよ
…こんな偉材が世の中に生まれていたとは驚きだ
そして、穴が開いてしまったモデルの代わりとなった『暁の天女』の友人の少女
正直、『暁の天女』と同ページに乗せるには素人の少女では荷が重いと思っていたが………神は女神を二人も生み出した
最初は、『暁の天女』とは違いモデル経験のない少女は『暁の天女』の見様見真似で同じ様にポージングをして撮影に臨んでいた。そんな見様見真似で人気が出る程、この業界は甘くない!少女のページの分、『暁の天女』を多く撮影しようとしたが………乙女が何かを囁いた瞬間、事態は一変した
戸惑いながらも一生懸命にポージングし、慣れない笑顔を振りまく少女の表情は、大切な人へ贈る彼女なりの贈り物だった。
大切な人に見て貰いたい!私の違った一面を見て貰いたい!彼女の気持ちが心に訴えかけているようで、モデルの技術と言う茶々な技術など必要ではなかった
…あれは、モデルではない。そう、恋する乙女なのだ!
未知なる世界に恐れながらも一歩一歩確かに歩き、大切な人に辿りつきたいと言う純粋な気持ち!俺はカメラマン人生15年目で初めてモデルに魅せられてしまった
……少女、いや『月の恋姫』の恋が実る事をココに集まったカメラマン総勢23名は全力で応援しよう!
…そして、『嫁』と言う奴が『月の恋姫』を振るようならば、俺達は全力でパパラッチとなり貴様の人生をスキャンダルだらけにしてやるからなッ!
以上、撮影に参加したベテランカメラマン(36歳独身)の感想
「次の撮影で最後になります!『暁の天女』と『月の恋姫』は着替えてくださ~い」
「わかりました。…ラウラ大丈夫?」
「問題ない……と言いたいが流石に疲れたな。訓練での疲労とは違った疲労感だ」
先程まで撮影していた黒いゴスロリックな服を翻りながら、ラウラは溜め息をついた
今まで、軍服や制服などと言った支給されたモノしか着た事のないラウラにとって着慣れない服を次々と試着するのは、流石の軍人であるラウラにも味わった事のない疲労感であった
「はは、僕も最初はそうだったよ?なんかカメラで撮られているって思うと疲れるんだよねぇ?」
同じくラウラとは色違いの白いゴスロリックな服装を纏うシャルロットは、自分も経験したものだよ、とラウラにお茶を渡すのであった
「すまない…ふぅ…シャルロットは平気なのか?」
「なれだよ、慣れ」
「そうなのか…それと『月の恋姫』とはなんだ?」
「ラウラの事じゃない?よかったね、認められた証拠だよ」
「…恥ずかしくないのか、『暁の天女』?」
「…慣れだよ、『月の恋姫』」
SSSに所属する事、数週間。つい先月までフランスの代表候補生をしていた少女は何かと規格外な企業に諦めの域まで達するのと同時に、『慣れる』事を覚えたのであった
とても残念な笑みを浮かべるシャルロットにラウラは同情する視線を送りながら最後だと言って渡された服に袖を通すが……鏡に写る自身の姿に疑問を抱く
「……シャルロット、これはなんだ」
「なんだって……黒猫パジャマ?」
「このような寝間着にする必要性はあるのか?」
「え?可愛いじゃん」
当然の様にそう現役モデルに返されてしまったら素人な自分では言い返せないと、理解は出来ないが納得し、ふかふかと自身を包む猫パジャマの耳を玩んだ
「では配置取りします。シャルロットさんとラウラさんはクッションを抱えてください!ノエルさんはお二人を抱きしめる構図で!」
「お姉ちゃんっ!?」
「ううぅ、押し切られてしまいました…このパジャマを着ていいのは十代までですよ、二十歳を越えた私が着るようなパジャマじゃありませんよ」
「ふむ、姉上は虎か」
「いや、三毛猫ですから!なんで一人だけ虎なの!?」
「虎も猫も同じではないか?」
「ううぅ…こんな姿、秋奈くんや海舟さんには見せられません」
「時間押しているんで撮影はいりま~す!ノエルさん、笑って」
