この素晴らしい過負荷に祝福を!   作:いたまえ

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十話 譲渡

  1クラス分の椅子と机が置かれた教室も、生徒役がたった3人では補修や居残り授業を連想してしまう。

  今しがた殺されたばかりのエリスとカズマは、冷や汗をかきながら必死に教室内を見渡している。

「ここはどこなんですか?天界でも、下界でも無いみたい…。」

「エリス様!無事でよかった…!ホントによかった…!セーラー服、かわいいですね。」

  怒りで我を忘れるほどだったカズマは、エリスがひとまず生きていることで平静を取り戻した。

「か、カズマさん!今は他に気にすべきことがありますよ!」

  頬を染め、嬉しいことは嬉しかったらしいエリスは、意味もなくセーラー服の一部を弄る。

 

「そうだ。エリス様が無事だったのはいい。それはいいんだが…。なんで平然と球磨川が一緒にいんだよっ!?」

 

  机に肘をついて、エリスとカズマをニヤニヤ観察してた球磨川に、カズマが全身全霊ツッコミを入れる。

 

『2人に。何はともあれ謝っておかなくっちゃね。さっきはごめーん!てへぺろ!』

 

  自分の頭にポコっと拳を当てて、舌をペロリと出す。これが、球磨川の精一杯の謝罪。

 

「ごめーん!…で、済むわけねーだろー!!」

  たまらずカズマは教室一杯に声を轟かせた!球磨川の襟元を掴み上げて、唾を盛大に飛ばし球磨川の行いが如何に非道かを語った。

「結果生きてるからって、痛みや恐怖は感じるんだぞ!!何か理由があったとしても許せんっ!」

「ま、まぁまぁ、カズマさん。球磨川さんがしたことは確かに間違いです。けれど、何かしら理由がありそうでもありますし…」

 

『さっき僕が2人を攻撃したのは、どうしてもこの教室に来たかったからなんだ。わかりやすく言えば、この教室は死後の死後の世界にあたるんだよ。』

「死後の死後の世界…だと?」

 

  あんな真似までしてカズマ達を連れてきたのは何故か。球磨川に裁きを下すのは、話を聞いてからでも遅くは無い。

 

「あのう。安心院さんは、球磨川さんとどういったご関係で…?」 エリスが聞く。

  教室の主、安心院さん。謎のベールに包まれたこの美少女はなんなんだ。

「僕と球磨川くんの関係?語ると長くなるが、女神のご要望とあらば説明しないわけには…」

  安心院さんが自分の出自あたりから語り始めようとしたのを察知して、球磨川が質問でどうにか遮る。

『安心院さん。カズマちゃんってさ、実は幸運ステータス高かったりしたんじゃない?』

  球磨川は問う。

「気がついたかい?君の言う通り、そこのカズマくんは本来素晴らしい幸運の持ち主だった。君と転生の日が被っちゃったのは、その高い幸運でも避けられなかったんだね。」

『やっぱりそうか。』

 

  合点がいった。球磨川は以前ほどではなくなったが、周囲の人にも不幸を撒き散らす性質の持ち主。球磨川と同時に転生しても幸運が普通なのは、つまり元が高かった可能性が考えられた。

 

「そういわれても…。いや、俺も昔から運だけは良かったけど」

 

  唯一あった長所を球磨川は意図せず奪った形になってしまった。カズマを安心院さんのいる教室に連れてきたのも、それが理由。

 

「カズマくんは極め付けに、本来はチートな武器や防具を貰うはずが、普段はなんの役にもたたない水の女神様を選んじゃってるわけだ。」

『あー。だからアクアちゃんがこの世界にいるんだ。』

  宴会芸に秀でる水の女神。死後の死後の空間で悪口を言われてることはつゆしらず。当人が知れば、また泣いてしまいかねない。

「球磨川…、あんた何企んでんの?」

『企む、だなんて。人聞きが悪い。要するに僕は僕らしくもなく、エリスちゃんの世界を守りたくなってきちゃったんだ。そこで君には、安心院さんから特別にスキルを受け取って貰いたい!今のまんまじゃ役立たずもいいとこだ。』

  エリスの世界を守りたくなった。球磨川の言葉に、エリスは多少球磨川を信頼してもいい気分になる。

  …勇者候補は日本から他にも送られてきてるはず。それでも、魔王討伐に向かう有能な勇者が増えて困るなんてことはないだろう。

「言いにくいことをハッキリと…。にしても、スキルをくれるだって?そんなことが可能なのかよ!」

  信じられないと、カズマが。

「可能に決まってる。この僕をどなたと心得る。1京のスキルを持つ、安心院さんだぜっ☆」

 

  …1京のスキルを持っている…?

