この素晴らしい過負荷に祝福を!   作:いたまえ

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アクア様、別にヒロインにする気はないんだからね!


五十四話 王都

  ギルド長(と、ついでにカズマちゃん)を捜しに、王都までぶらり旅を強いられた球磨川一行。移動手段はブレンダンの時と同様に馬車だったが、特に何の苦難も待ち受けず、拍子抜けするくらいあっさりと王都までたどり着けた。馬車での移動は依然として快適とは言いがたく、お尻に若干のダメージを負ったメンバー。回復を待つため、まずは商店街でもぶらつきながら気分転換し、本格的な捜索を始めることとなった。

  王都に来た各々の反応もそれぞれで、ダクネスは何度か訪れた経験があるようで、落ち着いた様子。一方、他のメンバーは大きな建造物に目を輝かせるのに忙しい。

 

  建築家の総本山である、ブレンダンの建物も劣らず立派だが、差が出たのは予算の違いか。

  絢爛豪華な建物群は、色や形が景観へ与える影響まで計算されている。

 

  城下町は、街全体が一つの作品と呼べる程に、美しかった。

 

 ……………………

 ………………

 …………

 

  やあ、僕だよ。

 

  ようやく王都へと到着して、これからギルド長を捜すって時に腰を折るようで恐縮ではあるけれど。

 

  ここで僕から質問。

 

 あ、身構えなくてもいいよ。別に、殺されるならナイフとピストルどちらで殺されたい?って感じの物騒な奴じゃないから、安心して。スピードラーニングでも聞き流す程度の気持ちでいてくれればオッケーさ。それはそれとして、殺されるなら勿論、ナイフだよね。例えだとしても、愚問だったな。

 

  ナイフの良い点は、必ず人の手が必要ってところかな。殺されながらも、自分の肉を抉る感覚を相手に実感してもらえるならお得だし、一石二鳥じゃない。命と引き換えに。肉を貫き、切り裂く感触を相手のトラウマに出来たなら、それはWINWINだ。…もとい。球磨川禊として言えば、LOSELOSEか。いずれにしても、加害者サイドだって、引き金を引くだけよりは得るものが多いと思う。せっかく尊い命を摘むのなら、何かしらの教訓は得ないと。死ぬ側も、与えないとね!

 

  おっと。

  つい話が逸れちゃうのは、僕の悪い癖。てことで、本題。皆に聞きたいのはズバリ!東京についてだよ。

 

  東京って聞くとさ、大抵の、一般ピープルであるところの皆はどういうイメージを持つ?

  東京タワーやスカイツリーみたいな、日本の技術力の高さを世界に知らしめる、いわゆるシンボルを真っ先に思い浮かべる人が多いかな。例えば、僕は転校が多くて色々な土地に住んでいたのだけれど。地方で生まれて育った少年少女達は、雑誌や新聞でスカイツリーの紹介記事なんかを読んで、いつかは東京に住んでみたい、行ってみたいと夢見ながら学生時代を過ごしていたものさ。

 

  わかりやすい、憧れの対象なのかもね。地元民でも旅行客でも、カップルや仲睦まじい夫婦が多く利用しているだろうし、ベランダから東京タワーが見える物件は、時代を選ばず家賃が高いでしょ。

 

  テレビ番組を見ても、紹介されるのは東京で有名なラーメンやスイーツだったりで、ただ憧れるしか出来ない事が多々あったりもする。

  遠すぎて、行けもしないお店の開店時間をテロップで出すくらいなら、テスト範囲の英単語でも載せてほしいものだって、僕個人は感じていたぜ。映画やドラマの舞台だって、大体は東京だしさ。有名な歌にもあったよね?オラこんな村嫌だ、東京さ出るだ、みたいな……孫悟空を連想させる一人称の歌が。ま、悟空の場合は筋斗雲か武空術で、都までひとっ飛びだけれど。

  ……その歌がヒットしたのだって、共感する田舎住まいの人々が多かったからに他ならない。

 

