この素晴らしい過負荷に祝福を!   作:いたまえ

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牧場物語2とかいう、休日ブレイカー。

エリィちゃんは私の嫁!異論は認める!


六十六話 プラスとプラスとマイナス

  球磨川は、レストランの店内……だったところへ繋がるハシゴを昇り、爆裂魔法によって更地となった空間を確認した後、満足げに戻ってくる。建物はおろか、めぐみん達を襲ったと思しき人物の姿もなかった。襲撃者は、なんとか撃退できたらしい。絶大な威力を発揮した爆裂魔法は、周囲数件の空き家もろともチリにしてしまっていた。

 

『これは、僕らのマイホームが出来たあとで、タダオさんに追加で建築を依頼しないとな』

 

  爆裂保険なんてものがこの世界に存在して、かつトゥーガがそれに加入していれば、レストランの建て直しも可能だが……どう考えても、そのようなピンポイントな保険は無い。

  家主の許可も得ずに家を吹き飛ばしたのは、いくら球磨川だって罪悪感を感じないこともない。空間の魔術師とまで称される建築家に頼めば、しぶしぶ再建を引き受けてくれるだろう。なにせ、球磨川は彼の命をすくった恩人に他ならないのだから。

 

  球磨川は砂埃の中に突っ込んだ頭を、ペシペシと手で払って埃を落としつつ。

 

『やーれやれ。君たち二人はちょっと目を離すとすぐに死にかけてしまうんだねぇ。人造人間にやられたヤムチャじゃあるまいし……なんなら、見てない隙に18号よろしく吸収でもされたらまさしく、目も当てられないよ。これでは、僕はおちおちエロ本を買いにも行けないじゃないか!』

 

  現状死にかけているのは、球磨川とは一切関係の無いトゥーガであって、ダクネス達には傷の一つも見当たらない。しかし、店主が命がけで庇わなければ確かに、球磨川の言うように二人は死んでいた。だとすると、死にかけたと言っても過言ではないけれど、だからといって、幾度と無く命を落としてきた球磨川には偉そうな発言をする権利はない。球磨川はとりあえず、トゥーガをスキルで回復させる。目は覚まさないが、外傷は完璧に癒えたので、しばらくすれば意識を取り戻すだろう。ダクネス達の盾となってくれた御仁であれば、スキルを使用するのもやぶさかではない。別に、まだ【大嘘憑き(オールフィクション)】がしっかり発動するかどうかを確かめる実験台にしたかったわけではないのだ。

 

「貴方がそれを言いますか……。死にかけるくらい、死にまくっているミソギと比較したら屁でもないかと」

 

  呆れ顔で、球磨川にだけは言われたくないと、片膝立ちのめぐみんが口を尖らせた。魔力も体力も底をついている筈だが、片膝をつくだけに留まっているのは魔力量がレベルアップによって増えたからか。それとも、地下道の不衛生な床に伏せたくないが故の意地か。

 

『……めぐみんちゃん、思考がちょっと近頃の若者っぽくなってきたんじゃない?死んだり、死にかけるだなんて、普通は人生でそうそう起こりえないでしょ。全く、ゲーム感覚で生死を語らないでもらいたいよ。まるで、球磨川禊なら幾ら死んでも構わないって聞こえるぜ。こんな僕でも、一所懸命生きているんだよ?スペランカー先生にも失礼だ』

「えぇ……。ミソギの命を軽視したつもりは無くて、ただ過去の実例を挙げただけだったのですが……。だってミソギ、現実に何度も死んでますし。むしろ、ミソギの命を最も軽く扱っているのは、貴方自身かと。しかも、スペランカー先生って誰ですか!?」

『僕が命を軽視しているだなんて、心外だなぁ。これでも、ゲームとリアルの区別はつくほうなんだけれど。いのちだいじに、日々を過ごしているくらいだしね。犯罪者みたいに、ゲーム気分で人を傷つけるなんて怖いじゃんか』

 

