変's(two)    作:和三盆百馬

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第六話「いつも自分の事ばかり」

天吾が、有紗達を見付ける為に校内を駆け回っている。

 

天吾「くっそ!何処に居やがんだ、友子の野郎!!」

 

有紗達は、昨日の場所には居なかった。

 

天吾が走り去った後、柱の陰からとある人物が顔を出す。

 

英吉「おやおや?やっぱりそういう事ですか…こりゃ面白くなってきた!」

 

すかさず英吉も、天吾の尾行を続ける。

 

あいつは、ただ生き方がヘタクソなだけなんだ。

 

何気無い事が、少しおぼつかないだけの、本当はいい奴なんだ。

 

なのに、ただそれだけの事なのに、こんな仕打ちってあんまりだろ!?

 

でも…それを、知らないうちに追い込んでたのは俺だ。

 

今思えば、俺だって友子の事をとやかく言える様な立場じゃない。

 

だからこそ、言ってやりたい事はただ一つなんだ。

 

天吾「あいつが何した!!」

 

その後、天吾は校内のほぼ全てを探し回った。

 

しかしそれでも、有紗達の姿を見付け出す事が出来ない。

 

天吾「ハア、ハア…なんで…。」

 

いつもこうだ。

 

いつも俺の思い通りにはいかない。

 

何故かそれが、自分が覚悟を決めて起こした行動ほど、かすりもせずに無駄になっていく。

 

中学2年生の頃、好きな娘が転校する事になり、最後に告白だけはしておこうと決心した事があった。

 

そして、引っ越し当日。

 

俺は、彼女が乗るバス停の前で待ち続ける事にした。

 

しかし、いくら待っても彼女が来る事はなかった。

 

後日、クラスメイトから話を聞くと、両親にわがままを言って、夜行バスで引っ越し先へ向かう事を承諾してもらった彼女は、クラスの皆とお別れパーティーを開いていたそうだ。

 

そして、俺がアホ面下げてバス停で待ち続けていた頃、俺の家にもそのお誘いの電話が来ていたという。

 

俺はその時、神様が居るとしたら、どんな覚悟だろうが結局は人を選んで判断しているんだと確信した。

 

天吾「だけど…今は、そん時とは話が違げえだろ…もしかしたら、人一人の人生が懸かってるかもしれないんだぞ!」

 

天吾は、うずくまり頭を抱えた。

 

天吾「頼むよ…一生のお願いだからさぁ…俺に…助けさせてくれよ!!」

 

「プハッ…!」

 

天吾「…え?」

 

その時だった。

 

天吾の耳に、微かに聞こえた声。

 

声の方向と大きさからして、場所は。

 

天吾「…プール!」

 

天吾は、急いでプールへ向かう。

 

 

 

 

有紗「アプ…ブハ…もう…やべて…。」

 

友子「はあ!?何言ってんの?止める訳ないじゃん!」

 

有紗「ガボッ…!!」

 

そう言って、友子は有紗の首根っこを掴んで、水中に無理矢理沈める。

 

友子「人間ってさあ、どのくらい水の中に潜ってられるんだろうねぇ?ちょっと実験してみようよ…人間のげ・ん・か・い !」

 

すると、いきなり背後から腕が伸び、有紗を押さえ付けている腕を捕まれ友子は後ろに押し倒された。

 

友子「キャッ!」

 

有紗「ゲホッ…ゲホッ…。」

 

有紗が苦しそうに顔を上げる。

 

友子「…な…てめえ!」

 

?「何が人間の限界だ…それでこの娘になにかあったら、君は責任を取れると思ってるのか?」

 

友子「うるせえ!偽善者ぶってんじゃねえよ!!」

 

?「偽善?馬鹿か君は…目の前で人が、あわや殺されかけてたんだ…見てみぬふりなんか出来るか。」

 

友子「…大袈裟なんだよ…本当に殺す訳ねえだろバカ。」

 

?「そのつもりが無くても、もしそうなってしまったら後戻りは出来ないんだぞ。」

 

友子「ったりめえだろ!!んなこと言われなくても分かってんだよ!!」

 

?「本当に?」

 

友子「んだよ、しつけえな!」

 

?「…本当に?」

 

友子「…」

 

?「…論点がずれてしまったが、矢野…もうこんな事は止めろ…いくらなんでもこれがどれだけ稚拙で愚かな事か、分かってない訳じゃないだろ?」

 

友子「うっせえよ…てめえも、本当ムカつく!死ね!」

 

そう言って、友子はズカズカとプールを後にした。

 

すると、出入口付近で身をひそめるようにたたずむ天吾と出くわす。

 

友子「あ!?」

 

天吾「…!!」

 

友子「てめえ、なんでこんなとこに…まさか、てめえが…!」

 

天吾「い、いやいや…違う…俺は知らない!」

 

バチン!!

 

天吾「いぎゃ!?」

 

友子は、下唇を噛んでいきなり天吾に平手打ちを見舞った。

 

その反動で天吾が倒れこむ。

 

友子「…てめえら全員、覚えとけよ。」

 

そうして、友子はその場から去っていった。

 

天吾「…」

 

天吾は、ひざまずいたまま固まる。

 

 

 

プール際、男はおもむろに着ていたジャケットを脱ぎだす。

 

?「大丈夫?それにしても酷い事をする…。」

 

そう言って、男は上着を有紗に優しく掛けた。

 

?「これ、使って。」

 

新品の様にパリッとアイロンがかかったハンカチを差し出す。

 

有紗「あ…大丈夫です…自分のがあるから。」

 

?「そう。」

 

有紗「あ、あの…本当に…ありがとうございました。」

 

びしょびしょの顔を拭いながら申し訳なさそうに会釈する。

 

?「よかったら、もしこれからまた困った事があったら、僕に相談してよ。」

 

有紗「…いえ、でも…。」

 

海「遠慮なんて必要ない…僕が君の力になりたいんだ…僕の名前は『神奈海』(かみなうみ)よろしく、二宮有紗さん。」

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