  魅力たっぷりな我らが首都の人気は当然国内にとどまらず。一時期【爆買い】で連日ニュースになった観光客の多さ、及び多様な国籍。外人の皆さんがお国から長い時間をかけてでも東京に来てみたいようだから、海外での人気のほどが窺える。

 

  修学旅行の計画中、行き先の候補があり過ぎて決められなかった経験を持つ僕から言わせれば、どこに行っても観光スポットになるような見所満載の街ってイメージだよね、東京は。で。現代っ子真っ盛りでもある僕は、テレビドラマやマンガの影響で、東京と言えば皇居に国会議事堂、警視庁や警察庁なんかを思い浮かべてしまう。これらの施設が建てられた場所を考えて貰えれば、日本が皇居を中心に作られているのがよくわかる。つまり、観光面にしろ政治面にしろ、どこをとっても国の中枢らしく、正に日本の心臓とも言える大都市。それが東京だと言えそうだね。

 

  以上が球磨川禊の、東京観。

 

  それならば。異世界。

  ……僕が転生した摩訶不思議なこの世界はどうなのだろう?

 

  王都とは。

 

  まだ大学に合格していない僕でも、王都がこの国、つまりはベルゼルグの首都だっていうのは理解出来るさ。日本にとっての東京みたいなものだろうね。

 

 王都といえば、いわゆるロールプレイングゲームで言うところの【冒険】が始まる地なわけだけれど。王様が魔王討伐を果たす勇者を選定してみたり、支度金だとか言って100ゴールドくらいのはした金を恵んでくれるようなイベントが起きる場所だね。100ゴールドで命をかけろだなんて、王様ってば欲張りさんなんだから。

 

  上記の流れは一種のお約束。すなわち既定路線。これをしないとゲームがスタートしない、的な。決まりごとっていうか、暗黙の了解な旅立ちイベントに過ぎないものの……冷静に考えてみれば、そんなお約束イベントすら行わないこの国の王様は、随分と虫が良いんじゃないかな?

 

  勇者候補、要するに全ての冒険者達に100ゴールドをくれる訳でも無く、ただ漠然と魔王を倒してくれる勇者の登場を待つだけだなんて。考え方があまちゃんそのものだ。能年ちゃんでなくても、じぇじぇっ!って気分だぜ。証拠に、僕は現状自発的に魔王を討伐しようと行動しているけれど、王様からはビタ一文貰っていない。つまり、ベルゼルグの王様は、ドラクエの王様以下だってことが証明出来たね。

 

  でも。

  「自分から行動しないと幸せは掴めないっ!(凛!)」みたいな決め台詞は、めだかちゃんなら言いそうなカッコいい文句だけれど。果報は寝て待てスタイルな王様は、意外と僕に近い性質なのかもしれないな。仲良くなれるかもしれないぞ!

 

『城に篭りっぱなしな上、冒険者に報酬も出さないあたり、王様って楽な商売だなぁ。来世では是非、王様になりたいね』

 

  なんて、つい口をつく。

  独り言のつもりでも、声ってヤツは以外と響くらしく。

 

「いえいえ、それは違うのです。」

 

  やや斜め下から、めぐみんちゃんの声が耳に届く。

 

『……何か言った?』

 

「王様は今、魔王軍との戦いが激しい最前線にいるらしいですから。お金を払いたくても払えないのでしょう」

 

  勝手に怠惰な王様に親近感を覚えていた僕の妄想は、しかしめぐみんちゃんの言葉で霧散してしまう。

  のみならず、一国のトップが命がけで戦争しているという、聞き流せない情報まで得てしまった!