  昨今。球磨川のいた日本では、自らの意思で犯罪を犯しておきながら、ゲームと現実の境界線がわからなくなったなどと宣う犯罪者が増えている傾向にある。ゲーム感覚だったというやつだ。何でもかんでも他人のせいにする、ロクでもない犯人らに共通するのは、人命の尊さを理解していないということだろう。めぐみんの発言が、そういった犯罪者達のそれと似通っていたことから、球磨川は彼女の将来をいささか不安視する。……めぐみんの正論による返しには耳を貸さずに。尚、めぐみんからすればゲームなんてプレイした事も無ければ、見たことさえもない。

 

『しかしながら、僕としては罪人を総じて一つのくくりにしてしまう法律やらの司法も恐ろしいけれどね』

 

  意志力が弱い罪人が気にくわないというような発言から、お次は犯罪者達を裁く側にまでにケチをつけ始めた球磨川。この男は、文句を言う際には四方八方に口撃対象を広げないと気が済まない性質のようだ。

 

「いきなり何を言い出すんだ、お前は。法律が恐ろしいなどと……罪人は罪人だろう?裁かれるべきは裁かれる、当然のことじゃないか」

『それ、アクセルの裁判官の顔を思い出しても同じことが言えるかい?無実の人までもが裁かれている恐れは?』

「……ん、アレは、ほら。特殊なケースだから。貴族による根回しが、裁判官の心象を操作してしまったからであってだな。」

『いかにレアケースと言えども!貴族が手回しすれば、無罪も有罪になるのなら……裁判官なんて必要無いね。後でアイリスちゃんに言って、クビにしてもらおっと!』

「それだけはやめてくれっ!たしかに、ミソギが司法を疑問視したくなる気持ちはわかったから!」

 

  危うく球磨川達に前科をつけそうだったアクセルの裁判長。あの場合、バルターによる暗躍があればこそ、冤罪が成立しそうだったとも言えるが。なるほど、無実の人間に罪を被せてしまう可能性があると考えれば、不完全な司法制度が怖いという球磨川の言にも理解は示せそうだが。

 

  無論球磨川は、冤罪だの免罪だの云々で法律が怖いと言っているわけではなく。

 

『それだけじゃない。法律の残念な点はね。……大きな罪でも小さな罪でも、犯した人間に烙印を押してしまうからだよ。一度、偶発的に犯罪行為をしたからといって、それだけで過負荷になれると思ったら大間違いだ。そんなのは、ただ運がないだけの幸せ者なんだから』

 

  微罪でも重罪でも、罪には違いないといった考えそのものが、お気に召さない様子。

 

  球磨川が生前目にしていたニュース番組に限ると。罪を犯した人間については、これまでの善行を一切考慮せずに悪だと断ずるコメントが目立っていた。例え、犯罪を犯すまでに海外の貧しい国へ百億円を寄付していようと、痴漢一回すればもうその人物は悪人なのだ。地位のある人間や、そこそこ徳を積んだ人間が罪を犯した場合には、「そんな人には見えなかった」とか、「こんなに立派な人がどうして」とか。インタビューを受けた人も、口を揃えて意外さをアピールするばかり。

 球磨川的には、なんだそれはと、はらわたが煮えくり返ったものだ。海外にお金を寄付した……寄付出来るような人間は、まずお金に困っていない。何不自由無い生活をおくった上で、なお金銭に余裕があると考えれば、ソイツは確実に【幸せ者(プラス)】だ。そんな輩が、ちょっとやそっと犯罪にはしった程度で【過負荷(マイナス)】のように語られるのは、球磨川禊にとってこの上なく業腹だ。【過負荷(マイナス)】を語るのなら、母親に毒の一つも盛られてから出直して欲しい。仮に【プラス】が人を殺したとしても、それ以前の善行で人を救っていたのなら、無罪も考慮すべきである。

 

「ちょっと待て。罪には重い軽いはあるが、善悪は無いぞ。あるのは悪だけだ」

 

