この素晴らしい過負荷に祝福を!   作:いたまえ

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え?アクア様ってヒロインなんですか!
知らなかったです。(大嘘


十四話 バーサス門番

「見えましたよ!古城!」

 

 アクセルの街より北へ。丘の上には長い間放置されていたであろう古城が確かに存在した。

  寂れてすすけて、今は使われていないのが一目瞭然。廃城とでも呼ぶべきか。リフォームの匠に頼みでもしないと、人は住めない。

「あそこに、魔王軍の幹部が住み着いたのだな。元はそこそこ立派な城だったことだろう。」

  丁度眉のあたりに手をかざしたダクネスが、ふむふむ唸る。

『城ってゆーか最早廃屋だね。ホグワーツかと思ったよ。』

「ミソギが何を言ってるのかは、普段通りイマイチわかりませんが…。魔王軍の幹部っぽくはありますね。」

  三者三様、城の第一印象を語る。

  ツタやコケが外壁を覆い、空飛ぶ島にも見えなくない。

 

『家賃も払わず住み着いてるってことは…。魔王軍幹部はホームレスってことだ!ビックリだよ。』

 

  日本人視点で物事を捉える球磨川くん。これが幹部の耳に入っていたらとゾッとしない。要所要所で相手をイラつかせる能力は、いっそスキルとして捨てられればいいのだが。

 

「ミソギ。ここから私が爆裂魔法を放つというのはどうでしょう?」

  今いる場所から廃城は、もう魔法の射程内らしく。めぐみんが球磨川の学ランを摘んだ。新調した杖がキラリと太陽を反射する。

 

『ダメダメ。こんな遠くから撃っても幹部は仕留められないよ。城の中で魔法を使えるかはまだわからないけれど。せめてもう少し近づこうぜ。』

「わかりました。改めて、ミソギは本気で幹部を倒すつもりなのですね。」

『うん。だから、ここで爆裂ってリタイアしようなんて許さないよ。』

「………ちっ。よまれてましたか。」

 

  気を取り直し、三人は城門までやってきた。まずは付近の茂みに隠れて様子を見る。

『誰あれ?カッコいー!』

  城門には見張りの魔物が槍を装備して仁王立ちしていた!

  二本足で立ち、背中には羽根。身長は2メートルから3メートルはありそうだ。頭部は骨だけで形成されていて、非常に不気味。

「まずいな…。アレはデーモン。人間を遥かに超える素早さと豪腕で、上級冒険者ですら容易く屠るって噂だ。何よりも、練達した槍さばきは達人を凌ぐ。」

 

  流石、魔王軍幹部。城門から最強クラスの魔物を配置するとは。

「まさかあれクラスの魔物がゴロゴロいるなんて。お腹痛いので帰ってもいいですか?」

 

『こうでなくちゃ。』

 

  仮病を発症しためぐみんとは裏腹に、ダクネスの説明を聞いていたのかいなかったのか、球磨川は笑顔のままデーモンの目前までいく。

 

「「なっー!?!?」」

  茂みに隠れたまま、女子2人は球磨川の突撃に目を見開くくらいしかリアクション出来ず。小さくなる背中を呆然と見送った。

 

『はじめまして。魔王軍幹部さんのいるお城ってここであってる?ほら、この世界って日本ほど住所とかハッキリしてないじゃない?これじゃあ、郵便屋さんが困っちゃうよね。』

 

  ステータス的に冒険者の中でも下の下にカテゴライズされる球磨川は、デーモンの目に取るに足らない存在に映る。

「…ニンゲン。ここを魔王軍幹部の城と知っての狼藉か?」

 

  デーモンは外見通り、重厚なハスキーボイス。身体の芯まで響く声音は人の恐怖を煽るプレッシャーを放っている。骨だけなのにどこから声を出してるのかは謎です。

『魔王軍幹部の城?違うでしょ?人間がたまたま住んでない城を、勝手に占拠してるだけじゃん。』

  ただ、球磨川をすくみ上がらせるにはこれの10倍はプレッシャーが必要だ。

「…ニンゲン。魔王軍幹部ベルディア様への侮辱。死をもって償うがよい。」

『怒った?怒るってことは、図星だったんだね。』

「………」

  問答無用らしい。

 

