この素晴らしい過負荷に祝福を!   作:いたまえ

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ごめんよ。プロットだと和やかな初対面だったはずなんだ。でも、喧嘩売る相手を間違えた人が悪いくない?


二十話 ポストミツルギ

  ベルディア討伐の報酬を受け取った翌日、球磨川はダクネス、めぐみんと一緒に夢のマイホーム購入に向けて、不動産屋に行ってみることに。

  待ち合わせは毎度おなじみギルドの一角。少し待ち合わせ時間より早めに到着した球磨川のまわりに、名前も知らない冒険者達が集まってきた。

 

「よう、アクセルを救った英雄さん!」

「急にすまないな。アクセルに住んでいる冒険者としては、ぜひ一度お礼を言っておきたくてな。俺の名はテイラー。職業はクルセイダーだ。一応、リーダーをやってる」

 

  恐らくはパーティーを組んでるであろう男女数人。内訳は男が3人に紅一点。全員若く、球磨川とも同年代だろう。初対面でも気さくに話しかけてくる人当たりの良さに、球磨川は感極まった。

 

『初対面でこれだけ気さくに話しかけてもらえたのは人生で初めてだよ。嬉しいなぁ…!英雄だなんて止めてくれよ、たまたま運が良かっただけなんだから。僕の事はミソギって呼んで!』

  話をするまで球磨川の人物像がわからなかった若者達は、想像していたよりフレンドリーな反応で安心した様子。知らない男の子と話すのに緊張していた女の子が、空気が和やかになったことで口を開く。

「ミソギくん、だね。あたしはリーン。昨日は災難だったね。」

  髪をくくった活発そうな女の子。アルダープとのいざこざを見ていたようで、苦笑いで球磨川を慰める。

『恥ずかしいとこを見られちゃったみたいだな。アレにはまいったよ』

「あのアルダープって奴は、有名な悪徳領主なんだ。ミソギ以外にも嫌な目にあわされた奴は多いぜ。おっと、俺はキースってんだ。」

  最初に語りかけてきた軽薄そうな男が言う。背中に弓矢を装備しているので、職業はアーチャーだろう。

「……」

  4人パーティーの中で、一言も発さず仏頂面を崩さない男がいる。

  「おいダスト。お前も自己紹介しないか」

  テイラーがダストと呼ばれた仏頂面男の肩に手を置く。ダストは面倒臭そうに

「…ダストだ。俺はアンタみたいな奴が大嫌いだぜ。」

「コラっ!ミソギくんに失礼でしょ!?」

  ここ数日、街中ではベルディアの討伐を上級職の女が2人、あとは下級職の男が1人。計たった3人のパーティーで成し遂げたと、事実に相違ない噂が流れた。おばちゃん達の井戸端会議もなかなかどうして、捨てたものでもないらしい。…ダストがこれを耳にした時、下級職の男に強く苛立ち、同時に嫉妬した。よりにもよって男が女の足を引っ張り、あげく幹部討伐の報酬はちゃっかり受け取ったのだから。昨日の報酬と感謝状の授与式でアルダープが球磨川を床に押さえつけた際に、内心溜飲を下げたほど。

 

  つっけんどんな態度なのは、そういった彼の醜い心が現れた結果だ。

  リーンが慌ててダストに謝罪を促すが、てんで聞かない。

『…君が僕を嫌っても僕にはなんの不都合も無いし、嫌われるのには慣れてる。リーンちゃん、この程度で怒るほどカルシウムは不足してないよ』

  心底気にしてない風な球磨川。

「すまないな、ミソギくん。仲間の非礼、リーダーとして謝るよ」

  深々と頭を下げるテイラー。

『テイラーくん、君も苦労人だね』

  ダスト以外のメンバーが明らかに安堵した。正直、他の面々も幹部討伐は上級職の女達がメインで行ったのだと勘違いしている。とはいえ、球磨川も立派な功労者。機嫌を損ねるのはマズい。

「けっ。腰抜け野郎かよ。」

  球磨川が喧嘩を買わなかったのが気にくわないダストが、追い討ちのように悪態つく。テイラーやリーンのせっかくのフォローが台無しになる。

『…そうだね、君は口の利き方に気をつけたほうがいいかもね』

「アンタがそうなら、アンタの仲間も言うほど大したことないんじゃね?」

『…』

 

(((ダストーー!!??)))

  パーティーメンバー達の声にならない声、心の叫び。普段からダストは配慮が無く思慮に欠けた行動をとったりする事はあるものの、今日は一段と酷い。いくらなんでも、球磨川のみならずパーティーメンバー2人も貶すのはやり過ぎだ。ギルド内には球磨川達に尊敬や憧れを抱く人達だっているのだから。

 

『僕をいくら貶したところで一向にそれは構わない。でもね、ダストくん。ぬるい友情をモットーに掲げる僕は、仲間を馬鹿にされて黙っていられるほど【幸せ者(プラス)】じゃあ無いんだぜ?だけど。今ならまだ、謝ったら許してあげるよ』

 

  椅子に座っていた球磨川が、ユラユラと立ち上がる。

 