  安心院さんの発言は突飛も突飛。どれ程の高みにいる冒険者も、1京のスキルを習得できるようなポイントは得られない。

 

「ありえませんっ!世界ひろしといえど、1京のスキルを持つような人間はいません!」

  『だってさ?安心院さん。』

「ふーむ困ったね。女神様に頭ごなしに否定されちゃったぜ。まあ僕が人間を超越した存在だって事で信じては貰えないだろうか。」

「人間じゃないんですか!?」

 

  次から次にツッコミ所が出てきまくり、一つ一つ聞く気力もなくなった。

 

『会ったその日に安心院さんの全てを知るのは無理難題だよ。今日のとこは、カズマちゃんにスキルを渡したらおひらきにしよう。』

「つれないなー、球磨川くんは。そっか。それだけ紅魔族のロリっ娘の元へ早く帰りたいってことかな。」

『ドキッ!』

 

 混沌よりも這い寄る過負荷は、密かなロリコン疑惑を持たれている。めぐみんに優しい対応なのは、魔法の欠点の有る無しに関わらず。純粋な好意だったのか。

 

「俺はなんのスキルを貰えるんだ?」

 

 …チョイチョイ。

  安心院さんが無言で、カズマに近くへ寄るよう手で合図を出す。

 

「…?」

 

  ガシッ!!

 

  合図に従い安心院さんに近寄ったカズマ。手を伸ばせば届く距離までいくと、強引に抱き寄せられた。

 

「…ん…」

「…むぅっ…!?」

 

  安心院さんが、カズマの唇を奪う。

  唇と唇が重ね合わせられる。

 

「ひゃー!?」

  エリスは慌てて手で目を覆う。目はしっかり開き、指の隙間が随分ある。

 

『……………………』

 球磨川は球磨川で目から血の涙を流し、2人のキスシーンが終わるのをただ待ち続けた。

 

「…ふふっ。初めて会ったばかりの男の子にチューしちゃった!」

「結婚して下さい。」

 

  安心院さんはキスの余韻を楽しむかのように、人差し指で唇をなぞる。

  カズマさんに至っては美少女とのキスで頭の中真っ白に。

 

  今のキスは安心院さんのスキルの一つ。【口写し(リップサービス)】。既にカズマはスキルを受け取った状態なのだ。

 

「き、キスがスキル…?は、ハレンチですぅ!」

『エリスちゃん。もうちょっとツンデレ委員長っぽく、今の台詞をもっかい言ってはくれないかい?』

 

「あ、スキルがなんか増えてる。」

  冒険者カードのスキル欄に文字が増えた。【大嘘憑き】同様、表示は【解析不能】。

「い、いったい、俺は何を覚えさせられたんだ…」

 ………………

 ………

「球磨川くん。これで君の用事は済んだんだろう?カズマくんは、立派なスキルホルダーになったわけだし。魔王討伐にグッと近づいたよ!やったね!」

  『…渡すスキルの選択権は君に譲ったけど、ちゃんと役に立つんだろうね?』

「その点については何も心配いらないよ。さあ、もう行きたまえ。」

 

  エリスは女神の間に。カズマは球磨川と同時に下界へ戻れるよう安心院さんの能力で既に待機中。教室内は再度安心院さんと球磨川の2人だけ。

 

「そうそう。エリスちゃんに、次会う時でいいから伝言を頼まれてくれるかな。」

『なんだい?僕で役に立てるなら喜んで。』

「僕が死んだ際に転生してくれたら、魔王なんて一瞬で滅せるんだぜっ!て、伝えておいてよ。異世界とやら、存外楽しそうだからさ。」

『…うん!任せて。…それ聞いて、一個聞きたいな。安心院さんが死んだ時、女神の元へはいかなかったの?』

「…。転生する対象は、若くして死んだもの。らしい。」

『そっか!!ババアはお呼びじゃなかったんだ!』

「球磨川くん。今ここは、死後の死後の世界なわけだけれど。死後の死後の、そのまた死後の世界にでも行ってみるかい?」

 

  額に青筋を浮かべ、光の無い目をした安心院さん。流石の球磨川も、今度ばかりは完膚なきまでに死んだかと思った。

 

 ……………

 ………

 

 

 

 

 

 




エリス様のセーラー服姿見たいですな。
そして、カズマさんがスキルホルダーに!?
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