「……出版社に依頼して私の場所だけカットしてもらいましょう」
「はは、無駄な抵抗だと思うよ?」
こうしてラウラにとって人生初となる『モデル』の任務は幕を閉じるのであった
◆
後日…
「マカロニをフォークで通すと面白いなって…」
「ふむ、確かに面白いぞ!全てに通すぞ!」
「ふふふ、二人とも可愛いですね?なら私も通しますよ?」
高級マンションの一室において、金髪の女性と銀髪の少女が食事をとる姿は定着しつつあった。
もとより、IS学園に居てもさしてやる事の無かったラウラは連日、ヴァ―ミリオン宅へと泊りに来るようになっていたのだ
『PiPiPiPi…』
そんな中、傍らに置いたラウラの携帯が着信を知らせた
「ラウラ、電話だよ?」
「ん?あぁ、嫁からだ。ふふ、亭主の声を聞きたくて連絡してきたのか」
携帯のディスプレイには『織斑一夏』の文字
朝一番から思い人からの電話に自然とラウラの顔にも笑みがこぼれる
『おはよう、ラウラ』
「うむ、おはよう。嫁は、まだデータ取りに続きではなかったのではないか?」
『あぁ、そうなんだけどよ……テレビ見たか?凄い事になってるぞ』
「テレビ?…すまないがシャルロット、テレビをつけてくれ」
「テレビ?わかったよ」
基本、食事の際は家族同士の会話を楽しむモノとしてヴァ―ミリオン家では食事中にテレビをつけようとはしなかったが、珍しくラウラがモノ申すので気になりテレビの電源を入れた
そして移された番組に……
『―――今秋はアニマルパジャマが人気爆発!その火付け役となった中学館発行の人気ファッション雑誌『mon-mon』。今夏にSSSと経営合併し更なる人気が期待される企業がいきなり飛ばしてきましたね?』
『そうですね。SSSの市場調査もさながら私はモデルとなった3人の女性が最も影響を与えていると思います』
「「……え?」」
「うむ」
―――先日行った撮影の特集が組まれているのだ
ヴァ―ミリオン姉妹は手に持っていたトーストを同じタイミングで落とし、ラウラは確かに自分が映っている事に対し一夏が言った『凄い事』の意味を理解したとばかりに頷く
『はい、私もそう思います。そして朝スーパーは今回、噂の三人の撮影現場を独自に入手しました。ではどうぞ―――』
「「………え」」
『ほら、○○○!にゃーって言って』
『にゃ、にゃ~?』
『もう!○○○ちゃんもシャルロットちゃんも可愛い!私もニャ~!』
しかし、『凄い事』は何も自分達が映像として映っている事で終わらなかった…
画像として映るのに終わらず動画として全国放送で流されたのだ
流石に素人なラウラの名前は伏せられていたが、SSSに所属するモデルと元モデルは、その枠に入ることなく本名で流されているのだ
「ちょっ!海里!テレビ見てないよ…え!?録画している!?家宝にする!?~~~ッ!」
「秋奈くん!情報リークしましたね!え?厳罰?~~~ッ!公共の電波を使うのは卑怯ですよ!」
そして『凄い事』を仕出かした犯人は一人しか浮かばないとノエルは即座に犯人に連絡を入れ、シャルロットも一役かったであろう自分の恋人に電話をかけ慌しくヴァ―ミリオン家の朝がすぎる中―――
『三人の正体はSSS所属モデル『シャルロット・ヴァ―ミリオン』さんと『ノエル。ヴァ―ミリオン』さんの姉妹、もう一人が…一般参加の方で名前を明かせませんが撮影現場では『月の恋姫』と―――』
「…ふむ、私だな」
『だろ!?すごいな!流行の先端を行っているな!』
「ふ、このぐらい私にとっては朝飯前だ。嫁もテレビに出ていたしこれで同等だな!」
ラウラだけが声を弾ませるのであった
補足一
Die Gewinner bleiben schweigsam
の略は
「勝ち組にはわからないのよ!」
と同じ意味になります
補足2
ラウラがシャルロットに言われたこと…
「一夏も雑誌を見ると思うよ?」
だけ