トンネルを抜けるとそこは雪国(ルウィー)でした…   作:真明

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今は昔の話

十一年前 北海道

side隆(少年期)

うぅ、寒いよぉ、あのおじさんに言われた通りに逃げたのはいいけど場所がわかんないよぉ…お父さん、お母さん、会いたいよぉ…

隆「うぅ、誰かぁ…」

僕の声だけが虚しく響く、それもそうかこんな山奥誰も来ないよね…

隆「あ、」

何かにつまづいちゃったみたい、立たないと、こんなところで寝てたら死んじゃう…でも

隆「もう…いいかな?誰も来ないし、僕なんていても、いなくても変わらないし…」

そうだ、もうこのまんま楽になっちゃおう、そうすればこんなに悩まなくてもいいんだ、あぁなんだ、簡単なことじゃないか…おじさんごめんなさい、せっかく逃げるの手伝ってくれたのに…

隆「もう…いいか、」

その後はもう覚えてない、だけど最後になにかの足音だけが聞こえた気がした…

side隆out

side冴島

ここら辺で足跡が途切れとる、このへんにいるのは間違いないねやろけどホンマに子供なんかおるんやろか?奥寺はんが子供の影を見たいうから来たけど子供なんて…!!

冴島「おい!しっかりセぇ!?」

ホンマにいよった!しかもこの格好都会からの子か!?なんでこんな所に!?

冴島「てあかん来ないなことしとる暇やない!急いで帰らなこいつ死んでまう!?」

麓までそう遠ない筈や!死ぬんとちゃうで!!

side冴島out

side三人称

冴島が子供の隆を担ぎながら山を降り奥寺の家に着いた時には隆の身体は冷えきり凍傷も少なくなかった

冴島「奥寺はん!こいつ休める場所あるか!?」

奥寺「冴島か、やはり子供がいたか…そこの布団を使え少しはマシなはずだ」

冴島「あぁ!」

冴島によって寝かされた隆は何かに魘されていたまるで怖いものに追いかけられてるようだった

隆「うぅ、やだ、来ないで…」

冴島「何や、何をうなされとるんや?」

奥寺「大方、熊にでもあったのだろう、ほら、お前の分だ」

冴島「おおきに…」

奥寺「うん?おい冴島そいつの荷物から何かはみ出てるぞ?」

冴島「ホンマや…これは…!?」

奥寺「どうした?」

冴島が目にしたものは到底子どもが稼げるような額ではないような金額の預金とその通帳に挟まっていた遺書だった

冴島「奥寺はん、これ」

奥寺「…子供がこんなに稼げるとは思えんな、それにこの遺書この子の両親か?」

冴島「多分な、せやけどなんでこんな子供がこないなモンを…?」

奥寺「それは本人から聞けばいい、俺達が深く関わることじゃねぇ」

冴島「…」

結局その日は隆は目を覚まさなかった…

 

後日 side隆

隆「う、うぅん?」

あれ?なんで僕布団に?それにここは?

?「お?目覚めたんか?」

隆「え、あ、ハイ」

扉が開きそこにいたのは身長2m近くの怖面の大男だった…正直怖い

隆「あの、すいません、貴方は?」

?「おぉ、すまん、俺は冴島って言うもんやよろしゅう」

隆「あ、ハイ。僕は八神隆って言います」

?→冴島「ほな隆でええな?とりあえずなんか具合悪いところとかあるか?」

隆「(いきなり名前…)いえ、特には…」

冴島「そないか?ならええねんけど」

隆「あの、ここっていったい?」

冴島「ここか?ここは狩りとかを主にしてる山村(さんそん)や」

隆「そうですか…」

冴島「…安心せぇ、ここに電話とかはないそもそも電波も通っとらんし都会からの唯一の交通手段は車も一台通れればええくらいの細道しかない」

隆「!?」

ハッとした、この人は僕のことを知っているのか!?

