この素晴らしい過負荷に祝福を!   作:いたまえ

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三十話 死刑宣告

『今すぐにダクネスちゃんの家に行かなきゃ、二度と会えなくなるだなんて。バニルちゃんも大袈裟な』

 

  球磨川は、バニルが手渡してきたダクネス邸までの地図を片手に全力で街を駆ける。アクセル中心街まではスタミナが保たないので、合間合間にスキルを使用し、どうにか速度をキープ。

  高級な家が集まる区画に到達した頃には、息も絶え絶えだ。

 

『地図だと、多分アレかな。随分立派なお家だ。ダクネスちゃん、悪いことしてないだろうね』

 

  ダクネスの家らしき建物は、高級住宅地でも目立つワンランク上の邸宅。大貴族が住んでいるようなお屋敷だ。

  あと一回【大嘘憑き】で体調を整えてから、敷地に続く門へ。

  門の左右には武装した男性が配置されている。

  球磨川の姿を確認し、片割れが誰何してきた。

 

「君。何か用事かい?」

 

  爽やかさの裏で、内心球磨川を不審がる門番。口元の安っぽい笑みは常人相手なら通用するだろうが…。対応は一人に任せて、もう片方は油断なく戦闘準備をしてるのが嫌らしい。

 

『僕、ダクネスちゃんに会いに来たんです。彼女とは、一緒にパーティー組んで冒険させてもらってるんだけど』

「あー。君がお嬢様の…。悪いが、これから来客があるのだ。少し時間をおいて出直して貰えるかい?」

 

  球磨川の肩に手を置く、申し訳なさそうな顔の門番。

 

『ええー?遠路はるばるお越しした僕を門前払いしちゃうの。ダクネスちゃんに後で言いつけちゃおっかなー』

「ははっ。脅してるつもりかな?何も意地悪で通さない訳じゃないんだよ?謝るから、どっかで時間つぶしてきてね」

『…ふむ』

 

  ダクネスのパーティーメンバーだと告げると、門番の警戒が解けた。それでも、タイミング悪く来客がある所為で取り次いではくれない。出直せと言われても、事は一刻を争うらしいので引き下がる訳にもいかず。

 

『まーいっか!後でこようっと』

 

  諦めて帰る演技をして、門周辺を監視可能なポイントを探る。ちょうど良さそうな木で身を隠し、来客とやらの正体を確かめる算段だ。

 

(『主人の具合が悪いのに来客があるだなんて。どうにも臭うよね』)

 

  バニルのアドバイスによるとタイムリミットがあるそうなので、待って10分。それだけ待機して来客がまだ来なかったら、裏口でも探そうと決める。もっとも。これから来客と言っていたので、何時間も後ではない筈。

 

  果たして。体感で5分程度経過し、一台の馬車が門前で停車した。

 

『おお。来客が来るってのは本当だったんだ』

 

  馬車の運転を担っていた初老の男は、地面に降りて扉を開けた。運転手に深々と頭を下げられつつ降りてきた男は、最近よく見かける人物。肥え太った身体はまず間違えまい。

 

「あー、門番の君。話は聞いてるな?」

「はっ!只今お取り次ぎします!」

 

  門番の一人はアルダープに敬礼してから、屋敷の中に戻っていった。

 

『…よく現れるおじさんだ。まさか、僕はアルダープルートにでも入ったんだろうか?』

 

 来客がアルダープだとは。予想の範囲内といえば範囲内だが…彼のダクネスへの執着心は侮れない。顔も名前も知らない客人だったら放っておいても問題は無かった。あのアルダープが、ダスティネス卿が床に伏した状況で訪問してきたのは、どうにも嫌な予感がする。

 

『どうあれ、ここで木と同化してても意味が無い。アルダープさんかダクネスちゃん。どっちかの行動は把握出来る場所に移動しなきゃ』

 

  門番に足止めをくらっては堪らないので、球磨川は裏ルートで侵入を試みる。

 

(『うん。裏口にも門番はいるよね。そりゃあね』)

 

  先ほどの門とは真逆の位置に裏口は存在したものの、当然こっちにも門番がいる。こちらの配置人数はたった一人。しかし、球磨川はダスティネス家と喧嘩をしに来たわけではないので、戦闘行為は避けたい。

 

『だったら、こうするしかないね』

 

  茂みから手頃な石を塀に投擲して、門番の注意を逸らす。

 

「なんだ…?」

 

