この素晴らしい過負荷に祝福を!   作:いたまえ

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めぐみん逃げて。超逃げて!


五話 爆裂冥利につきる。

  いかにも私は魔法使いといった風情の少女。マントにハット。杖まで持っちゃってる。年齢は球磨川よりも下くらいか。腹からギュルルと音をたて、許可する前に球磨川の正面にある椅子へ腰をかけてしまった。

 

『えっと、どちら様?』

「!!」

  球磨川が少女の名前を聞こうとした瞬間、赤い瞳をクワッと見開き、不敵に微笑む少女。

「よくぞ聞いてくれました…!」

 まるで、名乗れることそれ自体が嬉しいかのように、手を伸ばしたり無駄に一回転したりしつつ、椅子から立ち上がった。

「我が名はめぐみん!!紅魔族随一の魔法使いにして、爆裂魔法の使い手!!」

  ビシッ!!

  決めポーズまでついた自己紹介を終え、少女はやりきったとばかりに髪をかき上げる。

『…かっこいい!素晴らしい自己紹介だったよ、めぐみんちゃん!!』

「!!!!」

  球磨川の反応は、めぐみんの望んだものだった。

  アクセルに来てから、今のような自己紹介を何回かしてきためぐみん。だが、いずれも相手が名前をバカにしてきたり、オーバーアクションに若干引いたりと、紅魔族のプライドを傷つけるものばかりだった…。

  目の前の男はどうだ?名前についてもツッコまず。感動のあまり涙すら流しているではないかっ!

「おお…。まさか、貴方のような人に出会えるとは…。感激です!失礼でなければ、貴方の名前もお聞きしたいのですが。」

『いいよ!僕はクマガワ ミソギ。あーあ、こんなことなら僕もかっこいい自己紹介、身につけておくべきだったぜ。』

  残念そうに口を尖らせる球磨川。

 めぐみんは、そんな球磨川の肩に手を置いて、ゆっくりと首を振る。

「ミソギ。今からでも遅くはありません。私と共に、かっこいい自己紹介を考えようではありませんか!」

『め、めぐみんちゃん…!!』

 

  変なところで波長が合ったようだ。

『こんな、こんな僕に…!なんて優しいんだ。ありがとう、めぐみんちゃん。ささ、遠慮なんていらない。好きなものを食べて!』

「こちらこそ、ありがとうございます!見ず知らずの人間に、嫌な顔一つせずご飯を食べさせてくれるとは…。ミソギ、貴方の慈悲に感謝します。」

 

  初めて会ったとは思えないほど、フレンドリーな食事風景だったと、見ていた人は語る。

 

「…そうですか。ミソギは今、パーティーメンバーがいないんですね。」

 

  テーブルの上にある料理を残さず平らげて、めぐみんは上機嫌でお腹をさする。

『んー。実は今日初めてクエスト受けたりもしてね。不慣れで難儀してたんだ。』

「成る程、成る程。それは大変でしたね。ですが、もう不安がる必要もありません!この爆裂魔法の申し子と言われた私が、貴方とパーティーを組むのですからっ!」

  またも椅子から立ち上がっためぐみんが、自分の薄い胸を叩く。

 球磨川はめぐみんの後ろに〔ドン!〕というオノマトペが見えるくらい、迫力あるセリフだ。

 

『僕、こんなに感動したのは生まれて初めてだ。きっと、僕はめぐみんちゃんとパーティーを組むために生まれて来たんだね!』

「お、大袈裟ですよミソギ。」

 

  実はこのめぐみん。とある事情で他のパーティーから厄介払いされている。たまたまフリーな球磨川とパーティーを組めることは彼女にとってもラッキーに近く、これほど喜ばれるとやや後ろめたい。

 

  爆裂魔法をこよなく愛するめぐみんは、1日1回は爆裂魔法を放たなければ気がすまない。非常に強力な魔法ゆえ街中で放つことは叶わず、かといって一人で街の外へいくことも、ある理由で不可能だった。パーティーメンバーを得ためぐみんは、まさに水を得た魚。

「ミソギ!私の魔法をお見せします。一緒に街の外へ来て下さい!」

『それくらい、お安い御用さ!』

 

 …………

 ……

 

  街の外まで来た二人。だいぶ離れたここでなら、めぐみんは魔法を放てると言う。

『ここまで離れなきゃ危ないだなんて。よほど強力なんだね。』

「ええ。その目に焼き付けて下さい。 これが…!これこそが!我が最強の爆裂魔法!!」

  めぐみんの持つ杖に、凄まじい魔力が込められ、練られてゆく。

「全てを無に帰す聖なる一撃…!!