隆「…何の事ですか?」

冴島「勝手ですまんかったけど荷物を見させてもらった、そん中にこれがあってな」

そう言って見せてきたのは、僕の通帳だった…

隆「どうして貴方がそれを!?」

冴島「安心せぇ、別に奪おうとは思っとらんし盗るきならわざわざ言わん。ほら」

そう言いながら冴島さんは僕に通帳を返してくれた。

隆「…。」

冴島「お前に何があったか知らんけど、ここにお前の金盗るような奴はおらん。せやから安心せぇ」

隆「…。」

信じられない。正直その一言に尽きる。これまでそう言って金をくすね用としたやつは沢山いた。祖父も祖母も叔父も叔母も皆このお金を狙ってた。簡単には信じれなかった。

冴島「…ハァ、疑うんは勝手やけど、暫くここにいや?凍傷が目立つし生憎と今道は雪で潰れてんねん。」

隆「…はい」

?「冴島、準備できたか?出来たなら行くぞ」

冴島「奥寺はん、分かりました」

?「お前も起きた見てぇだな」

隆「どなた様ですか?」

?「奥寺だ…命の恩人にくらいは礼言っとけよ…」

隆「恩人?」

?→奥寺「何でもねぇ、行くぞ」

冴島「おいっス」

そう言って2人は出掛けた…

 

それから数分後

?「目が覚めたんだね」

隆「どなたですか?」

?「仁科って言うんだ。君は?」

隆「八神隆です。」

?→仁科「そうか、八神くんかいいなだね、ところで君?冴島さんにはお礼を言った?」

隆「どういう事ですか?」

仁科「実はね、君を助けたのは冴島さんなんだよ」

隆「!?…そうなんですか?」

仁科「そう、あの時の冴島さんはほんとに必死だったよ、ここに付いたら自分も疲れてるだろうに「こいつが死んでまう!?早よお湯かなんか持ってきてくれ!!」ってほんとに凄かったんだからね?」

隆「あの人が…」

仁科「その様子だと知らなかったんだね。帰ってきたらちゃんとお礼を言うんだよ」

隆「…はい」

仁科「そう、なら僕は行くよ」

隆「…あの!」

仁科「?何?」

隆「教えてくれて、ありがとうございます!」

気にしないで、仁科さんはそう言ってた…あの人が帰ってきたらお礼を言わなくちゃ、それに僕の事も…

 

それからまた数分後

冴島「帰ったぞ、何やもう動いてええんか」

隆「冴島さん、それに奥寺さんも…」

奥寺「まだ体を動かすなじっとしていろ」

隆「…ありがとうございました!!」

冴島「何や急に?」

隆「仁科さんから聞きました。僕を助けてくれたのが冴島さんだと」

冴島「なんやそないなことか」

隆「え?」

冴島さんと奥寺さんは特に気にする様子もなく防寒具を脱ぎ壁に掛けながら床に座った

冴島「人をそれも子供のお前を助けるのに理由がいるか?そもそも俺は助けたかったから助けたかった、ただそれだけや」

隆「冴島さん…」

奥寺「俺はそいつが連れ帰ったお前に布団を用意しただけだ」

隆「奥寺さん…」

この人達なら話しても大丈夫、何だかそんな気がする。だから話そう僕のここに来た理由を

隆「冴島さん、奥寺さん、なんで僕がここに来たのかお話します。」

二人「?」

少年説明中…

隆「これが僕がここに来た理由です。」

2人「…」

隆「…ごめんなさい」

冴島「何や急に?」

隆「僕は助けてくれた貴方方に対して勝手に敵意を向けていた、貴方方が助けてくれなければ死んでいたのに、なのに…!!」

僕は少し泣きながら2人に謝罪をした、僕の勝手な思い込みでこの人たちに対して警戒心を持っていた事を

冴島「…隆、頭上げぇや」

隆「…冴島さん」

冴島「…すまんかった」

隆「…え?」

何で?どうして?どうして冴島さんが頭を下げるの?悪いの僕なのに…

冴島「お前にそんな過去あるのも知らんのに先俺は勝手な事言うたホンマにすまん…」

隆「冴島…さん」

冴島「せやけど、安心せぇ、ここにお前の金盗るやつはホンマにおらん。ここの人らはホンマにええ人らや、やから」

隆「…え?」

突然僕は冴島さんに抱きしめられた。だけどその抱擁は優しくけれどどこか力強かった…

冴島「辛かったな、せやけどもう大丈夫や、お前が安心できるまでここにおったらええ、ここにいる人らはみんなお前の味方や」

…ずっと僕の欲しかった言葉だった。お金の事より僕の事を優先してくれたその言葉は壊れかけてた僕の心を癒してくれた…

隆「ウゥ…ヒック…ぼぐは、ここにいてもいいの?」

冴島「おったらえぇ、きぃ済むまでここおったらえぇ」

その言葉の後僕は泣いた父さんやお母さんが死んでも泣かなかった分が押し寄せるようにすべてを吐き出すように…父さん、母さん、おじさん、僕にもこんな僕にも味方がいたよ…