  異音の原因を確認する門番。完全に背後をとった。すかさず塀に螺子を撃ち込んで足場とし、乗り越える。

 

「…!こっちか!?」

 

  螺子の音に振り向くも、門番は微塵も球磨川の気配には気づいていない。何故ならば…

 

『僕の気配をなかったことにした!』

 

  門番が定位置に復帰した頃にはもう、足場代わりの螺子も塀の傷ごと消え去っていた。

  それから球磨川は建物の窓を一箇所なかったことにして、屋敷内への侵入も難なく成功させた。

 

  自分の気配をスキルで消したのは何時ぶりか。だいぶ昔、人吉親子と対決した時にも、似たようなことをした覚えがある。

  あの時は、瞳先生が気配を無くしてしまう重大性に顔を青くさせていたけれど。どうして悲観したのか、未だ球磨川には理解出来無い。

 

 ーダスティネス邸 内部ー

 

『なにこのお家、超広ーい!僕、ダクネスちゃんのお宅に居候させてもらおうかな。メイドさんとかいそうだし。一生に一度はメイドさんを裸エプロンにさせて使役したいよね、男の子なら!』

 

  絵皿、絵画、壺、宝剣。いかにもなアイテムで彩られた廊下。球磨川は正門のある方向へ歩きながら、至高の品々を値踏みした。良し悪しは正直わからなかったが。これだけの家に住んでいるのに、マイホームまで欲しがるのだからダクネスも欲張りだ。

 

  見回りの人達は来客で駆り出されているのか、すんなり正面玄関近くまで到達できた。

  エントランスで、赤いカーペットを我が物顔で踏みつけるアルダープを発見。

 

「ようこそお越しくださいました。歓迎致しますわ。僭越ながら、本日は病床の父に代わり、私がお相手させて頂きます」

 

『…あれ?』

 

  応対は病気の父の代理で、ダクネスが行っている。普段の鎧は装備しておらず、仕立ての良いドレスで着飾っていた。いつも括っている髪もおろし、深窓の令嬢といった風情。ドレス姿のダクネスなんてレアもレア。球磨川ですら美しいと感じるのだから、アルダープに至っては興奮を隠しきれないようで、鼻息が荒い。

 

「いえいえ、こちらこそお父上が大変な時に無理を言ってしまい、申し訳ありません。ですが、どうしても御目通りしたかったもので」

「と、おっしゃいますと?」

「それはですな…」

 

  アルダープがニタリと口を歪め、思わず漏れかけた涎を啜る。

 

「…単刀直入に言いましょう。お父上の病気を即座に治せる医者を、ご紹介出来るかもしれません」

「なんですって!?」

「当家専属の医者ですが腕は確か。かつては王宮付きだったほどの人物でございます。彼ならば、或いは」

「是非とも、紹介しては頂けないでしょうか!」

 

  目を丸くするダクネス。明日、父は医者を呼ぶと言ってたが、町医者と元王宮付きでは、後者に診察して欲しいのが本音。

  頭を下げるダクネスを見て、アルダープは勝利を確信した。

 

「ララティーナ様。実は今日、その医者と一緒に参ったのです」

「なんと…!」

 

  手際がいい。ダクネスはアルダープが大領主になった手腕の片鱗を見た気がした。

 

「ご都合さえ良ければ、今からでも診察は可能です。…おい!」

 

  呼びかけると、扉から白衣の壮年が姿を現す。

 

「失礼。お初にお目にかかります。医者のレイヴァンと申します。突然の訪問になってしまい、すみませんね」

 

  メガネをかけた髭面の壮年はダクネスに一礼してから、アルダープの背後までやって来た。医師免許を提示し、身分を証明するレイヴァン。

 

「初めまして。ダスティネス・フォード・ララティーナでございます。レイヴァン様、何卒宜しくお願いします」

「はい、お任せください。精一杯やらせていただきます」

 

  眼鏡越しの目は、ダクネスに対する親愛の感情がこもっている。

  柔和な表情で、これまでの患者も安心させてきたのだろう。もう大丈夫。ダクネスは診察も前に根拠のない安堵を覚えた。

 

 …………………………

 …………

 ……

  ダクネスが、父の寝ている寝室まで二人を案内する。

 

「お父様、ララティーナです。失礼します」

「どうしたララティーナ。おや?」

 

  ベッドに横たわったまま、ダスティネス卿がアルダープとレイヴァンを視界に捉えた。

 