  ゆったりした動作で、4メートル程の槍を構えたデーモン。長身から穿たれる長槍が、不自然な軌道で球磨川へ迫る。

 

『ぐっ!』

  球磨川が右肩を貫かれた。

 デーモンは槍を持つ位置を巧みにズラし、距離感及び間合いを自在に操る。

  目測を誤った球磨川だが、なんとか胴体への直撃は免れた。

  右腕は感覚すら無い。残った無事な左手で、自分の右肩ごと槍を押し退ける。

  ブチブチ音をたてて肉が抉り取られるも、傷は一瞬で元どおり修復した。

 

「キサマ、治癒の使い手か?」

『随分と長い槍だ。』

 

  続く二撃目、三撃目を螺子で防ぐ。あまりの威力に螺子は砕け散り、それを持っていた手の骨も折れる。

 

  悪くはない身のこなしを見せた球磨川に、デーモンは嬉しそうな顔を見せた。骨だけなのに表情とか(略)

「なかなかどうして、いい動きをする。キサマを低く見積もったのは誤ちだったな。【死なない為の技術】が高いようだ。」

『お褒めにあずかり光栄だね。お褒めついでにご褒美として、幹部のとこまで通してくれない?』

  会話の最中に発動した【大嘘憑き】で、両手の骨も完治させた。

「ふっ…。通りたくば、腕づくでまかり通れ!」

 

  デーモンにとって、ここまでの攻撃は様子見。次の一撃の為に数歩距離をとる。渾身の力を込めて今にも槍を振るおうとするデーモン。

『これだけ長い槍だとさぁ…。』

 球磨川は瞬時に、デーモンの懐へ入り込む。…長すぎる槍は小回りがきかない。

「なんだとっ!?」

 まるで、球磨川がテレポートしたように感じた。

 

『僕の【移動時間】を、なかったことにした。』

  それはつまり。瞬間移動よりも速い移動を可能とする。

『…如何に懐に潜らせないかが大切だったんでしょ?懐は、こんなに弱点だらけなんだからさ!!』

「ちぃっ!」

 

  デーモンが槍を捨て、素手で構えるが遅すぎる。否。素早く構えようが、時間をなかったことにする球磨川が相手では意味がない。両手に持った螺子が、瞬く間にデーモンを剣山にした。

『遅いってば。』

 

「ぬぅ…ぅ。」

『まーだ生きてるの?しつこい男は嫌われるぜ?』

  あらゆる箇所に螺子を打ち込まれ螺子伏せられても、その目から闘志は消えず。もう満足に指一つ動かせないのに。

「ぬぅああ!!」

『お?』

  気合いで羽根を広げ、球磨川を切り裂く。

(『あ、これは死んだかも。』)

 

「こらっ!ミソギ!」

 黒い羽根は、だが球磨川にはたどり着かず、ペタリと力なく伏した。

「独断先行はやめろと言ってるじゃないか。」

  金髪の騎士ダクネスが、剣を使って羽根を防いだのだ。

  螺子でかなり弱っていたので、ダクネスでもなんとか防御出来た。もしデーモンが万全だったならば剣ごと二つに別れていただろう。実際、ガードした剣には刃こぼれが生じている。

「ていっ!」

  最後の力を振り絞った門番は、めぐみんの杖で頭部を殴られ動かなくなる。

「油断…したか。申し訳ありません、我が主人よ…」

 力を使い果たしたデーモンの肉体が、闇の粒子になって空気中へ溶けてゆく。

 

  『グッジョブ!2人とも!』

  右手の親指を立て、ウィンク付きで2人を労う。

「ふ、ふんっ!ミソギが先走らなければ、私が盾役をしっかりこなしたものを。貫かれた右肩は大事ないか?」

『まあね。』

  右腕を大きく回転させて、無事をアピール。

「私、肉弾戦もいける気がしました。杖での格闘と爆裂魔法の二刀流が。」

  弱りに弱ったデーモンにとどめをさしただけのめぐみんは、結構調子に乗り始めていた。

 