 

『な、なんだってー!?王様自ら戦線に向かうだなんて、敗北一歩手前じゃないか!!』

 

  王様。てっきり王城の中にある玉座でふんぞり返っているだけの楽な仕事だと思っていたのになぁ。よりによって戦いに出ちゃってるとか。トップが現場で指揮するのをカッコいいとか思っちゃうタイプなのかな。王様が出陣って、負けてる時じゃない?普通はさ。

 

「いや、そういうわけでも無いでしょう。剣の扱いで言えば、王族は英才教育を受け、達人並みの腕前を持つそうですから。純粋に戦力として重宝されているのかと。そもそも。王様が不在とかそうした理由から、冒険者への謝礼等は全てギルドが請け負っているのだと思うのですが」

 

  ふーん?王族って、偉いし金持ちだし強いんだ。へー。わかりやすく言えば、エリートの権化ってことね。

  忘れないうちに、僕の抹殺リストに加えておこっと!

 

  あと、これはどうだって構わないのだけれど……

  ギルド=下請けだったのか。

  あの、アクセルのギルドにいる、おっぱいの大きい受付嬢さんも苦労しているんだなぁ。

 

『あ、そう。それにしても、ギルドからだって100円の支度金さえ貰えず、なんなら冒険者登録するのにお金を支払ってるレベルだけれど。これはつまり、結局は王様から適切な代価を貰ってないってことだよね?もらう権利が、僕らにはあるはずじゃない?クエストの達成報酬は当然の権利だから別として、さ!』

 

「それは……そうですが」

 

  やはり、この紅魔の娘もひっかかってはいたのだろうか。ちょっと言葉に詰まる様を見せてきた。

 

  しかし。折角王都くんだりまで来たのに、王様には会えないとか。

 

  ボードゲームの将棋ですら、王様が直々に戦いに参加する事はあまりない。後ろに下がれる駒が少ない点から、逃げ易いって意味では王様が敵陣に入る場合もあるにはあるけれど。

 

  これは現実の話。魔王軍がまさかカニさんみたいに横歩きしか出来なかったり、猪のように突進しか頭にないような間抜けなハズないでしょ。

  あるいは、王様が魔王軍に亡命しようとしているのかも?

  ともかく、無駄に争いに参加しているくらいなら、僕たちみたいな恵まれない冒険者にお金を支払えと言いたいな。

 

「おい、王様を悪く言うと不敬だなんだと言われてしまうぞ。ここには王族に近しい方々もいる。いつも以上にミソギは発言に注意してくれ!」

 

  僕の言葉でダクネスちゃんがビクビクと、周りを伺う。そのなんとも健気な姿に、さらなる揶揄いをしてみたくなっちゃうのは僕がサディストだからか。否、僕はむしろMだと自負しているよ。

 

『そんな事よりも!本題はギルド長を捜すことじゃないのかい??ダクネスちゃん、話を逸らさないでくれよ』

 

「あれ?私、いつの間にか話を逸らしていたのか?あれぇ?」

 

  口に手を当て、今のやり取りを振り返って、自分に非が無い事を必死に確認するダクネスちゃん。

  可愛い。からかい甲斐があるとも言う。

 

『油断すると、すぐにコレだ。ダクネスちゃん、論点をズラす事において君の右に出るものはいないぜ』

 

「うぅ……、何故責められているのか はまるでわからないが。正直、良い!特に!この理不尽さが堪らん!!」

 

  ハァハァと。ダクネスちゃんは自分の肩を抱いて、呼吸を荒げた。うん、今日も安定しているな。この気持ち悪さは、さてはダクネスちゃんも過負荷なのかも。

 

「ダクネス……。もう引き返せないところまで行っちゃってますね。頭が」

 

  めぐみんちゃんの冷ややかな眼差しが更にダクネスちゃんを刺激して。

 

「め、めぐみんまで私を罵るのかっ!?……ん、ふぅ……」

 

  何やら気持ち悪い感じの吐息を漏らすと、そのまま力なく手近なベンチへ崩れ落ちてしまった。

  おいおい。そんな調子でギルド長を捜せるのかい?