「これはこれは…。このような格好で、恐縮です」

 

  主人の寝室にまで踏み込むとは無礼も甚だしいが、ダクネスが引き連れてきたからには理由があるはず。経緯がハッキリするまでは咎めまい。

  アルダープが一歩出て。

 

「ダスティネス卿。こちらこそ、無礼をお詫びします。お身体の具合が悪いと聞き、勝手ながら腕利きの医者を連れて参りました」

「ほう、そうでしたか。ご厚情、感謝の言葉もありません。丁度、医者を手配しようとしていたので、非常に助かります」

 

  わざわざアルダープに医者を呼んでもらわなくとも良かったが、ダクネスがあまりに嬉しそうなので毒気も抜かれてしまった。さしずめアルダープが凄腕の医者だの言って、愛娘を懐柔したのだろう。凄腕なのは疑う余地もないが。ダスティネス卿は壮年の医者に微笑みかけ

 

「お久しぶりです。レイヴァン殿」

「…ダスティネス卿、覚えて下さっていたのですね。随分、時が経ったものです。貴方とは、かれこれ15年前に会ったきりだというのに」

 

  ダスティネス卿は昔、レイヴァンが王宮付きだった頃に診てもらったことがある。二人は顔見知りなのだ。だからこそ、レイヴァンはアルダープの頼みを聞いたわけで。二人が知り合いだったことに、ダクネスと、アルダープまでもが驚く。

 

  レイヴァンが早速手持ちの鞄から聴診器を取り出し、触診を開始した。

 

「まだ現役でいらしたのですね。レイヴァン先生には、お世話になってばかりだ」

  15年前の、セピア色の記憶が蘇る。レイヴァンもまた、当時を懐かしむ。

「この老いぼれが、ダスティネス家当主の診察をさせて貰えるなんて。こちらこそ、感謝しております」

  眼球や喉の奥、果ては魔道具らしきものを使用して何かを計測。15分程の診察が終了し、レイヴァンは重い溜息をつく。

 

「せ、先生…!どうでしたか?」

 

  ダクネスは固唾を飲んでレイヴァンに尋ねる。聴診器等の診察器具を鞄に入れて、レイヴァンはダスティネス卿に向き直った。冷たい汗を垂らし、手を震えさせながら

 

「…ダスティネス卿。これは、大変申し上げにくいのですが…」

 

  うつむき、唇を噛む仕草でダスティネス卿が全部察し、笑う。

 

「レイヴァン殿。娘には、別室で伝えてはもらえませんか?私なら、大丈夫ですから」

「は、かしこまりました…」

 

  弱々しい表情のダスティネス卿。それでも目の光は未だ強く。診察の結果も全てわかった上で、レイヴァンに頼んだ。結果を聞けば、娘は悲しむ。残り少ない時間は、少しでも娘の笑顔を多く目にしたいものだ。

 

 ダクネスとレイヴァンが部屋を後にし、アルダープのみが部屋に残り、ダスティネス卿へ深く一礼する。

 

「…ダスティネス卿。お力になれず申し訳ありません」

「レイヴァン殿を連れてきてもらっただけで、十分です。こんな時だからこそ、お願いがあるのですが…」

「はっ、なんでしょうか?」

 

  両腕にありったけの力を入れ、ようやく上体を起こし、真剣な眼差しで悪徳領主を見つめる。

 

「娘には、手を出さないでもらおう」

 

「………は?」

 

「今まで、ララティーナに執着してきた貴方だ。私亡き後も、絶対に娘にちょっかいをかけるでしょ?」

 

  キョトンとしたアルダープが、数秒おいてダスティネス卿の発言を理解した。

 

「…ふっふっふ。何を言うかと思ったら。死に損ないが、笑わせてくれる!邪魔者のアンタが死ねば、ララティーナ如き言い包めるのは容易。娘が嬲られる様を、あの世で指を咥え見てるがいいわ!」

 

  遅かれ早かれ死ぬ相手となって、いよいよ本性を剥き出しにしたアルダープに、ダスティネス卿は楽しげな笑顔を作った。

 

 …………………………

 ……………

 …….