 

暫くして

隆「…すいませんでした」

今になってすっごく恥ずかしい…穴があったら入りたいよ…

冴島「気にすんなや、な?」

奥寺「…たく、おい冴島そいつのことちゃんと面倒みろよ」

冴島「俺が!?」

奥寺「当たり前だあんな事言ったんだ責任くらいもて」

冴島「いやせやかて…」

冴島さんが動揺してる、さっきまで大きく見えてた背中がなんだか小さく見える

隆「…フフ」

冴島「なんや?なんかおもろい事あったか?」

隆「フフ、いえ何も」

そう言えば父さんと母さんもこんな会話してたっけ…何だか面白いな

冴島「まぁ、何やこれからよろしくな?隆」

隆「…はい!!」

 

数日後…

あの日から結構な日が経って僕もこの村に馴染んだきた時その事件は起こった…

櫻井「何、熊の餌を撒き散らした!?」

仁科「あぁ、あの鳴海って奴がそこらじゅうに餌をまき散らしたみたいなんだ…」

櫻井「クソ!?そんなことしたらヤマオロシどころかほかの熊まで出てきちまう!」

隆「あの、何かあったんですか?」

櫻井「ん、あ、あぁなんだ隆君かいや、何でもないよ」

隆「…さっき熊がどうのって言ってたから、何かあったんですね?」

仁科「いや、その…」

冴島「何があったんです?」

櫻井「冴島さん、実は…」

男説明中…

冴島「クソ!なんてことしてくれたんや!?」

隆「…」

冴島「今から餌回収してくる!」

櫻井「無茶だ今行っても熊だらけだぞ!?」

冴島「こうしてる間にも増えとんねやったら早めに回収しとくのがええんとちゃうか?」

櫻井「それは…そうだが…」

冴島「誰もやらんねやったら俺がします!」

仁科「冴島さん!?」

櫻井「…分かった、ただし俺達は関与しない。」

仁科「櫻井さんまで!?」

櫻井「地図にヤマオロシがよく出るであろうポイントしておく、そこのものだけ回収してくれほかはどうにかなる」

冴島「分かった」

隆「待ってください!」

冴島「隆?」

隆「僕も行きます!」

冴島「何やて!?」

櫻井「隆君君何を言ってるのか…!?」

隆「分かってます!」

仁科「なら何故!?」

隆「…僕はここにお世話になってかなり経ちます。今、皆さんが困ってるなら少しでも手伝いたいんです!それに熊を相手にするわけじゃないですから僕にだって出来ます!」

櫻井「しかし…」

隆「お願いします!行かせてください!」

冴島「…分かった」

仁科「冴島さん!?」

冴島「ただし俺から離れんことやええな?」

隆「…はい!!」

この時の俺は少しでもと言う純粋な気持ちで手伝いを名乗り出た正直、これが無かったら今の俺はなかったと思う…

 

山中

冴島「ええか?俺が餌を取るその間お前は周りを警戒しとけ。」

隆「(コク)」

僕は頷きながら冴島さんに付いていく今日は少し吹雪いてる、もし別れたら僕はただでは済まないだろう。

冴島「あった、一つ目や」

冴島さんが一つ目の餌を発見した僕は周りを警戒していたその時

隆「冴島さん、熊ですまだ遠いですがこちらに来てます」

冴島「ホンマか!?クソ!?気づくの早いな!」

隆「どうします?」

冴島「今は身を潜めよ。アイツが去ったらまた行動開始や」

その会話を皮切りに僕と冴島さんは近くの草影に身を隠した、どうか見つからないように…!

熊「…………!」

…!?見つかったこっちを見てる!?

冴島「クソ!?見つかった!逃げるで!」

隆「は、ハイ!」

熊「グオォォォ!!」

雄叫びとともに熊はこちらに突進を始めた雪道に慣れてる分熊の方が圧倒的に有利だ、そして…

冴島「!?隆避けぇ!?」

隆「…え?」

僕が後ろを見た時には熊は目の前だった…そして…

隆「グハ!?」

熊が出した右手によるなぎ払いのせいで僕は川の方へと投げ出されてしまった…

冴島「隆!?クソ!?」

バンと言う発泡音と同時に熊の悲鳴のような叫びが聞こえた、恐らく至近距離から頭を撃ち抜かれたのだろう…

冴島「隆ゥ!!大丈夫か!?」

隆「え、エェ!!何とか!!」

冴島「遠回りになるけど今からそっち行くからそこから動きなや!!」

隆「分かりました!!」

冴島さんはそういった後声が聞こえなくなった。迎えに来る為に遠回りをしてるのだろう。ここでじっとしていよう…?