 

「あー、ミソギ。私がダクネスを見ていますから、ミソギは軽く情報収集して来てもらえますか?」

 

  と、めぐみんちゃんが。

  仕方ないなぁ。すっかり腰が砕けてしまった貴族令嬢はめぐみんちゃんに任せるとして。

  僕はアクアちゃんと一緒に街でも歩こうか。

 

『わかったよ。アクアちゃーん!』

 

  僕は、王都についてから、何やらずっと露店を見て周っていたアクアちゃんを大声で呼び戻す。

 

「なによー?」

 

  呼びかけに気づいたアクアちゃんはテテテっと、此方に走り寄ってきた。

 

「なになに?話し合いは終わったの?」

 

『まぁね。ほら、行こう!』

 

「ちょ、球磨川さんっ!?」

 

  ギュッと、アクアちゃんの手を握った僕は、そのまま王城めがけて歩き始める。アクアちゃんがビックリしたのは、めぐみんちゃん達を置いてったからか。はたまた、僕ごときに手を握られたからかな。

 

「女の子に急に触るだなんて!球磨川さん、アレだわ。イリーガルなんちゃら…」

 

『イリーガルユースオブハンズ!なんて言わないでくれよ?』

 

  そもそも、君は女の子でさえ無いだろうに。

 

「もうっ!女神の手を握るなんて罰当たりなのよ?後でお金を請求するわね」

 

  とか言いつつ、アクアちゃんは手を離そうとはしない。どころか、僕の歩幅に頑張って合わせてさえくれる。

 

『あはは。面白いジョークだ。』

 

  誤解しないでほしい。手を繋いだのは、こうでもしないと、アクアちゃんはすぐに何処かへ行ってしまいそうだからなんだぜ。

 

「子供じゃないってば…」

 

  アクアちゃんは視線を斜め下に落とす。よし、これで行き先の主導権は僕が握れたみたいだな。

  実はずっと、行きたかった場所があったんだ。

 

  一瞬、僕らを見送るめぐみんちゃんが目を細めたようにも思えたけれど、見えなかったことにしよっと!

 

「く、球磨川さんってば!どこに行くのかだけは教えてちょうだい!」

 

  アクアちゃんが黒目(青目?)を右往左往させつつ問いかけてくる。

  ふるふると、肩を震わせているのは不安の現れか。仕方ない。僕は白い歯を見せながら答えることにした。

 

『勿論、王城に決まってるじゃんか!』

「王城!?」

 

  それは。千葉にある夢の国でも真っ先にキャッスルの写真を撮りに行く僕から言わせれば、当然の選択だと言えた。ギルド長がいるのは、王都のギルドか王城だろうからね。観光も兼ねて、まずは王城に行くべきでしょ。アポ?無論、そんなものは無いよ。でもでも、デストロイヤー破壊や魔王軍幹部討伐……その他諸々の功績をあげた僕たちを、無下に出来るとも思えない。あながち、門前払いはされないんじゃない?

 

「だったら、せめてダクネスは連れて来た方が良かったんじゃないかしらっ!ほら、あの子、貴族だしっ」

 

『おいおい。アクアちゃん、冗談はやめてくれよ。公衆の面前で、僕にダスティネス家の名を傷つけろって言うのかい?』

 

  いくら僕でも、それはちょっと気がひける。

 

「球磨川さんっ、何をやらかす気なのよ!?やっぱり帰る、帰して!私、カズマさんを捜さなきゃいけなかったわ!」

 

  ここまで来てぐずりだすアクアちゃん。全く、臆病なんだから。

 

『そんな様子じゃ、天国のエリスちゃんに笑われちゃうよ?』

「うぐっ……。エリスにバカにされるのは確かにシャクだけど」

 

  エリスちゃん。君の名前はアクアちゃんにとても良く効くね。クリティカルヒットだ。

 

『よし、じゃあ行こっか』

「もう、好きにして……」

 

  そんなわけで。お言葉に甘えて。渋々ついてくるアクアちゃんを尻目に歩くこと数分、僕は王城の前に到達したのだった。




この王都編で!
みんなの妹が登場予定!

思えば、彼女を出すためだけにこの作品を書いたと言っても過言ではないのです。

アイリスファンの方々には、この気持ち、わかってもらえるでしょうか。

次回もよろしくお願いします
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