『美味しいところはめぐみんちゃんに持って行かれちゃった。なんで僕はこうも勝てないんだ。』

 

  ダクネスが救援に来なかったら、エリスと再会していたところだ。とはいえ箱庭学園での敗北の数々は、球磨川の戦闘力を僅かながら底上げしてくれたらしく、デーモンとも【大嘘憑き】の応用次第では戦える。それが分かった今の戦闘の意味は大きい。

 

 ……………

 ………

 ー城内ー

 

  めでたく門番を倒し、堂々と城内に。

 

「なんだか不気味なところです。背筋がぞわぞわします…。」

 

  城内は蝙蝠が羽ばたき、床を気色悪い昆虫らしき物体が這う。絢爛豪華だったであろうカーペットやシャンデリア、ステンドグラスも今となっては汚らしいガラクタ。

  恐る恐る、めぐみんはダクネスの背中にピッタリついて歩く。本能的に1番頼れるのはダクネスだと判断したようだ。

「めぐみん、そんなにくっつかれると歩きにくいのだが…。」

  頼られて悪い気はしないダクネス。

『趣味が悪い城だ。酔狂だね、幹部ちゃんも。』

「しかし、敵の姿がありませんね。」

 

  てっきり魔物達がうじゃうじゃ待ち構えているものと警戒してた三人は、ちょっぴり拍子抜けする。

  だだっ広い城のロビーには、小型の魔物すらいない。

『さっきの門番の話だと、幹部ベルディアちゃんがどっかにいるみたいなんだけど…』

  幹部はこの城の主。恐らく謁見の間らしき部屋にいるはず。

『バカと煙と権力者は高いところを好むらしいし、まずは上を目指してみるとしよう。』

「どうせ目星もないし、いいんじゃないか?」ダクネスも賛成する。

  球磨川がエントランスの正面から伸びる大きな階段の踏面に足をかけた。

  カツン。階段と球磨川のローファーが奏でる音が、フロアに反響する。

 

 その時。

 

「ようこそ、我が城へ。」

 

  三人のものではない、野太い声が靴音をかき消した。

 

  上から聞こえてきた声に視線をあげる。そこでは、廃城の主ベルディアが高みから三人を見下ろし、黒光りした剣を構えていた。

 

「歓迎しよう。勇敢なる冒険者達。」

 

  一段、また一段と階段を下るベルディア。

  そこらの魔物とは桁違いな殺気を身に纏う、流石は魔王軍幹部。一段分距離が縮む毎に、それが強くなっていく。

  見た目は完全にデュラハン。自らの頭部を左手に持ち、右手では両手剣を軽々持ち運ぶ。

 

「デーモンの奴を倒したんだ。他の雑魚共では話にならんだろう。アレで奴はこの城のNO.2だからな。」

 

  「あ…あぁ…!」

 明確な死を前に。めぐみんが顔中に汗と涙を滴らせ、精一杯踏ん張りながら爆裂魔法の用意を始める。ベルディアの殺気は、めぐみんが屋内で魔法を使用する危険性を忘れるほど。

「大丈夫だ、めぐみん!私の背中にいる限り、アイツには指一本触れさせない!」

  セリフは勇敢だが、ダクネスも魔王軍幹部と相対したことで足に力が入らない。

  戦う前から気持ちで負けている。

  ダクネスとめぐみんの2人パーティーだったなら、即座に壊滅していただろう。

 

『…』

「先ほどは見事だったぞ、小僧。…どうした。まさか恐怖しているのか?」

 

  ベルディアとの距離が約2メートルまで縮んだ球磨川は、一切空気を読んだり、感じたりすることなく。後先も考えず。無駄にムカつくセリフを笑顔で述べる。

 

  ビシッとベルディアの左手に収まる頭部へ人差し指を突きつけて。

 

『お前…四天王でいえば、三番目くらいに出てきそうな風格があるよな(笑)』




球磨川、あとちょいで普通に勝てるじゃん!レベルアップでステータス上がるか知らないですが。むしろ下がりそうな。
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