隆「これって確かそれなりに高く売れるキノコ?」

よく見ると周りにはその類のものが沢山生えていた。

隆「凄い、これ確かすごく美味しいんだよね」

今日はキノコ鍋かな?等と冗談を述べていると

隆「…?これって狐の死骸しかも食いかけの…まだ新しい」

それの意味することはただ一つ『熊が近くにいる』

隆「どうしよう…早く隠れなきゃ…」

けど…もう遅かった

隆「…!?そんなどうしてヤマオロシが!?」

僕の目の前に出てきたのはこの山のボスであり猟師からも恐れられる存在であるヤマオロシだった…

ヤマオロシ「……」

ヤマオロシは少しずつしかし確実にこちらに近づいてきた…逃げないと、でも

隆「あ、ああ…」

その時の僕は腰を抜かしてその場を動けずにいた正直失神してないだけ凄いものだ。なんせ冴島さんよりもおおきた巨体で四足歩行出歩いても僕の頭より高い位置に頭がある、逃げてもすぐに捕まる、戦う?もっての外だ…もう僕に残された道はない、完全に積みだ…

隆「ハハ…これが恐怖…なのかな?全く動けないや…」

ヤマオロシはもう目の前だ…このまま静かに死を待つのか?…いや出来ない!!せっかく生かせてもらえたこの命なんだ絶対無駄になんてしない!

隆「でもどうすれば…」

銃もなく、対抗手段もない、それでも諦めたくない!まだ生きたい!神様!もし、もしも僕の声が聞こえてるなら…

隆「助けてよ!!」

目を瞑りながらそう必死に祈った。その願いが届いたのか、それとも運が良かったのか…

バン!

一つの発泡があった、ヤマオロシはそれを聞いたからなのかそれとも僕に興味が無かったからなのかその場を去って行った

冴島「隆!大丈夫か!?」

隆「冴島…さん」

僕を助けてくれたのは焦った様なそれでも安心したような顔の冴島さんだった…

冴島「心配かけよって大丈夫か?」

隆「は、ハイ」

冴島「そうか、なら良かったはさっき奥寺はんが来てくれてな?今変わりに餌の回収してくれとる。それより今のは」

隆「…多分ヤマオロシです」

冴島「やっぱりか、熊が見えた時まさかと思って急いで発泡したけど良かったは…」

隆「そう、ですね」

冴島「立てるか?」

隆「ハハ、すいません、腰を抜かしてしまって」

冴島「…ハァ、しゃァないほれ担いだるから背中乗れ」

隆「ハハ、ほんとすいません…」

冴島「お前が無事ならそれでええ、よいっしょっと」

その声とともに僕は冴島さんにおぶられた、その背中はどこか父に似ていた…

 

奥寺宅

隆「う、うん?あれ?僕は」

冴島「おう、起きたんかい」

隆「冴島さん…そうだ!餌は!?」

奥寺「全部回収した、先救急車が来て鳴海を運んで行ったよ」

隆「そう、だったんですね…」

奥寺「全く、子供があんな事をするとは思わないぞ普通…?」

隆「は、ハハハ、すいません。」

冴島「ホンマやで、お前が俺の背中で寝てるの見て櫻井はんも仁科はんも驚いとってんからな?」

隆「ほんとすいません…」

冴島「そう思うならもうあんな事すなええな?」

隆「…はい」

 

あれから数日後

あの後奥寺さんが寝込んだり冴島さんが素手でヤマオロシを倒してきたりと色々あったけどあの時の冴島さんはほんとに凄かった、え?なんで知ってるか?あとを追って僕も現場にいたんだよ。それで奥寺さんの真実や村の過去、たくさんのことを知った。でもそれでもこの村はいい村だ、櫻井さんも仁科さんも奥寺さんも、そしてこの村の人ではないけど冴島さんも、皆いい人だ。僕もこの輪に入れたのかな?

 

そしてまた日は流れ舞台は再び東京へ…

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