 

  別室にて、レイヴァンがダクネスに告げた結果は最悪のものだった。

  口元を押さえて涙するダクネスが、藁にもすがる思いでレイヴァンに問う。

 

「もう、どうしようもないのですか…?」

「…延命ならば、出来なくは」

 

  レイヴァンの拳は、握りすぎて血が滲む。病死はこの世界において寿命と同義。延命でさえ、神の定めた天寿に抗う行為。結局、ダクネスが選べる道は、父に残された時間を慈しむ事だけだ。

 

「延命するにしても、特殊な材料を要します…」

「材料?」

「はい。とても希少なもので、この街で所持しているのはアルダープ様くらいのものです。名を、『妖精の草』といいます」

 

  延命。捉え方は人それぞれでも、ダクネスとしては父に長く生きていてもらいたい。アルダープが材料を持っているなら、頼むだけ頼んでみようと思うくらいに。

 

「ララティーナ様。私の連絡先を知らせておきます。普段はアルダープ様の専属となってますが、ダスティネス卿の為ならば何処へでも伺います。アルダープ様から材料を貰えたあかつきには、また呼んでください」

 

  ダクネスに住所だけ知らせ、レイヴァンは部屋から出て行った。

  入れ替わるように、遅れて別室に入ってきたアルダープ。ダクネスは早速、頼んでみることに。

 

「アルダープ様!」

「…ララティーナ様。不甲斐ない私を、どうかお許しください」

 

  形式的な謝罪。心など、塵程もこもっていない。

 

「謝らないでください。あの、アルダープ様、少々お聞きしたいのですが…」

「なんでしょう?」

 

  なんとなく緩んだ表情のアルダープに、ダクネスが懇願した。

 

「アルダープ様が持っているという『妖精の草』を、譲ってもらえないでしょうか?」

「ほ?」

 

  妖精の草。以前、万が一に備えマクスに命じ手に入れた希少な薬草。ダクネスはどうやら父親の延命を望んだらしい。余計な知恵を吹き込んだレイヴァンには仕置をしなくては。だが、この展開は悪くない。どうせ、最終的にはマクスに呪いを解かせるようなことを言い、引き換えにダクネスには身体で支払ってもらうつもりだったのだから。無論、呪いを解く気はないが。

 

「ああ、妖精の草ですか。構いませんよ。ええ、構いません」

「アルダープ様…!」

 

  ダクネスは無意識でアルダープの手を握ってしまっていた。今日のアルダープはまるで別人のよう。いつもなら渋ったり、交換条件を出してくるので。

 

「あ…。失礼しました」

 

 気がついて手を離そうとし、逆にアルダープに握り返された。

 

「なにも失礼ではありませんよ。妖精の草、差し上げるのは構いませんが…。代価、代償はいただきたく存じます…!!」

 

  アルダープはやはりアルダープだった!

  ダクネスの手を握りしめたまま、二の腕までスライドしてさすってくる。

 

「あ、アルダープ様!?」

 

  気持ち悪さにダクネスの全身に鳥肌がたつ。

 

「天下のダスティネス家の令嬢が、貴重品を無償で巻き上げるつもりではないでしょう?もっとも、季節が一巡りするのを待てば、採取可能ですがね」

「ひ、一巡り…?」

 

  そんなに長い期間、父は生きていられない。あの進行具合では。

 

「そう。非常に残念だが、ダスティネス卿がそんなに生きながらえることは不可能です。だが、たった一晩。貴女が一晩だけワシと床を共にすれば、もっと生きていられるかもしれませんぞ」

「なっ…!」

 

  アルダープの言葉と一緒に、生ぬるい息がダクネスの頬にかかる。

 

  妖精の草を使用すれば、ダスティネス卿が延命してしまう。ダクネスを手に入れるのも、同様に先延ばしされる。であれば、悪徳領主としては妖精の草をエサにここでダクネスを抱いておきたい、焦りも生じる。

 

(私が我慢すれば、お父様はまだ生きていられる。でも、私がアルダープを拒めば…!お父様は…)

 

  ダクネスは覚悟を決めた。嫌でも、苦しくても。愛する父親を想えば、自分はどうなっても構わない。自己犠牲こそ、ダクネスの根幹にある考え方。

 

  アルダープを受け入れるように身体から力を抜き、目を瞑る。

 

「おお…!ララティーナ!ララティーナ!!」

 

  ガバッとダクネスの背中に両手をまわして抱き寄せたアルダープ。

  手汗に塗れた右手は、背中をつたい徐々に上昇。そのまま後頭部に手をおいて、逃げられないようダクネスの頭をロックした。

 

「愛してるぞ!ララティーナ!!」

「………ぅ…」

 

