変's(two)    作:和三盆百馬

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第十八話「微妙な関係」

図書館の帰り道―。

 

天吾「そういえばさ、有紗って家どこなんだ?」

 

有紗「家?」

 

天吾「ほら、最初の頃なんかよく公園でばったり会ったりしてたろ?」

 

有紗「そうですね…天吾も、確かあの公園が帰り道だったんですよね。」

 

天吾「うん…てか、“も”って事はやっぱり有紗もあそこが帰り道なんだよな?」

 

有紗「…はい…でも、なんで?」

 

天吾「いや、それだったらこのまま家まで送ってってやろうと思って…。」

 

有紗「え!?い、いいですそんな…!」

 

天吾「俺が嫌なんだよ…具合が悪い奴、一人で帰らすの。」

 

有紗「あ、それならもう平気なんで…お、おんぶももう大丈夫です。」

 

天吾「…そうか?」

 

有紗の言う事を聞き入れた天吾は、有紗をゆっくり地面に下ろした。

 

有紗「うあ…。」

 

しかし、自分の足で立った途端、有紗は目眩でぐらつき転びそうになる。

 

天吾「お!?」

 

それを、すかさず天吾が支えた。

 

有紗「…すいません。」

 

天吾「…お前さ…。」

 

有紗「…はい…。」

 

天吾「…人って、もっと他人に頼って生きても良いんだぞ?ましてや、お前なんて普通の何倍もキツイ目に遇ってきたんだろ…だったら、尚更人に頼るべきなんだよ…それを、普通の何倍も我慢しやがって…。」

 

有紗「…だけど…迷惑がかかってしまうから…。」

 

天吾「…相変わらずバカだな…っと。」

 

有紗「キャ!?」

 

天吾は、再び有紗をおんぶする。

 

天吾「迷惑かどうかは、お前が決める事じゃねえんじゃねえの?」

 

有紗「…え?」

 

天吾「ほら、もう公園に着くぞ!早く道案内しろよ。」

 

有紗「あ、はい…えっと…。」

 

こうして、天吾は誘導の元、有紗をおぶって自宅まで送り届けた。

 

二宮宅前―。

 

天吾「…なんだ、案外俺んちと近いじゃんか。」

 

有紗「そうなんですか?」

 

天吾「ああ。」

 

天吾は、再度有紗を下ろす。

 

有紗「あの、今日は本当にすい…。」

 

謝ろうとする有紗を、天吾が睨み付ける。

 

あ、そうだった…。

 

有紗「…あ、ありがとうございました。」

 

その言葉に、天吾から笑みがこぼれる。

 

天吾「今日の事は気にすんな…そんで、早く忘れろ。」

 

有紗「…はい。」

 

有紗は、明らかに不安げだ。

 

天吾「大丈夫だって!失敗なんて誰にでもあるし、この事知ってんのは俺だけなんだから、明日からまた普通にしてればそれで良いんだよ!」

 

そう言って励ましながら、天吾は有紗の頭をワシャワシャと乱暴に撫で回す。

 

有紗「うわわ、ちょっ止めて下さいよぉ!」

 

天吾「なんだなんだ?ちょっと前まで常にボサボサだったくせに、ちょっとは気にする様になったか!」

 

有紗「べ、別に…そういう訳じゃ…。」

 

天吾「まあ、つう訳だからさ…お前はもっと楽天的になれ…そんでもっと人に頼れ…今のお前には、いじめも消えて頼れる相手も周りに出来たんだから…そうだろ?」

 

有紗「…あの…例えば…例えばなんですけど…。」

 

天吾「ん?」

 

有紗「…頼れる相手って、私には誰が居るんでしょうか?」

 

天吾「…」

 

俺…と、言いたい所だが…俺には、頼られるだけのスキルが何も無い。

 

ここでカッコつけて、いざとなった時にゴメン無理じゃ目も当てられん。

 

天吾「…海とか、珠稀とか?なんなら、英吉だって今じゃお前の味方じゃんか。」

 

有紗「…そうですね。」

 

…やっぱり、俺だ!とは、言ってくれないんだ…。

 

天吾「…そんじゃ、また明日…。」

 

有紗「…はい…また明日…。」

 

そう言って、天吾は自宅に帰っていった。

 

有紗「…でも、今日の天吾…なんだか凄く優しかったな…。」

 

有紗は、はにかむ顔を隠す様に、鞄を

ギュッと抱き締める。

 

有紗ママ「今の彼氏?」

 

有紗「わっ!ママ!?いつからそこに!?」

 

視線の先には、玄関のドアからニュッと顔を覗かせた、母親の姿があった。

 

有紗ママ「有紗の声が聞こえたから、ちょっと…それより、今の彼氏なんでしょ?いつからお付き合いしてるの?」

 

有紗「違うよ!今のは、天照天吾君…ただの…。」

 

有紗ママ「…ただの?」

 

 

天吾『友達でもなんでもないし。』

 

 

有紗「…ううん。」

 

ただの友達なんかじゃない。

 

有紗「私の、大切な友達だよ。」

 

有紗ママ「…そう。」

 

有紗ママが、ニッコリと微笑む。

 

だが、距離が縮まりはじめた二人の間に、またしても事件が降りかかる事を、この時の有紗はまだ知らない。

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