「はっ、チキン野郎に下げる頭は持ってないんでね」

『そか。口は災いの元っていうのは、よく言ったもんだね。そんなことばかり喋っちゃ駄目だって。無用な争いを招いちゃうからね』

「だったらなんだよ!関係ねーだろうが」

  徐々に球磨川への態度が悪化していくダスト。

『ついでに。僕に頭を下げてくれだなんて言ってないじゃない。君が貶した、僕の仲間に』

「同じだろう?アンタも、お仲間も」

『この街の人は喧嘩腰にならないと挨拶ひとつ満足に出来ないわけ?あー、ミツルギくんは日本人だからノーカンだっけ?』

  独り言をはじめた球磨川にダストが一瞬戸惑うものの、自分が口喧嘩を制したのだと都合よく解釈してしまう。だが。

『ダストくん。君が何を考えて僕にわかりやすく喧嘩を売ってきたのかはこの際どうでもよくなった。僕が今一番心配なのは君の将来だよ。今回は僕相手だからセーフだったけど、いつもいつも相手が温厚とは限らないでしょ?』

 

  球磨川が右手を差し出す。

 

「!」

  テイラーが咄嗟にダストを庇うよう間に入る。だが球磨川は特に攻撃をするでも無く手を下げた。

 

『沈黙は金。これも、よく言ったものだ。つくづく先人達には学ばされるよ。昔の漫画が時代を超えても面白いのと同じだね。さてと、君の口から人の悪口が二度と聞けないのは寂しいけど、君の為を思ってのことだから。存分に感謝してくれていいよ』

 

「ーーッ!!ー!?」

  ダストは何やら自分の首元を触り、愕然としている。

「どうした、ダスト?」

 

「ーッ!…!!」

 

  口をパクパク動かすのみで、ダストは返事をしない。

「ダスト!ふざけてないで何か言えよ」

  キースがダストを揺さぶる。

  泣きそうな顔で、キースに助けを求めるダスト。悲しいことに、キースはダストの考えを読み取れなかった。

 

『どうかしたのかい?ダストくん。』

「ー!ーー!!」

『あれあれ?今さらになって謝る気になったとか?』

「ーー!!!」

 

  ダストが首を何度も、何度も縦に振る。

 

『ごめん、聞こえないや』

 

 

 ……………

 ………

 

  一日一善。朝早くから良いことをした球磨川は財布の紐を緩め、ネロイドを飲みながらめぐみんらを待つ。

  因みに、ネロイドとは炭酸ではないのにシャワシャワした、飲み心地がクセになるジュース(?)である。

 

「もしかして待たせてしまったか?」

「珍しく早いですね」

 

  ダクネスとめぐみんはギルドの前で鉢合わせ、2人一緒にやってきた。

 

『おっはー。2人とも朝ごはんは?』

「今日は冒険にいくわけじゃないから、食べなくても平気だ」

「私はもう食べてきちゃいました」

 

  ダクネスはいつもの鎧を着ておらず。剣すら装備していない。

 

『んじゃ、いく?』

「いきましょう!どーんと立派な家を建てて、救国の英雄に相応しい暮らしをするのです。そしたら私の名乗りに『アクセルに豪邸を建てし者』と加わることでしょう!!」

『紅魔族の名乗りはカッコいいけど、その一言は違うと思うよ!』

 

  マイホームが手に入ることでハイテンションなめぐみんは、へっぽこぶりに拍車をかけていた。

 

 ー不動産屋ー

 

  古風な外観の建物。壁には貸し出している物件や部屋の間取りが描かれた紙が。

 

「ここだな。ミソギ、めぐみん。自分の要望はハッキリと伝えるんだぞ。いいな?後から言っても、叶わないこともある」

『4億も資金があれば、多少の無理くらいなら押し通せるでしょ』

「それはそうだが。相手の都合も考えてやるのがマナーだろう」

 

  そう言って、ダクネスが張り切って先陣を切る。

 

  カウンターにいた受付嬢にマイホームを建てたいと告げると、担当の者を呼ぶと言って奥に消えた。

  応接室に通され、座り心地の良いソファでくつろぐこと数分。

 

「どうもー!大変お待たせしてしまい、申し訳ありません。ようこそいらっしゃいまし…た?」

 

  明るくハキハキ応接室に入ってきた男は、球磨川達を見て言葉を尻すぼみにする。

 

『カズマちゃん?』

「まさか、対応客の第1号が球磨川達だとは思わなかったわ!!」

 

  転生して暫く、アクアとカズマは日雇いの土木作業員をやって暮らしてきたのだが、アクアはともかくカズマに肉体労働の適性がそれ程無かった。

  親方にステータスを見られ、コネのある不動産屋の営業を紹介されたのだ。今日が記念すべき配属初日。アクセルで、ひょっとすると一番厄介な客が来てしまったのかもしれない。

 

「カズマが担当とは幸先がいいですね!私の希望はただ一つ。屋内でも爆裂魔法が放てるよう、広大なスペースが欲しいのです!!」

 

「私はめぐみんと比べると全然大したものではないのだが…。防音、防振がしっかりとした自室が欲しいな…」

 

『カズマちゃん、社員割引とか使ってくれないかな?あ、それと僕の希望は家そのものじゃなくて、裸エプロンで傅いてくれるようなメイドさんが欲しいかなー。一家に一台はいないとね。でもでも、ジャンプが創刊号から揃ってるジャンプ部屋も捨てがたいなー!』

 

(拝啓、アクア様。配属初日、とんでもない客にあたってしまいました。もう、ゴールしてもいいよね?)

  片や土木作業で汗を流してるだろう相棒をおもうカズマ。

 

「お客様ぁぁあ!まずは土地から決めるとしましょおお!!」

 




書き直すうちにプロットすら無視しちゃうダストさんサイドに責任があるはずなんだなぁ…
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