 満を持して。ダクネスの可憐な唇に吸い付く。

 

  …吸い付こうと、試みた。

 

 

『僕らのダクネスちゃんに、触るんじゃないっ!』

 

  突如。

 

  一本の螺子がアルダープの横っ腹に食い込み、太った身体を壁にまで叩きつけ、縫い付ける。

 

「ミソギ…!?」

『やあ。迎えに来たよ、ダクネスちゃん』

 

  めぐみんと爆裂魔法を撃ちに行った少年の登場に、ダクネスは開いた口が塞がらない。

 

「…ぬぅ…!き、キサマ!?キサマは呪いで死んだはず…!何故だ!」

 

  壁に全身を強打したアルダープは、肺に異常をきたし、うまく喋れない。

  夢見たダクネスとの情事を中断され、親の仇を見る目を球磨川に向けた。

 

『どうも、アルダープちゃん。元気?あはっ!元気じゃなさそうだね。身体に螺子を刺すなんて、ひどい奴もいたもんだ。僕が生きてる理由は…webで!』

「ぐぬぬ…!ララティーナの父親がどうなってもいいのか!妖精の草がなければ、奴はすぐに死ぬぞ!」

 

  ダスティネス卿を呪ったのは、アルダープが使役しているマクスウェル。病気じゃなく呪いなのだから、いかなる医療でも治すことは不可能。

 

『死んじゃうの?ダクネスパパ』

 

  アルダープの言を受け、球磨川は困ったような顔で問いかける。ドアの向こうにいる男に。…誰かいるのか。ダクネスとアルダープが注視する中、入室してきたのは

 

「さて。呪いがなかったことにされた以上、今しばらくは生きなくてはな」

「お父様!?」

 

  弱々しかった姿が嘘みたいに、完治したダスティネス卿。仰天の連続にオーバーヒートしかけてる娘に、茶目っ気たっぷりなウィンクをするパパ。

 

「ありえない!ありえない!!マクスは何をしている!?あのハズレ悪魔が!!」

 

  発狂するアルダープに、ダクネスパパは目もくれず。腰を抜かす愛娘の手をとって抱き寄せた。

 

「お、お父様…?」

「ララティーナ。お前の気持ちは嬉しいよ。でも、少し優しすぎるな。娘が傷ついて喜ぶ親はいないよ。いたとしても、それはもう、親ではない」

「申し訳ありません、お父様…!」

 

「ありえん…!なんだこれは!!」

 

  親子の抱擁を前にしても発狂を続けるアルダープ。ダクネスパパの復活により、バニルの教えてくれた災難は去った。であっても、球磨川が領主を許すかは別の問題になる。

 

『いやー!親子愛はかくも美しい!ね?アルダープちゃん!僕からしたら、ダクネスちゃんには相談してもらいたかったんだけれども!医者の診断でパニクって、僕のスキルまでは思いつかなかったのかな』

 

「くっ!ワシは悪くない!ワシは悪くない!!」

 

『嫌いじゃない見苦しさだねぇ。残念ながら、ゲームオーバーだよ君。しかも、僕が呪い殺されたことを、何故君が知ってるんだい?』

「そ、それは…!」

 

  ダクネスを逃したことで気が動転し、口が滑った。今更取り繕えない。

 

『あと、エンドゥ・タディオの行方も君が把握しているんだよね?とんだキーパーソンだぜ』

「…!」

 

  ブレンダンの職人の名前が、なんで今出てくるのか。が、彼を捜されるのはよろしくない。

 

「いや…知らん…」

『それと!!ギルドでは、床に押さえつけてくれてありがとう。君にはモロモロちゃんと恩返ししたいからさ…』

『よければこの後…』

 

  実質。アルダープにとっての死刑宣告となるセリフが球磨川の口から飛び出した。

 

『アルダープちゃんちいこうぜ!』

『あ!』

『友達に噂とかされると恥ずかしいし。なんて断る権利はないよ!強制イベントってやつだね!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







知り合いに、
「いたまえ(仮名)さん、ぐらんぶる知ってる?」
とか聞かれたので。
「ああ、千紗ちゃん可愛いですよね!」
と答えました。
相手が疑問符を浮かべたので、私は愛ちゃんって答えるべきだったか悩んでいると、アプリのゲームのほうでした。

ファンタジーまでつけて下さい。これじゃあ、私がオタクみたいじゃないですか。恥ずかしくてもげそうだった

※実話

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