【エクスプロージョン】!!!!」

 

  木々が揺れ、鳥が逃げ出す。

 前方に巨大な魔方陣が生成されたかと思いきや、直後地響きを伴う大爆発が起こった…!!絶大な威力は、全てを無に帰すといっためぐみんの口上に恥じない一撃だ。

 

  巨大なクレーターが出来、草木や岩のあった空間には、何一つ残らない。

 

『………』

 

  これほどまでの魔法を間近で見ても、球磨川はあまり嬉しそうではない。

 

『なんて素晴らしい威力だ。あまりにもプラスな魔法だよ。こんなんじゃ…』

 期待外れだ。

  続ける前に、球磨川がふと術者が倒れているのを見つけた。

『めぐみんちゃん?大丈夫??』

  めぐみんはグッタリとして、うつ伏せで横になっている。

 

「爆裂魔法は、あまりに強力な為1日に1回しか撃てないのです…。今の私では、1回撃つとこのように自力で歩くことはおろか、立ち上がることすら出来ません。」

 

  この言葉を聞いたのが球磨川以外の人間だったならば、使い勝手の悪さに頭を抱えた事だろう。何もかも、他人とは違う球磨川くんは、むしろ歓喜に打ち震えていた。

 

『なんて素晴らしいんだっ!めぐみんちゃん!君は素晴らしい。まさかそんな欠点があっただなんて…!むしろ、この欠点があるからこそ、今の一撃には価値がある。そうは思わないかい?』

「まったくその通り!!ミソギ、貴方話がわかりますね!貴方ならば、爆裂批評家として食べていけるでしょう!」

 

  プルプル震え、ブワッと涙を溢れさせた球磨川に、めぐみんも理解者がついに現れたと喜ぶ。

  アクセルまでは、球磨川がめぐみんをおんぶして連れ帰った。

 

『紅魔族随一の魔法使いとパーティー組めるなんて、幸先がいい。きっと、女神エリス様が敬虔な信者と言えなくもない僕に慈悲をくれたんだ!!』

 

  再びギルド内にあるレストランで、二人はドリンクと軽食だけ頼み、めぐみんの回復を待つ。

「ミソギはエリス教徒だったのですか。全くもってその通りかと。爆裂魔法を操るアークウィザードがどれ程貴重な存在か。ミソギ、あなたの幸運はかなりの高さだとお見受けしました。」

『それほどでもないんだぜ!でもこれでクエストをこなせる気がしてきたよ。めぐみんちゃんがぶっ倒れて足を引っ張るくらい、僕からしたらむしろ喜ばしいよ。』幸運は実際それほどでもない。無さすぎる。めぐみんは、しかし謙遜と受け取ったらしい。

「そう言って貰えると、私も爆裂冥利につきます。」

『爆裂冥利ってなんだよ』

 

  時折球磨川にさえツッコミを入れさせるめぐみん。彼女のヘッポコさは紅魔族随一だ。間違いない。

 

 しばし歓談し、めぐみんがようやく立ち上がれるようになった頃。

 

「あー!ちょうどいいとこにいてくれたわ!」

  二人のテーブルに、一人の女性が喧しく駆け寄ってきた。

「あなた、鬼怒川だかいったわね!喜びなさい。今からアクシズ教の名誉会員を名乗る事を許してあげる。だから、…二人分の冒険者登録手数料を貸してください。」

『誰だい?君。』




名誉「会員」なんだ。年会費とか安くなりそうですね。
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