  途端に滑りの良くなった球磨川の舌を、ダクネスが制止させた。

  球磨川は一旦口を閉じ、言葉を選ぶ。

 

『果たしてそうかな?』

「なに?」

『んーと。作り話として聞いて欲しいのだけれど。貧乏な、両親を亡くした姉妹がいたとしよう。で、食べるものもなく、あとは死を待つだけの状況で、パンを盗んだとする。さて!これは、罰せられるべき悪徳かい?』

「……そんなものは」

「それは、女の子達を悪とは言えませんね!」

 

  善か悪かと聞かれたら、間違いなく悪だ。しかし、状況によっては情状酌量も考えられるとするのが、ダクネスの回答だった。答えるより先に、めぐみんが食い気味で混ざってきてしまい、言うタイミングを逃す。

 

「貧乏が悪いのです。貧乏だから悪いのではありません。罪を憎んで人を憎まず、ですよ!」

 

  やたらと仮想の姉妹に肩入れするめぐみん。なぜここまで感情移入しているかはともかく、球磨川の言いたかった事は代弁してくれた。

 

『めぐみんちゃんの言う通りだ。でも、飢えた可哀想な貧乏姉妹でさえ有罪とするのが、この世界の司法のレベルだよ。』

「ぐっ……。極端な例に過ぎないというのに、あの裁判長の所為で全く反論出来ん……」

 

  チンチンと音を立てるベルに依存して、主観を見失った裁判官。球磨川の言はダクネスの思う通りの、一部の例でしかない。だが、それでも。ダスティネス家として次代を担う身としては、司法制度の改革も検討の余地ありと考えてしまう。

 

『ま、結局僕がどういう話がしたかったのかというとだ。……犯罪をするのなら、出し惜しみはしないってことだよ。ジュース一本盗むのと、人を殺すの。どちらも前科がつくのなら、重い罪を犯した方がおトクだろう?』

「「……はい??」」

 

  詭弁に詭弁を重ねてでも、一応は貴族の娘に司法への危機感を覚えさせた球磨川さんだったが、最後の最後でまた偉く突拍子もない発言をしてしまった。

  女性陣は、予想外の話の展開に目を白黒させて

 

「……冗談だよな?」

 

  いつもの。球磨川の適当発言なのだと判断した。

 

『失敬な!僕はいつだって真面目だよ。ようするに、めぐみんちゃん、ダクネスちゃん。人の命を軽く見て、微罪を犯しちゃダメだからね?やるならドカンと、人混みに爆裂るくらいの意気込みでやってくれよ』

 

  無関係の人間の大量殺戮。そのような非道が可能であれば、正常な心は保てていまい。無差別大規模殺人をやってのけれたのなら、過負荷を名乗ることも許してあげられなくもない。あくまでも後天的な、偽りの過負荷としてだけれど。

 

「いやいやいや。私が意図的に、人の命に関わる罪を犯すはずがないじゃありませんか!重くても軽くても、他人を傷つけるようなものはダメです!爆裂魔法を人混みに撃つだなんて論外ですからっ」

「まったくもって、その通りだ。ミソギ、もう私たちの間柄なのだから、反面教師的な発言はしなくてもいいんだぞ?ちゃんと、お前の言葉なら素直に受け入れられるのだから」

『や、反面教師とか、そういうつもりじゃ無かったのだけれど』

 

  なんでか、毎度毎度と球磨川の発言を都合よく解釈してしまう二人。心の奥底からの言葉は、きっと彼女たちに届く日は来ないのだと、球磨川は感じた。球磨川の本心なら素直に受け入れられると、ダクネスは言ったが。

 

『……微塵も受け入れてくれてないね』

 

  所詮は、プラスとマイナス。この会話で、球磨川が彼女達への認識を少しだけ改めてしまったのだが……どの道この認識の齟齬は、いずれは訪れていたことだろう。

 

 ………………………………

 ……………………

 …………

 

  球磨川が一人で心を痛めつつ、トゥーガの回復を待つ中。不意に、地下通路への入り口が開け放たれた。

 

「敵かっ!?」

『うわっ!』

 

  ダクネスは球磨川の肩を掴み、背後へ隠す。 めぐみんも、力の入らない身体で必死に入り口の方向へ向き直る。

 

  蓋を開けた人物は、入り口から、ハシゴも使用せずに飛び降りた。高さが数メートルに及ぶものの、侵入者は音も立てず、身体への衝撃を受け流す完璧な着地を披露した。

 

 先ほどの影がやって来たのかと思えば。

 

「……。チョリーッス!無事だったんすねぇ、お二人さん。それにトゥーガさんも、怪我は無さそうで何よりっす。て、おや!?まさか、そちらの男性はどっちかのカレピッピっすかぁ!?」

 

  どこまでもチャラく、いつまでもチャラい。めぐみん達にレストランを紹介してくれた男、レオルだった。降り立った瞬間にはキリッとしていた表情も、ダクネス達の姿を見るやフニャッと崩れた。

 

「なんだ、チャラ男か……」

「ちょちょ、チャラ男呼び安定なんすか!?」

 

  ダクネスらは、侵入者がレオルと知って緊張を解く。肩からも力を抜き、戦闘態勢を崩したところで。

 

『誰?つーか、なんでダクネスちゃん達は戦闘態勢から脱してるわけ?このチャラい人が、襲撃者では無い確たる証拠でもあんの??』

 

  球磨川はスルッとダクネスの背後から躍り出ると、レオルに対し螺子を構える。

 

「あー、ミソギ、コイツは大丈夫だ。トゥーガさんとも知り合いみたいだし」

『ダクネスちゃん。僕的には、そのトゥーガさんとさえ面識が無いんだけれど……』

 

  腕をダクネスに掴まれてしまい、球磨川は不満げに螺子を下ろす。ダクネスも、なんだってナンパ男がここまで来たのかはわからなかったが、ひとまず、詳しく経緯を述べ合うべきだと判断した。その為には。

 

「説明の前に……そろそろ、トゥーガさんを起こすとしよう。お前も勝手に王城まで行ってたようだし、ここらで情報交換をするべきではないか?」

 

  トゥーガは【大嘘憑き(オールフィクション)】で完治したので、目覚めを待っていたが……地下道はあんまり居心地が良いわけでもなかったので、一度トゥーガを起こし、一行は表通り側の出口を目指すことにした。

 

  レオルが、トゥーガの頬を優しく叩いて起こしている最中。その様子をジッと見つめていた球磨川は突然、ガクッと崩れ落ち

 

『ま、まさか僕のパーティーメンバーが、少し離れた間に知らない男を連れ込んでいるだなんて!これは、ダクネスパパに急いで報告しないと!』

 

  球磨川は、フルフルと震えながら口元をおさえると、白紙のメモ紙とペンを取り出して、床でサラサラと何かを書き出した。

 

「だから、説明するから!お父様に手紙を書くのはやめてくれ!本気で!!」

 

  仮にレオルが彼氏だという誤情報が伝われば、ダクネスパパは王都にまで視察へ来かねない。そんな中で、万が一レオルと顔を合わせ

「いっす。お父さん。」などと、言語かどうかも怪しい挨拶をされでもしたら……

 

『呪いとか関係なく、また寝込んじゃうかもね!』

「わかってるなら筆をとめろぉっ!」

 

  レオルなんてチャラ男と出会ってしまったばかりに、球磨川がいつのまにか手紙を出していないか、ダクネスは今後ずっと気にし続けなくてはいけなくなってしまった。













悲報です。



球磨川禊の二次小説を書き始めてから、二年と二ヶ月。四六時中、球磨川の思考をトレースする中で、最近はなんだか気持ちが悪くなってきました。

いやぁ、球磨川って気持ち悪いんですねぇ。笑
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